皆困ってますよ、田中さん   作:佐藤京介

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中編1 Gold Day 114 夢の中では終わらない。

俺様は戦わなければならない。

何よりも尊く、偉大でかけがえのない、素晴らしい俺様のために。

 

「差し支えなければ、理由をお教えいただけますでしょうか。」

 

「もちろんだとも、君にはその権利がある」

 

会長は机に置いていたボイスレコーダーを手に取り、

 

「織口君が録音していたものだ。あまりほめられた手段ではないかもしれない、

だが、私はこれを聞き君を許すことが出来なかった」

 

カチッとボタンを押す。流れるのは織口への理不尽説教。厳しめではあるし、不条理も感じる。

 

「これが・・・ですか?確かに丁寧とはいいがたいでしょう。しかし、全ては織口の今後のためを思ってです。」

 

ボイスレコーダーから流れる理不尽説教をさえぎり、俺様は堂々と胸を張る。

数多の説教だが、全て一線は越えていない。この程度ならいくらでも言い訳できる。

小さな嫌らしさの積み重ね、一つ一つは大したことはないのだ。俺様の織口いじめははじめから長期を見据えている。

 

「しかし、織口すまなかった。お前を思ってのことだったんだが、重荷になっていたんだな、許してくれ」

 

心にもないことを自分の口から吐き出す。織口・・・、貴様。覚悟はできているか?

貴様がこういう手段をとるのではないかといつも俺様は考えていた。対策は当然講じてある。

 

 

 

Gold Day 114 夢の中では終わらない。

 

 

 

 

2014年に発売されたホモビデオである。大学3年夏休み、自分のやりたいことが分からず、無気力かつ悶々とした生活を送っていた主人公、佐田地。

蒸し暑い閉めきった暗い部屋の中で、ふと思う。

このままでいいのか。自分にそう問いかけるも、勿論返答はなく、空しい時間が無意味に流れる。そんな折、夢を現実に変えるため、社会に挑戦を始めた友人を、ふと思い出す。

ああいう風に全力で生きたことが自分の人生であっただろうか。

いやない。あるはずがない。

今度はすぐに答えが返ってきた。重いのか軽いのか分からない中途半端な暗い思いがゆっくりじわじわと胸を締め付ける。

まただ、今日もこんな思いをしなければならないのか。

息が少しだけ苦しくなる。割りに合わない苦しみが続き、何もやる気が出なくなる。

 

そんなどうしようもなくくだらない毎日を過ごしていた主人公のもとに

ある一通のチラシが届く。

 

 

 

30分で、5万!仕事あります!人募集中!

 

 

 

体に大電流が走る!主人公、佐田地。金のため、動きます。

 

というプロローグのホモビデオに端役として出演していた。

 

 

 

そう、織口はホモ野郎なのだ。どうしようもない奴である。

おまけに会社の備品であるデジタルカメラを落として壊したのだ。自然経過で壊れたものだとみんな思っていたが、織口が手を滑らせ壊してしまったところをわたしは見た。

結構値が張るものだ。

 

あの時、密かに写真も撮ったのだ。

 

織口の前でニヤニヤしながら、あえて声掛けせず私はその場を立ち去った。苦しむがいい、織口。簡潔に、丁寧にしっかりと、俺様は皆へ説明した。

 

「っ!」

 

あせる織口。そうだよな、デジタルカメラの件は予想できただろうが、

ホモビデオは無理だよな。

 

「違います、あれは私ではありません!」

 

デジタルカメラの件か、ホモビデオの件か?どっちのことを言ってるのかわからないぞ。

必死な形相で否定を繰り返す織口は滑稽でしかない。

 

「違います、違います!」

 

必死な形相で否定を繰り返す織口は滑稽でしかなかった。 それにしても、プチ整形でもしたか?ホモビデオから少し顔が変わっているな、無駄なことを。

その程度のことで俺様はごまかされんぞ。

 

「この会社のためを思い、昨年。探偵に依頼し本人であるということも確認済みです。

あきらめろ、織口。おまえはホモだ。気持ち悪い。」

 

 

俺様は優しい口調で織口へと死刑宣告を行った。泣きそうなうらめしそうな表情な織口を見ていると、俺様の心はすっとする。

だが、許しはしない。織口、今日をもっておまえはクビだ。

 

「会長、二つの件、いつでも証拠を出せます、いかがされますか。」

 

こいつの処分はどうするのだ、という問いを会長へ投げかける。にやにやした顔を隠すことはできなかった。俺様にあるまじき失敗だ。

 

「なるほど、ホモビデオにデジタルカメラか」

 

「そうです、会長、こいつはやばいやつなんです。どうしようもない、会社に置いておけば今後も問題を起こすでしょう。」

 

「・・・デジタルカメラの件は少し前に聞いた。後で顛末書を織口君には書いてもらうつもりだ。ホモビデオの件は、今の時代個人的趣向に関しては、自由であることが重んじられている。仮に自分に理解ができない、認められない。そういうことであったとしても、

広い心で受け入れることも大切だと私は思う。」

 

・・・?何を言っている。

会長の言葉が理解できない。

まるでお咎めなしだと言っているようなものじゃないか。

 

「それよりも今の君の発言の方が私からしたら大いに問題のあることだと私は思う。まず、デジタルカメラの件。知っていたのなら君に罪はなくても上司として、何らかの対応をしなければならない。先も言ったように織口君に顛末書を書かせるとかね、まあ、わざと壊したわけではないから本来書かなくてもいいとは思うがね。

隠していた、名乗りでなかった、流石にそれはどうかと思ったから、今回は書いてもらうつもりだけど。ああ、社長に報告して、新しい物を購入してもいいかと一声かけてもいいかもね。部下の面倒を見るのも上司の仕事だ。」

 

・・・?なぜ俺様がそんなことをしなくてはならない。織口は敵だぞ。

トドメをさせ、会長。

 

「そう、部下を支える。上司として極めて重要な仕事だと私は思っている。だが君はそうは思っていないみたいだね?」

 

「・・・そんな、滅相もないです」

 

なんだ、これは。俺様をなぜ咎めている?意味がわからない。

そいつはホモ野郎だ。目ん玉飛び出るだろ、常識的に考えて。

 

「ならば問おう。教育係をお願いしてしまったが、君の下に3年以上いた人物はいるか?」

 

「・・・いえ、おりません。全て、私の至らなさ故です」

 

俺様が、どうしてこんなことを言わなければならない・・・?糞が!あいつら全て屑だったからだろう!

 

「至らなさ故か、本当にそうだったら良かったのだがね、そうではなかったみたいだ。織口君、頼むよ。大丈夫、私は君の味方だ」

 

「ありがとうございます、会長。」

 

感極まった声で織口は答える。それとは対極。冷ややかに、俺様は織口を見下していた。さっきまで荒れ狂っていた心が嘘のように鎮まっていた。流石に分かるさ。俺様のクビは確定事項。公開処刑したかったんでしょう、会長。

 

「以前のあなたの部下。つまり、あなたがいじめて、辞めた職員に電話しました。僕は、彼らからあなたがしてきたことを聞いた」

 

たどたどしく、だが、目はしっかりと私を見て、織口は話す。

 

「あなたが僕にしてきたことがかわいくなるくらい、酷いことをやっていた。自分と違ってその方達は、暴言を吐かれても、ボイスレコーダーで録音したりはしなかった。泣き寝入りするしかなかった、自分を守るために辞めるしかなかった。ボイスレコーダー等を購入する気力すらなかったと仰っていた。だから証拠はないです。けど、全員があなたに強い怨みを持っている。」

 

途中から涙声になりながら、織口は話を続ける。正直なにを言っているのか分からない。ボイスレコーダーからなり続ける俺様の織口への罵声が、素敵すぎてうっとりしてしまっているのもあるが。

 

 「でも書面でみんな協力してくれました。あなたがやってきたことがここにまとめてあります。」

 

分厚い紙の束を俺様に押し付ける織口。いいご身分になったものだな。上司に物を渡すときは両手で持ち、しっかり頭を下げるように何度も言っただろうが。

 

「時間の無駄だな、互いにね。クビにしたいならそう一言言えばいい。そうは思いませんか会長。」

 

織口から渡された書類を目を向けず、そのままゴミ箱へと投げ捨てる。何の価値もないものになぜ俺様が目を向けねばならない。時間の無駄だ。

 

「・・・ふむ、一理あるかもしれない。だが、我々には説明責任というものがある。なんの説明もせず、明日から会社に来るな。ではあんまりだろう」

 

ゴミ箱に捨てられた書類を険しい顔で見ながら会長は話す。成程。演技も上手い。ひとつ勉強になりました。

 

「もっともらしい理由付けですな、あなたはただ楽しみたかっただけでは。」

 

聞こえてくるんだよ。

 

「・・・どういうことかね」

 

あんたの無駄に高い笑い声がはっきりと。

 

「公開処刑。会長、あなたは私。いや、俺様以上のゲスだ。故に心の奥底からね、尊敬していますよ」

 




織口

弱気な性格の人間。
だか、いざとなったら行動力がある。
主人公(田中)が上司でさえなければ、のびのびとできる仕事場であったのなら、
時間が過ぎるごとに何でもできる有能になっていく。 
遅咲きの花。









ほも
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