「・・・君にはがっかりだ。私は信じていた、君にも良心があるということを」
無念そうに会長は胸を押さえ、うつむきながら話す。その顔が僅かに笑みがあることを俺様は見逃すことはできなかった。
「会長、あなたはなにも悪くないです。すべてはこいつが悪い!」
豚はそんな会長を励ます。その行為にはなんの意味もない。会長は傷ついてなんかいない。 待ちに待った収穫の時期だ。心の中は笑顔で一杯だ。
「この豚が!思い上がったような口をこの俺様に吐くな!」
いいかげん我慢の限界なんだよ。茶番は他所でやれ。
「一体どれだけこの会社に貢献したと思っている。俺様を雇えただけでも、毎日感謝し、土に頭をこすりつけるべきだ。それが分からないか豚!特別に最後に授業をつけてやる、豚ぁぁっぁ!ちゃんと風呂入っているか?臭いんだよ、加齢臭で済む問題じゃない、貴様は限界を超えている。スメルハラスメントだ。ハッ、子供と奥さんに逃げられた一番の理由だと思うぞ。まあその子供もどうせ臭いんだろうが。なぜ貴様ごときの遺伝子を残したのか?「何だ「黙れ、豚ぁぁぁ!人が話している最中だぞ。子供が可哀そうだろう?子供に詫び続けろ。まあその子供も同級生に詫びなければならないがな。そうか!貴様も一緒にこの会社を辞めるべきだ。」
豚はまた、唖然。少しだけだがすっきりした。だがもう一人最後に言わなければならない猿以下の屑がいる。
「織口!!!!織口!織口!!貴様は許さん。絶対に許さん。神が許そうが、地獄の閻魔が許そうが俺様は絶対に許さない。貴様は地獄すら生ぬるい。この俺様が用意した格別たる場所で死後さばいてやる泣いて感謝するがいい!」
きちんと唾を吐きつけながら織口に叫ぶ。織口の嫌そうな表情が非常にツボである。
「じゃ!あばよ。退職金はたんまりいれておけよぉ!」
織口いじめがボイスレコーダーから鳴り響き続け、2時間。俺様の最後の授業は、残念ながら録音されたそれより短い。無念である。が致し方ない。退社の時が来た。
威風堂々。前へ前へ。
他職員が信じられないものを見たような目をし、俺様に驚き道を開ける。それを横目に見ながら今の自分の心理状況について整理する。
織口ごときにくびに追いやられた事実は思いの外、ショックだったのだろうか。
手が震えている。その事実を拒否するかのように、とてつもなく大きな音を出して扉を閉める。誰かの驚いた声が聞こえる。愉快痛快だ。
そしてついに玄関へと辿り着いた俺様。
周りを見渡す。
受付の有田さんと目があったがそらされる。
「・・・ふん」
気にくわない。まるで俺様が腫れ物のようではないか。まあ今さらどうでもいいか、あの人はあまり好きじゃなかった。
「ありがとうございました!」
会社を出て、深く一礼。感謝を忘れてはならないと祖母がいつも話していた。この会社になにか恩があるわけではない。世話になった人がいるわけでもない。逆にいつも迷惑をかけられて足を引っ張られた記憶しかない。そうだとしても、俺様が今まで働いてきた会社であることに違いない。この会社を軽く扱っては俺様の価値まで軽くなってしまう。
「いざ、さらば」
透き通る晴天の中、俺様は歩く。さて、これからどうしようか。
時間はたんまりある。
今まで頑張ってきたご褒美だ。
なにか豪勢なものでも買って帰ろう。
馴染みのスーパーにつき、食品売り場にたどり着く。ふと、馴染みの商品を癖で買いそうになるが、
それではダメだ、今日ばかりは奮発せねば。
「豪勢なものだぞ、俺様。」
しばらくの間歩き回る。自分は今一体何が食べたい?何が欲しい?
分からない。
頭がじんじんと痛み、あの会社のことを思い出す。頭の中から離れない。
「糞くそくそくそくそっ!」
思った以上にダメージは大きかった。深く深呼吸しても痛みは治まらない。
いつの間にか帰宅。
会社をでたのは午前だったといのに、気づいたら日が暮れていた。
昼食もとっていない、糞、織口のせいだ。あいつどう責任を取らせてやろう。
嫌、もうあいつのことなんて思い出すな、
時間の無駄だ。そうだろ、俺様。