皆困ってますよ、田中さん   作:佐藤京介

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後編3 織口でどきどき

あれから数年が経った。

月日が流れるのはあっという間だ。偶然織口を見かけたこともあった。あいつは、どうせ悪い事をまたしている。そう勘付いた俺様は、盗撮を開始。

だが不運にも豚に見つかり、警察を呼ばれそうにもなったが自慢の健脚で逃げ切った俺様はやはり偉大であった。

だが、そんな俺様にも完全でないところがあった。

そう、それは貯金。金だ!

有事に備え、それなりに貯金をしていた偉大な俺様。

羽振りが良く、とても優しく、困っている人を見捨てることができないのが欠点といえば欠点だった。

故に、今まさに貯金は尽きようとしていた。

 

けれど、問題はないはずだった。

今まで散々助けてきてやった、当然恩がある。

自分の番が来たのだ。助けてもらおう。

 

しかし、それにしても世間は異様であった。

俺様が今まで助けてきた者達に、今度は俺様が助けを求めると、皆素知らぬ顔をして立ち去っていく。許されることではない。

つまるところ、俺様以外皆屑。金をさっさと献上しろ、そう言っているだけだぞ、おい。

 

 

 

「・・・たのむ」

 

季節は夏。

にも関わらず黒色の毛糸の帽子を被った怪しい男に、声をかける。

ついでにぶっきらぼうに金を投げ渡す。天国へと到達するためなら、くだらない儀式を行うのも一興だろう。

 

「あいよ、それならこれだけだね。」

 

袋に入った白い粉の量は普段と比べてあまりに少ない。

 

「なんだと、ふざけるな倍以上あっただろうが」

 

冗談にしてはあまりに面白くない。足元を見られているのだろうか。

だとしたら許せることではない。確かに薬の売人はお前しかしらない。

だとしても、俺様は田中幸一朗。伝説の男。許されることではないぞ。

何よりこれでは、俺様は天国へ到達できない。

 

「こっちも色々あってね、値上がりさ。」

 

「貴様ぁ・・・、俺様を中毒者と判断し薬を値上げたな」

 

この俺様をこけにしたのだ奴は。貯金を崩した、他でもない俺様がだぞ。

それだけで感謝し地に伏せなければならぬというのに。この男は大罪を犯しすぎた。

裁かねばならぬ。

 

「それなりに長い付き合いだからね、多目にみるけど。はぁ、うちのバックがだれだか分かるだろう?」

 

「っ!糞、それでいいよこせ!」

 

糞。以前安くならないか軽く脅した際に、ケツモチのやくざに殴られたことを俺様は覚えている。あの時、土下座させられる状況になり、土下座してしまった。

それで事は収まったが、許さん、許さんぞ。

毛糸野郎!罰しなければならない、いつか必ず。

 

「・・・まいど、またお願いね」

 

毛糸野郎から薬をふんだくり、俺様は立ち去る。許せん許せん。罰しなければならない。

天国へと到達した俺様は無敵だ。

早速薬を使ったおれさまは振り返り、

 

「この野郎ぉ!」

 

「!?」

 

一発ぶん殴る。それはとても快感であり刺激的であった。今俺様は幸せに包まれている。

 

「貴様ぁ!ふざけているのか!」

 

毛糸野郎は激昂。しかしそんなの関係ない。無敵となったのだおれさまは。

 

「貴様という悪を罰する覚悟はできた、ただそれだけだ」

 

もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。

 

毛糸野郎の痙攣がはじまった。

こいつまだ動いている。

仕置きが足りてないぞ俺様。

 

もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。

 

動きがなくなった。

俺様に土下座しなくてはいけないだろう!

この屑野郎。

心から誠意をみせろ!

 

もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。

 

「きゃー!」

 

くそ、通行人か。おまえの罪もまた重い。いずれ裁かねばならぬが、取り合えず今はこいつだ。

最後にもう一発。

 

もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。

 

「きみ、やめたまえぇ!」

 

ヒーロー気取りの若者が俺様を押さえつけようとしてきたが、俺様は自慢の健脚で逃げ切る。

 

「待ちたまえっ!」

 

しかし、追い付かれそうだ。この俺様が?許せることではない。

すぐ振り返り、ヒーロー気取りの青年の顔を殴る。

 

「っ!?」

 

驚愕。顔が歪み歯がかける。いいザマだ。

俺様は再び逃走を開始すると見せかけて、一旦戻り、尻餅をついた青年の顔を思いっきり蹴る。

その様はまさしく伊達男。かっこよくなったな。

最高の男前だ思わず嫉妬してしまうぞ。

 

今度こそ俺様は逃走、いや明日へむかって走り出す。

 

 

 

しばらく走ると、学校か。

なつかしい、昔、俺様が通っていた

偉大なる母校。

 

小学校。今では廃校になってしまったが、それでもここには偉大なる俺様の歴史がつまっている。

 

俺様の家来その1伊藤昌磨。幼馴染みで同じマンションに住んでいるやつだった。俺様と比べれば平凡でしかなくどうしようもないやつで目をかけてやっていたややつだ。

俺様より先に彼女を作ったことがゆるせず、

放課後、内グッズに濡れた紙を大量に詰めた。

 

その次の日、学級会議になり1時限目の俺様の嫌いな国語がつぶれたのはいい思い出だ。

いや、そんなことはどでもいいか。

 

 

 

!?あれは、大地くんではないか?

我が親友の大地くん。

親が大金持ちで、ゲームをよく買ってもらっていた子だ。俺様が遊びに行くとよくゲームカセットを借りパクさせてもらっていた。

あのときの曖昧な笑顔が忘れられない。

 

自分目当てで遊びにきているのか、それともゲーム目的なのかわからない。そんな感情を俺様は受けたのだ。気にする出ない。当然ゲームよ。

他のやつは両方だったが、俺様はゲーム一択よ。実に都合のいい存在だった。

最高の親友だ。

 

だがなぜあそこに?大地くんは俺に気づくと階段を上がっていった。

許せない、俺様に会いにくるのが常識だろう、常識的に考えて。

 

追いかけなくては。この俺様を働かせる罪は重いぞ。後できっちり精算させてやる。

土下座、ゲーム、大量の金を持ってこい。そしたら許してやる。

第2の愛しい家来よ。

 

大地くんなら、この状況をどうにかしてくれる。大地くんが持っている物をつかえば、

なんでもできた少年時代を思い出す。

 

 

 

屋上へ、

雨が降っている。

俺様を汚す雨の事は許せないが、その時、身を震わす出来事があった。

 

貴様!

織口。なぜ、貴様が大地くんと一緒に。

まさか俺から大地君まで奪う気なのか!

 

「許さん、許さんぞ織口。」

 

大声で俺様は叫んだ。

その声に驚き、逃げ出す織口。

 

 

俺様は追いかける。

今の俺様は無敵だ。

なににも縛られないアンチェインとはこの俺様のことよ。

 

「いまから、説教だ、織口ぃぃ!」

 

ついに織口に追い付き、手をふりかざし助走をつけ、殴る。

念願のとき。俺様はこの時のために生まれてきた。

そう確信する。

貴様という悪を倒し、大地(都合のいいカモ)を頂戴する。

 

この手に宿るは太陽。

受けるがいい絶対悪。

貴様を焼き尽くす。

 

ところが、俺様は織口を通り抜ける。

 

「幻だと・・・」

 

空ぶった俺様はその勢いのまま、身体を止めることが出来ず、屋上から滑り落ちてしまう。

貴様ぁ織口ぃ!

 

「おりぐち、おりぐちおりぐちおりぐちぃぃいいぃぃぃぃうぉjぉjkぉぃぉk!ぁあlあslあ許さん倒す巣八つ裂きにしてやる神様がゆるしてもおれさまは永遠にお前を呪い尽くしてやる!そうしなければきさまが許されん。おれさまはおまえのためにやるのだ。mあ泣いて感謝しろm」

 

 




ぐちゃっという音が誰もいない寂れた校庭に鳴り響く。男の人生はこうして終わりを迎えた。

おわり。


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