ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話   作:Tentacle

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一難去ってまた一難


想定外

「貴様……何を考えている?」

 

 その男は、辛うじて怒りを抑えている様子だった。

 

「贖罪のつもりか?そんなことで許されるとでも?」

「ピッコロ、私は…」

「黙れ。聞きたくもない」

 此度の地球での戦闘で死んだ戦士達、その全てを界王様の元へ送りたいと言う地球の神の要望を承諾した。そしてその戦士達のうち、一人がそれを間髪入れずに拒否した。

「閻魔大王、とっとと俺を地獄に送れ。神と同じ空間になぞ、長々と居座りたくはない」

迷いなく地獄行きを口にする死者の目には諦観と覚悟、そしてわずかな罪悪感があった。

「…サイヤ人が再び地球にやってくるかもしれない、と言ってもお前は行きたくならないか?」

「なんだと!?」

「サイヤ人の片割れ、ベジータは生き延びた。回復した後に地球に戻ると言ってな」

「……トドメを刺さなかったのか、あの馬鹿は!!」

ライバルのことをよく理解しているだけあって察しが良い。正確にはトドメを刺そうとする仲間を止めたのだが、言う必要はないだろう。どっちであれ同じことだ。

「そもそも、お前を地獄に送ったところで大した罰は与えられん」

「…どう言う意味だ?」

「気づいておらんのか、お前だけが纏うその光に」

 怒りのあまり暴れられては面倒なので話題を変えた。案の定気づいてなかった彼はすぐに反応して自分の体を見下ろす。

「何だ、これは…?」

「星の魔女の『加護』だ」

クリーム色の薄い膜のような光が、彼の全身を覆っている。優しくほんのりと光るそれは、内外の目を潰すようなことはしない。

「星の魔女が大切に思う者に勝手につく、対象の魂を守るモノだ。思い入れが強ければ強いほど、加護はより強力なものとなる。お前の精神力とその強さの加護があれば、地獄の刑罰など無きに等しい」

驚きのあまりピッコロの口が仕事を放棄した。横で会話を見物している地球の神と他の戦士達も驚きを隠せていない。

「私としてはあまり無駄なことはしたくない……もっとも、お前以上の加護を与えられた男は他に当てがなくて送ってしまったがな」

「っ、まさか…!」

「今まで見た星の魔女の加護の中でも桁外れに強力だったな、アレは。界王神様でもそうそう苦痛を与えられまい」

その言葉に地球の神が誰よりも敏感に反応した。まだ信じられない…いや、信じたくないのだろう。

 一方ピッコロは一瞬も疑わずにそれを受け入れ、俯いている。与えたばかりの生身の肉体が微かに震え、握り締めた拳から僅かな血が滴り落ちている。

「さあ、どうする?」

 

 その姿は、何年も前に私の前に来たあの大罪人と、痛々しいほど似ていた。

 

 

 

***

 

 

 

「な〜〜〜んであんなこと言うかな私〜〜〜〜〜!?」

 すっかり元通りになった家のリビングのテーブルで頭を抱える。戦いから丸二日が経過し、最低限の地球修復を終えた私は絶賛自己嫌悪中だった。

「チチさん何にも悪くないのに何言ってんの私…絶対凹むでしょあんなの…アホちゃう…?」

 ナッパの一撃からマジュニアと悟飯くんを守るどころか、ナッパを殺し切る事すらできなかったあの時の私は、悪天候を発生させないことにばかり気を取られていた。冷静にちゃちゃっと済ませてしまえば余計な会話をすることもないだろうと、甘い考えを持って行動していた。私のような存在を、チチさんが放っておくわけがないのに。

「あの後原作通り悟飯くんがチチさんに怒鳴るわけじゃん…?地獄じゃん…?」

チチさんは一人の母親として、一人の妻として、一人の人間として普通に怒っていただけだ。私相手に罪悪感を感じる必要は全くない。事実、私は二人を止められなかったのだから。

「もうやだ……死にたくても死ねないし…おいてかれるし……なんで生きてるの私……」

 せめて、せめてこのクソみたいな縛りがなければと見えない鎖を睨む。あの時も邪魔された。マジュニアを救うなと、ナッパを殺すなと、全て筋書き通りにしろと。どっぱどぱアドレナリンが出ていただろうに、そんなの関係ないと言わんばかりに痛みは襲いかかってきた。ベジータがナッパを殺さないといけない理由が全く思い浮かばないせいで余計に腹立たしい。世界そのものも極力原作から離れない仕様になっているらしく、私の存在が周囲にどんな影響を与えようと展開自体に大きな変化はない。本当になんで生きてるんだ私。

「…………これから、どうしよ…」

 ナメック星への同行は不可能だ。契約した星から全く離れられないわけじゃない。単純に力不足なのだ、私が。十分に力を持っている星の魔女であれば宇宙の反対側にいても問題なく接続を維持できるが、私みたいに力が弱いと距離が離れた分だけ接続が不安定になって最悪切れてしまう。暗黒魔界に行った時みたいに体を残して幽体離脱するという方法はあるけれど、そうなるとほとんど何もできなくなるので意味がない。

「フリーザ編ノータッチってなると……人造人間編に備える?いや、なんかアニメ沿いっぽいところもあるみたいだし、先にガーリックJr.?劇場版は時系列が無茶苦茶なやつばっかりだから、大体は無視して大丈夫だろうけど…」

 

 埒が明かないので今後のことに思考を向け始めた時、家を建て直したと同時に貼り直した結界によく知っている気が入り込んだ。遠くから私を呼ぶ幼い声が聞こえる。

「…マジかあの子」

たったの二日しか経っていないのにと再び頭を抱える。一瞬隠れてやり過ごそうかと思ったが、悟飯くんは意外と頑固だ。今日がダメなら明日、明日もダメならそのまた次にやってきて、それでもダメなら生き返ったマジュニアをも巻き込んででもリベンジしかねない。海より深いため息を吐きながら諦め、大人しく家の外に出た。

「ムギさん!」

「はい、こんにちは悟飯くん。ちゃんと休めた?」

努めていつも通りに対応する。この子はもう、十分通り越して精神科通いしてもおかしくないくらい傷ついているはずだ。余計な心配をかけるわけにはいかない。

「…はい!それで、あの……お願いが、あって…」

「お願い?」

このタイミングでお願いとなると、ナメック星へ向かうことに関するものだろうか。同行は無理だけど、それ以外であれば何かしらのサポートはできるかもしれない。言いづらそうにしてるのは私の精神状態を心配してだろうか。

「あの」

「うん」

「…………あの!お母さんに会ってくれませんか!?」

 

 

「…なんて?」

 

 

 なんて?




この頃は本当に息つく間もない
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