ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話 作:Tentacle
もしもピッコロがムギ以外の人間と早い段階で関わっていたら、のIF話です。
まさかこのシリーズがここまで多くの人に読んでもらえると思っていませんでした。本当にありがとうございます。
pixivに追いつきそうなことと、リアルが多忙になる為、一旦ここで更新を停止します。
リアルが落ち着いて、ある程度書き進めた後にまた更新を再開します。
「ちなみに、人間とかを味方に引き込んで鍛えるのは?」
その案を聞いた時、自分の全身が強張るのを感じた。人間に良い思い出などない、ムギ以外は。ムギだけが例外で、他の人間に何かを期待する気持ちは無いに等しかった。
「無理?」
ああでも、彼女も確かに人間なのだ。彼女も確かに、人間から生まれ、人間の手で育ち、人間として生きてきた命なのだ。樹海の外にいる連中は、紛れもなく彼女の同胞なのだ。
自分の生命に関わることでも無い限り、ムギがあまり無理強いしないのはわかっていた。可能性があるのならいくらでも待ってくれるであろうこともわかっていた。希望さえ見えていればいくらでも甘やかしてくれる馬鹿だと、誰よりもわかっていた。
だから、変わろうと思った。
自分から一歩踏み出そうと、抵抗感を噛み殺した。
*
「あの時、どんな手を使ってでもお前を封印しなかったのはわたしの失敗だった…あれほどのお方がわざわざこの星に降りてきてまで何を阻止したのかはわからないが、それをお前が台無しにするのを許してはいけないということは確かだ!」
絶望の縁にいた。ムギさえいれば他は何もいらないと思っていた世界で、そのたった一人すら奪われて、挙句に覚えのないことで責め立てられた。
「その水晶から離れろ、ピッコロ!!」
本当に、限界寸前だった。
「おい!本当にこっちなんだろうな、亀!?」
「間違いないって鶴ちゃん!」
その時聞こえてきた声に、ふっと肩の力が抜けた。そして、そうなった自分に腹が立った。
「ピッコロ〜〜〜〜〜!ピッコロ師匠〜〜〜〜〜〜!ピッコロ師匠様々〜〜〜〜〜〜!」
「殺されたいのかお前は!?貴様の巻き添えを食うなんてごめんだぞ私は!」
「この際反応してくれりゃなんでも良い!あんなわけわからんくらいでかい気が来て!あいつの気が乱れまくって!あげくになんかよく似てる気まで出て来て!もう無事なら万々歳だろ!!」
探ってみれば焦りを隠しきれない二人の気を追うように、少し大きめの比較的落ち着いている気が近づいている。どうやら三人ともこちらに向かっているらしい。それも、他でもない自分のことを気にして。
急速に頭の中が冷めていくのがわかる。そうだ、冷静にならなければならない。眼前の馬鹿を相手にしている暇はないと自分で思ったじゃないか。向こうが自分と同じく声を聞いて混乱しているうちに落ち着け。
「見えた!ピッコロさ……うわなんじゃこりゃあ!?」
ボロボロの腕が何本も転がっている地面に気づき、亀のやつが騒ぐ。ワンテンポ遅れてやってきた鶴は腕を見た後すぐに神を見て、声も出ないくらい混乱している。
「お、お前達は…?」
そして、神もまた混乱していた。当然だろう。こいつらとの交流はムギのおかげで一切知られていないのだから。
「ピッコロさん、一体何が…?ムギさんはなんで水晶に…?」
「…今更敬語を使っても遅いわ、たわけ。しっかり聞こえている」
「うげ!?」
とりあえずいつも通り亀にアイアンクローをしてやれば、ギャーギャー騒ぎながらジタバタ暴れる。少し落ち着いた鶴はそれを眺めながら事情の説明を求めて来た。
「本当に何があったんですか?そしてあちらの方は一体…?」
「ムギが水晶に封印された理由は私にもよくわからん。そこにいる私と同じ姿のやつは地球の神、ムギの結界が解かれたから余計な茶々を入れに来ただけだろう」
「ち、地球の神…!?」
やつの方を見れば追いついた武泰斗と話をしていた。面倒な状況把握を向こうで済ませてくれているらしい。楽でありがたい。
「ピッコロ殿」
そう思っていたら武泰斗から声をかけられた。
「なんだ?」
「…嫌かも知れないが、何が起きたのか詳細を聞かせてほしい」
ムギの勧めがなければ決して関わらない連中だった。人間を鍛えるなんて、それこそもっと後でも問題ないと思っていた。ムギ以外の人間の助けなど、必要ないならわざわざ手を伸ばすほどのものではないと思っていた。
だが。
だが、今この瞬間。
初めて、その存在を、感謝した。
*
ピシリと何かにヒビが入る音がしたかと思ったら、突然幽体離脱状態の自分が引っ張られるような感覚がした。何事だと状況を確認する前にどんどん魔法の図書館が離れていって、気づいたら自分の肉体の中に戻っていた。自分の周りで何かが壊れて崩れていく音と感覚がして、期待に胸が高鳴る。
長い間離れていた体の操作がイマイチわからなくて、解放されてもうまく動かせなくてよろめく。わずかな危機感は覚えのある腕の感触であっさりかき消された。
「ムギ」
瞼の動かし方を思い出して、瞬きしながら目を開く。そこにあったのは、願ってもやまない私の旦那様の顔で。かすれた声で呼び返せば、心底安心したような顔をされて。縋り付くように首に腕を回したら、彼もしっかり抱きしめ返してくれた。
「ぴっころ……ぴっころぉ…!」
「…遅くなって、すまなかった」
他の人の気配がしたのでその体勢のまま辺りをみれば、なんだか知っているような顔の人達が何人かいた。
「ムギさん、おはようございます」
「おかえりなさい、ムギさん」
「ムギ様っ…よくぞ、よくぞご無事で…!」
「ムギ殿、ご気分はいかがかな?」
声を聞いて誰なのか気づいて、過ぎ去った年月の長さにも気づく。とても、とても長い間だったけれど、まだ間に合う。今からいくらでもこの星を変えられるタイミングで、私は帰ってこれた。
「…ただいま、みんな」
さあ、この世界を救いにいこう。
大好きな貴方ごと、世界を救いにいこう。
最後のムギ解放の際は、武泰斗様と亀・鶴仙人が協力し、占いババが立ち会いました。
神は表立って反対するちゃんとした理由がなくて、納得いかないならがも神殿から見守りモード。
どうしても先を早く読みたい方はpixivの方へどうぞ。
今後も基本はpixiv更新→ハーメルンで加筆修正更新というスタンスで行く予定です。