ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話   作:Tentacle

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見えない明日を照らすのさ


君が希望

 迫るフリーザとコルド大王の気の大きさを把握した私は、他の皆とは違う絶望を感じていた。

 

「いや、強すぎでしょ…」

 

あのクソ神、やっぱり超サイヤ人どころじゃなかった。なんとなく察してはいたけれど、こうして確信させられると精神的にかなりクる。そりゃあ界王神と同じ格好してりゃそれくらいの強さあって当然ですよねチクショウ。

 ボソリと呟いたコメントはフリーザ達に向けられたものだと勘違いされ、その場にいる誰かに同意された。まあ、今の私にとってはフリーザもバグってるレベルで強いから否定はしない。別の存在に向けたコメントだとバレたところで説明のしようがないし。

「…とりあえず、私は後方支援に努めるよ。なんとか悟空が来るまで持ち堪えないと」

「ご、悟空!?悟空もこっちに向かってるのか!?」

「うん、多分皆でもわかると思う。フリーザ達が目立っててわかりづらいだけだから」

それを聞いて気を探ったブルマさん以外の皆の目に光が灯る。とりあえずこれで士気は多少上がるはずだ。

 現時点では、ここが原作の時間軸であるという保証はない。未来から来たトランクスの時間軸だった場合、ここから一気にウルトラハードモードになる。原作本軸だろうと思って行動してきたけれど、違った場合はもうほぼほぼ詰みだろう。可能な限り悟飯くんとトランクスとブルマさんを助力して、死んでピッコロに会いに行く覚悟をするしかない。あんなしんどい現実はまっぴらごめんだけれど、縛りがある以上私にできることは限られている。

 違ってくれと祈りながらフリーザ達の船からわらわら兵士が降りるのを見守っていたら、見間違えようのない紫色の髪を見つけた。

 

 皆の、そして私の、晴天のように眩しい希望を。

 

 

***

 

 

 母さんから聞いた話でしか知らない人達を見渡す中、一人だけ全く心当たりのない女の人がいた。悟空さんに並ぶ身長、長い黒髪、ころんと丸く黄色い目、尖った耳、ムギという名前。悟飯さんのお母さんが長い黒髪だったと聞いているけど、それ以外は全く一致していないから違うだろう。

 悟空さんに自分の正体を明かした後、流れで彼女について聞いてみた。

「あの…一つ確認してもいいでしょうか?」

「おう、なんだ?」

「皆さんと一緒にいるムギさん、でしたか…あの人は誰ですか?」

「え?知らねえんか?ピッコロの母ちゃんなのに?」

「ピッ、ピッコロさんのですか!?」

ナメック星人なのに何故と思わず問い詰めてしまったら、悟空さんは俺に気圧されながら説明してくれた。曰くピッコロさんの親、すなわちピッコロ大魔王の妻なだけで血は繋がっていないのだとか。

「ブルマはともかく、悟飯から聞いてねえのは変だな…」

「は、初耳です…そ、そんな事情が…」

念の為に悟空さんと歴史をざっくり辿ってみたものの、ムギさんの存在以外は俺が知っている通りの流れだった。星の魔女なんて存在も知らなかった。未来予知ができる魔女のような格好のお婆さんの話なら聞いたことがあったけれど、どう考えても別人のことだろう。

「何故こんな違いが発生したかはわかりませんが…傾向からして、人造人間が来るのは変わらないと思います」

「ああ、修行はみっちりしておく。けど…案外ムギのおかげで良い方向に変わることがあるかもな!」

太陽のような明るい笑顔に、混乱していた俺も釣られて笑う。確かにそんな可能性もありえる。期待しすぎるのは良くないだろうけれど、悟空さんがこれだけ信頼している人ならきっと何かしら力になってくれるはずだ。

 

 帰ったら母さんにムギさんのことを話さないとなと考えながらタイムマシンへと戻っていたら、後ろから何かが近づいてきた。

「そこのお兄さーん!ちょっとお話いいー!?」

件の人物が随分とフレンドリーな様子で俺を呼ぶ。悟空さんの説明はざっくりしていたし、直接話を聞いておいた方がいいかもしれないと思って中空で止まった。

「えっと、ムギさんでしたよね?僕に何か?」

「うん。えっとね、まずはもうちょっと気をつけた方がいいよって話。私はイレギュラーだからともかく、ナメック星人ならあの距離でもまるっと全部聞こえるよ」

「えっ?……あっ」

ピッコロさんは耳が良いと悟飯さんが言っていたことを今更思い出す。

「まあ、今回は悟空より説明上手なうちの子が聞いてたのが良い方向に転がったけど…今後は気をつけようね」

「は、はい…」

皆に会えて浮かれていたとはいえ、なんてミスだ。ピッコロさんじゃなかったらとんでもないことになっていたかもしれない。

「次に私のことなんだけど…トランクスは何も聞いてないんだね?悟飯くんからも、ブルマさんからも」

「はい。あの、本当にピッコロさんの…?」

「義理だけどね、望まれたから母って称号背負ってるよ」

目を細めて柔らかく笑う姿は愛おしげで、心からピッコロさんを大切にしているのがそれだけで十分すぎるほど伝わってくる。悟飯さんからも聞いていないことに悟空さんが驚くのも、なんとなくだけどわかる。

 「で、この場合考えられるのは、一:私が誰にも出会わず引きこもりっぱなし、二:誰かに会う前に死んでるもしくは封印されてる、そして…三:そもそも最初から存在していない、このどれかだと思う」

「封印、ですか?」

「一回封印されたことがあってね、そっちは時期が早かった可能性もあるかなと」

「なるほど…」

「まあ、私は三だと思ってるけどね。私、ちょっと色々と特殊だし」

「特殊、ですか」

どう特殊なのか気になるけど、おそらく話したら長くなるのだろう。彼女はそれ以上言わなかった。

「とりあえず、向こうに戻ったらボーロ樹海ってところ調べてもらえる?私がいるとしたらそこが最有力候補だろうから」

「ボーロ樹海ですね、わかりました。他に可能性がありそうな場所に心当たりは?」

「強いて言うなら自然豊かで、人間の手がほとんどつけられてない土地かな。調べるならちょっと時代遡った方がいいかも」

私三百歳超えだしと付け加えるムギさんを思わず二度見する。とてもそうには見えない。星の魔女だからだろうか。気になることが多すぎる。次来る時までに質問を整理しておこう。

「とりあえず今はこんなものかな?次来た時に話せそうならもっと詳しく説明するよ。あんまり引き止めたくないし」

そう言うとムギさんの隣に突然正体不明の穴が開いた。俺が驚いているのを気にもしないで彼女がその中に手を突っ込むと、探るような動きをした後に麻袋のようなものを引っ張り出した。

「これ、中に食糧が入ってるからあげる」

「え?」

「その中に入れれば、生の食べ物でも悪くなったりしないで新鮮なまま保存できるよ。破れたりとかしない限りずっと使えるから、よかったら使って」

押し付けるように渡されたそれの紐を解いて開けると、どう見ても外観と合わない収容スペースいっぱいに食べ物が詰め込まれていた。

「い、いいんですか…?こんな良いものをもらってしまって…」

「そんなものしか渡せなくて申し訳ないくらいだよ。もっと便利なものも一緒に渡せたらよかったんだろうけど、いまいち思いつかなくて」

しっかり紐を結び直して両手で麻袋を持つ。チラリと赤いものが見えた気がしたけれど、母さんの大好きな苺だろうか。そうなら嬉しい。

「トランクス」

呼ばれて顔を上げれば、青空がよく似合う満面の笑みがそこにあった。

 

「希望を届けてくれて、ありがとう」

 

薬と情報を持ってきただけなのに、まるで世界を救ったかのような口ぶりだった。

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