ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話 作:Tentacle
こちらは本編ではなく、以前書いたIFストーリーの続きになります。
Pixivでの最新話に追いついてしまった為、ここでまた更新を一旦停止します。次はいつになるかはっきりしたことは言えませんが、今回よりは早く戻ってくることを目標に書き進めていきたいと思っています。
気長にお付き合いいただけると幸いです。本当にありがとうございました!
人間との交流を始めてもいいと、彼が苦虫を潰したかのような顔で言った時は驚いた。正直、早くても数年後だと思っていた。それがどう言うわけか近日中にスタートする方向に行って、本当に良いのかと思わず何度も確認してしまった。 まるで死地に向かうような顔をされたらそりゃあ心配にもなる。
「…必要なことだと、お前は思っているのだろう?」
言外に未来への備えとして必要だからやるのだと伝えられて、そうなると私も提案した側なのもあって反対できなくて。
数日後には未来の占いババを交えて話し合いをしていた。
*
封印されて救出を待つ間、私はやっぱり心配だった。あの武泰斗様に加えて未来の亀鶴仙人を含めたお弟子さん達、そして未来の占いババがいるとはいえ、ピッコロが私の不在中暴走しない保証はなかった。
だから、自分に言い聞かせて信じた果てに期待に応えてくれた皆の姿を見た時、嬉しくて嬉しくてただいまと言った後はしばらくまともに言葉が出てこなかった。
「よかっ…ほんとに、よがっ…!」
「…ベソかきめ。封印されてただでさえ減っている体力を余計に使うな」
ピッコロに抱えられたまま、出してもらったタオルに顔を埋める。なんか前よりふわふわ度が上がってる気がする。少し落ち着いて涙を綺麗に拭った後、正真正銘の占いババになった彼女から水を受け取って喉を潤す。聞けばあれから百年ほど経っているらしい。
「そんなに封印硬かった?」
「そ、れもあるが…」
素朴な疑問を投げかけると、珍しく言葉を濁された。自分の心情に関するもの以外ではスパッと答えてくれるのに、どうしたことか。首を傾げていたらすでに頭が眩しいことになっている亀仙人が笑った。
「ぷぷっ…見せてあげた方がわかりやすいのではありませんかな、ピッコロ
「そのわざとらしい呼び方はやめんか!」
どうやら二人の関係性はさほど変わっていないようだけれど、何を見せるつもりだろうか。
見せた方が早いのは本当らしく、ピッコロは私を抱えたまま宙に浮いた。彼に先導される形で他四人もついてくる。少なくとも樹海は昔と変わらない様子だ。本当になんなんだとキョロキョロしていたら、樹海のすぐ外の村があるはずの場所が何かおかしかった。
「ん?……んんんんん!?」
おかしい。あの村はせいぜい百人規模の、のどかで静かで小さな集落だったはずだ。それなのに何故、やたら広くなって大きな建物がたくさんあるのか。
あれは集合住宅?商店街みたいなのが見えるのは気のせい?道を歩いている人達は見える範囲だけでも数千、いや数万人いそうな感じですが?なんか公園っぽいのもあるんですが?あのマークはもしかしなくても病院ですか?なんか武装したモンスタータイプの地球人が暴れることなくうろうろしてるんですが?中心部に見えるなんかでっかい宮殿一歩手前の邸宅は何?
「ぴ…ぴっころさん?」
ぎぎぎと音がしそうなくらいゆっくりした動きで旦那様の顔を見ると、ものすごく居心地悪そうな顔をしていた。
「…あそこはもう、辺境の村ヨーカンではない。オルケストラ王国の首都リードに生まれ変わった」
「しゅ、しゅと?おるけすとらおうこく?」
街の上空を飛ぶ私達に手を振る人達がたくさんいる。よくよく見たら拝んでる人とか泣いてる人とかもいる。ピッコロを讃える万歳三唱もあちこちから聞こえてくる。
「ここは私の国、『ピッコロ大魔王』が治める国…起き抜けの頭には大きすぎる負荷だと承知で言うが」
「お前はこの星の四分の一を支配する王の妃になった」
大変情けないことに、私はこの直後気絶した。
*
私が目を覚ましたのは四時間後。ベッドのすぐ側で目が覚めるのをずっと待っていてくれたピッコロの手には、書類が挟まっているバインダーとペン。すぐ側の棚の上には大量の書類が鎮座している。
「…ワーカーホリック、良くない」
「仕方なかろう。急速に成長している国の王なぞ、多忙で当然だ」
封印されている百年の間に色々あったらしく、ヨーカンや近隣の村を助けたりなんたりしていたらいつの間にか支配者になっていたそうな。なんでさ。え?自分でもわからない?そっかぁ。
「今は富国強兵をモットーに来たる未来への備えをしている状態だ。今の状況はお前の知る歴史と違うか?」
まあでも、いざ王座に放り込まれたら真面目に仕事しそうなタイプではある。本当に過労には気をつけてほしい。
「私の知識が一部当てにならないレベルの改変起きてる」
言葉を選びながらそう答えると、ピッコロが小さなため息を漏らした。
「一部、か……となると、問題はやはり地球外か?」
大きく目を見開いて驚いていると、簡単な推理だと彼は説明してくれた。
彼は自分のルーツに関して穴だらけの記憶を辿りながらどうにかこうにか調べて、とりあえず宇宙人であることまではなんとか把握した。そしてそこから、人間ではまず敵わない彼に関する未来で不安を感じている私が、地球外の何かを恐れているのではないかと考えたらしい。
「えっと…とりあえず、対策の方向性は正しいよ」
「大筋としては問題ない、といったところか」
私の一番の不安は彼自身にあるけれど、そこ以外の問題は百点満点花丸一等賞だと思う。このまま放っておくとフリーザに目をつけられかねないから、回復後に何かしらの誤魔化しを私がしておかないといけないだろうけど。でも、それくらいだ。地球全体の底力が上がるのは、今後のトラブル対応において間違いなくプラスに働く。強いて言うならレッドリボン軍もといドクター・ゲロが心配だけれど、その辺はまだやりようがある。
まさかこんな形でピッコロが『大魔王』になるとは思いもしなかった。このままいけば『孫悟空がピッコロ大魔王と戦う』原作を、だいぶアクロバティックな形でなぞることはできるだろう。途中人やら神龍やらが殺されたりという展開は消えるかもしれないが、悟空のパワーアップ自体は彼の性格的に少々緩やかになるだけで済む。クリリンの死が回避されたとしても、一回目で十分キレ散らかしているので超サイヤ人への布石が消える心配もあまりしなくていいはずだ。心配することがあるとしたら、ドラゴンボールの願いで王になったという人物くらいだろうか。まあ、世界征服には至っていないからそこもなんとかなりそうだけれど。
「聞いた限りの現状から、お前ができるアドバイスはあるか?」
思わぬ方向へと進み始めているこの世界について考えを巡らせていたら、自信なさげな声でそう聞かれた。きっと、彼にとってもかなり不安な状況なのだろう。地球の王様になるなんて、それこそ復讐の手段以外の理由で考えもしなかっただろう。私の意見があったとは言え、ここまで来るなんて思いもしなかったに違いない。
ああ、でも。いや、だからこそ。彼の現状が、心から嬉しかった。
「…良い王様でいて。 農業とか天災とかは私がどうとでもできるし、愚痴とかそういうのも聞くし、できることはなんでもするから……だから…だから、ほんの少しでいいから、人間を信じて」
無理に愛さなくていい。怒っていい。イラついていい。ただ、憎悪を理不尽に彼らにぶつけないようにしてくれればいい。国を作って、治めて、成長させる理由が、民の為なんて綺麗事は言わなくていい。この国を、星を守る理由が、私だけであってもいい。
「いつか…いつか、私以外の人間も信じて良かったって思える日が、絶対来るから」
いつか来る孫悟空という男を、彼が作る仲間を、繋がりを信じられるような人になってくれさえすればいい。私という例外だけで終わらない信頼を持てるようになってくれれば、それだけで━━━。
「…………それなら、もう、来ている」
その小さな声が、視線を合わせようとしないで明後日の方を向いている顔が、少し垂れ下がった耳が、止まった手が。彼の言動全てが、 その言葉が本当であるとひしひしと伝えてきて。
私は、文句を言われながらも、彼にひっついてギャンギャン泣いた。
*
「良いこともあったぞ」
「何?」
「
「うわめっちゃ見たい」
ざまあみろ、神様。うちの素敵な旦那様は、最高に強くてかっこいいぞ。