ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話 作:Tentacle
くらい
さむい
さびしい
ぴっころ
ぴっころ
ぴっころ
ぴっころ
ぴっころ
ぴっころ
ごめんなさい
*
突然、視界が開けた。
慌てて周囲を確認すると、明かりの少ない古い図書館のような場所にいた。
「…………え?」
私は封印されていたはずで、その封印が解かれたのならあの場に今いるはずで、封印を解いた誰がもいるはずだ。それなのに、自分以外誰も見当たらない、見覚えのない空間にいる。
「なんで…」
もっと辺りを探ってみようと動こうとしたその時、自分の手が目に入った。
青白く、透けて向こう側が見える、自分の手が。
「ひっ!?」
思わず飛び退いた体が、そのまま本棚を突き抜けて反対側に出る。たった今起きたことを否定したくて自分の体を見下ろせば、手と同じく透けていた。
ぶわっと、恐怖で全身を包まれていくような感覚に声が出なくなる。震えることすらできなくて、もしやまさかそんなと最悪の想定ばかりで頭がいっぱいになる。
否定しなくては。
そうだ、否定しなくては。そんな簡単に、あんな形で終わるはずがない。殺さないって言ってたじゃないか。何か、何かあるはずだ。
嫌な考えを強引に振り払って、考える。私は何も覚えていないから、記憶以外の方法で自分が死んでいないことを証明しないといけない。死とはなんだ?この世界における死の定義はなんだ?思い出せ散々触ったジャンルなんだから…!
「………あっ!体!」
これがただの幽体離脱とかだった場合、体と魂の繋がりは切れていない。死んでいても肉体と繋がっているケースはあるが、あれは切れた後に再接続して初めて成立する特例だ。
深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。体がないくせにこれで落ち着くのはなんだか理屈がおかしい気がしたものの、効果があればなんでもいいのでその疑問は無視した。
静かに、集中して、繋がりを探す。自分から出ている『糸』を、どこかで切れていたりしないことを祈りながら、切れそうになっているところがないかも確認しながら、ゆっくり辿っていく。
そして、いくらか時間が経った後、私の口から安堵のため息が漏れた。
「よかった…地球との接続も切れてない…」
かなり遠く離れてしまっているものの、接続は良好。肉体にも特に影響は出ていないらしく、戻ろうと思えばそれもできそうだ。ひとまず一番の心配事が消えたので、次は自分の周囲のことを考えた。
ぐるっと辺りを見て回ったり通り抜けたりしてみたものの、見つかるのは本がぎっしり詰まった本棚と勉強できそうな机とテーブルだけ。人はおろか虫やカビすらいない、生き物の気配が全くしない図書館だ。
「あんまり埃もないし…誰かが定期的に掃除してる?」
戻る前に誰かに会える可能性は如何程か。とりあえず物に触れることは可能だとわかったので、適当に一冊本を引っ張り出して少し読んでみた。
「…これ、魔術書じゃん」
まさかといろんな本棚からランダムに本を取って目を通す。どの本も、魔術や魔法に関するモノばかりだった。ジャンル問わず、幅広く、それでいてそれぞれ詳しい。
「魔法の、図書館…」
そう言うことなら、色々と納得がいく。おそらくこの空間そのものに何らかの魔法・魔術がかけられていて、それでこの膨大な量の本を綺麗に保管しているのであればあまり汚れていないのも当然。本そのものは使い込まれた痕があるから、ここが全く使われていないと言うことはなさそうだ。
「ここなら、見つかるかもしれない…!」
自力ではどうにもならなかった封印を内側から壊す方法だけじゃない。ピッコロと神の魂のつながりを断ち切る方法だって、超サイヤ人より強い疑惑が出てるあのクソ界王神もどきを倒すヒントだって、ここにある本のどれかに書いてあるかもしれない。
どうして急に魂をここに飛ばされたのかはわからない。地球から離れた遠い場所にあること以外で、ここがどこなのかもよくわからない。わからないことばかりだけれど、それもここの本を読んでいるうちにわかるかもしれない。星の魔女に関するあれやこれやも、ここで答えを見つけることができるかもしれない。
心の底からかつてないほどやる気が溢れてくる。状況は最悪だけど、それを挽回するチャンスがここにある。
「…っと、ピッコロに知らせとかないと」
外で同じく彼が足掻いているのは感じ取れていた。最初はずっと側にいたけれど、方法を探しているのか、はたまた修行しているのか、今は不在なことが多い。そして、どうやら私の状態もなんとなくながらわかるらしい。不在から帰ってきた彼が魂のない抜け殻状態の私の体に気づこうもんなら、それはもうパニックになるだろう。大丈夫だと知らせておかないとまずい。
彼の感度では複雑なメッセージは無理だろうと推測して、シンプルかつ感情を込めた伝言を体にこめる。彼が私の体の近くで激しく心が乱れれば流石にわかるので、最悪彼が様子を見に来た時に戻って説明すればいい。
「さて、と……まーずはここの端っこを探すかぁ」
早いうちに速読能力も身につけないといけない。
今までで一番の忙しさになるなと自分を急かしながら、スタート地点の捜索を始めた。
主人公はGTまでしか知りません。