ピッコロ大魔王をご都合主義全開で救う話   作:Tentacle

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思わぬタイミングで、思わぬ方に遭遇。


遭遇

 

 「━━━千年ぶり、か?まだ存在していたとはな」

 

 思わず漏れた感想でようやく他者の存在に気づいたらしい。びくりと反応して振り向いたその魂は見るからに幼く、そして未熟だった。

「………もしかしなくてもダーブラ様でございますでしょうか?」

「ほう、暗黒魔界に関して全くの無知ではなさそうだ」

肉体がないにもかかわらず血の気が引いた顔をするとは、器用なことだと薄く笑う。緊張のあまり敬語がおかしく、余計に笑いを誘われる。

「そう怯えるな。ここは全ての星の魔女がいつかは通る通過点…もちろん、ここに来る前に死ななければの話だが」

「そ、そうなんですか…?」

まだ来たばかりなのか、ここの詳細を知らないらしい。せっかくなので暇つぶしにと最低限の知識を入れ込むことにした。

 

 「もう察しているだろうが、ここはありとあらゆる魔術・魔法の書物を内蔵する巨大図書館。これ以上の大きさの図書館は存在するだろうが…魔に通じる者にとって、ここ以上に重要な場所はない。何しろ、神々ですら容易に攻め入ることのできない暗黒魔界にある。外では見ることも叶わぬ書物が数多く守られているのだ」

「……暗黒魔界だったんですね、ここ」

なるほどと納得する様子から紛れもないひよっこの星の魔女だと疑いようがなくなった。

「さては迷い込んだクチか、おそらくは最後の星の魔女よ」

「はい。気づいたこの状態だったので最初は死んだのかと」

「ふむ、惜しいことをした。さぞや見ものだったろうに」

 意外にも、彼女はあまり不快そうな反応をしなかった。むしろわたしという在り方を理解したかのような、諦めのような表情を見せた。よくよく目の前の魂を観察すると、無知な割には『魔』の気配を強く纏っている。同時に酷く目障りなモノもそこにあると気づいた。

「…魔族の師を持ったか?」

「いえ。高齢なのを除けば普通の人間だったかと」

「無知の原因はそこか。貴様に纏わりつく『魔』はどこから来ている?」

「へ?」

「相当執着心の強い魔族に囲われでもしたか?」

であれば『縛り』の方もなんとなく理由を推測できるのだがと言う前に、彼女は面白いくらい朱に染まった。

「……お…夫、が…魔界と縁の薄い、魔族、でして…」

 

 夫。

 

 魔族の、夫。

 

言葉の意味を理解した瞬間、腹を抱えて笑ってしまった。魔族が人間とそういう契約を交わすこと自体は珍しくない。だが、この魔女の反応からして事務的なものではないのだろう。

「魔族と同盟を築く星の魔女は多くいたが…も、物好きがいたものだ」

「ほっといてください!」

「だとすればその『縛り』は横恋慕の結果か?その若さでそれほどの代物を神族がつけるとなれば相当だ」

 

 瞬間、魂だけなのに生き生きしていた女が凍りついた。

 

「…神族が、つけた?」

「気づいてなかったのか?…ああ、なるほど。元々別の縛りが…なんだこれは?神族によるものにしては……まあいい。両方見せてやろう」

魔力を指先に込めて両方の縛りを刺激した途端、魔女が飛び跳ねた。

「…わたしが言うのもなんだが、相当タチの悪い神族に目をつけられたな」

「…なんっ…い、ま…」

「見ろ。貴様を縛る鎖だ」

見やすいようにと指先に絡ませたソレらは、わたしにもわずかな刺激を与えていた。

 一つ目の縛りは、幾重も首と頭に巻かれた青白く光る糸だった。おそらくは言葉を制限するものだろう。珍しくもない。時折知ってはいけないことを不可抗力で知ってしまう者がいて、それが他者に伝わらないように制限をかけるシステムがこの世界に存在する。彼女が生まれた時からかけられているのがいささか奇妙だが、時間経過で徐々に解けていくモノなのでさほど気にする事はないだろう。上手に付き合えばいいだけの話だ。

 問題はもう片方だ。

 見るからに毒々しく光る赤い鎖は、彼女の魂全体に巻きついている。元からある縛りに繋げられたそれは言葉だけでなく行動も制限するもので、時間経過による解除はない。それどころか、そう簡単には解けないよう過剰なまでに強力な力で形成されていて、暗黒魔界の王である自分ですら解除には途方もない手間暇がかかるだろう。逆らえばその意思を失うまで拷問のような痛みが魂に直接響く仕様のそれは、少なくとも通常はこんな未熟な星の魔女にかけるような縛りではない。

 このことを説明すると氷のように冷え切っていた魂が、一瞬にして灼熱の炎を放たんばかりに熱くなった。

 

 

「あ、あんのっ… ク ソ 神 ーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 久しく見ていなかった感情の揺れ。神族が忌み嫌い、魔族が嘲笑する、星の魔女の『激情』。それは彼女達を生かし、殺し、神魔から引き離す。それ故に愛憎に呑まれ、変容し、世を乱す魔族の手を借り、法を敷く神族に牙を剥き、半永久的に生きられるはずの命を驚くほど早く失う。

「あんの野郎…ざァけやがって…!死ぬだけで済むと思ったら━━━!!」

 ああ、実に滑稽だ。縛りをつけた神が自分の遥か上にいる実力者だと理解していながら、それでも罵倒し、応報を復讐をと吼える。

 何しろ、それを成し遂げてしまえる可能性があるのだ。少なくとも彼女に関しては、今まで見てきた星の魔女達と比べても良いチャンスがある。重要な情報が欠落していたのか、縛りをつけた問題の神族は火に油を注ぐが如き愚行を犯した。

「そう荒れるな、星の魔女。遠く離れているとはいえ、星とまだ繋がっているのを忘れるな。普段より少ないとはいえ、影響は出る」

どうしても出てしまう笑いを混ぜながらそう言えば、時間をかけながらも彼女は落ち着きを取り戻した。

「失礼しました……あの、ここの本を読めば大概のことは学べますか?」

「ある程度はな。実技を通して初めて理解する現象、複数の知識を組み合わせてようやく辿り着く答え、その時が来るまで理解し得ない真実、解を知っていても自分一人では届かぬ結果、知っているだけではどうにもならない状況…ここにある知識は結局のところ道具でしかないのだ。目的に手を届かせたいのならば上手に使う事だ」

 

 ずっとここにいるわけにもいかないのでそろそろ去ろうかと立ち上がると、もう1つだけと魔女がこちらの足を止めた。

「今更ですけど…星の魔女だと、何故わかったんですか?」

「何、シンプルな事だ。私に知られる事なくここに来られるのは星の魔女か、高位の魔族だけ」

 

「そして、身を焦がすほどの情熱などという厄介なモノを持って生きていられるのは、人間だけだ」

 




星の魔女に関する説明はちょいちょい入れていく形に。
まとめるのはある程度情報が出揃ってからにしようと思ってます。
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