ぼくらのマジック・ザ・ギャザリング   作:やまもとやま

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12、偽りの世界

 女に囲まれて撮影会。

 バカ面した男どもはうらやましいと思うことだろうが、実際に経験すると、いいことは何もなかった。

 

 気を遣うばかり。距離感もわからねえし、ハイドラ犬もついてくるし。

 特に、月渡の行動がさっぱり読めない。女の子っぽいところもあるかと思うと、冗談めいた茶化しも入れてくる。

 おかげで、緑川が変に誤解したようである。

 

 月渡が冗談で、おれを彼氏だと言って、それについて冗談だと認めることもなく話が進んでいってしまった。

 おれのほうから弁明しようと思ったが、頭から「誤解だ」なんて言ったら、月渡に悪い気がするだろ。

 もちろん、月渡はおれのことなど何とも思っていないのだろうが、おれには否定の力を撃つだけのマナも手札もなかったんだ。

 

 緑川がおれに複雑な目を向けている。

 月渡と付き合っていることに対して半信半疑と言った感じだ。

 こんなゴミ男と付き合っているわけがないと確信しているようでもあり、しかし月渡が露骨にスキンシップしてくるから、本当におれたちが交際しているかもしれないと思っているような。

 

 この迷える探究者の目が痛い。そろそろネタバレしてくれよ、月渡。

 

 おまけに、緑川の連れて来たハイドラ三人衆もおれに噛みつかんとするように鋭い目を向けてきている。

 ポルクラノスは鋭い牙を満たした謎の雑種犬、ガーゴスは見張りをするようなハスキー犬、ウラシュトは不気味な感じのゴールデンレトリーバー。

 

 いずれも体がでかい。ある日森の中で灰色熊に出会ったような気分だった。

 

「嘘、信じられない。ほんとなの?」

 

 緑川が月渡に尋ねた。

 

「ふふふ、うらやましいでしょ?」

「うらやましいとかはないけど……いつから?」

「今日、稲妻君が怖い人にからまれた私を助けてくれたんだよ。ね、稲妻君」

「え、いや……」

 

 たしかにそんな夢を見ていた気がするが、あれは夢だろ。嘘か真かで言えば、嘘だ。めくれた5枚が全部土地だったという、いまはそんな気分だけどな。

 

「ポルちゃんも仲良くしてあげてね、私の彼氏だから」

「ぐるぐるぐるぐる……」

 

 ポルクラノスはおれに対しては鋭い視線を向けるばかりだった。そういえば、おれは昔から犬に好かれたことがなかったな。

 それよりも早く誤解を解いてくれ。おれは恋人とか作れる人間じゃないんだ。二次元の嫁と結婚する予定のオタクなんだよ。

 

「不穏な空気を感じる。この空間をゆがめる魔力はなんだ?」

 

 そんなこんなの空気を突き破るような鋭い言葉が前方から投げかけられた。

 おれはとっさに前を向いた。

 

「貴様が魔力の乱れの発生源か?」

 

 目の前には変な美少女が一人。

 

 申し訳ないが、変な美少女としか言いようがない。

 いや、おれもマジックプレイヤーの端くれ。マジックで培った語彙力を総動員して表現しよう。カードでな。

 こんな感じ。

 

ーーーーーーーーーーー

 

 真の終末魔、ショークー (1)(B)(B)

 

 伝説のクリーチャー - 人間・邪術師

 

 飛行 接死

 あなたの真の名の終末のターンではない終了ステップ開始時、あなたが終末を招いているのなら、あなたはこのターンの後に「真の名の終末」追加の1ターンを得る。

(あなたが3体以上のクリーチャーを生贄に捧げている限り、そのターン、あなたは終末を招いている)

(真の名の終末であるターン、あなたのコントロールするクリーチャーが1体攻撃するたび、このターンの次の戦闘終了時、それを生贄に捧げる)

(真の名の終末であるターン、あなたはあなたは終末を招いているとして扱う)

 

   4/3

 

 フレーバーテキスト

 

 ハッピーエンドと言う名の汚らわしい夢を終わりにしようではないか。

 喜ぶがよい。お前のために、もっと美しい終末を用意してやった。

 

 真の終末魔、ショークー

 

ーーーーーーーーー

 

 デルレイッチの新種という感じか。

 シナジー次第ではかなり強そうだな。農奴・トークンを生贄に使って追加ターンを得て、うまく攻めればデッキになりそうだが、おれはあまりこういうデッキは使いたくないな。

 

 そんな感じの美少女がそこにいる。わかってくれただろうか?

 

 詳細に格好を述べると、ハロウィーンの仮装でもしているかのようなゴスロリファッション。左手首に呪術の道具みたいなアクセサリーを付けていて目立っている。

 

「おい、そこの農奴」

 

 ショークーがおれに暗黒の視線を向けて来た。農奴っておれのこと?

 

「貴様が私の姉さんに汚らわしい呪いをかけたのか? どうなのだ?」

 

 何言ってんのこいつ、なんか目が色々な意味で狂ってんだが、おれはどうすればいい?

 

「コラ、翔躯ちゃん、いきなり失礼なこと言っちゃダメだよ」

「姉さん、こやつはおかしな魔力を放っています。離れてください」

 

 月渡は良く見知っていたようであり、おれの前に出た。

 そういえば、呪山翔躯という部活の後輩がいると言う話だったな。この怪しい美少女がショークーだったか。もうショークーと呼ばせてもらうぜ。

 偶然か必然か、最近マジックに関連する人物がやけにおれの前に現れるな。何かおかしなことが起こる前触れなのだろうか。

 

「羽陽姉さん、死の世界から帰還した私にはわかるのです。この男は世界に呪いをかけて回る厄介者です」

「そんなことないって。稲妻君は優しくて素敵な男の子だから。ほら、挨拶して」

 

 月渡はショークーをおれと面と向かい合わせた。

 

 う……呪殺されそうな瞳だ。これはカード化しておかねば、成仏されそうにないな。

 

ーーーーーーー

 

 ショークーの睥睨  (B)

 

 インスタント

 

 クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-3/-3の修正を受ける。

 このターン、あなたが終末を招いているなら、これが解決した後、オーナーの墓地に置く代わりに対戦相手1人を対象とする。エンチャント・オーラ・呪いとしてこれをそのプレイヤーにつけられている状態で戦場に出す。

 ショークーの睥睨がオーラである限り、エンチャントされているプレイヤーのアップキープ開始時、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体生贄に捧げない限り、5点のライフを失う。

 

 フレーバーテキスト

 

 愚かな生きる子よ、己がこれまでに犠牲にしてきたものをすべて感じ、その罪を知るがよい。

 

 真の終末魔、ショークー

 

ーーーーーーー

 

 く……条件は厳しいが、1マナで残酷な現実を内蔵した除去か。カスレアだった残酷な現実も、これならトップレアになるのではないか。

 こんなカードを4積みしているデッキとは戦いたくもないな。

 

 ショークーは月渡のことをかなり慕っているようだが、さっきのハイドラ3人衆と同様、おれにはめっちゃきつい目を向けている。

 

「去れ」

 

 開口一番、ひどい暴言を吐いてきやがった。

 

「翔躯ちゃん」

「いいのです、羽陽姉さん、祟りの元凶には解呪をかける必要があるのです」

 

 ショークーはそれからおれの後ろにいた緑川にも目を向けた。

 その目はおれに向けた目と同じだった。

 

 緑川は目をそらすようにそっぽを向いた。

 なんだか複雑な人間関係があるようだ。女の人間関係なんて、おれはまったく想像もできないけど、なんかドロドロしてるな。

 

 そんな複雑な空気感を調和する役目を担っているのが、月渡だった。ここはすべて月渡に任して、おれは黙って置いた方がよさそうだな。

 

「これからみんなで写真を撮るの。翔躯ちゃんも協力してくれる?」

「みんな? この農奴と犬女をまとめて写真に撮るというのですか? 不吉な」

「大丈夫だから。ね、翔躯ちゃん、私が言うんだから」

「羽陽姉さんが言うなら逆らえませんが……」

「じゃあ決まり。みんなで写真を撮れば、みんな仲良くなれるよ、きっと」

 

 開いてはいけない撮影会を開いてしまったのではないか?

 

 ◇◇◇

 

 公園の芝生を陣取ったおれたちは、月渡の誘導で写真撮影をすることになった。

 たしか、写真のコンセプトは「君と仲間たち」だったか?

 

 友達のいないおれのために、月渡がおせっかいを焼いてくれたわけだが、集められた仲間がなんとも言えない連中ばかりな気がするのはおれだけか?

 決して仲間になれない者同士が、羽陽の魔力で無理やりパーティーを組んだ感じになっている。

 

「梓ちゃん真ん中で、ポルちゃんが右、ウラランが左、ガーちゃんは稲妻君の頭の上から顔を出す感じね。翔躯ちゃんはポルちゃんに寄り添って」

 

 月渡があれこれ指示を出す。

 う……おれの頭上にガーゴスの恐ろしい前足が置かれた。なんかすさまじい握力を感じるのだが。

 

 そして、おれの隣にはポルクラノスとウラシュトが、おれを喰らおうと怒りに震えている。

 その隣にはショークー。

 

 このパーティーはなんだ?

 おれの芸術的なバーンデッキが初心者の魔改造によって5色ズーに変えられたような感じだ。

 無理だ、絶対色事故起こすだろ。

 黒単じゃないと回りそうもないショークーに、緑単じゃないと回りそうもない緑川が、赤単なおれに入り込んできてるぞ。おれの赤への信心がジャンドの魔力に侵食されてしまっている。

 

「私はここに入るね」

 

 そこへ白青フラッシュみたいな月渡が入って来た。

 これぞ、5色ズーだ。フェッチランドフル投入で何とかできるものなのか?

 

 そんなこんなで5色ズーの画像が撮影された。

 テーマデッキの名前は「相いれない者たちの融合」

 

 とんでもないデッキになるだろう。

 

「どうかな?」

 

 月渡が相いれない者たちの融合の画像を見せた。

 

 ダサい男の周りに狂暴な犬がいて、生命力あふれる美少女と中二病的かつ薄幸のゴスロリ美少女と天真爛漫な美少女に囲まれている。

 

 ダメだ。

 こんな写真をアルバムに載せたら、黒歴史になる。おれという歴史が書き換えられてしまう。

 

「ダメです、羽陽姉さん、見てください、これでは心霊写真です。ここにも、ここにも怨念が漂っています」

 

 ショークーがおかしなことを言ったが、心霊写真というのはまさにその通りだったと思う。

 浮世離れしすぎた写真だ。こんなものをテーマデッキの表画像に使ったら、購入者が呪われてしまうわ。

 

「私はいいと思うけどな、梓ちゃんはどう思う?」

「偽りの世界って感じね」

 

 そのとおり。どう見ても、これは偽りの世界だ。なので、一応カード化しておく。

 

ーーーーーーーーーー

 

 偽りの世界 (W)(U)(B)(R)(G)

 

 ソーサリー

 

 あなたはこれを唱えるに際して、望むマナを軽減して唱えてもよい。

 この呪文を唱えるに際し、以下の色が使用されているなら、それを選んでもよい。

 白:クリーチャー最大3体を対象とし、それらの上に+1/+1カウンターを1つずつ置く。あなたは3点のライフを得る。

 青:土地でないパーマネント1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。

 黒:点数で見たマナコストが2以下のクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。

 赤:任意の対象に3点のダメージを与える。

 緑:緑の3/3の犬・クリーチャー・トークンを1体生成する。

 すべての色:あなたがすべての色のパーマネントをコントロールしているなら、あなたはゲームに勝利する。

 

 フレーバーテキスト

 

 それは偽りに満ちた灰色の世界。

 同時に、いつかあなたがたどり着く虹色の世界。

 

ーーーーーーーーーー

 

 無理だな。おれに合同勝利する日など来ないよ。

 おれは一人で寂しく生き、孤独に死んでいくのさ。

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