見渡す限りの暗黒の中に、ぽつりとひとつ、何かが吊るされているのが見える。
あれはなんだろう。あまり良いものには見えないが、気がかりではある。
僕は一歩、また一歩と足を踏み入れて暗闇を進んでいった。
ある程度近づくと、それが何かはっきりしてくる。
吊るされているのは女の人だ。
いや、足元に台が転がっているのを見るに、首を吊っているように見える。
急いで助けなければ。
僕は必死で足を動かし、そこにいる人をロープから降ろした。
降ろしたあとは心臓マッサージをするんだったか。
彼女を仰向けの状態にすると、僕はあることに気付く。
こいつは、僕と同じ顔をしている。
「なんなんだ…………こいつは」
とはいえ、数秒前まで首を吊っていた人間を放っておくわけにはいかない。
胸に手を当て、一定のリズムで圧をかける。
人工呼吸も忘れてはいけない。最初が自分の顔というのは中々変な感じだが、とにかく続けなければ。
しばらく続けていると、彼女はやがて息を吹き返し、起きるなりこう言った。
「やめてくれ。もう生きるのが嫌なんだ」
「かといって、放っておけるわけがないじゃあないですか!」
「…………やっと、抜け出せたんだ」
「抜け出せた?」
「君からに決まっているだろう」
目が覚めても、また森林にいた。崖から先にはまさに幻想的な景色が広がっている。
また、夢を見ていたようだ。
景色がいいのは結構だが、酸素が薄いのか息苦しい。
思わず「げほっ」と咳を漏らしてしまい、その勢いで胃の中にあるものを外に出してしまいそうなほど気分が悪く、目眩も酷いし、疲れも酷い。
高山病なのだろう。一刻も早く下山したいが、両手の自由が効かない。この場に縄か何かで括り付けられている。
「目――――よ―だね」
声のする方を見てみると、何かが立っていた。
聞く限り人の声なので恐らく人だろう。
「
僕はそれに助けを求める。
「へえ、――しの部―を殺そ―と―――――、自―――されたらいの―――か?」
意識が朦朧として何を言っているのか分からない。
部下を殺そうとして……?何のことだ?
「
「わ―――お―えている」
言っても聞かないのなら、実力行使……という手段を取ることもできないのが現状だ。
両手が使えない上、使えたとしても酷い高山病だ。今の僕には5歳の少女が指一本で挑んでも勝てるだろう。これぞ八方塞がりで絶体絶命のカタストロフィだ。
「
「――、―――も?」
よく聞こえなかったが、言葉を察して僕はゆっくりと頷く。
すると、目の前のそれは僕の口の中に何かを入れる。
飲め、ということなんだろう。
無警戒にそれを飲むと、目の前のそれに縄を解かれ、解放され……てない。
立ち上がろうとしても酸素と血液が足りず、その場に突っ伏してしまう。
体に力が入らない。
こうなれば頼むことは一つ。
「
続く