高山病で死にかけたため、僕ら二人とケモミミの娘は山の麓にいる。
ケモミミの娘は『
そして僕の高山病は何とかマシになったが、貧血のままで辛い。
花弁がまだ舞い落ちる中、椛ちゃんは龍さんの説教を受けている。
「こんな雑魚相手に殺されかけるとは……椛、お前最近弛んでるんじゃないか?」
「すみません……ですが、こいつは完全にスペルカードルールを無視して殺しにかかってきたんですよ?」
「それでもだ。こいつが殺しにかかってきたところで、負けることはないはずだ」
「随分言いたい放題言ってくれるようだけど……えー、椛ちゃん」
丁度、『椛ちゃん』という言葉を発した瞬間に椛ちゃんが物凄い形相で僕を見てくる。
「……椛さんを殺そうとした覚えはないし、むしろボロボロのところを高い下着破いてまで助けたんだけどね。感謝こそすれ、あんなことをされる理由はないんじゃあないか?」
「黙れ露出狂」
「そう思うんなら下着をくれ」
「そこで下着を要求するから露出狂なんですよ」
一理あるかもしれない。
「だけどボロボロになった椛ちゃ」
うっかりと『ちゃん』をつけてしまい、また凄まれた。
数秒の間を置き、話を続ける。
「……椛さんが僕の下着を手足に巻きつけていたことは揺るぎない事実じゃあないか。興奮しない?」
「殺しますよ」
「そんなに興奮しないでよ。それとも、もしかしてリョナラーとかネク……」
言い終わらないうちに首に刀を突き立てられた。
嫌いな人の口から発される下ネタほど不快なものはないのだろう。
「本気ですよ」
「すみません」
「………………」
「………………」
「………………」
数秒の沈黙のあと、話を切り出したのは龍さんだ。
「それで……お前は何故椛を殺そうとしたんだ?仲は悪そうだが、お前自身の口ぶりからは椛への憎悪は感じ取れない。それどころか仲良くなろうとしているようにも見える。とても下手だがな」
「何度も言うけど、そんなことはしていない。そもそも、初対面で殺そうとしてきたのは向こうのほうだ」
正直に答えたが、龍さんの表情はより一層険しくなった。
「本当なんだな?」
「当たり前だ」
龍さんの顔は困った風な表情になる。
彼女は数秒考えた後、妙なことを口に出す。
「お手」
龍さんは右手を差し出し、犬にするような命令を下した。
「何を?」
左の手のひらで何かが触れるのを感じた。
体温を感じる。これは……肌?
『それ』の上をなぞってみると、五つほど枝分かれしている。
「……何触ってるんだよ」
「え?」
「何してるんですか……」
僕は自分の知らないうちに『お手』に従っていた。
無意識のうちに。
「蓬莱人に作ってもらった薬だよ。これで私に逆らえないってわけだ。お座り」
こいつ、とんでもないもの飲ませやがったな。
視線がガクンと下に落ちる。フリーフォールみたいで気持ち悪い。
「原材料はヤモリの黒焼きと椎の実、そして薬品その他諸々だ。ほれ、指を咥えてみろ。噛みちぎるなよ」
「
「何させてるんですか!?…………何やってるんですか!!!」
椛ちゃんはホラー映画でも見るような目でこっちを見てくる。
僕も怖い。
「大丈夫。お前なんかに変な気は起こさない。……汚いからやめろ。やめたら飲み込め」
自分でやらせたんじゃあないかと思いながら涎を飲み込み、言葉を吐き出す。
「はぁ〜〜、それならさっきの発言が本当ってことでいいんじゃないか?」
「効果を試していなかったからな。まあ、今ので信用できたよ。椛、帰るぞ」
「え、えぇ!?」
そう言って龍と椛は山の中に帰っていく。
依然として、山には花弁が降っていた。
続く