「兄はよくできた子だ。それに比べてお前は……」
何度も親にぶつけられた言葉。
兄は勉強も運動も趣味も何もかも自分より優れている。
自分より年上だから仕方ないだろうと何度も反論したが、その度に同年齢だった時の兄を引き合いに出された。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
何度でも。
『お前はいらない子だ』『お前は出来損ないだ』『お前はいない方がいい』『お前が死んでも誰も気にしない』『死んでしまえ』『いなくなれ』『産まなきゃよかった』
どうせいらないなら。
どうせ出来損ないなら。
どうせ誰も気にしないなら。
どうせ死んでもいいなら。
どうせいなくなってもいいなら。
どうせ産まれないほうがよかったなら。
こんなもの、捨ててしまった方が――――
「――――嫌だ……」
首を吊ったはずが、さっきと違って森の中にいる。
目の前にあるのははロープではなく、羽の生えた少女とパーカーの少女が横たわっていた。
パーカーの少女の名前は聞いてないが……羽の方は射命丸 文さんだったか。
意識が段々とはっきりしてくる。
どうやら、少女が眠っている間に文さんと共に眠ってしまったらしい。
とりあえず僕は体を起こし、体育座り姿勢になる。
それにしても酷い夢だ。親に自殺を促されるような夢とは。
死のうとしたときは本気で止めてくれたし、欲しいものは買ってくれた。
僕がオタクでも受け入れてくれたし、仕送りも月に2000万はくれる。
本当に自殺した時にすぐに救急車を呼んでくれたおかげで助かったこともあったっけ。
救急車と言えば、あのボロボロのケモミミは……
「動かないでください」
首に冷たいものが触れた。
もしかしなくても刀剣の類だ。勿論鋭い面が向けられていて、一ミリでも動けばさっきの夢は半分ほど正夢になるだろう。
これは参ったな。この状態から助かる方法は交渉しか知らないのだが、あまり得意ではない。
「これは……両手を上げたほうがいいのかい?」
「手を上げても殺します」
「なるほど、大声を上げたら?」
「殺します」
「能力を使っても?」
「殺します」
「致命傷を負った君を下着を破いてまで助けたのが僕だったとしても?」
「関係ないです」
これが恩知らずというものか。
胸から下を全部破いてでも助けたというのに容赦がない。
「……これ、下着なんですか?」
「いい下着なんだよ、これ。破きまくった上に集団レイプみたいな構図に……」
言い終わらないうちに首から生暖かいものが滴る。
やはり脅されているときに下ネタを言うものではない。
「痛いよ」
「当たり前でしょう。これ以上馬鹿なことを言うと殺しますよ」
「君ィ、スペルカードルールとやらはどうしたんだい?」
「そのルールで殺しにきておいてよく言う……!」
何がこの娘の気に触れたようで、首にさっきより鋭い激痛が走った。
「ぃぃぃっ…………」
思わず僕はうめき声を上げてしまう。
何とか叫ばずに済んだが、本当に痛い。マジで殺す気だ。今のこいつにはスペルカードルールなんて関係ない。
「本当に……やめてくれ、死んでしまう……」
「ならば言いなさい。貴女の目的を」
「なんだそれ、まるで僕が何かしたみたいな……」
ここで僕の意識は途切れた。
多分、首を斬られたんだろう。
何も知らずに、何も知らされずに。
ただ、この時、思い出せた。
幻想郷にたどり着く前の――――
――――死の感覚を。
続く