賢者の孫~帝国貴族の胎児に転生しました~。   作:BERSERKER

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第一話 プロローグ 転生して胎児から始めます。

 俺はSE(システムエンジニア)として働く佐藤和騎。

 連日の様に残業残業で参っていた。

 「おい、カズ。飯行こうぜ~」

 同期で友人の風間真一が俺を呼ぶ。

 「応、ジン。今日も定時で上がれなかったな」

 「まぁな。そのくせ、残業代も出ないときたもんな。訴えれば勝てるんじゃね?」

 「面倒だ。給料が上がろうが、上がらなかろうが気にしない。勤務時間を何とかしてくれ」

 「だよな~」

 俺がこいつの事をジンと呼ぶのはとある格闘ゲームに風間仁と言う名のキャラに最後の一文字を取って濁点付ければ同じだなって話した事が発端でずっと呼び続けている。

 横断歩道に差し掛かり、俺たちは赤になった信号に気づかず、そのまま自家用車に轢かれた。

 俺は真一がクッションになり、対向車線へ投げ出されて、ダンプカーに激突してから路面に落ちタイヤに下半身を潰された。

 俺もあいつもこの交通事故で亡くなった。

 俺はストラディウス夫妻の間に宿った胎児。

 まだ母胎の中で身体が出来上がったばかりの生まれてもいない子供である。

 時期として十月十日を臨月として妊娠8ヶ月を越えた位か?

 俺の意識が目覚めた。

 と言ってもやれる事も無い。

 成長する為に起きては眠りを繰り返す。

 お胎の中ですくすくと成長している時、急にお母さんの脈搏が上昇した。

 (これは恐怖か?)

 俺は母の動悸を感じて目覚め、行動を開始する。

 (俺に今、出来る事)

 母体の外の魔法エネルギー(魔力、魔法の素。以下:魔素)を無意識に操り、制御し、周囲を確認する。

 どうやら、家…屋敷の外に人が集まって物々しい雰囲気だ。

 (暴動が起きているか?母の安全を最優先)

 「あら?ひっ!あれは松明、最低でも人がこんなにお屋敷の周りに取り囲んでいる」

 自身を基点に結界を張り、空間を隔離する。

 (神経に意識を流し、擬似的に念話を)

 「ぴぃっ!」

 『お母さん聞こえる?』

 「誰!?」

 『お母さんのお腹にいる、胎児です。今、お母さんの動悸を感じて目覚めた前世の記憶持ち。魂の浄化が行われずに宿ったみたい』

 「お母さん?お腹?…そうなの。さっきの外の様子を見る魔法とこの防御魔法はあなたが?」

 『やっぱり魔法が存在するんだ。私は胎児だから、魔法で目の代わりを作らないと、外を見れないからね。お母さんも見れたんだ。外の様子を見て危険と判断したから、お母さんの周囲の空間を遮断してる。お母さんから見てこの魔法は頑丈そう?』

 「私は魔法を使えないからよく分からないわ」

 『そう。壁を厚くしよう、少しでも防御力を稼ぎたいからね。お母さんの死は、私の死でも在る。私は死にたくない。お母さんも死なせたくない。お父さんは今居ないから守れないけど、お父さんも生きていて欲しい。一人は寂しい事を知ってる。だからお母さんを助けるし、生まれたら友達たくさん作る』

 「ふふ、そうね。私も死にたくないわ。でも、あなたの手を血で染めたくないから人を傷つけちゃ駄目よ」

 『分かった、防御に徹する。空間認識力拡張、範囲指定、屋敷を覆う結界』

 『お母さんを守る結界の外と屋敷を守る結界の間の空気を外へ追いやり、真空空間にする。空気は周囲から給排気してお母さんを守る結界へ草木を辿り循環させる。お母さんを窒息させずに入りたくない状態へ。それでも入り込むなら窒息死へ追いやる空間にする。これなら死んでも相手の自業自得』

 『火を投げ込んでも空気が無いから消える』

 「確かに此方からは傷付けないわね。それでもあなたの心に傷が付くから、

殺しちゃ駄目よ」

 『なら入らなきゃ良いの。端的に言うなら帰れって事。殺しに来る敵は殺さなくちゃ生き延びる事は難しい』

 「あなた!!お願い。あの人を守って私の旦那様。あなたのお父さん」

 『了解。結界生成、対象をお父さんに指定。真空空間及び外周結界解除』

 「アリア!無事かい?へぶっ!」

 「あなた。子供が警戒してるの。魔法でオリベイラに化けている別人か本当のオリベイラかって疑ってる」

 「へ?お腹の中で意識があるの?」

 確認が終わって結界を解除する。

 「私が外の集団を見て、恐怖した時の動悸で目覚めたんだって」

 お父さんと手を繋いで貰う。

 その手を通して擬似神経を繋ぐ。

 「お父さん本人ですよ」

 『分かったから!疑ってごめんなさい』

 「君が私達の子かい?」

 『はい。信じなくても、信じられなくても、構いません。魂の浄化が行なわれずに前世の記憶を持ったまま、胎児として目覚めました。私は死にたくありません。堕胎しようとするなら全力で抵抗します。虐待と言う概念は有りますか?物語の知識で悪いのですが、貴族のイメージは親と離れ離れで、ネグレクト放置されているイメージが有ります。そこの所如何なのでしょうか?』

 「確かに…でも、私は私達の子と触れ合って育てて生きたいと思っているわ」

 「私もだ」

 『ありがとうお母さん、お父さん。で、外の暴徒たちは何なの?』

 「む、そうだな。何で領民が私達を襲うのか確認しないと」

 『え?領民なの?まぁ、私は疲れたから寝るね。夜中に目が覚めたけど夜更かしは成長の敵』

 「分かった。お休み」

 「おやすみなさい」

 私は睡眠に落ちる。

 オリベイラ・フォン・ストラディウスは問う。

 「領民よ!何故?我等を襲う!」

 「何故だと?惚けるな!俺等領民を攫って家紋付きの馬車で奴隷を運んでいる所を見たんだ!」

 「は?」

 「まだしらを切る様だな?憲兵の捕り物について行ったんだ!馬車には攫われた女性達が数人。如何だ。言い訳出来まい!」

 「何故だ。仮に私がその様な事を働いているとしたら、家紋付きの馬車で堂々と運ぶわけ無いでしょう。それに憲兵が捕り物に一般人を連れて行くなんて聞いた事も無い」

 「…。確かに見た事が無い。じゃぁ、あれは何だったんだ!俺達は騙されたのか」

 「その通りだと思いますよ。私を気に入らない貴族の思惑に使われた駒が今の貴方達。私は非常に危機感を覚えました。今後一切、私達に関わりを持たないでくれませんか?簡単に貴族達の言いなりになる貴方達が怖いです」

 「「!。…分かりました。俺は貴方達に関わりを持たない事を誓います」」

 「今まで私が教えた事は好きにしてください。土地も新たな領主と共に好きにしてください。私達は引っ越しますので」

 「「…はい」」

 オリベイラは領民に暗示を施した。「ストラディウス領主一家は逃亡の後に行方不明で死んだのでは?」と言う噂が流れる様に。

 その後、ストラディウス夫妻はアールスハイド王国へ亡命し、国王と対話を持って亡命を受理され、アールスハイドの国民に受け入れられた。

 臨月を迎えた妻アリアは、ご近所さんの導師メリダ様の許で、出産を迎える準備をしていた。

 夫のオリベイラは妻、アリアの側でオロオロとうろたえていて、賢者マーリン様に励まされていた。

 「貴方、少し落ち着いて下さいな。こっちまで不安になりますわ」

 「ごめん。手伝える事は何か無いか」

 『なら、木を握れる大きさに削ってつるつるに研いて、握らせておいて。痛みに耐える時の握力で爪が刺さるって』

 「分かった。用意する」

 「???」

 「ああ、気にしないで下さい」

 母子共に無事で、健康に私は生まれました。

 前世男の私は現世では女に生まれましたよ。

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