退廃の祝福を受けた者   作:暇が欲しい一般人

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生徒会と風紀委員会

 第一高校へ登校中、異様なものを見ている。

 

「達也さん……会長さんとお知り合いだったんですか?」

「一昨日の入学式の日が初対面……のはず」

「そうは見えないけどなぁ」

「わざわざ走ってくるくらいだもんね」

「……深雪を勧誘に来ているんじゃないか?」

「……お兄様の名前を呼んでいらっしゃいますけど」

「達也、本当に初対面なのよね?」

「ああ、一昨日が初対面で間違いない」

 

 駅でエリカ、美月、レオと合流して六人で登校していると、背後から「達也く~ん」と言う声が聞こえて来た。

 振り返ってみると、七草会長が笑顔で走ってくるのが見えた。

 私も達也の人間関係を全て把握しているわけではないが、達也がこの状況でわざわざ嘘をつくとも思えない。

 だからこそ、余計に意味が分からない。

 

(七草会長、何がしたいんだろう)

 

 会って数日の相手に対する対応には思えない。

 そんなことを考えていると、七草会長が追いついて来た。

 

「達也君、オハヨー。深雪さんと美咲さんもおはようございます」

 

 私と深雪に比べて達也の扱いがぞんざいだ。

 いや、親しげと言う方が正しいのかな。

 

「おはようございます、会長」

「おはようございます」

「深雪さんに少しお話したいことがあるんだけど、今日のお昼はどうするご予定かしら?」

 

 生徒会のことで深雪に話があったようで、昼食の誘いだった。

 なぜか、私と達也も一緒に生徒会室で昼食を取ることになった。

 本来の予定では今日も見学をサボって読書をするつもりだったのだが、お説教をされた翌日にそんなことをすれば達也も助けてくれないだろう。

 なので、仕方なく深雪達と授業を見学する。

 昨日の帰りに深雪に絡んでいた一科生が、私が居るためか誰も近づいて来ない。

 おかげで、邪魔されることなく深雪達と授業を楽しく見学が出来た。

 その後、昼休みに深雪と達也と一緒に生徒会室に向かう。

 

「失礼します」

 

 達也を先頭に深雪、私の順番で生徒会室に入る。

 主役の深雪が上座に座り、私、達也の順番で席に座る。

 席についてすぐに、生徒会のメンバーの紹介をされた。

 その後、ダイニングサーバーで出来上がった昼食を弁当を持ってきた渡辺先輩以外に配り、昼食を食べ始める。

 

「そのお弁当は、渡辺先輩がご自分でお作りになられたのですか?」

「そうだが……意外か?」

「いえ、少しも」

 

 深雪をからかった渡辺先輩の問いに、深雪が狼狽する前に達也が即答で答える。

 

「……そうか」

 

 達也が渡辺先輩の手元をじっくりと見たせいで、渡辺先輩が気恥ずかしくなったのか手元を隠す。

 

「私達も明日からお弁当にしましょうか」

 

 深雪の言葉に達也が自然と視線を外す。

 私達には私も含まれているのだろうか。

 

「深雪の弁当はとても魅力的だが、食べる場所がね……」

「あっ、そうですね。まずそれを探さなければ……」

 

(二人とも私を挟んでいちゃつくのはやめてほしいのだけど……)

 

「兄妹というより、恋人同士の会話ですね」

「そうですか?まあ確かに、考えたことはあります。血のつながりがなければ、恋人にしたいと」

 

 市原先輩の爆弾発言を達也は軽く返し、私以外の女性陣を爆破した。

 私と達也以外の全員が頬を赤く染める。

 

「もちろん、冗談ですよ」

「面白い冗談ですね」

 

 達也の言葉に深雪達が驚いているが、私は普通に食事を続ける。

 

「美咲さんは驚かないのね」

「この二人は私が居ようと関係なくいちゃいちゃしてるので、もう慣れました」

「美咲さんも大変そうね」

「そうでもないですよ。気にしなければ、ただ仲の良い兄妹ですから」

 

 私の言葉に七草会長達は苦笑してしまう。

 深雪は照れているし、達也はまるで気にしていない。

 

「そろそろ本題に入りましょうか」

 

 昼食を取り終わったところで、七草会長が本題に入った。

 

「当校の生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長に選任、解任が委ねられています」

 

 七草会長の話を聞きながら食事を続ける。

 深雪を勧誘するという話なのだろうから、私と達也には関係がない。

 

「これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員になって貰っています。深雪さん、私はあなたが生徒会に入ってくださることを希望します。引き受けていただけますか?」

 

 七草会長の問いに深雪が私達に視線を向ける。

 私は好きにすれば良いと、深雪から視線を外した。

 達也は深雪の視線に頷いて返す。

 

「会長は、兄と姉の入試の成績はご存じですか?」

 

 私達の態度に深雪が何を思ったのか、変なことを七草会長に問いかける。

 

「深雪?」

「有能な人材を生徒会に迎え入れるなら、私より兄と姉の方が相応しいと思います」

「おーい、深雪ー」

「私を生徒会に加えていただけるというお話については、とても光栄に思います。喜んで末席に加わらせていただきたいと存じますが、兄と姉も一緒というわけには参りませんでしょうか?」

 

 私の呼びかけを無視して深雪が七草会長に問いかける。

 

「残念ながら、それは出来ません」

 

 深雪の問いに答えたのは七草会長ではなく、市原先輩だった。

 

「生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく規則です。これを覆すには生徒総会で制度の改定が決議される必要があります。なので、美咲さんはともかく達也さんは役員に任命できません」

「……申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください」

 

 市原先輩の説明に流石の深雪も諦めたようだ。

 

「ええっと、それでは、深雪さんには書記として、美咲さんには会計として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」

「はい、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いします」

「よろしくありません!」

 

 七草会長の確認に私と深雪は同時に返す。

 頭を下げる深雪の隣で私が七草会長に声を張り上げて抗議する。

 

「もしかして、美咲さん会計より書記の方が良かった?」

「私は一度も生徒会に入るなどと承諾していませんよ」

「あら?深雪さんがこれだけ必死に言っているのに、美咲さんは生徒会に入らないの?」

「お姉様は私と一緒では嫌なのですか?」

 

 七草会長は楽しそうに問いかけて来るが、深雪は悲しそうな顔で私を見ながら問いかけて来る。

 深雪が悲しげな顔をしているせいで、隣の達也から無言の圧力がすごい。

 

(断れる状況……じゃないわよねぇ)

 

「分かりました。お受けします」

 

 逃げ道を完全に断たれてはどうしようもない。

 深雪に怒られるのも困るが、泣かれるのはもっと困る。

 泣かせた場合、達也も敵に回るから誰も助けてくれない。

 

「ちょっと良いかな?」

 

 私が少し落ち込んでいると、渡辺先輩が小さく手を上げて話始めた。

 

「風紀委員の生徒会選任枠の内、前年の卒業生の一枠がまだ埋まっていない」

「摩利、それは今、人選中だと言っているじゃない」

「確か、風紀委員の生徒会選任枠は二科の生徒を選んでも規定違反にはならない、だったよな」

「ナイスよ!」

「はぁ?」

 

 七草会長の予想外の歓声に、達也の口から間抜けな声が漏れた。

 

「そうよ、風紀委員なら問題ないじゃない。摩利、四葉達也君を風紀委員に指名します」

「ちょっと待ってください」

 

 七草会長の言葉に達也が立ち上がって止めに入る。

 

「座りなさい、達也」

「美咲!?」

 

 そんな達也を横目で見ながら私が口を開く。

 

「達也、あなたは風紀委員に入りなさい。拒否することは許さないわよ」

 

 先ほど、私が生徒会に入るのを断ろうとした時に逃げ道を塞いだのだ。

 今度は私が達也の逃げ道を塞ぐ。

 四葉で私の命令に逆らえるのは、お母様以外にいない。

 普段は拒否を許さない命令など出さないが、こんな時くらいは良いだろう。

 命令の結果死ぬわけでもないし、深雪も達也が風紀委員に入れば喜ぶだろう。

 

(達也、逃げ場なんて最初から無いわよ)

 

 私が微笑むと達也は諦めたように席に座りなおした。

 

「分かりました」

「では、そういうことで」

 

 私達のやり取りを見て七草会長達が苦笑して固まる。

 深雪は嬉しそうに微笑んでいる。

 達也が席に座って少しすると、チャイムが鳴った。

 

「それじゃあ、詳しい話は放課後にしよう」

「分かりました」

 

 理不尽感を押し殺している達也を見ながら私達は生徒会室を出る。

 

 午後の授業も大人しく深雪達と一緒に授業を見学する。

 そして放課後、深雪と達也の二人と一緒に生徒会室に向かう。

 生徒会室に入ると、昼休みに居なかった男子生徒がいた。

 彼が昼休みに紹介されなかった副会長なのだろう。

 男子生徒は私達に気づくと、近づいて来た。

 

「副会長の服部刑部です。四葉美咲さん、四葉深雪さん、生徒会へようこそ」

 

 服部先輩は私達に挨拶すると、達也を無視して戻っていった。

 そんな服部先輩の反応に隣の深雪がムッとする。

 深雪の反応と服部先輩の態度に私は隠しもせずにため息をつく。

 

(生徒会の副会長まで馬鹿だとは、この学校は終わっているな)

 

 服部先輩の態度に私は呆れて怒りもわいてこない。

 私が服部先輩の行動に呆れている間に達也と渡辺先輩が風紀委員会本部に移動しようとしていた。

 

「渡辺先輩、待ってください」

「何だ、服部刑部少丞範蔵副会長」

 

 長い名前だなぁっと思いながらどうでもいいことを言っている服部先輩の会話を聞き流す。

 服部先輩は達也が風紀委員になることを反対しているようだ。

 最終的に深雪までが会話に乱入してしまった。

 

(仕方がない。話が進まないし、私が終わらせよう)

 

「服部先輩、あなたは馬鹿なのですね」

「な!?」

 

 私が服部先輩の目を見てはっきりと断言すると、服部先輩は目を見開いて驚いた顔をする。

 

「周りの意見を聞こうとせず、二科生というだけで意見を言う。まるで、駄々をこねる子供ですね。自らを優秀な一科生と言っておいて、子供みたいに駄々をこねて恥ずかしくないんですか?」

 

 生徒会室に居る全員が私に視線を向ける。

 達也は心底困った顔で、深雪は驚いた顔で私を見る。

 服部先輩を始めとした生徒会の人達はいきなり何を言い出すのかという顔で私を見る。

 

「それに魔法力が自分より低いという理由で見下しているのなら、私は先輩を見下す権利があるということですよね?どうしたんですか?答えてくださいよ、ウィードの服部」

「ふざけるな!私はウィードじゃない!それになんだその態度は!」

「あら?あなたが私より優れているものなんて何もないじゃないですか?自分より優れた面がある相手を見下しているウィードのあなたと違って、あなたよりあらゆる面で優れている私が見下すことの何が悪いと言うんですか?」

「ウィードより劣っているだと!?」

「そんなことも知らないで見下しているなんて、本当に愚かですね」

 

 私は心底楽しそうに微笑みながら服部先輩を見下す。

 そして、視線を七草会長に向けて問いかける。

 

「七草会長、達也は入試の筆記試験にて前代未聞の高得点を取ったんですよね?」

「え?ええ、そうよ」

「だそうですよ、ウィード君。あなたは達也より頭が劣っているのね。自分より優れている相手を見下すなんて本当に馬鹿なんですね」

 

 七草会長の返答を聞かせてさらに服部先輩を煽る。

 

「それに、達也は実戦においてもウィード君より優れていますよ」

「そんなことあるはずがない!」

「残念なことに現実です。魔法力でしか物事を考えれないウィード君には、達也を倒すことなんてできませんよ」

「四葉さん、いくらなんでも身内贔屓が過ぎますよ」

「では、証明してあげましょう。達也がウィード君より優れていることを」

 

 怒りを必死に抑えている服部先輩に微笑み。

 視線を達也に向ける。

 

「達也、ウィード君と摸擬戦をしなさい。負けたら深雪が泣くわよ」

「へぇ!?」

「はあ、分かりました」

 

 達也は途中から予想していたのか驚かなかった。

 しかし、深雪は急に振られたことで驚き間抜けな声を漏らした。

 生徒会の人達はかなり驚いているようだが、知ったことではない。

 

「そういうことで、七草会長。後のことはよろしくお願いしますね」

 

 私が強制した摸擬戦だが、準備や審判などは七草会長達に任せた。

 移動中に達也に文句を言われたが、一応納得はしているようだ。

 もともと達也が服部先輩を倒せば、簡単に解決する内容だった。

 一応、先ほどの話で自分の愚かさを認めれば、摸擬戦もしなくて済んだのだけど。

 

(一科生の大半は心底馬鹿なのねぇ)

 

 移動した演習室で摸擬戦は行われた。

 摸擬戦の結果は達也の圧勝で、試合の時間は五秒もかかっていない。

 摸擬戦が始まって五秒も経たない間に服部先輩は気絶させられてしまったのだ。

 試合の内容を理解しているのは私と深雪だけだろう。

 

「待て」

 

 摸擬戦が終わったことで、CADをケースに片付けようとする達也に渡辺先輩が声を掛ける。

 

「今の動きは、自己加速術式を予め展開していたのか?」

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術です」

「兄は、忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

 達也の言葉に対する深雪の補足に、渡辺先輩は驚く。

 そこから達也が使った魔法の詳細など、摸擬戦の内容を確認していく。

 内容を理解している私にとっては暇な時間だ。

 摸擬戦の内容を確認していると、服部先輩が目を覚ましたようだ。

 目が覚めるなり、服部先輩は私に頭を下げて来る。

 

「四葉さん、先ほどは身内贔屓だのと失礼なことを言いました。四葉さんの言う通り、魔法力のみでしか人を判断出来ない愚か者でした」

「いえ、構いませんよ。私は事実を突きつけただけですから、今回のことで思うことがあるのなら、先ほど言ったことをしっかりと噛みしめてくださいね」

「はい」

 

 服部先輩は私の言葉に頷くと、演習室を出て行った。

 私が服部先輩を見送っていると、近くにいた七草会長が問いかけて来た。

 

「美咲さん、気になることがあるのだけど良いかしら?」

「はい、構いませんよ」

「生徒会室ではんぞーくんよりあらゆる面で優れているって言ってたけど、あれも本当なの?」

「ええ、事実ですよ」

 

 私がなんでもないように七草会長に答えると、全員の視線が私に集まる。

 そして七草会長は微笑みながら続けた。

 

「じゃあ、達也君と美咲さんはどっちが強いの?」

「私です」

 

 七草会長の問いに対して私は即答で返す。

 先ほどの試合を見てる七草会長達は信じられないような目で私を見て来る。

 

「良ければ、達也君と摸擬戦しているところ見てみたいんだけど……」

 

 ダメかな?と言いたげな視線を私に向けて来る七草会長に返そうとしたが、先に達也が口を開いた。

 

「会長、残念ながらそれは出来ません」

「それはどうして?」

「美咲がわざと負ける以外に俺の勝ち目がないからですよ」

「まあ、そういうわけなので、諦めてください」

 

 私は達也の言葉の後に続けて微笑みながら七草会長に返す。

 達也の言葉に七草会長達は驚き、目を丸くして私を見るが微笑んで流す。

 達也の言葉で余計に興味が湧いたのだろうが、私は「しませんよ」とくぎを刺す。

 それで七草会長達は諦めたようで、生徒会室に戻ることになった。

 生徒会室に戻ると、達也と渡辺先輩は風紀委員会本部に移動した。

 私と深雪は生徒会の仕事を教えて貰う。

 その後、達也から風紀委員会本部での話を聞きながら家に帰る。

 

(勢いで風紀委員会に入らせたけど、問題はなさそうね)

 

 風紀委員会が服部先輩のような人達ばかりだと大変かなっと心配したが、大丈夫そうなので安心した。

 夕食後、自分の部屋に戻りしばらく読書をして過ごした。

 喉が渇いたため、リビングにお茶を飲みに行くと地下室から魔法の反応がした。

 

(深雪、地下にいるのかな?)

 

 お茶を飲んだ後、地下室に様子を見に行くと二人がいた。

 下着姿にガウンを羽織っただけの深雪と床に倒れた達也。

 

「あなた達、なにしてるの?」

「お、お姉様!?いつからそこに!?」

「今よ」

 

 私の言葉に深雪が驚くが、私は深雪の問いに答えながら状況を確認する。

 見た感じでは、CADの調整後に深雪が悪ふざけで達也に魔法を放ったのだろう。

 私が感じた魔法の反応は深雪が達也に放ったかな。

 

「じゃれ合うのは良いけど、ほどほどにしておきなさいよ」

 

 深雪に注意をして私は自室に戻る。

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