オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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ブレミシャインと結婚したのでニアールお姉様もロドスに来てくれるはずです。因みにブレミシャイン持ってません。
フレイムテイルは義妹としてウチに引き入れます。


喧騒の掟 1

「よう、みんな。元気にしてるか?」

 

夕方の龍門のスラム街──。細々と暮らす身寄りのない子供達のもとに、大きな袋を持った男が現れる。

 

「あ!イラ兄ちゃん!!」

「わあああ!おっきなふくろ!何が入ってるの?」

「これか?それはな──」

 

目を輝かせながら袋に夢中になる子供達に笑いながら、イラはその結び目を解く。すると中に入っていたのは──。

 

「キャンディーだ!」

「マシュマロもあるよ!マシュマロも!」

 

キャンディー、マシュマロ、チョコレート。様々なお菓子がこれでもかと詰まっているその光景に、子供達は歓喜の声を上げる。

 

「今日は安魂祭だからな。ヴィクトリアの菓子が特売で売ってたから買ってきたんだ」

「これ食べて良いの!?」

「当たり前だろ?みんなが食べてくれないと俺困るぞ…」

 

その言葉を皮切りに、一斉に群がる子供達を見ながらイラは優しげな笑みを見せる。すると、一人の少女が申し訳なさそうにイラに問いかけて来た。

 

「でもイラお兄さん、これだけのお菓子だったら、その、お金が…」

 

その言葉に目を丸くしたイラは、眉を少し上げながらその少女の頭に手を置く。そして、くしゃくしゃと撫で回した。

 

「子供がそう言うこと気にするもんじゃないんだぞー。俺はそんな気難しい顔されるためにコレ買ってきたわけじゃないんだけどなー」

「あう、あう!ごめんなさい」

「わー!それ楽しそう!おれもやってー!」

「あ!ずるーい!わたしもー!」

 

今までお菓子に夢中だったのが、標的を少女の頭を撫で回しているイラに変えて子供達は突撃する。そしてイラはそれに応じて彼等を抱き上げる。とてもスラム街に流れる雰囲気とは思えない、穏やかな時間が流れていた。

すると、そこに一つの足音が響く。イラがその方向に目を向けると、紫の着物を着た、ザラック族の老人が袋を持って歩いて来ていた。

 

「ありゃ、これは先手を取られたの。この年になると足腰がままならんものよ」

「…その年でそんな重い荷物持ってよく言うぜ、お爺ちゃん」

 

その言葉に口元の笑みを数段深くして、老人は袋の中の菓子を、イラに差し出した。

 

「今日は安魂祭。子供も大人も関係なく盛り上がる日だのに、お前さんが手ぶらというのは、ちと寂しいからの」

「おお、ありがとうお爺ちゃん!」

 

また子供達と同様に目を光らせ、菓子を受け取るイラを見て老人は笑う。

 

「いつも感謝しておるよ、お前さん。スラム街の子達は前より笑顔になっている。今日の様にな」

「…なんだよ急に、よせやい照れるだろ!」

 

唐突な賛辞の言葉に照れ臭そうに頭を掻くイラ。

 

「俺は龍門を守る仕事に就いてるんだ。そこにゃ繁華街もスラム街も関係無いからな!」

「ふふ…おや、そうだ。今日は近衛局の仕事はお休みかい?」

「ああ、なんか分からんが非番になった。『今日は問題が起こらないから』って。絶対起きると思うんだけどなあ…」

「そうか、そうか…。まあ今日だけでもゆっくり楽しむと良い。この子達の相手はこのおいぼれに任せてくれんかの?」

「え、でも…」

 

目の前の老人に全て任せて良いものか。イラは少し渋った様子を見せる。ただでさえ子供の人数が多いのに、老人一人で捌くのはきついのでは…?そう考えていると、子供の一人がイラに笑顔を見せる。

 

「大丈夫だよイラ兄ちゃん!いっぱいあそんでおいで!」

「な、あ、遊んでおいで…?俺、一応年上なんだけど…」

「ほっほっほ。どうやらこの子達の方が安魂祭の楽しみ方が上手い様じゃの」

 

子供の大人びた発言に虚を突かれるイラは頭を掻く。その様子を見た老人は低い声で笑った。

 

「……じゃあ、任せても良いかい?お爺ちゃん」

「最初からそう言ったろうに。さ、お行き」

「──ありがとな!じゃあ、良い夜を!お前等も楽しめよ!」

「ばいばーい!」

 

そう言ったイラは、手を振りながらスラム街を走り去って行った。それに両手を大きく振って応える子供達を横目で見て、老人は思考に耽る。

 

(……近衛局は我関せずか。ちゃんと約束は守るようになったようじゃの。──それにしても…まだ、あの子は振り切れておらんのか)

 

「──おじいちゃん?どうしたの?」

「ああいや、何でもないよ。ほら、ビスケットなんてどうだい?」

「わーい!」

 

子供達は歓声を上げた。老人はその様子を見ながら、密かに獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

(どれ…ちと荒療治と行くかの…)

 

 

安魂祭。その裏にて、何者かの陰謀が蠢き始めた。

 

 

 

 

 

 

「ういーす、ジェイ。やってるか?…あれ、ワイフーさん?」

 

スラム街を出たイラが向かった先は、ジェイの屋台。ぶらぶらする前に、腹ごしらえでもしようとその暖簾を潜ると、顔馴染みであるフェリーンの女性、ワイフーが席に座っていた。

 

「お疲れ様です、イラさん。今日は近衛局のお仕事は無いのですか?」

「そうなんだよ、今日は非番。あ、ジェイ俺いつもの」

「かしこまりやした」

 

ラーメンを啜りながら問いかけてきたワイフーに答えながら席に着く。ジェイはイラが注文する前からその内容を分かっていたのか手を動かしていた。

 

「二人はどうしたんだ?屋台デート?」

「ブッハァ!?」

「あっちぃ!!」

 

イラがその言葉を発した瞬間、ワイフーがラーメンを吹き散らす。そしてそれが対面にいたジェイの顔にぶちまけられた。

 

「あ、あ、あ、あのですね!誰がこんな目付きも悪くてぶっきらぼうで口下手な人とデートなんぞするんですか!!不純異性行為ですっ!」

「そんな言う?なあ、アンタ俺のこと実は嫌いだろ」

「あ、イヤ、そういうことではなくて。ちゃんと優しいところもありますし、料理も美味しいですし…。嫌いではありません」

「お、おう…」

 

(あ〜青春だわ。今俺の目の前で青春が起こっておられる)

 

テーブルに肘を付き、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべるイラ。それに気づかず痴話喧嘩を繰り広げている二人を眺めていると、イラの背後の暖簾が捲られる。

 

「あの、注文いいかな?」

「あ、ああ…すいやせん。どうぞ」

(……ん?)

 

その女の声を聞いた瞬間、イラの背筋が凍える様な感覚に襲われた。二の腕を見てみると鳥肌が立っている。

首を傾げながらもひとまず寒気を止めるために、イラは温かいお茶をひと啜りした。

 

「魚団子スープひとつ」

「へい、まいど。少々お待ちを」

「大丈夫だよ、急ぎじゃ、な────」

 

その時、女の声が急に途切れる。ジェイとワイフーは何事かとその女の方を向く。

──そこには、街を歩けば皆が振り返るほどの容姿を持った女が立ちすくんでいた。その目…というか、瞳孔は開かれており、二人は(ああ、またイラの女関係か)と納得していた。

 

「──ごん?」

「…っ。お、おう。久しぶり、ですね」

 

その会話に、またもや二人は首を傾げる。

 

()()?旦那の事か?)

「ほ、本当にごん──なの?」

「………はい」

 

その女はゆっくりとイラの顔に手を伸ばす。それは、長年待ち望んでいたものがようやく手に入るかのような表情であった。

恍惚の笑みを浮かべた女は、イラの頬に手を添えて、その顔を徐々に近づけていく。

 

「ごん、ごん!会いたかった──」

「…やめろください」

「──え」

 

あと数センチでお互いの唇が触れるといったところで、イラがその手を払い、女との距離を置く。それを受けた女は、信じられないといった様子でイラを見つめた。

 

「な、なんで──?わ、私だよ!モスティマだって!君の彼女の──!」

 

 

((彼女ォォ!?))

 

 

ジェイとワイフーは同時に白目を剥く。今何といったこの女性は。この唐変木で鈍感で天然女キラーで悪意の無い悪意で病み女量産機のイラに、彼女?

そんなはずは無い、と二人は頭を振った。どうせまたイラがこの人に何か勘違いをさせたのだろう。そうに違いない。

 

「……俺達の関係はあの時から何も無くなったですよね。もう恋人じゃねえです」

「な、何言ってるのか分かんないよ!それに、あの時は私は別れないって拒否したでしょ!?…あ、分かった!私達の帰宅してからのルーティーンをすれば思い出すかも!ほら、早く舌出して?ごん、早く!」

「──後。今の俺の名前は『イラ』だから」

 

必死の形相で青い舌を出し、またもや顔を近づけようとする女に対し、その顎を掴んで動きを止めるイラ。

 

「……おい、ワイフー。これもしかしてマズイんじゃねえのか」

「マズイです…。もしイラさんを好んでいる他の方がこれを聞けば──」

 

こそこそ話をしていた二人は揃って背筋を震わせた。

龍門近衛局のトップ2に加え、凄腕バウンティハンター。さらにはロドスのオペレーターも攻略していると噂がある彼に交際していた女性が居たという情報は、もしや龍門の命運を分けるものなのでは──?

 

「俺たちはとんでもねぇもの背負っちまったのかもしれねえ…」

「──何でこんなことに…!」

 

「──ねえ。私達もう本当に別れたの?何で!?何処がいけなかったの?私直すから!だからより戻そ?ね!?」

「そこ…。そこなんだよモスティマ…。あのね、あのですね?重いんだ君は」

「──分かった!じゃあお腹の肉削いで軽くしてくるね!それならまた前みたいに付き合ってくれるんだよねっ!!」

「もうヤダこの女」

 

なんで物理的な話になるんだ…と頭を抱えるイラ。その女──モスティマは、魚団子スープを飲み干し、イラの元へと擦り寄っていく。

 

「実はね、今日ここに来たのは偶然だったんだ。仕事が入って、その腹ごしらえとしてここを選んだんだよ。そしたら、君が居た。これってもう運命じゃない!」

「…仕事?安魂祭の為じゃないのか、ですか?──それって」

「──敬語やめて。怒るよ」

「すません」

「うん。で、その仕事が終わったら…一緒に会おうよ」

「え」

「良いでしょ?沢山褒めてよ。仕事の話とかするからさ」

「いやお前の仕事内容って最重要機密が多──」

「じゃ、そう言うことで!仕事が終わったら迎えに行くから、…そうだな、中央広場で待ち合わせね!」

 

モスティマはそう言うと、代金を置いて颯爽と屋台を出て行った。後に残ったのはぽかんとした屋台の店主と大学生、そして疲れ果て、項垂れた様子の青年だけであった。

 

「…旦那。あの方は──」

「言うな」

「旦那…!」

 

ジェイは静かに涙を流した。憧れの恩人がこんな縮こまった背中になるなんて。

 

「スカジさんの事はどうするんですか?」

「え…スカジさん?何でスカジさんが出てくるんだ?」

「はあ……」

「え?え?」

「旦那ぁ……」

「え?」

 

龍門B級グルメトップの屋台。安魂祭という祭りで街が賑わう中、そこだけは溜息が鳴り止む事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だから貴方はもう少し女性の気持ちを汲み取って下さい!」

「いや、でも俺も頑張ってて……」

「じゃあ何ですかこの結果は!?」

「はい……すみません……」

(こわ……)

 

夜の闇が深くなり、ジェイも店じまいをしている頃、イラはまだワイフーに叱られていた。その鬼のような剣幕は大の大人を萎縮させるほどで、イラは肩を落としながら有難い説教を聞いていた。

 

「なあ聞いたか?さっき橋の方で交通事故が起きたらしいぜ!」

「しかもちょっと前には高速道路でガス爆発もあったんでしょ?怖いわね…」

 

ふと、ワイフーの耳にその会話が入る。

 

「…高速道路でガスが原因の爆発?おかしいですね…」

「はい…おかしいです……」

「……オイ、アンタ。近々テストがあるんだろ?」

「適度な息抜きも必要だとは思いませんか?」

「はい…思います…。──え?」

「まさか……」

 

男二人は顔色を悪くする。目の前の少女、ワイフーは非常に正義感の強い大学生だ。強きを挫き、弱きを助ける。それが自分の信じるただ一つの道であるから。

故に、ワイフーは騒乱に飛び込んで行く。これはもうどうしようもなく、彼女の性分なのだ。だから仕方が無い。人々を悩ませる事件を聞けば、彼女がその腰を上げるのは、当然の事であった。

 

「いやいやいや!危ねえからやめとけ!俺が代わりに見に行くから!」

「危ない?ただ事故の現場を野次馬しに行くことの何処が危ないんですか?それにもしもの事があっても自衛の手段はありますから」

「…旦那。諦めた方がいいですぜ。こうなったコイツは梃子でも動きゃしねえ」

「…流石私の事をよく分かってますね。じゃあ行きますよ!」

「あ、おい!ワイフーさん!ああもう…!」

「はあ…。そりゃあ息抜きって言えんのか……?」

 

意気揚々と駆け出したワイフーに慌ててついて行くイラ。その後を気だるげに歩くジェイ。今ここに、即席の警備隊が誕生した。

 

 

 

 

 

「ほら、もうちょっとで合流地点に着くよ!」

「はい…!」

 

廃れた路地裏。その場に似つかわしく無い可憐な衣装を纏った少女と、巨大な盾を持った少年が走り抜けていく。

 

「それでね、酷いんだよテキサスさん!私と喋ってたのに、イラさんが来た瞬間にしっぽ振って目がキラキラして生返事なんか返して!」

「えと、その…イラさんって人は、ペンギン急便の方なんですか?」

 

可愛らしく頬を膨らませるアイドル──ソラに、フォルテの少年、バイソンが問いかける。先ほどから会話に出てくる『イラ』という人物に、彼は少し興味が出ていた。

 

「ううん、あの人は龍門近衛局で働いているの。強いし、性格もめちゃくちゃ優しい!良い人なんだけど…」

「…?」

 

何処か奥歯に物を挟んだような物言いのソラ。普段キッパリとものを言う彼女からは珍しいその反応に、バイソンは嫌な予感がする。

 

(ソラさんがこんなに渋るって…よほどの事なんじゃ──)

「彼はね──女性関係が物凄く爛れてるの」

 

 

「……はい?」

 

 

目を伏せたソラに目を丸くするバイソン。

 

「まずウチのエクシア。彼と会った時はずぼらで銃しか見えてないって感じだったのに、最近じゃ彼のパトロールの日をメモってて、その日は今までしてなかったメイクとかし始めたりしてるの。百パーセント恋してるね」

「え、あの人がですか?」

 

バイソンから驚愕の声が上がる。

先ほど会ったエクシアは荒々しい表情で銃を乱射するトリガーハッピーな女という印象だった。まさかそんな乙女な部分があるとは。

ソラの口はまだ閉じられない。

 

「テキサスさんも。多分一番独占欲が強いんじゃ無いかな。イラさんと二人でいる時、他の女の人がイラさんに近づくだけで殺気出すくらいだから。…ずるい!私も独占欲剥き出しにして欲しい!」

「は、はあ……」

「まあ、他にも龍門近衛局のトップの人とかロドスのエリートオペレーターとかいっぱいオトしてるらしいけど。あ、バイソンくんはイラさんみたいになっちゃダメだよ!ちゃんと一人の女の人を一生懸命愛する事!」

「は、はい」

 

その有無を言わせない剣幕に頷くことしかできない。まあバイソンは自分にそんな異性を寄せつける力などないと思っているので、その心配はないだろう。

 

(……何か、多分その人も苦労してるんだろうな…)

「あ、居た!おーい!テキサスさーん!エクシアー!クロワッサンー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スラム街にて──。肉を叩く重い音と、悲鳴が路地に響く。

 

「チッ!命が惜しければ吐け!鼠王は何処にいる!?」

 

そのイラついた声を上げる黒服に身を包んだマフィアは、数人で何かを囲んでいる。よく見てみると、そこには腹部を押さえた男が蹲っていた。

 

「し、しらない…。鼠王ってなんなんだよ、本当に聞いたこともないんだ!」

「テメェ…逆らうと痛い目見るぞ!」

「おい、カポネさんはカタギには手を出すなと…」

 

また拳を振り上げた黒服に、別の黒服が口を挟む。しかし、拳を振り上げた方はそれを鼻で笑う。

 

「こんな汚ねえ奴がカタギだと?コソコソしやがって、ゴミみてえな感染者に決まってる!その化けの皮剥がしてやろうか?アア!?」

「ぐ…ま、待ってくれ!もう殴らないで──」

「口が固え野郎だなあ!?」

「がああ!!」

 

その懇願を無視して、マフィアは男の腹を殴る。そして何かが折れる生理的嫌悪を催す音と共に、男は崩れ落ちた。

それを見たもう一人のマフィアは何事も無かったかのように通信端末の画面を見る。

 

「おい、そろそろ行くぞ。名簿によると、次のジジイがいる所はそう遠くない。魚団子を売ってるってよ。生鮮売り場の所だ」

「チッ、あーあ。時間の無駄だったぜ」

 

マフィア達は路地を後にする。残ったのはえずいている男のみ。男は骨折の痛みに耐えながらも、よろよろと立ち上がろうとする。しかし上手くいかず崩れ落ちてしまった。

 

 

「ぐ……骨まで折りやがって…!し、しかし…まずい…。彼らに伝えねば…!」

 

 

 

 

次にマフィア達が目をつけたのは、男二人女一人の三人グループであった。

 

「そこの奴ら、止まれ」

「……何か御用ですか?」

 

訝しげな表情のフェリーンの女性に、ヘラヘラと笑いながらマフィアは近づいていく。その連れの男達もこちらを目を細めて身構える。

マフィアは自分の威圧感に相手が臆している事を知り、よりその笑みを深くする。

 

(…待て、隣の男に気をつけろ、あの顔は地元のマフィアかも知れん)

(安心しろ、カポネさんの情報によるとここいらの奴らは全員雑魚だ)

 

「おい、ちょっと聞きたい事があってな。誰も面倒事にはなりたく無い、そうだろ?素直に俺らの質問に答えてくれりゃ、俺達もすぐに帰るさ」

 

そこで凶悪な顔の青年が、あることに気づく。

 

「……あんたの手、血がついてやすが」

「なに、大したことじゃない。話を聞かねえゴミがね」

「………」

 

ニヤリとマフィアは暴力をチラつかせる。大抵の奴らはこれで何でも言う通りになって来た。これからもそうだ。答えなければぶん殴ればいいのだから、気分が良い。

自分が圧倒的有利に立っている事から、マフィアはより圧をかけていく。

 

「でもお前らみたいな善良な市民なら、当然協力してくれるよな?」

「…脅しですか」

「分かってるだろ?」

「ならお断りします」

 

何?今、この女は何と言った?予想の返事と真逆の声を聞き、マフィアの思考が止まってしまう。ワンテンポ遅れて、その言葉の意味を理解したマフィアは、苛立ちを感じた。

 

「……お断りだとぉ?お嬢ちゃん、何か勘違いしているようだな…」

 

そして拳をチラつかせ、男は凶悪に嗤った。

 

 

 

「それともお前も──あそこの路地裏のゴミみてえに半殺しにされてえのか?」

「…ワイフー、さっき聞こえた悲鳴は……」

 

(そうだ、怯えろ、跪け。俺がここではルールなんだ!)

(まあ、警戒すべきは地元のマフィアだけ。女は取り囲んでボコりゃいい。そもそももう一人の男は手がプルプル震えてやがる)

 

「……念の為、質問します。貴方達、今『ゴミ』と言いましたね?ここの住民の事を言ったのですか?」

 

静かに女が問いかける。それに苛立ちが限界を迎えたマフィアは、唾を吐き散らしながら激昂した。

 

「お前の無駄話に付き合ってる暇はねえんだよ!さっさと──」

 

 

 

 

 

「ワイフー、ジェイ」

 

 

 

その時、今まで何も喋っていなかったくすんだ白髪の男が口を開いた。

 

 

「…何です?」

「近衛局は、原則逮捕状が出ないとこいつらみたいなでかい組織には手出しできねえ」

「旦那?それは──」

 

俯いたままその言葉を口に出す。すると、ジェイとワイフーは信じられないようにその男を見た。

しかし、男は続ける。

 

 

 

「でも俺、さっき言った通りさ。今日は近衛局非番なんだ。だから──。…()()()()()()()は、近衛局には一切関係無い、ただのイラがした事だから、近衛局に報告するのはやめてな?」

「良い加減その口──ギッッッ」

 

 

 

 

突然、それまで三人に尋問していたマフィアがくの字に折れ曲がる。男──イラがいつの間にか懐に入り、そしてその肋にブローを叩き込んだという行動は、拳法の達人ワイフーでも気付かないうちに行われていた。

 

「!?」

(は、速──)

 

二人は目を見開く。その時マフィアの体から無数の破砕音と、水がかき混ぜられる音が鳴る。悲鳴を上げることも出来ず、痛みと衝撃のショックでマフィアは血を吐き散らしながら20メートル程飛んでいき、そして気を失った。

 

 

「…!て、てめえ!!──お前ら、やれ!!」

 

 

一瞬の出来事で呆然としていたが、別のマフィアの号令で、一斉に数十人がイラに襲いかかってくる。

額に青筋をくっきりと立たせ、首を鳴らしながらイラはそれらを見据えた。

 

 

 

 

 

 

「──ゴミ掃除の時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安魂祭はまだ、始まったばかり──。

 

 

 

 

 




イラ 激おこ
ワイフー The正義。ジェイの事が気になってる。可愛いね
ジェイ ご飯が美味い。ワイフーの事が少し気になって来てる。付き合えよ公式で
マフィア かわいそうに
モスティマ 未練タラタラ激重ヤンデレ女。なまじ一度イラの恋人になったのでイラをもう手放したく無い。あとうちのロドスに来い
バイソンくん ショタに主導権を握らせるな

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