オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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無料十連でニアール姉さん来ました。まあ贅沢はいいやと思い、フレイムテイルは諦めてたのですが、一日一回無料単発で出ました。その後に公開求人でイフリータ来ました。
俺死ぬの?


喧騒の掟 2

「テメェ──!」

 

イラのその言葉に激昂したマフィア達はナイフやクロスボウを取り出し、目の前の脅威を取り囲む。その黒い壁に囲まれた本人達は、多対少数であるにも関わらず、平然としていた。

 

「…あ、やべ。加減し忘れた…」

「……『やべ』で済むんですかい?アレ。見てませんが絶対骨ぐちゃぐちゃですぜ」

「だよなあ…」

「悪党には相応しい末路です。…まあアレはやりすぎですが」

「だよなあ………」

「な、舐めてんのかこの──」

 

呑気に会話している三人に、ナイフを持ったマフィアが突貫していく。その標的はワイフーだ。

 

(あの男はバケモンだ、勝負を挑んじゃいけねえ。隣の地元マフィアもなかなかの手練れだろう、あの顔つきを見ればわかる。つまり、俺たちが狙うべきはこの女──!)

「む──」

 

それに気づいたワイフーは静かに構える。その様子を見て、マフィア達はほくそ笑んだ。女一人が武器を持った男に勝てるはずが無い。ましてやこっちは武装してるんだ。

そう思った次の瞬間──、マフィアの意識は刈り取られた。

 

「古今東西、悪の栄えた試し無し。罪なき人に狼藉を働く、あなた達のような卑劣な三下など、取るに足りません」

「な、なんだこの動き──!?」

「見せてあげましょう、双刀八斬法の真髄を──!」

 

そう言い放つと同時にマフィア達が紙のように吹き飛ばされる。その怒涛の勢いに押された別のマフィアが、慌ててクロスボウに手を掛け──、その手を抑えられた。

 

「え──」

「…待ちな」

 

唖然として振り向くと、自身を見つめる、柄の悪い男が立っていた。

 

「ぐ…手を離せ、クソ野郎が!」

「あー、アレだ。おめぇらなんぞ、停電して三日経った冷蔵庫の中のウニと同じなんだってえの」

「は、はぁ…?」

 

戸惑うマフィアを見て、少し目を逸らしながらぽりぽりと鼻を搔くジェイ。少しの羞恥心に駆られた彼は自分の行動に少し後悔した。

 

「…やめやめ、俺がワイフーの真似して口上並べようとしても締まらねえ。手だけ動かすのが一番だわな」

「て、てめ、いい加減離──」

「……なぁ」

 

その只ならぬ凄みを利かせながら、ジェイは手に力を込める。と、同時にミシミシと異音がそこから鳴り響いた。

 

「い、痛ぇ、ち、ちぎれる!ちぎれる!!」

「こんなんで騒ぐんじゃねえよ…。旦那のよりかはマシだぜ」

 

 

 

「な、何だこいつら──!」

「武器捨ててさっさとこっから失せろ、じゃないと…」

「……チッ、一先ず引くぞ」

 

イラが拳を振り上げるジェスチャーを見せる。先程のふっ飛ばされた者の末路を思い出したのか、マフィア達は慌ただしく去って行った。

再び訪れる静寂。ワイフーは服についた埃を払い、そしてマフィアに暴行を受けていた人の元へと駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

「…骨が折れてやがる。野郎…!しっかりしろ、今医者を呼んで来るからな!ジェイ、ワイフーさん。この人頼むぞ!」

 

イラはそう言うや否や、路地を駆け出して行った。

 

「ジ…ジェイ坊か?」

「ええ、俺です。大丈夫、今俺の知り合いが医者を連れてきやすから。そう遠く無いはずなんで──」

「ジェイ坊!俺の事は良い!急いで菫の親父さんのところへ!奴らの次の狙いは──菫の親父さんだ!!」

「──」

 

その言葉を聞いたジェイは、目を見開く。そして弾かれるように走り出した。

 

「あ!ちょっと!」

「嬢ちゃんも着いてってやってくれ…!頼む…!」

「…ああもう!──すみません、失礼します!」

 

ワイフーは一瞬逡巡したが、その男の懇願にため息を吐きながらもその後を追いかけて行った。

それを見た男は、心配そうに二人が向かった方に目を向ける。

 

「ってて…!」

 

ズキン、とした痛みが腹部を襲い、慌ててそこを押さえてゆっくりと息を吐く。少しでも痛みが和らぐように、男は静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「急げイラ!!手遅れになる前に!」

「手遅れとか言うなよ縁起でもねえ!!ほら着いたぞ!手当頼む!」

「…随分騒がしいじゃねえかよ…」

 

数分後、イラが妙齢の医者を背負って路地裏に辿り着く。医者は即座にその男の体を触診する。

 

「…内臓に異常はない。骨は折れておるが、それでもすぐにくっつくじゃろうて」

「──はあ〜〜!」

 

その言葉に、思わず腰を落とすイラ。一先ずは安心だというところで、彼は自分の知り合いが居なくなっていることに気づいた。

 

「あれ…?なあ、あんた。二人──ジェイとワイフーは何処に行ったんだ?」

「──あ…!そうだ!二人は────」

 

 

 

 

 

 

「──嘘だろ…!?」

 

男から事の顛末を聞いたイラは驚愕する。いくら二人が腕が利くとはいえ、まだ子供。マフィアなど裏の世界に関わる必要なんて無い。危険すぎる。

イラは冷や汗を流しながら、二人を探しに夜の街へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(クソ…ダメだ、見つからねえ!)

 

捜索すること十分──、現在イラは、建物の上で頭を抱えていた。普通に探しても見つからなかったので、高所から見下ろせば或いは──と思ったのだが、その策は失敗に終わる。

そもそも安魂祭で人が賑わう街中で、特定の人物を探すという細かい芸当は、イラには向いていなかった。

 

「あ…あの人に菫って人の場所教えて貰えば良かった…!」

 

思わずぼやくイラ。しかし過ぎた事はしょうがない。地道に探す方法しか自分には無いのだから。そう納得し、建物から建物へ移動を開始しようとしたその時──。

 

 

(──?この音は)

 

 

喧騒の中、イラの耳は微かな異音を捉える。それはサプレッサーを付けた銃声。その方角に振り返って見てみると、何の変哲もないバーの前に大量の車が止まっているのが確認できる。

 

「そこか──!!」

 

水を得た魚の様に、勢いよく跳びながら移動して、あっという間にイラはそのバーの屋上に到着する。そして───!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンセット通りに佇むバー『大地の果て』。そこではその店本来の用途に相応しく無い音が鳴り響いていた。

 

「たああーー!」

「ぐあああ!!」

 

ばりん!と小気味良い音とともに、マフィアが倒れる。そのエクシアの投げた酒瓶は、見事ストライクを取った。

 

「ねえねえ、見た見た!?今曲がった!将来メジャーリーガーになれるかも!」

「それはその容器が曲がってるからだろう。やろうと思えば私もできる」

「曲がった容器…?ち、ちょい待ち!それって超お高いウイスキー──」

「ギャアア!!」

「あー、あかんわ。もうあかん」

 

七桁もする年代物のウイスキーの容器と同時に、クロワッサンの守護銭の心が割れる音がする。

心なしか胸を張るテキサスを見て、バイソンは内心ドン引いていた。

 

(あ、相手は武装したマフィアの銃弾だぞ…?どうして平気でお酒で戦えてるんだ、この人等!)

 

自分が知っているトランスポーターはこんな事しない。こんなのいくら命があっても足りない。

バイソンは、必死に自身の理想のトランスポーター像を崩さないよう自我を保っていた。

 

「あ〜あ!俺の店がめちゃくちゃになってやがるぜ!最高にロックじゃねえか、くそったれ!」

 

ペンギン急便を率いるその男。見た目はペンギン、しかしその裏は常に時代の最先端を行くトップミュージシャン、人呼んで音楽界のドン──エンペラーは、銃弾が飛び交うバーの中、椅子に座って酒を口に含んでいた。

自分の店がこんな惨状になっても、この男はそんな小さな事は気にしない。男が気にするべきなのは、自分の見栄えと女の容姿の変化だけだ。

 

「安酒しか残ってねえのか!?俺言ったよな高い酒は一人一本までだって!?」

 

物凄く酒を気にしていた。するとエクシアがエンペラーに猛抗議を浴びせる。

 

「だからそうしたじゃーん!()()()()()()()()()ってさー!」

「オーケー、俺の伝え方が悪かった。今からでも遅くねえ、その手に持った酒を下ろせ。それ結構良いやつだから。無くなったら俺が凹むか──」

「とりゃー!」

「『龍門スラング』!!!!!」

 

(うわあ…)

 

バイソンの目の前で哀れなペンギンが絶叫する。それを見た彼は可哀想半分、哀れみ半分の目を向けていた。龍門の中でもトップクラスのミュージシャンに、自分がこんな視線を向ける事になるなんて思いもしなかった。

 

「あああああもうこの際だ!オイお前等!この場所ぶっ壊しても良い、奴らに俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやれ!!」

「ラジャー!」

 

半ば半狂乱になりながらも、エンペラーはその羽をマフィア達に指し示す。ボスからのお許しが出たペンギン急便の各々は、また酒瓶や椅子、皿などを構えた。マフィアも慌てて弾をリロードする。

 

「落ち着け!奴らはガラクタを投げてくるだけだ!慎重に──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、ペンギン急便とマフィア達の間の天井が破砕音と共に落ちて来た。かろうじて生き残っていた照明は全て消え、辺りは朧げな月の光が照らすだけである。

砂埃を払いながら、両グループはその中心にいる人影に意識を集中させる。いつでも反応ができる様に、各自の武器を持って。

 

 

 

「……?ペンギン急便?何で……」

 

 

 

ぶち抜かれた天井により、空気が換気され、その人影の全貌が露わになる。白色──くすんでいるが──の髪を適当にまとめ、ポロシャツにジーパンを着た男。

彼は、この場にいる人物を見て困惑の表情を浮かべる。

 

「イ……イラ!?」

「お、おう…アレ?ジェイとワイフーさんは?」

「な、何言ってやがんだコイツ?」

 

三者がお互いに首を傾げると言った不思議な空間が生まれる。ペンギン急便はなぜイラがその様な登場の仕方でここに現れたのか。マフィア達は誰だコイツと言った純粋な疑問が。そして当の本人は目当ての人物が居ない事への困惑が。

 

「……この場所ぶっ壊しても良いって言ったけどよお……流石に限度ってもんがあるだろうが!イラァ!!」

「え!?え?あ、ご無沙汰してますエンペラーさん!今日もお元気そうで何よりです!」

「〜〜〜〜〜!!!!!!!」

「イラ。辞めてくれ、それ以上煽ったら本当にボスが死ぬ」

「え?」

 

羽をブンブン振り回して悶えるエンペラーをソラとクロワッサンが撫でながら宥める。

 

「──良い加減にしろやテメェ等!!」

「ん…?」

 

その怒号に穏やか(一名を除く)だった雰囲気がまた元に戻される。イラが振り向くと、そこにはオオカミの顔をしたマフィア──ガンビーノが憤慨した様子でこちらを睨みつけていた。

 

「折角ペンギン急便を始末できるって所によくも邪魔を入れてくれたな?テメェ、それはうちのファミリーに楯突いたって事で良いんだよな?」

「始末?ペンギン急便を?…いやいや、無理無理。絶対無理」

 

小声でそれを否定するイラ。しかしガンビーノはそれに気づかず喋り続ける。

 

「よく見ればペンギン急便と仲が良い雰囲気じゃねえか。まとめて感染生物のエサにしてやらぁ」

「仲がいいってもんじゃ無いよ!」

「あ、こらエクシア。抜け駆けするな」

「あの…話聞いてあげましょうよ。あの人顔真っ赤ですよ」

 

イラの腕を抱くエクシアとテキサスにため息をつくバイソン。それを見たガンビーノはプルプルと震え、そして吼えようとしたその時、イラが口を開いた。

 

「あっと。そうだ、なあ、あんた。ちょっと質問があるんだけど」

「あ?テメェにそんな権利はねえ──」

 

 

 

 

「──スラムの人達を部下に襲わせたのはお前か?」

 

 

 

「────ッ!?」

「ひ…!」

「っ」

 

 

ガンビーノの全身の毛が逆立つ。それは命の危険を感じた時の、生命が発する防衛反応。本能が警告している。コイツには近づくなと。

更に、抱きついていた事でゼロ距離からモロにその威圧を貰ったのか、エクシアは腰を抜かし、テキサスは目を見開いて耳を震わせていた。

 

 

 

 

(何だ…?この俺様が怖気付いてるって言うのか…?バカ言うな、俺はガンビーノだ。誇り高きシチリアの戦士だ!こんなガキにビビるなんてザマは──)

 

 

 

「──なあ?」

 

「………知らねえさ。大方俺の仲間が勝手にしたんだろ。悪知恵が働く姑息な奴だからな」

 

吐き捨てる様に言ったガンビーノを見て、イラはふむ、と顎に手を当てる。

 

「どうしようか……。エンペラーさん、俺何すればいいすかね?」

「あ?決まってんだろ、そいつ等全員ぶちのめせば良いんだよ!そしたらお前の目当てのヤツの場所も聞けるだろ!」

(完全に私情だ…!)

 

バイソンの考えの通り、エンペラーは自分の店を荒らされた事に腹を立てている。割合で言えば正義感一、私情九だ。ペンギン急便だけでも事足りるが、イラにも相手をさせれば相手は綺麗に吹っ飛んでいく。その爽快感を味わう為、エンペラーはイラに指示を出した。

勿論イラはそれに気づく事無く、目を輝かせながらエンペラーを見つめた。

 

「おおお…!天才ですねエンペラーさん!」

「え?嘘でしょ?信じるのこの人?」

「──ハッ、俺だぜ?当たり前だ。…さあ、思い切りやっちまえ!」

「了解…!」

 

しかし、イラに自由にさせた事こそが、エンペラーにとって一番の不運であった。

気合を入れたイラは、バーに設置されたカウンターに手をかける。そして──。

 

 

「──ふんっ!!」

 

 

その瞬間、爆音が『大地の果て』の内部で奏でられる。それは何か、重機で建物を壊すかの様な、はたまた大木が嵐に見舞われへし折られる様な──そんな音が。

イラが少し顔を顰め、筋肉を膨張させる。その様子に比例して、その破砕音は徐々に大きくなっていく。

 

「え、ちょ、ちょちょちょちょ!?」

「──ソラ!バイソン!カウンターから離れろ!」

 

「…嘘だろ、オイ」

「ば、化け物…!」

 

 

「よい、しょっ、と……!!」

 

 

バガン、という音と共に、バーカウンターが持ち上げられる。床と接合していた面は、補強用のニスごと剥ぎ取られており、木材が露出していた。

あまりに現実離れしたその行動に、マフィアが拳銃を構えるのも忘れたその時、イラが動く。持ち上げたバーカウンターを、ゆっくりと構えて───。

 

 

「うりゃああああッ!!」

「テメェ等引くぞッ!撤退だ!!」

 

 

バーカウンターが凄まじい速度で投擲された。それと同時にガンビーノ達はバーの外へと転がる様に脱出をする。

出入り口とバーカウンターが接触し、耳を塞ぎたくなる様な音が鳴り響くと同時に、事前にガンビーノ達が設置しておいた爆弾が起爆。

『大地の果て』は、見るも無惨な姿になり、後に残された更地には唖然としたペンギン急便とその元凶だけが残った。

 

「あ!逃げんなお前ら!」

「──アンタじゃボケェェェェェ!!」

「へぶっ」

 

ガンビーノ達が逃げたのを見たイラは、慌てて走り出す。それを背後からクロワッサンの渾身のドロップキックが襲った。地面にキスをするイラ。

 

「い、痛…!な、なにすんだよクロワッサ──」

「アンタ!ホンマに何なん!?これ見ぃ、誰かが店に戦車でも持って来たんか!?ええ!?」

「い、いやそれはエンペラーさんが思い切りやれって…」

「限度!限度って言葉知っとるか!?誰が店全壊させ言うとんねん!酒も備品も何もかんも残っとらん!!」

「ご、ごめん」

「ごめんで済めば警察はいらんねん!!」

 

クロワッサンに捲し立てられ、小さく身を縮こまさせるイラを見て、バイソンは不思議な感覚になる。

先程まで人外の力を見せた得体の知れない人物が、今や親に叱られる子供のような印象を受けた。

 

「ボス?大丈夫?おーい、ボスー…。あー、ダメだ。テキサスさーん、ボスが放心してますー」

「…放っておいたらいずれ治る」

「というか、イラは何でここに来たの?」

「…あ!そうだ!こんな事──いえこんな事という訳では無いのですが今は優先するべき事があるのです」

 

『こんな事』と言った瞬間クロワッサンからゴミの様な目で見られたイラは敬語を使いながら、これまでの経緯を話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うええ…!?そりゃちょいやばいね」

「ああ。いくらあいつらがそこ等のやつより強いとはいえ、まだ子供だ。だから、早く見つけないと」

「……決めた」

 

イラが焦った様にそう言ったその時、エンペラーが静かに呟いた。その場の人物が一斉に彼を見る。

 

 

 

 

 

「奴らがここまで頑なに安魂祭の日に喧嘩を売ってくる以上──いっそ奴らを永遠に安息させてやろうじゃねえか……!!」

 

 

 

 

 

ブチギレ状態のエンペラー。その怒りの矛先は、哀れなマフィア達に向けられていた。

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