オペレーターに勝ちたい! 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
『大地の果て』での一悶着の後。怒りに怒ったエンペラーの指示を受け、ペンギン急便とイラ達はそれぞれ二人に分かれてマフィアの情報を集めていた。
チーム分けの際、想いを寄せている男と行動したい二人──エクシアはかつてないほど真剣な表情で拳に祈りを捧げ、テキサスは目を閉じて相方との決着を待ち望んでいた。奪われる運命のイラは呑気にバイソンと喋っていたが。そしてその
「──ん。イラ、エクシアからの通信だ」
「お、来たか」
テキサスの呼び掛けに反応し、気を失ったマフィアの胸ぐらを離しイラがテキサスに近寄る。
[もしもしテキサス、聞こえる〜?]
「…おいテキサス、これもっと音量大きくできねえの?」
通信機から聞こえるエクシアの声は確かに聞き取り辛い音量であった。近くに移動しても充分にその声が聞けないイラは、テキサスに音量を上げて欲しいと頼む。
「ああ、上げ──られない。すまない」
テキサスは首を振り、その考案を却下した。親指で音量調整スイッチを隠しながら。
「そっかー…。じゃあ後で教えてくれ、俺は見張りしてるから」
「いや、それは手間だ。エクシアの情報を一字一句私が伝えるのは難しい」
「…はあ」
「だからイラ、もっと近くに来い」
「近くっつったって…これ以上近づくと…」
「いいから。屋台の青年達の情報もあるかも知れん」
渋るイラに、テキサスはたたみかけるように口を開く。探し人の名を出されては、イラもそう簡単に首を横には触れなかった。
「…じゃあ、お邪魔します」
「ああ、隙間を作るなよ。聞き取りづらいからな……」
「いや、隙間は別に──」
「エクシア、どうだった?」
イラの言葉を無視しつつ、テキサスはエクシアの返事に応答する。
[うん。0時からのイベントに紛れて、こっそりあたし達をやっつけちゃおー!って作戦だって!だよね?]
[……ああ、──俺の事は殺さないんだよな?]
[もちろ〜ん!ありがとねおにーさん!そんじゃおやすみ〜]
[え、うわ!]
殴打音と共に男の悲鳴が聞こえる。どうやらエクシアが男を殴って気絶させた様だ。その乱暴な手口に思わずため息が出る。
「はあ…まあいいや。俺たちの方も同じだ。あいつら、チームを分散してやがる」
「すんすん…。ああ、ただリーダー自らが戦闘に参加するからには、必ずもう一人が司令塔になり、部隊の配置を指揮しているはず…だ。すん、すんすん…ふぅ……」
「じゃあ、俺たちはそいつを探し出してぶっ飛ばせば勝ちって事か。シンプルでいいや」
[うんうん!まどろっこしいのは面倒だからねー!…テキサス?さっきから鼻息凄いんだけど何してんの?]
エクシアの指摘にイラはテキサスの方を向く。すると彼の鼻頭を、ループスの耳が覆った。
「んぶ」
「んんっ!?」
「…お前何やってんの」
突然耳に異物が入ったテキサスは体を震わせ、顔を赤らめながらイラの首筋を嗅ぐ行為を中断する。
「──い、いきなり入れるな…!ビックリするだろう…!」
[──は?]
「違う待てエクシア。俺は何もしてない」
[なにしてんの、ほんとに]
「穴に突っ込まれた」
[────は???]
「頼みがある。テキサスお前は黙っててくれ」
イラは絶望しながらテキサスの口を手で押さえた。ふがふがと手元の狼が暴れる中、必死に弁解を試みる。
「あのな?ただ俺が間違えてテキサスの耳に顔突っ込んだだけだ。それだけだから機嫌なおして?」
[……]
途中から及び腰になるイラだったが、どうにか真実を伝える。通信機はしばらく無音のままだったが、しばらくして不満気な声が聞こえてきた。
[…まあ良いや、許したげる。でもあたしも同じ事してもらうから]
「は?おいちょっと──]
[ちなみに私は許しませんからねテキサスさんは渡しませんよこの〇〇〇〇が]
「ソラちゃん?君アイドルだよね?ソラちゃん?」
[乙女の戦いにアイドルなんて関係な──ボス?あ、あれ?フロート登っちゃうの!?ち、ちょっと待って──!]
慌てた様子で声を上げるソラとの通信が切れた。多少危険はあったとしてもペンギン急便の一員。それにエンペラーも付いているのでそこまで絶対的な危機には至らないだろうと、イラは密かに胸を撫でおろす。
「……クロワッサン、バイソン。聞こえるか?」
まだ仄かに赤面したテキサスは、次に守銭奴と哀れな新入りへ呼びかけた。すると少しのノイズ音と共に、少年の少し高い声が聞こえる。
[はい。テキサスさんが仰っていた、その司令塔に関して少し意外な発見が──]
その時、突如通信機から銃声が聞こえた。
「──大丈夫か!?」
[すみません、また後で──]
イラが思わず声を上げる。バイソンの声は最期まで続く事無く途切れていった。
「向こうはトラブルが発生したようだ。エクシア、マフィアのルートの確認が終わったらクロワッサンと合流して」
[了解〜]
「ソラ、そちらはどうだ?」
[えっと…彼らの動きは複雑ですが、二つのチームに分かれて移動してるみたいです。多分、罠かと──]
[そんなに複雑な事はありませんよ。敵の内側に問題が発生した様です。これはチャンスです]
[うわぁ!?]
「──誰だ、こいつ?」
ソラの報告に被せるように、落ち着いた低い男性の声が聞こえてくる。ソラは驚き、イラは聞いた事のない声に眉を顰める。すると、テキサスがため息を吐きながらその声の主を咎めるように口を開いた。
「…なぜ仲間内のチャンネルをハッキングしているんだ。普通に通信をすれば良いだろう…。あと、戻ってきていたなら連絡のひとつくらい寄越せ」
「知り合いなのか…?」
[ああ、ごんさんとは初めましてですね。改めまして、私はイースと呼びます。ペンギン急便のメンバーです。以後、お見知り置きを]
イラはその言葉に目を少し開く。自分の昔の名前をなぜこの男が知っているのか、問い詰めようと口を開こうとするが、それを見越した様にイースは再び喋り出す。
[クロワッサンさんとあの新人くんの座標については皆さんにもう送ってありますよ。いや龍門ネットの通信速度は本当に気持ち良いものですねえ]
「…?わかった。各自の任務を遂行したら、それぞれ彼らのサポートに向かってくれ。──これは反撃の絶好の機会だ」
そう言いきり、テキサスとイラは移動を開始した。
[イース〜?]
[はい。何でしょうかエクシアさん]
テキサスの通信機からまだ会話が聞こえる。想い人と密着するために音量を最小限にしていたので、後ろを走るイラには聞こえていない様子だ。
(……ふふ。駄目だな、自然と顔が緩んでしまう)
元マフィアのテキサスもひとりの女である。普段の鉄面皮な表情は、彼と行動するだけでドロドロに溶けていく。彼の顔を見るだけで、今咥えているチョコレート菓子のように心が甘い気持ちになる。
(…それに甘いだけじゃない。ごく稀に見せる、先程の様な殺気──)
バーでのイラが発した威圧を思い出すたび、下腹部が疼いて仕方ない。ガンビーノと同様、その身体に圧倒的な恐れと威圧を叩き込まれた彼女の中では、『イラに征服されたい』というおぞましい欲が渦巻いていた。
[あのさ、さっき言ってた“ごん”って、イラの事?]
[ああ、今の彼の名前はそうでしたね。イラさんです]
[なんでイラの昔の名前知ってるのー?]
その話題に若干トリップしかけていた意識が戻ってくる。テキサスも気にはなっていた。イースとイラは初対面のはずである。昔ながらの仲であれば納得はできるが、先程のイラの反応からしてその説は否定される。では何故なのか。テキサスは静かに耳を傾けた。
[教えてもらったんですよ、彼女さんに]
(…………え?)
[──か、彼女ぉ!?…なーんてな!そんなどぎつい冗談誰もウケへんって!]
[そ、そうですよイースさん。あの人に彼女は居ないって──]
[?いえ、居られますよ。本人からそれはもうアツアツなカップルと聞いておりますが…]
その言葉を最後に、通信機は無音となる。クロワッサン、ソラ、バイソンは絶句していた。エクシアとテキサスがイラに恋心を抱いているのは当然周知の事実。今日ペンギン急便に来たバイソンでも理解しているほどその好意は見え見えだった。では、今その事実を聞かされた二人は──。
[…あはは〜……────嘘つき]
「……そん、な……」
[イース。嘘は良くないよ。イラに恋人?いるわけないって、だって本人が言ってたんだから]
[え?いや──]
[だから嘘だっつってんの。と言うか誰?そんなクソみたいな嘘ついた女。教えてよ。ねえ、早く。早く。早く]
[アッ…クロワッサンさん、これ、不味いやつですか?]
[うちに聞くな。触らぬ神に祟りなしや]
「………」
「?おい、テキサス?何かあったのか?ここからでも声が聞こえてくるんだが…?」
歩みを止め、唇を震わせ、落ち着かない様子のテキサスを見たイラは心配そうに駆け寄る。
[…あ、そうだ。本人に聞けば良いだけじゃん…。テキサス、イラに確認とってよ。彼女居ないよねって]
「あ、ああ…分かっ──」
(それで──それで、確かめて…それがもし、事実だったら…どうするんだ?)
テキサスの思考がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。確証が持ててない今でもこの有様なのだ。真実を知ってしまったら──自分は、何をするのか分からない。
ただ──今の、心の半分を無理矢理削り取られた様な感覚は確実に悪化する。壊される。いや、壊されれば、あるいは楽なのかも知れない。
「嫌…だ…!」
だが、テキサスは大人にはなれなかった。一人取り残される恐怖心に勝てなかった。
[──テキサス?]
「私は聞かない。聞いてしまえば、それが事実になる。それなら、私は夢の中のままでいい…!」
[…テキサスさん…]
[……じゃあいいよ、あたしが聞くから…!イラと変わって]
「ダメだ!絶対に…!!」
[テキサス!!]
「おい、マジで何話してんだよ…?大丈夫か?」
いつの間にかすぐ横にイラの顔があった。テキサスは目を見開くと同時に通信機の電源を切ろうと手を伸ばす。しかしそれよりも早く、イラが通信機を取り去った。
「あ…っ!!」
「もしもし?何かあったのか?」
[──イラ、あのさ。聞きたい事があるんだけど…]
聞きたい事?と首を傾げるイラを見て、血相を変えたテキサスがイラから通信機を取ろうと手を伸ばす。しかし、体制を変える事でそれをセーブするイラ。
「やだ、やめろ!頼む!エクシア!エクシアっ!!」
テキサスの懇願も虚しくエクシアは、通信機越しからでも分かる様な震えた声で──イラに問う。
[あ、あの、さ──イラって、か、彼女…い、居ないよね…?]
「え?居ねえよ」
「……え?」
[……え?]
あまりにも早い返答に思わず呆気に取られる一同。しばしの沈黙の後、全員から間の抜けた声が出た。
「い、居ないのか…?」
「居ねえよ…?つーかどっからその情報が出てきてんだ…」
イラは呆れた表情でテキサスを見る。
[──ご、ごめんごめん!いや〜!そうだよね!イラに恋人なんか居るわけないよねー!]
「おいコラどう言うことだぶっ飛ばすぞ」
「…良かった」
[イースはん、けったいなこと言うもんやないでー!]
[ああ、すみませんでした。…おかしいですねえ…?]
イースの困惑の声は、普段より数段明るくなったエクシアの声にかき消されていった。
「…イラ。止まれ」
「あ?どうした」
突如テキサスが立ち止まる。イラが彼女を見ると、キョロキョロとあたりを見回している。しかしそのループス特有の両耳は、一方向へと向いていた。
「…この壁の向こう側から、金属音が聞こえた。多分、奴らだろう」
「……あ〜、そういうことか。分かった、離れてな」
納得したイラは、手首を回しながら壁の前に立つ。腰を低くし、右腕を引く。そして、その力一杯握られた拳を──壁に叩きつけた。
その凶悪な暴力を受けた石の壁は、破砕音と共にボロボロと砕ける。やがて土煙が晴れ、壁の向こう側が見えてくると、そこには──。
「──ビンゴだテキサス」
「ああ。全員揃った様だな」
ペンギン急便の面々、そして黒服達を率いた、狼の顔と、眼鏡をかけた目つきの悪いマフィア。
「うーん、この感じは最終決戦ってやつかな?ちょっと早くない?」
「問題ない。こんな茶番は早く解決するに限るからな」
ソラとテキサスの会話をよそに、イラは周囲を見渡す。
(…ジェイとワイフーが居ねえな…。まさか…)
「おい」
「あん?」
イラは最悪の結末を予想し、冷や汗を流しながら眼鏡のマフィア──カポネに話しかける。
「お前らここに来るまでに…あーっと、可愛らしいフェリーンの子と、目つきがアンタみてーな兄ちゃん見てねえか?」
「……?何言ってやがる?」
「ああいや、何でもねえや。もう分かった」
訳がわからないといったそのカポネの態度に、イラはまだ二人がマフィアと接触していないことを知り、密かに安堵のため息を吐く。
「ま、ジェイには悪いが──ここで潰す」
拳を合わせながら、イラは構える。それに続き、テキサスも源石剣をすらりと引き抜いた。
「潰すだぁ?──舐めてんじゃねえぞ…クソガキどもがァ!!」
ガンビーノの咆哮と共に、マフィアがナイフを構えて押し寄せて来る。安魂祭の裏。誰も寄り付かない路地裏にて、ペンギン急便とマフィアの、最後の全面抗争が始まった。
イラの拳がマフィアの一人に突き刺さる。吹っ飛ばされたマフィアは、仲間を巻き添えにして倒れ込んだ。しかしそれを見る暇もなく、イラの眼前に追加の黒服たちが立ち塞がる。
(ちょっと多い、けど…──隊長一人よりかはマシだな)
脳裏によぎる、赤い刀を下げた女性を思い出し、苦笑しながらイラは新たな黒い波へ突っ込んで行った。
(あいつ…近衛局のナンバー3…!?何故こんな所に…!)
カポネは本来居るはずのない脅威に歯噛みする。今日の作戦を成功させるために、入念に龍門の状態を自分のファミリーに調べさせた。情報によれば近衛局は安魂祭の為一斉休日の筈。
そして要注意人物の動向も確認済みと報告があった。何故──?
「おいしょー!」
カポネが思考の波に流されかけた時、戦場とは思えない程の気の抜けた声と共に、無数のゴム弾が降り注いできた。咄嗟に横に転がる事でこれを回避。すぐさまその方向を見ると、快活な笑みを浮かべた赤髪のサンクタがスコープ越しにこちらを覗いていた。
「ありゃ?外れちゃった!」
「クソガキが…!」
悪態を吐きながらクロスボウを発射。しかしその矢はエクシアの目の前に横入りしてきた盾に阻まれた。
「ナイス、クロワッサン!」
「エクシアはん、いきなり大将は取れへんって〜」
「さっさと終わらせてイラと安魂祭回りたいの!」
銃をブンブン振り回してそう言い放つエクシア。子供じみた行動だが、その視線は、いつでも反応できる様にカポネの手元を向いていた。
(…俺一人では不味いな──ガンビーノの野郎は…!)
「オラァァァァ!!」
「………」
分が悪いと見て、カポネは慌てて周りを見る。目的のガンビーノは、目にも留まらぬ速さでテキサスと斬り合っていた。しかし、裂帛の気合で斬りかかるガンビーノに対し、テキサスは涼しい顔でそれをいなしている。誰がどう見ても、ガンビーノの劣勢。
(アイツはもう駄目だ、ここは一旦体制を立て直して──)
「よう」
「──ッ!?」
背後からその低い声が聞こえた瞬間、カポネは反射的に前方へ飛び退いた。続けて破壊音。そこを見ると、カポネが立っていた位置に小さな隕石が落ちてきた様なクレーターが出来ていた。
(…もしあのまま動けなかったら……)
ぞっとするカポネを、イラは見据える。
「お前がスラムの人達を襲わせたらしいな」
「…悪いとは思っている、だがそれは必要な犠牲だ。俺たちがここでの地位を得る為に」
「何…?」
「あとで金でも送らせておくさ、慰謝料は払う。だからもう関わって来んのはやめにしねえか。この件はアンタには関係のないはずだろ?」
「……」
「それに、裏の世界に関しては裏の住人が一番良く知ってる。ご贔屓にしてくれりゃ、今後アンタにその情報を──」
「──この街にな。『必要な犠牲』なんて人間、誰一人存在しねえんだよ」
突如噴き上がる殺気。数々の修羅場をくぐり抜けてきたカポネさえも、その重圧に指一つ動かすことが出来なかった。
「お前らの地位だとかファミリーだとか知らねえ。身内で片付けりゃ良かっただろうな。だが──お前らは関係の無い人達を巻き込んだ」
「ぐ……!」
言うや否やイラは距離を詰め、足払いをカポネに仕掛ける。何とかカポネはそれを躱したが、更にイラはその勢いのまま裏拳を放った。
クロスボウでガードするも、まるで大砲かと思うような威力に目を向きながら吹っ飛ばされるカポネ。混戦状態のこの場も、決着が着こうとしていた。
「おっと!お前、何で俺をぶった斬ろうとしてんだ!?」
「悪い、俺やっぱボスに従うべきだと思って!」
「馬鹿野郎、俺もだよ!」
「アレ?」
「…おたくのファミリーもなかなか混乱してきたな。──終わりにしようぜ」
「──何だか本当にごちゃごちゃになってるね?」
その時、戦場に一つの声が響く。その声を聞き、目を見開く者。訝しげに睨む者。そして──尋常じゃない冷や汗を流し、顔色を悪くする者。三者三様の反応の先には、青い髪のサンクタの女が微笑を浮かべて立っていた。
「モ…モスティマさん!?」
「君たちも元気そうで何よりだ」
声を上げたバイソンに、モスティマは微笑む。同じく驚きの表情を浮かべたテキサスは、一時的に剣を下ろした。
「…なぜここに?」
「ボスに来るよう言われてさ」
「…あの妙なサンクタ人か!」
「チッ、そこをどけ!!」
ガンビーノはテキサスを放置し、モスティマに切りかかる。その獣のような勢いは並大抵の者では捌けないだろう。しかし──、
「…何…!?」
「少しは冷静になろうよ。ここで意地張っても、お互いに得るものは何もないでしょ?」
そのナイフを、モスティマは視界にも入れずに止めた。ガンビーノは更に力を込めるが、その黒い錫杖はびくともしない。
「あ、あいつ、ボスの攻撃を受け止めた…!?」
「違う!アレはアーツユニットだ!ボス、気をつけてください!そいつは術師です!」
「…お前のようなサンクタは見たことねえ。いや、サルカズか?お前は一体何なんだ?」
「みんな、変わりないようでよかったよ。前にあった時からだいぶ経つよね?」
「ナメてんのかテメェ!?」
ガンビーノの問いかけに答えることなく、懐かしむモスティマ。それに激怒したガンビーノは滅多矢鱈にナイフを振り回す。
「ほんまにいつ以来なんやろ?一ヶ月?一年?」
「毎日が充実してるからね〜。時が流れるのは早いや」
「……四年と三ヶ月だよ、モスティマ」
憂いを帯びた表情で、モスティマを見るエクシア。久々の友との再会に、懐かしさと共にじんわりと心に染み渡る嬉しさを、彼女は確かに感じていた。
「おや、じゃあ本当に久しぶりだ」
「──っ」
「その顔はやめて。君がそんなシリアスな表情をしていたら病気かと思ってしまうからね」
「ちょっと!これ感動の再会じゃ──危ないッ!モスティマ!!」
「死ね!」
自分の行動に茶々を入れるモスティマに抗議をしようとしたエクシアは、モスティマの背後から迫るカポネに気付いた。しかしその手に持った矢は、何なくモスティマの首筋に──。
「大丈夫。私には頼りになるナイト様がいるからね?」
「──誰がだ」
その時、カポネの腹部に強烈な衝撃が走る。イラの勢い任せの蹴りが、何の抵抗もなく突き刺さった。声を上げることも出来ずに吹っ飛ばされるカポネ。
「お前わざと反応しなかったろ。心臓に悪いから止めろ」
「ありがと。…やっぱりごんも私の事好きじゃないか。さっきは人目がつくから嘘ついただけだったんだね、いじわる」
「はぁ?いや待て、俺は──っと」
顔を赤らめたモスティマに眉を顰めて反論しようとしたイラであったが、マフィア達に囲まれその口を噤む。
その様子を見たペンギン急便の面々には戸惑いが流れていた。
「あの二人、知り合いだったの?」
「いや、知り合いにしては仲良しすぎやない?何か距離が近いと言うか…嫌、モスティマはんが一方的に近づいてると言うか…」
ソラとクロワッサンは揃って首を傾げ、二人の関係を探ろうとする。
「…確かに気になるが、まあ良い。後で聞けば済む。とりあえず私達は敵の数を減らすぞ。エクシア──エクシア?」
「…………」
テキサスは、エクシアの様子に異変を感じる。いつも騒がしいエクシアが、神妙な顔で虚空を見つめていた。その眼は、どこか、濁っていて──。
(何で、あの二人は知り合いなの?仕事先でたまたま会った?いや、それにしては関係が親密すぎ…。というかモスティマのあの顔、どう考えてもあたしと──)
『ああ、ごんさんとは初めましてですね』
『教えてもらったんですよ、彼女さんに』
『──やっぱりごんも私の事好きじゃないか』
(──まさか)
「──い、おい!エクシア!!」
「あ…」
はっとその声の方を向くと、そこには心配そうにこちらを見る相棒の姿があった。
「大丈夫か?」
「う…うん!大丈夫!ぱっぱと片付けちゃおっか!」
慌てて銃に弾を込め、にこやかに笑う。しかし、その笑いは仲が良い者からすれば、とても歪なもので──。テキサスは、まるでつぎはぎのような笑顔から、つい目を逸らした。
「大丈夫…大丈夫…。ぜったい、そんな事ない…大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫──」
「──あっぶね!?おいモスティマてめえどこ見てアーツ出してんだ!掠ったんだけ──ぶっ!?」
「あー、てがすべったー」
あたしはモスティマの胸元に引きずり込まれたイラを見る。…イラの力なら簡単に離れれるのに、それをしないのはどうして?銃身がブレた。
「どうやら私のアーツは君のことが大好きで仕方ないみたいだね。ほら、アーツは主に似るってよく言うし」
「造語やめろ!あと離れろ苦しい!」
「振り解けば?前みたいに泣く私にしたみたいにさ…?」
「ちょ、お前それは反則──」
あたしの時より言葉使いが荒くなってる。あたしにも全然砕けた感じで良いのに。照れ屋さんだなぁ、イラは。あたしの重心がブレた。
「クソ、舐めてんじゃねえぞガキども──ガッ」
「…煩いな。邪魔だ消えろ、今本当に本当に良いところなんだ。何年待ち侘びたか、この幸せな時を──もう、絶対離さないからね?ごん。一生私と旅しよ?お願い」
「ちょっともうヤダこいつ!!だ、だれか、誰でも良い!!…そ、そうだ!テ、テキサス!ソラ!クロワッサン!バイソン君!エ、エクシ──、……おい。エクシア…?」
あれ。呼ばれた?イラが呼んでくれたのかな!よしよし、あたしもここで頑張らないと!いつもやってるみたいに、笑顔で──元気よく!!
「どしたの、イラ!こっちはもう終わりそうだよ!」
「………?」
あれ。なんでそんな顔してるの?そんな──怖い顔しないでよ。あたしどこかへんかな?
「──モスティマ。離れろ」
「…いや」
「──今それどころじゃねえんだよ…!!見ろ!」
「わかってるよ。エクシアも多分──。でも嫌だ。私を優先してよ、私だけを見てよ、お願い…」
「え、エクシア…?」
テキサスの声が聞こえてくる。あれ?どうしたの?テキサスのそんな顔、初めて見たよ。怯えちゃってるけど何かあった?マフィアのみなさんも、どーしたのー?
道の端で砕けたガラスにひとつの顔が映り込む。そこには、無表情の人間の口を無理やり引き上げたような笑みで、黒い目から液体を流している、かわいそうな女の子がいた。
…あ。これってあたしか。
「エクシアッ!!」
低い声につられて、その方向を向くと、こっちに向かってくるあたしの好きなひと。なんとなく、両腕を広げて待ってみる。後ろのモスティマの顔は、まるで小さい子供が親と別れるような表情をしていた。おそろいだね。
そして──その力強い腕に抱かれたその時──砂嵐が、あたし達を襲った。
イラ そろそろ殺されねえかなコイツ
モスティマ 友達の異変にいち早く気づきながらも抱きしめるのを辞めなかったマジ病みキチ。でも好きなんだからしょうがないね
エクシア 明るい子はその分影が濃い
テキサス 相棒の見たことない顔に鳥肌が立ってしまったことに罪悪感を覚えてる。良い子だね
ソラ、ワッサン、バイソン ひぇぇ
マフィアの方々 ふぇぇ
イベントストーリー沿いの話とか見たいですか?
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見たい
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このままで良い