オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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オペレーター
昇進素材が
間に合わん



喧騒の掟 7

──なぜなんだ、と疑問を抱く。レユニオンによって罪無き弱者が淘汰され、互いに傷を付け合う地獄のような現状──。奪われたものは皆、絶望と諦めを胸の奥に燻らせている。しかしそんな彼等も、安魂祭では笑顔を見せていた。洋菓子を楽しみ、活気に満ち溢れた龍門を練り歩いて、少しでも前に進んでいるのだ。

罪無き者には、子供らも勿論入っている。イラはスラムの子供達に、少しでもそんな辛さを忘れられるよう菓子などを買って分け与えていた。彼等は自身の境遇に何一つ文句も口にせず、感謝を口にした。そんな彼等を、守っていたいと思っていた──、なのに、なのに──!

 

 

「──どうしてあんたがこんな事をしているんだ、お爺ちゃん」

 

イラは、目の前の老いぼれたザラックを見て、絞り出すように声を出した。

 

「おや?ワシに面をつけた知り合いなんぞおったかのう?」

「……」

「おお怖い怖い、まるで鬼のようじゃよ。今夜は楽しい安魂祭。お前さんもそう気を張らずに──」

 

「──茶化さないでくれ、お爺ちゃん」

 

その声色に、鼠王は深くため息をついて口を紡ぐ。イラの心の中は今、濁流のように感情が渦巻いていた。

 

「…いつも優しかったじゃないか」

 

会う度に、目の前の老人はしわくちゃの笑顔で自分を労ってくれていた。

 

「あの子達の面倒も見てくれていた」

 

近衛局の勤務があるが故、完全に子供達を見ることはできない。その時世話役を買って出てくれたのが、目の前の老人だった。

 

「そんなあなたが、どうしてこんなテロリスト紛いの事をしてるんだ…!」

「……」

 

イラの悲痛な叫びを聞いて、鼠王は目を伏せた。しばらく何か言葉を選ぶように逡巡しているその様に、イラの心に苛立ちが募った。

 

「…おい──」

「ふむ…確かにお主の疑問は分からんでもない。だがまあ、今日の件はお主には関係なかろう」

「……は?」

 

顎髭を摩りながら、鼠王はそう言った。

 

「本来の思惑ではお主の存在など何処にも無かった。この舞台に必要な役者は、騒がしいペンギン急便と、哀れなマフィアの方々。お主がなぜこの場に居るのか分からなんだ」

 

まるで、出来の悪い孫を見るかのような目でイラを見る鼠王はやれやれと首を振る。彼の心に呼応するように、辺りの砂は力無く散っていた。

 

「巻き込んだ諸君には申し訳ないと感じておるよ。だがワシの目的とそれらを天秤にかけた時、()()()()()だと判断したのじゃ」

「──」

 

 

「エンペラー!嘘だよな!?」

「演出でもこれはしつこすぎるぞー!早くネタバラシしろよー!」

「誰だあの面を被ったやつ?なんか、どっかから飛んできたけど…」

「エンペラーが雇ったスタントマンだろ」

 

 

周りでは今起きている出来事を理解できていない観衆が各々に叫んでいる。それを見た鼠王は被りを振って、わざとらしくため息を吐いた。

 

「…ペンギン急便の周囲以外のものは皆、善良な市民。これらを奪うなど心が痛むが…まあ、許してもらおう。…さあ、今ならまだ何事もないように帰れる。さっさと舞台から消えてもらおうか?仮面の乱入者殿」

 

その何の気無しに放たれた言葉に、イラは自分の中にあった何かが崩れ去っていく感覚を覚えた。そしてその崩れ去ったものがドロドロとドス黒いものとなり、彼の頭を支配していく。

 

 

(……来るか)

 

 

数々の修羅場を潜って来た鼠王の眼が、イラの下半身に注目する。血管が浮き出るほど力を込められた太ももは、今にも破裂しそうな水風船のように膨張していた。

 

「……俺が一番嫌いなやつを教えてやろうか」

 

砂が鼠王を守るように展開されていく。ミルフィーユのように何層も重なった防壁は、たとえ至近距離で銃火器をフルバーストさせてもその主に届く事すら敵わないだろう。

 

 

「自分のやってる事が、いつも正しいって勘違いしてる──」

 

 

卓越したアーツ技術で作られた砂城。その完璧な外壁に守られて尚──鼠王の額から、冷や汗が途切れる事は無かった。

 

 

「──テメェみてぇなやつだよ、クソジジィ!!」

 

 

──爆音。それが聞こえたと同時に、鼠王の目の前の砂壁から腕が勢いよく突き出てくる。形が崩れ、血液の様に流れる砂を薙ぎ払いながら、力任せにイラは砂城を突破した。

怒れる狐は上段蹴りを躊躇なく行う。砂が這う様にその軌道上を遮り、暴力的な勢いで衝突。砂が弾け飛び散るが、すぐにまた凝固し、イラの足を蹴りを放ったままの体制で固定した。

 

(……早い…が、対応できないわけでもない。当時の近衛局のレベルでも十分鎮圧できる程度のもの…。これで龍門が落とされかけたとは思えん)

「おお怖い。怖いが…恐れるにはまだ足らんな」

「う…るせぇ……!!」

 

怒声を放ち、足を固定されたまま無理やり殴りかかるイラに疑問を抱きつつ、鼠王はアーツを操作する。ぐいん、と身体が後方に引っ張られていき、そのままの勢いでイラは投げ飛ばされた。

 

「ぐ──!」

 

観衆の頭上を一直線に飛び、イラは受け身も取らずに冷たい地面へ転がり落ちた。

 

「イラ!大丈夫──っ」

 

マフィア達と戦闘を繰り広げていたペンギン急便とジェイ、ワイフー達は、転がり込んできたイラに安否を取る。エクシアが駆け寄り、イラの顔を覗き込むが──、そこで彼女は固まってしまった。

受け身を取らずうつ伏せに力無く倒れ、猛スピードで地面に叩きつけられた節々の痛みは無視できないものだろう。しかしそれでもなお、面の隙間から覗くギラついたその眼光は鼠王を捉えていた。

 

「…」

 

エクシアは普段の能天気さを忘れるほど、その気迫に飲み込まれた。そして初めて、目の前の男の──怒りを感じた。

その間にもゆっくりとイラは立ち上がり、膝を曲げる。力を貯め始めたと分かったその時には、もうその姿は遠方へあった。

 

「あ…!」

 

声を上げることしかできないエクシア。それに気づかないクロワッサンは、攻撃を受けながら感嘆の声を出した。

 

「ひゃ〜!とんでもない勢いや!」

「…」

「──エクシアはん?どしたん?」

「…なんか、やな感じ」

「ええ?」

 

 

 

「一直線に向かってくるか。本当は狐じゃなく猪では無いじゃろうな?」

「うる、せえっつってんだろ…!!」

 

既に車から降りた鼠王の懐に潜り込み、次なる暴力を振るおうとするイラは、地面を力強く踏み締め──、そして大きく体制を崩した。

 

「あ゛ぁ!?」

「おや、よろけおった」

 

その機を逃さず鼠王は、無防備なイラの腹目掛け横殴りに流砂をぶち当てる。砂は一粒一粒は小さいが、それらが密集すれば人の体など容易に壊せる凶器となりうる。イラは気が遠くなるような圧迫感と、自身の肋が軋む音を覚えながら、再び吹き飛ばされていった。

 

 

「──っっ」

 

しかし今度は無防備に地面へ投げ出される事はなく、途中で電信柱を掴み減速。そのまま柱を伝い、安全に着地した。

 

「ゲホッ…ガハッ。クソが…!!」

「イラ!大丈夫か?」

 

腹を押さえ、片膝をつくイラを見たテキサスは、早々にマフィアを切り伏せ彼の元へ駆け寄った。

 

「イラ、落ち着け。明らかにアレは一人じゃ手に負えない、まずはこいつらを先に片付けよう」

「…嫌、次はいける…!絶対…!」

「…いつものお前らしくない。どうした?」

 

(頭に血が上り()()()()()──のか?いずれにせよ、今のイラはまずい。危険だ──!)

 

テキサスは今まで見たことのない彼の様子に困惑しながら、兎も角落ち着かせようと肩に手を当てようとし──。

 

「おおおおっ!!」

 

叫び、駆けていくイラにそれを振り払われた。

 

 

 

「…は?」

 

 

 

その様子を見る鼠王は、失望の色をその目に灯す。そして、またもや無慈悲にアーツを使用──流砂が再びイラを打ちのめさんとした時、横から青い影が割り込んだ。

 

「あなたがこんな事をするなんて考えもしなかったよ」

 

青い影──モスティマは杖状アーツユニットから火球を放つ。生み出されたそれらはイラに衝突しようとしていた流砂に命中し、砂は意思を失う様に散っていった。

一瞬のその隙を見逃すことはせず、イラは高速で鼠王の目の前まで移動──そのままの勢いのまま、拳を振りかぶった。

 

「ぅあっ…!?──クソ、またかぁ!!」

 

しかしまたもやイラは突然体制を崩してあらぬ方向に拳を空振りさせる。悪態を吐きながら無理やり追撃を行おうとするが、それは背後から襟首を掴んで後退するモスティマに阻止された。

 

「う゛っ、…オイ──!」

「落ち着いて。頭に血が昇ってる時に勝てる相手じゃないよ」

「やれやれ、ようやく止まりおったか。いつ死ぬかとヒヤヒヤしたわい」

 

そう口を開いた鼠王に、モスティマはどこか探る様な視線を向けた。

 

「私の忠告は聞いてもらえなかったのかな?」

「歳を取るとどうも人の話だけでは満足できなくての。ワシ自ら確かめようと思ったのだが──どうも、ワシは過大評価をしすぎたらしい」

「過大評価?」

 

そして鼠王は、杖で怒る狐を指し示す。

 

「力はあるが、頭がない。…いや、これは…覚悟か?」

「…あぁ?テメェ、人をおちょくるのも大概にしろよ…!」

 

怒鳴るイラを、鼠王は憐憫の眼差しで見つめる。それはまるで出来の悪い息子を蔑むかのようなものだった。

 

 

「お主は一人でワシを始末することに固執しておる。だから勝てないのだよ。先の動きもペンギン急便らと協力すればまだその可能性は高くなる筈だのに、一人で突っ走るからそんな無様な姿を晒す羽目になるのじゃ」

「…」

「怖いのじゃろう?巻き込み、彼らを危険に晒す事が」

「──!」

 

一瞬──、ほんの一瞬。イラの肩が震えたのを鼠王は見逃さなかった。

 

「だから一人で片付けようとする。後先考えず、滅多矢鱈と行動し──解決しようとする。…ふむ、確かにワシと戦わせないのであれば殆ど雑魚狩りをするだけで、怪我は負わないだろうな。だが──残った彼らはどうなる?」

「何もさせてもらえず、ただ身に傷を負うお主を見ていることしかできない彼らはどう思う?──お主のそれは優しさではない。『不信』じゃよ。彼らを信じていないから、一人で何とかしようとする。そしてそういう者の末路はたいてい犬死にじゃ」

 

「………」

 

「何か間違った事を言っているのなら言ってくれよ?老人は頓珍漢なことを言う時があるからの」

 

その言葉を受け、イラは静かに立ち上がった。その顔は、仮面越しからでも分かる、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

 

「──そうだよ、その通りだ」

「…自覚があるならなぜ前に進もうとしない?彼らはお主を助けたいと思っておるぞ」

「……わかってるさ」

 

投げやりに聞こえるその声には、微かに自虐の色が混じっている。

 

「悪いとは思ってる。けど…でも、守りたいんだよ。後からめちゃくちゃ言われても良いし、嫌われても良い。ただ、みんなに笑顔でいてほしいんだ」

 

──全て図星だった。一人で背負う理由も、人を信じきれてない理由も。全て丸裸にされたイラは、それでも拳を握った。

 

「全部俺のわがままだけどな」

「……はあ…。重症、じゃな」

「あ?」

「──お主が甘やかすからこうなるんじゃぞ」

「…」

 

その叱咤をモスティマは、静かに受け入れた。

 

「彼にどんな事があったのか知りはしない。知りはせんが──ずっと一緒に居たのであろう。なぜお主とあろうものが、そこまで考えるに至らなんだ」

「…何も言えないね。完全に私のミス」

「──深い癒着が故の甘え…か」

「甘え…。うん。私は彼に何かを説く事ができない。彼のことが好きだから。もしそれを指摘して──完全に拒絶されるのが怖かった。だから何も言えなかった」

「…お前、そんなこと思ってたのか」

 

新事実に思わず顔を向ける。その表情は、激しい後悔の顔だった。その顔をさせたと言うことに、イラはまた歯噛みする。

そしてそのまま、モスティマは口を開いた。

 

 

 

「だから────任せることにした」

「は?」

 

 

 

その飄々とした口ぶりを見せるや否や、モスティマは自身の強化されたアーツでイラを背後に投擲──。突然のことに、イラも鼠王も反応できずにいた。

 

「──私じゃ無理なら、信頼できる妹分たちに引っ叩いてもらう」

 

癪だけどね。と呟きながら、モスティマはアーツユニットを手に持つ。体内から伝導するアーツがユニットを介し、無数の火球を発現させた。

目を丸くしていた鼠王はその意図に気づき、ニヤリと口角を上げる。

 

「成長したのう。昔のお主であれば手放さずに腐らせていたものを」

「手放してないよ。預けてるの。返してもらうから──それに、お互い、前に進まないといけないしね」

 

 

 

 

 

 

 

「あ痛ってえ…!!」

 

思い切り飛ばされたイラは、今日何度目か分からない地面へのダイブを成功させた。緊張した場から急に離脱させられた温度差で、しばし呆然とさせていたが、すぐにイラは立ち直り、鼠王の元へ向かおうとする。

 

「何してんだよアイツは…!?」

 

 

 

 

「何してんの、はコッチの台詞なんだけどね〜」

 

瞬間、突如イラの背中に重力がかかり、倒れ込む。その原因である声の主──エクシアは、イラを尻に敷きながらもマフィアたちの頭部を正確に撃ち抜いていった。

 

「エクシアか!?どいてくれ!」

「ふーん?あたしの事信頼してないイラさんは勝算あるんですかー?」

「…え」

 

誰かを確認するため首を回し、そこで初めて、イラはエクシアの無感情な顔を見る。如何に鈍感な彼でも分かるほど──エクシアは不機嫌になっていた。

 

「──あ、あの」

「とか言っても教えてくんないよねー。だって信頼してないんだもんねー」

「も、もしかして…聞こえてた?」

「うん!バッチリ!モスティマから無線が繋がれてたからもう一言一句!」

「え」

「──あのさあ。あたし達のことあんまり舐めないほうがいいよ」

「い、いや、舐めてなんか──」

 

その冷たい声に、イラは反論しようとするが──。

 

 

「あたしは仕事の合間にロドスで射撃訓練してる。いっつもふざけてるように見えるけどクロワッサンも筋トレして、あの盾を使いこなせてる。テキサスが剣の手入れを欠かしたところなんて見たこと無いし、ソラだって戦闘訓練じゃないけどアイドルだから表情管理の練習やボイストレーニングとか毎日してんの。生半可な気持ちでやってないのこっちは」

 

ごり、とイラの額に銃が突きつけられた。間違いなく、エクシアは本気で銃を押し付けている。それに気づいたイラは悲鳴の様に弁明を上げた。

 

「わ、悪い!で、でもお前らを馬鹿にしてるわけじゃ」

 

 

「してるじゃん!!さっきも遠ざけて無視してさあ!あれって『お前じゃ怪我するだけだから引っ込んでろ』って事なんでしょ!?良い加減にしてよ!あたし達は自分の身は自分で守れる!逆にキミが傷付けばそっちに気がいって目の前のことに集中できないの!なんでそんな所まで鈍いんだよ、このバカーーーー!!!」

 

大声で喚く様に放たれたその言葉にイラは空いた口が塞がらない。ふー、ふー、と獣の様に息を切らせていたエクシアは、髪をかきあげ、額に滲んだ汗を拭った。

 

「…ふぅ。言っとくけどあたしはまだ優しい方だからね。相棒、マジで怒ってるから」

 

相棒…?まて、まさか。その絶望感がイラを襲う。すると突然、被っていた面を勢い良く剥がされる。そしてそのまま仰向けにさせられたイラが初めに見た光景──。それは迫り来る拳だった。

 

「ブぐっ!!?」

 

勢い良く放たれたそれに、イラは蛙の潰れたような声を出す。しかしそれでも拳は止まる事なく、二回、三回と続けて殴打が繰り出された。

 

「がっっ!?」

 

周囲のマフィアも突如行われた凄惨な行動に動きを止め、固唾を飲み込む。そしてその暴力を振るった張本人がゆっくりとイラの顔から拳を離すと、しんと静まり返ったその場にはねちゃり、と粘度のある音だけが響いた。

 

「……一度しか言わない」

 

イラは見た。鼻血の線のその向かい側に、睨んだだけで生命を奪い取るかの様な眼光をしたオオカミがこちらを覗き込んでいる姿を。

 

 

「私を侮るな」

 

「……ぶぁい」

 

 

頷く以外の行動を取れば、恐らく殺される。そう思ったイラは考えるよりも先に行動していた。

 

「……それで?」

「…え、え?」

「………」

 

突然、イラの脳内危機感知アラームがけたたましく鳴り響いた。

 

「そ、それ、で……?」

「………」

「ヒェッ」

 

腹に跨り、周囲のマフィアを一掃するエクシアから極寒の視線を浴び、イラはようやく悟る。

 

(ま…まずい、()()()。次に何か言葉を間違えれば、本当に終わる…!)

 

その予想は正しいと言うかの様に、時間が経つごとに二人の機嫌は益々悪くなって行く。青褪めたイラは即座に謝罪をしようとした。

 

「ご、ごめ──」

 

しかし、謝罪の言葉を言おうとした途端──イラの動物的本能がそれを止めた。

 

(──いや、違う…のか)

 

彼女らがなぜここまで怒っているのか。自分はそれを履き違えているんじゃないのか?イラの脳内に過ぎるのは、怒りながらも真っ直ぐに自分を見つめる二人。

 

『あたしのこと舐めない方が良いよ』

『私を侮るな…!』

 

(二人は、俺が一人で戦う事に怒ってる。…だとしたら。俺がすべきなのは──)

 

逡巡するイラは、口を開き、また閉じるを数回繰り返し──静かに声を発した。

 

 

 

「───助けてくれ」

 

 

びく、と二つの肩が動いた。

 

「俺一人じゃ、お爺ちゃんには多分勝てない。……散々遠ざけて、無視して、都合が良いのは分かってる。でも、頼む。──力を貸してくれ」

 

「……」

「……」

 

イラは考えた。信用せず、遠ざけた事を謝罪するのは、その意見をイラ自身が否定していない事になる。恥をかいても、どれだけ情けなくても、助けを求める事こそが優先されるべき事なのだと、そう思った。

 

(…違ってたら、まあ──しょうがない)

 

恐らく二人は一生イラを許す事はないだろう。博打を打って出たイラは、その結末を目を閉じて待った。

 

「…はぁ〜〜〜」

「……」

 

それを受けた天使は大きく息を吐き、狼は手を拭いて菓子を咥えた。

 

(…だめか)

 

諦めの感情が、イラの心を覆い尽くそうとしたその時──。

 

「──うおっ!?」

 

ぐい、とイラは手を引っ張られその勢いで立たされる。その引き寄せた張本人は、屈託の無い笑顔をこちらに見せていた。

 

「もち!」

「…え」

 

呆気に取られていると、後ろから服を軽く数回叩かれる。砂を払ったテキサスは普段通りの、落ち着いた視線をイラに向けた。

 

「何か策はあるのか?」

「え…あ、いや…?」

「何だ」

「え、あの…助けて、くれんの?」

 

「当たり前だろう」

 

そう言ったイラに、テキサスは首を傾げながらそう返した。

 

「今の私は何でもできる。安心して命令してくれ」

「あたしも〜!助けてなんて言われちゃあ、ご期待に応えないとね!」

「殴って悪かったな。あとで必ず借りは返す」

「ほんとに痛そう…。よしよししたげよっか!」

「それは私の責任だ。エクシアの出る幕はない」

「ん?」

「…」

「──あ、あははっ…!」

 

いつも通りの流れが見せる二人に、イラはいつしか乾いた笑いを上げていた。そして、ひとしきり笑った後にゆっくりと頭を下げる。

 

「ごめん。二人とも」

「──謝罪じゃない、そこは感謝だ」

「…ありがとな」

「えへへ」

 

[コラーーー!!]

 

照れる様に笑うエクシア。すると彼女の腰からいきなり怒号が聞こえて来た。

 

「うおっ」

[急にブチギレたと思ったら二人してイラはんの所行って!んで静かになったから何があったんやって思ったらイラはんボコボコに殴っとるやんけ!どーいう事や!?説明しぃ!?]

「クロワッサンか!えっと…何やかんやで、俺が悪かった!」

[分かっとるわ!んで!?なんか無いんか──っと危な!──あのネズミのオッサンしばくんやろ!?]

 

その問いかけにイラはニヤリと笑い、拳を握った。見据える先は砂と堕天使のアーツが飛び交う街路。力が身体に漲るのを感じながら、イラは吠えた。

 

 

 

「あぁ……!ぶっ飛ばしてやろうぜ、みんなで!」




次か次の次で終わりかな?いや、もう終わろう。シリアスはもう良い。ほのぼのしたい。

イベントストーリー沿いの話とか見たいですか?

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