オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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モンハンですやん…!
当たればいいな


チェン隊長に勝ちたい!!

「えー、本日からチェン隊長が復帰なさる予定だったが──。体調不良の為今日も私が隊長代理を務めさせてもらう」

 

そのホシグマ副隊長の言葉に近衛局全体が震える。ざわざわと喧騒が広まる中、ホシグマ副隊長は威厳とした態度で手を鳴らした。

 

「静かに。体調不良と言ったが、そう深刻な症状ではない。諸君らは気にせずいつもの業務に取り掛かってくれ」

 

そう締め括られ、朝の集会は終わった。…隊長、大丈夫かな。

 

 

 

「イラ、この書類の整理を頼む」

「……」

「…イラ?」

「──あ、はい。これですね」

 

手渡された書類を確認する。…またレユニオン達か。いい加減大人しくしてほしいもんだぜ、全く。ため息を吐きながら、俺は書類を片付け始めた。

 

 

「訓練、開始!」

 

そのホシグマ副隊長の一声で、訓練所の至る所から気合を込めた声が聞こえてくる。午後の訓練は、自分と実力差が互角の相手と組み手を行うものだった。

俺の相手は副隊長である。元々は隊長と訓練をするはずだったが、今日はお休みの為代わりに俺が代役を務めているというわけだ。

言わずもがな、彼女の最大の特徴はその大盾。今は『般若』は使っておらず、訓練用の盾を持っているが、それでも俺との差は歴然だろう。俺はジリジリと距離を詰め、ホシグマ副隊長に一撃を食らわせようとする。

 

「うおらっ!」

 

右ストレートを放つが、難なく塞がれてしまう。俺の馬鹿力も副隊長の前ではいなされ、無力化されていく。…流石だな、ホシグマ副隊長。俺も、足引っ張らないように頑張らねえと…!

 

「うおおおっ!!」

 

俺は上段蹴りを見舞う。並の兵士が受ければそこが急所となるであろうその破壊力──しかし、訓練所の床が少し抉れるほどの馬力で放ったそれも、副隊長の前には無と化す。

 

「──ふっ!」

「なぁ!?」

 

盾で足を受け止め、そのまま俺の無防備な軸足を足払いする副隊長。俺は無様に転げてしまい、そのまま上から盾で潰される様に拘束された。

 

「があ…っ!?」

「……勝負ありだな」

 

呼吸ができずに喘ぐ俺を見て、ホシグマ副隊長は一つ、息を吐いた。

 

「──イラ」

「げほっ!げほっ、は、はい!」

 

「今日はもう、上がれ」

 

 

「──え?」

 

 

その放たれた言葉に、俺はただ呆然とするだけだった。

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

俺は深いため息を吐きながらトボトボと歩く。

ホシグマ副隊長曰く、俺は集中できていない。そんな様子で訓練に参加しては、他の隊員の士気にも関わるし、怪我もされては困るとの事だった。

 

(……辛いなあ)

 

ホシグマ副隊長にそれを言われたのが辛い。注意だけでは無く、俺への心配までもして下さったという気遣いも見えているので、余計辛い。

そして、俺が今手に持っている書類。それはチェン隊長の印鑑が必要なものであった。上がるついでに、俺が自宅まで行って印鑑をもらってこいと指示された。

 

「…何も俺じゃなくても…」

 

…ダメだな、マイナスな事しか考えられなくなってる。副隊長はわざわざ俺に頼んでくれたんだ。その責任は全うしないと…。

そんな事を思っているうちに、俺は教えられたマンションのエントランスに着いた。部屋番号を打ち込み、インターホンをゆっくりと押す。

 

『……はい』

「──あ、近衛局のイラです」

『っ、イラ?どうして…』

「えと、隊長の印鑑が必要な書類がありまして…」

『……』

「……」

(え、無言?)

 

何故か無言が続く。何でだ…。そう疑問に思っているとエントランスの自動ドアが静かに開く。呆気に取られていると、スピーカーから一声。

 

『…入れ』

 

ぶつ、とそれだけを残して通信が切れた。しばし放心していたが、自動ドアが閉まり始めたのを見て、俺は慌てて滑り込みに行った。

 

 

 

エレベーターを使い、隊長の部屋まで辿り着く。そこでチャイムを押そうとするが──そこで何故か、俺は指を動かす事を躊躇した。

…隊長の家…。な、なんか、緊張するな。今更だけど…。まぁ、書類を渡したら帰るんだけどな。

少し滅入った気分になりながらも、今度こそチャイムを押して──。

 

「──おつかれ」

 

いつも結んだその艶やかな髪を下ろし、ラフな格好をしたチェン隊長が扉を開けた。その顔は僅かに赤らんでおり、瞼もいつもより落ちている。

そんな今まで見たことのない彼女を見て、俺は言葉を発する事が出来なかった。

 

「…?どうした」

「や、あぁ、いえ、何でも…」

「おかしなやつだな…。けほ、けほっ」

「あ、無理しないでください。印鑑貰ったらすぐに帰りますね」

 

また上司に気を遣わせてしまった。早めに用事を終わらせてすぐに帰ろう。そう思い、提案をしたのだが、当の本人はきょとん、とした目で俺を見る。

 

「…え、えっと。隊長?」

「──何かあったか?」

「え──」

 

その優しい声に、俺は何も言えなかった。そんな俺を見て、隊長は後ろを振り向き、そのまま手招きをする。

 

 

「とにかく上がっていけ。私もお前も、立ちっぱなしは辛いだろ?」

 

 

 

部屋はこまめに掃除が行き届いているのか、とても綺麗な印象を受けた。物は少なくテレビやテーブル、ベッド、そしてイスが置かれていて、ザ・コンパクト部屋だった。

 

「何も無くてすまない」

「え、あいや!逆に申し訳ないです、上がっちゃって…」

「茶でも出そうか。──っと」

「隊長!」

 

ふらっ、とよろめく彼女を慌てて支える。感じられる体温は高く、まだ完治していないと判断できるほどだった。

 

「隊長、寝てください」

「いやしかしだな──」

「お願いします」

「………」

 

その俺の懇願にしばし固まった後、隊長はベッドに向かい、そこに腰掛けた。

 

「これで勘弁しろ。寝過ぎて逆に気分が悪いんだ」

「…まあ、それなら…。気分悪くなったらすぐ寝てくださいよ!?」

「わかったわかった」

 

うんざりした顔を見せる隊長に、俺は憤慨する。今の俺なら簡単に取り押さえられるからな。…アレ?もしかして今勝てるチャンス?

 

「──それで、どうしたんだ?」

「──え?」

「何かあったんだろ。言ってみろ」

 

そんな危ない思考は隊長の問いかけでシャットダウンした。つーか病気じゃないと勝てないって思う俺って…なんなん?

 

「いや、でも特には…」

「明らかに声にハリがない。しかも今はまだ訓練の時間だろ?となれば、何かあるのを疑うしかないだろ」

 

なんで分かるんだよ凄いな…。流石の洞察力に辟易としてしまう。俺は観念して、今日起こしてしまった失態を隊長に懺悔するかのように報告した。

 

 

 

「珍しいな。お前がそんな集中しないなんて」

「滅相もございません…」

 

ベッドに座って足を組む隊長の目の前で正座をする。しなくても良いと言われたのだが、これは俺が自分に課した罰だ。誠意を示す態度と言えば正座だろう。反省の意を示す俺を他所に、隊長は顎に手を当て考え始めた。

 

「ふーむ。近衛局のトップが集中出来ていないのは問題だな。…原因は分かるか?」

「原因、ですか?…特には」

「普段の生活と今日。何かが違った筈だ。それを思い返してみろ」

 

何か、何か…何かが違うって言われても…。

 

「──あ」

「なにか分かったか?」

 

思わず声を上げてしまう俺に、隊長は目を向けた。

 

「隊長が、その…体調不良って聞いて、それでかもしれません」

「──」

 

思えば朝からも少しぼーっとしてる時間が多くなっていた気がする。書類仕事もロクに手につかなかったし。あ、きっとそうだ。

 

「ふーん?つまり?お前は自分の不調を?私のせいにしようと?したわけか?」

「ち、違います!!」

 

それだけは違う。これは俺の心の持ちようによる問題だ。決して隊長のせいじゃない!

そう思い弾かれたように顔を上げると、そこにはニヨニヨと頬を緩めさせ、自分の尻尾を弄る隊長の姿があった。

 

「全く、仕方のないやつだな。お前は本当に…」

「…すいません」

 

ぐうの音も出ない。結局のところ、俺がなんと言おうとそれは言い訳にしかならないのだ。こんなんじゃ、隊長どころか近衛局のみんなにも顔向けできない。

 

「…やっぱり俺なんかが、部隊長をやるなんて」

 

「──図に乗るなよ、イラ」

 

 

先程までのふわふわした声とは違う、凛とした声。戦場に身を投じた戦士の顔付きで隊長は俺の言葉を切り捨てた。

一瞬で室内の空気が張り詰める。無数の剣を突きつけられたような感覚に陥った俺は、ただ次の隊長の言葉を聞く事しかできなかった。

 

「常日頃から感じていた責任やらなんやらがあるんだろうがな。“私が”お前を選んだんだ。ならその責務を果たせ」

「……っ」

「今は納得出来なくてもいい。だが、お前は既に『龍門近衛局突撃隊長』のイラなんだ。その肩書きを背負って、納得するまで足掻け。放り投げることは許さない」

「──」

 

──そうだ。俺は何のために近衛局になった?大事な人を二度と失わないためだろうが。それをちょっとの失敗で落ち込んで、女々しい姿を隊長に見せて──!

 

「──隊長!!」

「うるっさ…!喧しいぞ!」

「すいません!ありがとうございます!!」

 

俺は立ち上がり、頭を下げる。俺が俺自身を信じれないというなら──俺を信じてくれる隊長達を信じる。そうする!!おれきめた!!がんばる!!!(幼児退行)

俺のそのクソデカ謝罪を受けた隊長は、耳を塞ぎながらも笑みを浮かべた。

 

「はあ…まあ、やる気が出たなら良かったというか」

「やる気っすよ!任せてください!!」

「あーーーうるさい!!集合住宅なんだぞここは!?」

「スマッセン!!うおおおおお!!」

「お前話聞いてたか?近所迷惑になるからやめろ!」

「痛ぇ!?」

 

隊長が自分の布団から赤霄を取り出してそのまま俺の後頭部をぶん殴ってきた。ひどい。俺はこんなにもやる気を出しているというのに!

そうした抗議の目を向けようとすると──。

 

「ぐ…!」

「隊長!!」

 

ふらりと先程より酷くよろめいた隊長を抱き留め、そっと横に寝かせた。腕の中の隊長は、恨みがましい目を俺に向ける。

 

「…お前が私に大きな声を出させるからだぞ」

「あああ、すいません…!」

「はあ…全く…!また汗が出始めたじゃないか…!」

「シ、シャワー浴びますか!?お湯貯めましょうか!?俺に出来ることがあれば何でも言って下さい!」

「今なんでもって言ったか?」

「え」

 

その言葉を皮切りに、隊長は服に手をかける。慌てて目を隠す俺を他所に、続けて隊長はこう言った。

 

 

「──じゃあ、身体を拭いてもらおうか。汗をかいてべとべとなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

最近魚介を食べたいと思ってたんだ。そうだジェイにこんど頼んで作ってもらおう。ウニな。ソーンズ連れて共食いさせようぜ!

 

「──んあっ…ん」

 

扇風機 俺の心に 扇風機 どっちかと言えば眠たいが、さてはおむすびを転がしてるな?俺の目は誤魔化せないぜバーロー蘭。

 

「あはッ…!も、もう少し、下を……」

 

実は俺エレベーターガール目指してんだよね。客の要望に応えてボタン押して下に参りまーす的なね!?わかる!?わかれ!!

 

「──イ、イラ…ぁっ!」

 

平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心

 

 

 

「──ふうっ!すっきりした!」

「ヒュー…っ!ヒュー…ッ!」

 

 

耐えた…!俺は耐えたぞ…!げっそりとした俺とは対照的に、つやつやと輝いているように見える隊長。ま…マジで危なかった…!

 

「ご苦労だったな、イラ。今度からも頼むぞ」

「じょ、冗談ですよね…?」

「んー?」

 

誰か助けてくれ。俺この人に殺される。

満面の笑みでこちらを見つめる隊長は伸びをして、ベッドに倒れ込む。目元に腕を乗せたまま、ぽつりと呟いた。

 

「まあ…裸を見せられるのはお前しかいないからな。こんなこと言うさ」

「──」

 

その言葉に息が詰まる。本来であれば、容姿端麗な彼女にそう言ってもらえる事は光栄な事だろう。だが、今俺に降りかかったその言葉は、全く別の意味を表していた。

 

「源石病、進行しているだろ?」

 

俺は避けていた。彼女の裸を見るのを。正確に言えば──、彼女の体にある、黒々と光る源石を。

その問いかけに、俺は静かに頭を振る。

 

「…分かんないです。俺、そこまで詳しくないですから」

「──優しいな、お前は」

 

その俺の苦し紛れの声に、ふっと儚げに笑う隊長を見て、俺は何も言えずにいた。そのまま隊長は続ける。

 

「源石病と言う名の不幸は、貴族にも、市民にも、愚者にも、英雄にも──どんな者にでも降りかかる可能性がある」

 

「私は感染者差別を根絶させるという強い意志を持っている。だが、たまに思う時があるんだ。…本当は、そんな事をしても意味はないんじゃないのかと」

 

「非感染者から今は感謝を受けている。だが私が感染者だと公表すれば、手のひらを返したように今度は私を蔑むだろう。そんな事を龍門の市民はしないと信じたいが──」

 

「──いや、回りくどかったな。私は怖いんだ。差別される事がではなく、新しく差別をする人間を生み出すかもしれないと言う事が」

 

 

 

その懺悔とも取れる独白を、俺はただ聞いていた。いつも気丈で、感情を見せないチェン・フェイゼはどこにも居なかった。そこに居たのは、信じる者に裏切られるかもしれない信念を、それでも大事に持ち、貫き通す一人の女性だけだった。

 

「──もし、私が」

 

 

 

「もし、私がその恐怖に屈して──、全てを諦めた時。…お前が私を止めてくれ」

 

その言葉は、いずれ自分はその場面に直面する──そんな確信を持った様な感情が乗せられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとう」

「…いえ。俺も、元気貰いましたんで!」

 

帰り際。玄関で見送ってくれた隊長に一礼して、マンションを後にする。

……俺はあの問いかけに返事をしたが、それが最適解なのかどうか分からない。ただ、俺が思ったことは──。

 

 

(その時にならないために、俺が動く)

 

 

俺を拾ってくれた彼女があんな表情をするのは、絶対に嫌だ。だからあの人がそんな心配をする暇がないほど、俺が頑張る。

そう思った後、途端に体がやる気を帯びてくる。全身に力を入れ、鼻息荒く俺は走り始めた。

 

 

 

 

 

「──ホシグマ副隊長!!!」

「──うおっ、…イラ?どうした」

 

 

 

 

「──訓練、お願いします!!」

 

 

(目指すは皆円満ハッピーエンドだ。頑張れ、俺!!)

 

 

 

近衛局に帰り、その勢いのままホシグマ副隊長に頭を下げる。俺は自分を鼓舞しながら、そう決心した。

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