オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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「書いたら出る」を信じて。
イベントの最後が勝てなさすぎる。ボートではしゃぐ術師うぜえわ。



ロスモンティスに勝ちたい!

「……あ。おにいさん」

 

ロドスをぶらぶら散歩していると、背後から透き通るような声が聞こえる。そこに居たのはフェリーンの耳が特徴的な、ロドスのエリートオペレーター──ロスモンティスがぼーっとした目でこちらを見ていた。

 

「ロスモンティス?今日は任務は無いのか?」

「うん。えーっと、この前ブレイズがお酒飲んで潰れちゃって任務に出れなかったから、今日はそのお休み…らしいよ?」

 

ブレイズ…、こんな年端も行かない子供に替わりに仕事出て貰うって…。お前…。目の前の無表情の少女を同情の視線で見つめる。

 

「ロスモンティスは偉いなぁ」

「──ん…えへへ」

 

サラサラの髪を撫でるとくすぐったそうに目を細めるロスモンティス。あぁ〜心がぴょんぴょんするんじゃあ〜。

 

「…よし。じゃあ俺はこれで」

「──。…おにいさん、私お腹すいた。食堂、行こうよ」

「んー?…そういや、もうそんな時間か…。おっけー」

 

時計を確認すると、昼時の時間であった。それを確認したせいなのか、俺の腹も減ってくる。ちょうどいいか。

 

「よし。じゃあ行くかい」

「…うん。はい」

 

ロスモンティスが手を伸ばす。その手を優しく握り、俺達はロドスの食堂へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

「えと…どれが美味しいの?」

 

メニューを見ていた時、ロスモンティスは戸惑いながら俺に問いかける。それを聞き、俺は記憶を手探りで引っ張り出した。

 

「んー…。あ、そうだ。確かこれだ。オムライス。これいっつも食べてた」

「ん…。じゃあ、それにするね」

 

そうして今日の料理の当番であるグムに注文しに行く。ロスモンティス──。彼女は重度の記憶障害を患っている。ロスモンティス曰く、大体数日経つと『なにか』を忘れるらしい。例えば、ロドスのどこに何があるか。自分はどんなものが好きだったか。──今自分が話している人は誰なのか。

そんな彼女をロドスのオペレーター達は献身的にサポートした。ロスモンティスに携帯型デバイスを与え、その日あった出来事を記録する様に言った。その手厚いサポート体制があるからこそ、今の彼女は成り立っているし、彼女もまた、ロドスの面々を家族として大切にしている。

最初は俺も忘れられていた。あれはビックリした。ちょっと仲良くなれたかな、なんて思った次に「あなた誰?」と怯えられた時は一回死のうかと思ったくらいだったからな。

そのせいか、一部の人には疎まれていた事もある。しかし、それはドクターとケルシー医師の()()()カウンセリングで無事に仲直りできたらしい。俺は震え上がった。

 

「おまたせ、おにいさん」

 

そんなことをしていると、オムライスが乗ったお盆を小さな手でしっかり持ってロスモンティスがやってきた。俺も頼んだパスタを食べるとしよう。二人で手を合わせ、食事を始めた。

 

「ロスモンティス、そういやタブレットはどうしたんだ?」

「…昨日、不備があって。調整に出したの。代わりのタブレットも無いから、困ってた」

「うわー…。そりゃまた災難な…」

「うん。…はい、あーん」

 

突然オムライスを一口サイズでスプーンにさらい、それを俺に差し出してくる。

 

「…?ロスモンティス?」

「ブレイズに教えて貰ったよ。仲の良い男女がご飯を食べる時は必ずあーんをしないといけないって」

 

あのアル中熱血チェンソー女がァ…!純粋無垢なロスモンティスに何教えてんだ…!

 

「ロスモンティス。そういうのはな、恋人同士──それもアッツアツな人達がやるもんなんだよ。ドクターとケルシーさんみてえな」

「…確かに、ケルシーもドクターにあーんさせて、あっつあつなカップラーメン作ってた気がする…」

「なにそれ超見てえ」

 

どんなカオスだ。アッツアツの意味が違うんだわ、三分で口の中地獄じゃねえかよ。

 

 

「──。おにいさんは私と恋人になるのはいや?」

 

 

不意に、手はそのままでロスモンティスが不安の色を顔に出しながら問いかけてきた。…そんな顔をされちゃ俺が悪いみたいになるじゃねえかよ。

オムライスをぱくりと食べる。うん、美味い。目を丸くするロスモンティスに、俺はお返しとばかりにパスタを差し出した。

 

「あと十年経ったら考えとくわ」

 

その言葉を聞き、数秒固まったロスモンティスは、勢いよくパスタを食べ、笑顔で何度も頷いた。

 

「やくそく…だよ。忘れないでね」

 

あとさっきからスカジさんとエクシアがめちゃくちゃこっち見てくんだけど。やめろやめろ、俺の平穏を脅かすな。

 

 

 

 

 

 

 

「美味かったな」

「うん。また行こうね」

 

そこからは他愛もない話をした。主に俺から話題を振るが、ロスモンティスは時々相槌を打ち、楽しそうな顔をしている。

 

「最近は平和なんだよ。仕事内容がちょっと楽になって、休みの日が増えたんだ」

「じゃあ、また一緒に遊べるね。ブレイズも誘ってみる?」

「勘弁してくれ…」

 

 

「──なあ。ドクターってアーミヤさんとケルシー医師に取り合いされてるのってマジなの?」

「うーん…あまり覚えてないけど、仲が良いのは確かだよ。ドクターを挟んでニコニコ笑ってたり。ブレイズは修羅場って言ってたけど」

「うわぁ…。ドクターってそういう所は鈍いんだなー。女の子の気持ちは分かってあげないといけねえのに…。…?何だよその目」

「べつに」

 

 

そうこう話しているうちに、ロスモンティスの部屋までたどり着く。

 

「──。あがってく?」

「いや、俺は今から仕事入ってるんだ。ごめんな」

 

龍門のお偉いさんのボディーガードだ。クソが。しょんぼりとしたロスモンティスを撫でて慰める。

 

「まあ、また今度な。──痛っ」

「…どうしたの?」

「いや、ちょっと背中と腕が痛かっただけだ」

「大丈夫?簡単な傷薬ならあるけど…やっぱりあがってよ」

「うーん」

 

時計を見る。あと一時間半。ロスモンティスの部屋でダラダラしていると時間を忘れてしまう。なのでここは涙を堪え戻るとしよう。

 

「やっぱりごめんな。ロスモンティスと一緒に居たらずーっとここに住み着いちゃいそうだ」

「私はそれでも良いよ?」

「ヒモにはなりたくねえなあ」

 

俺が譲らないことを理解したのか、ため息を吐くロスモンティス。

 

「じゃあ、かがんで?」

 

突然の要望に戸惑うが、言う通りに屈む。すると、その端正な顔が徐々に近づいて行き──。

 

 

 

「ちゅっ」

 

 

 

「──え」

「…ちゅーは、仲良しのしるし。いつもよくしてくれてありがとう。お仕事行ってらっしゃい。…にゃ」

 

少し赤くなった頬を隠すように、さっさとロスモンティスは自室へと戻っていった。

 

 

 

「うっそお……」

 

 

 

少しの間俺は放心していたが、仕事のことを思い出し、足早にそこを立ち去った。これはやばい。

 

 

 

 

 

 

 

「でへへへへへ…」

「キッショいなお前。何があった」

「んー?秘密さ。できる男のな」

「くたばれ」

 

近衛局の更衣室に戻ると、そこには同僚が隊服に着替えていた。コイツも任務か。鼻歌を歌いながら自分のロッカーから隊服を取り出す。

 

「イラ。今日お前気をつけろよ。お前の雇い主、幽霊に取り憑かれてるらしいからな」

「幽霊ぃ?」

「おう、なんでも急に物が動いたり、誰もいない廊下に女の笑い声が響き渡ったりするらしいぜ」

 

それを俺は鼻で笑う。幽霊なんか居るわけねえだろ。そんなメルヘンなんてもんはありゃしねえのによ。それに、今の俺は女神のキスを受けたからな。マジで何でもできる気がするぜ。

 

「怖かったらついていってあげまちょーか?イラくん」

「いらねえよバカ」

 

その声に笑い、俺は上の服を脱ぐ。

 

 

 

 

 

「───ッ……!?」

 

 

 

 

すると背後から、同僚の押し殺した悲鳴が聞こえる。なにかと思い振り返ると、その厳つい顔を真っ青にした同僚がいた。

 

「──どうしたんだよ。なんかあったのか?」

「お、お前…()()()()()?」

「それってなんだよ。お前おかしいぞ?一体何が──」

 

 

「──お前の背中と腕見てみろ」

 

 

ん?と立てかけられてある鏡を見る。

 

 

 

──手形があった。大少さまざま手形が、俺の背中に張り付いていた。腕も長袖を着て分からなかったが、蛇のような手形が纏わり付いている。さらに何かにしがみつかれたかのように、背中の皮膚が少し捲れていた。

ぞっ、とする。心臓の鼓動がやけに響く中、先程の会話を思い出す。幽霊に取り憑かれた依頼主。幽霊。手形──。

 

 

「今日一緒に行かない?」

「行かない」

 

「誰かああああああ!!今日の任務ついてきてぇぇぇぇ!!」

 

 

俺は駆け出した。因みにホシグマ副隊長が一緒についてきてくれた。惚れるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はロドスのオペレーターになったばかりのことを思い出す。

いつもの記憶障害で一人の友人と名乗る女の人に迷惑をかけていた時。

 

「──なんで私のこと忘れるの!?どうでも良いんでしょ私のことなんか!!本当に大切なら絶対忘れるわけない!!」

「ち、違うよ…!私は──」

「もういい。貴女がそんなひどい人だとは思わなかった」

 

焦って手を伸ばそうとするが、そんな資格は無いと思い直す。忘れた自分が悪いのだ。あの人を傷つけてしまった。辛いのはあの人。そう思い、俯く。

 

「──オイ」

 

その時、男の人の声が聞こえる。…あの人も、多分知り合いなんだろうな。一瞬だけこっちを見た時、目を見開いてた。また新たな罪悪感に襲われた。

 

 

「いいかげんにしろよ。アンタはこの子がわざとアンタのことを忘れたと思ってんのか」

 

 

しかし、男の人が口にしたのは、私への批判ではなく、私への擁護の言葉だった。

 

「…関係ないでしょ、黙っててよ部外者は」

「その部外者から見てもアンタが気に入らねえから関わってんだろうが」

「──じゃあ何?私が全部悪いの!?あんなに会話もしたのに!笑顔も見せてくれたのに!全部勝手に忘れられて怒る私が悪いの!?」

 

女の人が叫び、男の人の胸ぐらを掴む。泣きながら怒るその姿に、私の胸が締め付けられる。

 

「辛いのよ…!この子と一緒に過ごした時間が、無いものになっていくのが…!」

「──確かに、それはそうだ」

 

男の人が静かに口を開く。

 

「最初は最低の人種かと思ったが…アンタはこの子が本当に好きなんだな」

「──っ、そうよ!だから──!」

 

 

 

「──なら。この子の気持ちをどうして理解してあげないんだ」

 

 

 

鋭い目をしていた。

 

「この子の事をこんなに思っているアンタを、この子が嫌いなはずがない。ちょっと冷静になればすぐ分かるだろ」

「あ……」

 

女の人がこちらを見る。一気に怒りの炎が萎んで行く様を、私は見た気がした。

 

 

 

「忘れられるのは辛い。けどな──、忘れてしまう方は、それ以上に辛いんだ」

 

 

 

その言葉を皮切りに、女の人は蹲って泣き始めた。そこに他のオペレーターの人が来て、女の人を連れてどこかに行ってしまった。

その場に残る私と男の人。…少し気まずい。すると、その空気を変えるために、男の人は私に笑顔を見せた。

 

 

 

「えっと、俺の名前はイラ。君は?」

「ロス、モンティス…」

「──良い名前じゃんか。よろしくな」

 

 

 

それを聞いた瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。何故だかわからない。だけど──どこか安心する。泣いているのに、幸せを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──よし。これで──忘れない」

 

私のアーツで、今日あった事のメモを取る。今日は楽しかった。また一緒に遊べるかな。…それに、付き合う約束もしたし…。

 

「にへへ」

 

ニヤニヤが止まらない。ついつい頬が緩むが、それを見るものは誰も居ないので、安心して──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イラ おにいさん わすれるな」

 

 

「十年後 おにいさんと つきあう」

 

 

 

 

 

 

壁に刻んだその文字を、ゆっくりと眺めることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の勝負──イラの負け。

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