オペレーターに勝ちたい!   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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ついに初昇進2オペレーターを作れました。
よろしくね真銀斬。


ラップランドに勝ちたい!

「おお、テキサス」

「…イラか。おはよう」

 

ロドス艦内を歩いていると、ペンギン急便所属のループスの少女、テキサスとばったり出会った。手には棒状のチョコを持っており、相変わらずの無表情でサクサクと食べ進んでいる。

 

「あれ?エクシアは?」

「別の仕事中だ」

 

そう言ってテキサスは俺の隣に静かに寄ってきた。

 

「…食べるか?」

 

チョコを一本手に取り、上目遣いで小首を傾げるテキサス。普通にしてたら物静かで可愛いんだけどなぁ…。

俺はそれを受け取り口に咥える。美味い。

 

「新作のやつだ。美味いだろう」

「美味えなあ。も一本くれよ」

「…しょうがないな」

 

あー…平和だぁ…久々に平和な時間が来たぁ…。こういうので良いんだよ。友達と中身の無い会話をして、それでお互い笑い合う。こんな生活に憧れてたんだぁ…。

そんなことを考えながら欠伸をする。…部屋で寝るか。目を瞑り、眠気と相談した結果、その結論に至った俺はゆっくりと目を開けた。

 

 

 

灰色の目が俺の視界一面に映し出された。

 

 

 

「……ッ!?」

「イラ!」

 

 

テキサスのつんざくような悲鳴が横から聞こえると同時に、その灰色の目の持ち主は手にした剣を振りかぶっていた。

咄嗟に迫り来る剣を両手で挟み込むように捕らえる。しかし、こいつの戦闘スタイルは二刀流。という事はもう一刀来るという事で──。

 

「無理無理無理!テキサス!!」

「──っ!」

「アハハハッ!!」

 

みっともなくテキサスに助けを求め、その剣を受け止めてもらう。そしてテキサスはそいつごと剣を薙ぎ払う。しかしそいつは狂笑を上げながら危なげなしに受け身を取った。

 

「危なかったねえイラ!もうちょっとでイッてたんじゃないかい!?」

「テメェ…」

 

ラップランド。それがこいつの名前だ。そしてまたの名を──、

 

 

 

「ところで──何でテキサスと一緒に居るのかなあァァあ!?」

 

 

 

──クレイジーサイコレズだ。

 

 

 

 

ラップランドはテキサスの事が好きらしい。一にテキサス、二に戦闘。その他はどうでも良いって本人が言ってた。まあ、たしかに恋愛の仕方は人それぞれだ。別に女同士っていうのも悪い事じゃ無いし、お互いの心が繋がっていれば何の問題も無いと思う。

…だけどさあ…!

 

 

「なんっで俺に構うんだよぉ!お前らの邪魔しねえからあっち行けやぁぁ!!」

「酷いこと言うなイラ。私にはお前しかいないと言うのに」

「…どこまでも僕の気を触れさせてくれるねぇ…!」

 

額に青筋を立てたラップランドが迫り来る。テキサスゥ!お前マジでふざけんなよ!痴話喧嘩に巻き込んでくるなよ二人で仲良く百合百合しとけやぁ!!

俺は全力で逃げる。戦ったらワンチャン勝てるくらいの勝率だけど、ここはロドス艦内。施設を滅茶苦茶にするわけにはいかない。ケルシー医師がペット(Mon3tr)と共にやってくる。

 

「うわ…!」

 

あ、あいつ斬撃飛ばしてきやがった!?俺とテキサスの間を引き裂く様に飛ばされた斬撃は、ロドスの壁に抉れたような穴を開ける。あーあ、俺知ーらね。

 

「アハッ!楽しいねえイラ!?テキサスも喜んでくれて何よりだよ!」

「「な訳ないだろ」」

 

こいつ目腐ってんのか眼科行けお前。これのどこが楽しいんだよお前だけだよ。

心の中でツッコミながら走り続ける俺たち。

 

「おいテキサス、あいつどうにかしろよ!お前の恋人だろ!?」

「──次そんなことをぬかしてみろ、本当に殺すぞ」

 

わーい敵が増えたあ。一瞬で間合いを詰めてきて人を殺す目でこちらを覗くテキサス。そんな嫌なの?何したんだよあいつ近い近いごめんごめんごめん。

息がかかるほど接近してきたテキサスを押しのけていると、目の前に左右の分かれ道が見えた。

 

「テキサス、左に行くぞ」

「分かった」

 

そう小さな声で伝えると、テキサスは頷き左へ走る。それを確認した俺は──。

 

 

「…え?」

 

 

右の道へと走った。呆気に取られた表情のテキサスがどんどん離れていく。

ふはははは!!作戦通りだぜ!!ラップランドの目的はテキサス。俺は圧倒的邪魔者。つまり俺たちが分断したということは、目的のテキサスを追いかけていくに違いない…!

後ろを少し見てみると、目を丸くしたのちに、獰猛な笑みを浮かべたラップランドが見えた。やっちゃって下さいよ姉貴。あとはもう何しても良いんで!俺帰るんで!

 

「馬鹿、イラ!奴の狙いは私じゃない──!」

 

そしてさらに走る速度を上げたラップランドは──、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「…えっ!?右!?」

 

 

「──やっと触れ合えるね、イラ」

 

 

そのありえない事実に一瞬体が硬直してしまう。ほんの一瞬だが、それを見逃すほど目の前の狼は悠長にしている訳もなく、俺は首を掴まれ壁に叩きつけられてしまった。

全身に強い衝撃が走る。反射的に息を吸い込もうとするが、首をギリギリと音が鳴るほど絞められているので酸素を取り込めない。

 

「ぐ…!があ…」

「ひひ、ひひひ!ひあはははは!!」

「イラッ!!」

 

テキサスが剣を抜いてこちらに走ってくる。しかし、ラップランドはまた笑いながら銀の斬撃を飛ばしてテキサスを弾き飛ばした。

 

 

「う…っ!──やめろ!やめてくれッ!」

「──期待外れだよ、テキサス。前の君なら即座に僕を殺せたのに…」

 

 

憐憫の表情をテキサスに向けるラップランド。

 

(と…というか、も、もう…!げん、かいだ…!)

 

さっきから視界がチカチカしてきた。頭に酸素が行き渡ってないからロクな思考が出来ない。マジでこのままだと──死ぬ。

俺は震える手でラップランドの腕を掴む。するとラップランドは嬉しそうな表情をした。

 

 

「──イラ、僕と一緒に──」

 

 

 

「い──いいか、げんに、…し、ろ……!!」

 

 

 

思いっきり腕を握る。するとその細い腕から枝が軋む様な音が響いた。

 

 

「……ッ!!」

 

 

ラップランドの顔が大きく歪む。当たり前だ、俺の馬鹿力で腕思いっきり握り潰してんだからな。今の感触からして、多分骨にヒビが入った。でも俺も命の危機で手加減が出来なかったから、…まあおあいこって事で許してくれ。

首の拘束が緩んだその隙を見て──俺はラップランドを思いっきりぶん投げた。

 

 

「──嫌だよ、一人はさァ!!」

 

 

しかしラップランドのその執念は絶えることはなく、投げられた瞬間に俺の服の襟を掴んだ。掴まれる事により、本来彼女一人が吹っ飛ばされる筈だったが俺もその力に逆らう事が出来ずに二人で吹っ飛ばされ、ロドスの一室にもみくちゃになりながら突撃した。

 

 

「か、ひゅー…ひゅー…」

「ッ…やるね、イラ」

 

 

息を整え、ラップランドの方を向く。その目はまだ諦めておらず、貪欲な、鈍い光を放っていた。

 

「お、お前…やりすぎだろうがッ!!死ぬ所だったんだぞ!!」

 

激情と共に声を上げる。これはいくら何でも悪戯の範囲を超えている。どう言うことかと、俺はラップランドを睨みつけた。

 

 

「──テキサスと僕って何が違うのかな」

 

 

俯いたラップランドが呟いた。

 

「おんなじループスで、過去にやってることはほぼ同じ。本質は血生臭い獣なのに──、何故テキサスは独りじゃないんだろうね」

「…?何言ってんだお前」

 

むくり、と起き上がり、倒れたままの俺に跨ったラップランドは嗤いながら俺を見下ろす。

 

「テキサスの隣には人が居て──、僕の隣には誰も居ない。どこでこの差がついたんだろう」

「…」

「しかも、キミまでテキサスのモノになっちゃった。こんな最悪な気分なのは鉱石病に罹った時以来だよ」

「はあ?俺はテキサスのモノになんかなって──」

 

「隠すなよッ…!本人が言ってたんだぞ!『私とイラは将来を約束した』って!!幸せそうに!僕を差し置いて…!僕の気なんか知らないで…!」

 

ええ…?ど、どうなってるんだ…?瞳孔を開いて目尻に涙を浮かべるラップランドは俺の体に寝そべり、また俺の首に手をかけた。

 

 

「だから決めたんだ。奪ってしまおうって」

 

 

ラップランドが耳元で妖しく囁く。

 

「…ねえ、選んで?ここで僕の一生の思い出になるか──僕といつまでも一緒に居るか」

「……ちなみに、前者の思い出って…」

「えへへ」

 

可愛らしい笑みと共に、俺の首にかかった手に力を込める。なるほどね、死ぬってことか。

背筋が凍る。ここからは選択を間違えれば本気で死ぬ。多分、こいつはどんな手を使ってでも、いついかなる時も俺を殺しにかかるだろう。

俺は息を整えた。そして───。

 

 

 

 

「アホか」

 

 

 

 

ラップランドの額にデコピンをした。しかも両手でやる痛いヤツを。

 

 

「〜〜った!」

「お前なあ、テキサスの言うこと鵜呑みにしすぎだ。アイツのことどんだけ好きなんだよ」

 

 

悶絶するラップランドにため息が出る。

そもそも前提がおかしいんだよ。なんだ将来を約束したって。してないわ。

 

「え、で、でも…テキサスが…」

「だからそれが嘘なの。お前は騙されてたの。周りの反応とか見たか?」

「た、確かにちょっと鼻で笑ってた感はあったよ、けど…!」

 

それじゃん、それだよ答え。どんだけ信じてんだよテキサスを。途端にまごまごするラップランドを押しのけて真正面から向き合う。

 

 

 

「お前は独りっつったけどな。その道を選んだのはお前自身だ。人に当たるな。お前が決めたんだから」

「──ッ」

 

 

これは当人の責任だ。俺はラップランドがどんな経緯で独りになったのか分からない。だけどこいつの力があったんならもうちょいマシな未来もあり得た筈だ。だが、それを選ばなかったのはこいつの覚悟だ。自分で決めた未来は自分で後始末をつけるべきだろう。

息を詰まらせたラップランドは俯いて目尻に涙を浮かべる。…あーもう。

 

 

 

「──まあ。それが嫌になって、どうしようもなくなった時は人に頼めば良い」

「…無理さ、僕は嫌われているからね」

「確かになあ」

「酷いよ」

 

 

ジト目を向けるラップランド。だって…ねえ?急に斬りかかってきたり急に嗤ったりするやつなんか近寄りたくないだろ…。

 

 

「じゃあそれまでは俺が隣にいるよ」

「──え?」

 

 

 

「お前に良い人が見つかるまでは、俺がお前を独りにはさせない」

 

 

 

 

俺経由でこいつに友達or恋人を作る。これしかないだろう。幸いそう言う経験は友人関係クソ雑魚シャチのおかげで得てきた。なんなら似たもの同士仲良くなれるかもしれない。

 

 

「…キミは狂ってるね、自分を殺そうとしたヤツにお節介を焼くなんて」

「喧嘩売ってんのかお前」

 

 

「冗談さ。──ありがとう」

 

 

 

 

「…話は終わったか?」

 

 

 

 

突如、俺とラップランドのものではない声が上がる。その声の方を向くと、そこには胡座で座り、こちらを睨みつける褐色肌の青年がいた。

 

「あ?ソーンズじゃん、何してんのこんな所で」

「…こんな所で悪かったな。ここは俺の部屋だ」

 

え?ふと周りを見ると、無惨にも散らばった本棚、研究道具、家具。唯一無事なのは彼の背後にある水槽だけだ。ウニが元気に動いてる。

…おーっと?これは……。

 

「イラ。お前の事だ、また巻き込まれたんだろう。一度だけ許してやる。さっさと帰れ」

「…怒ってる?」

 

「 帰 れ 」

 

お怒りデストレッツァの様ですね。帰りましょう。

急いでラップランドを引きずってドアの様な残骸から出て行く。ごめん。本当にごめん。

 

「イラ!良かった…無事だったんだな…!」

 

外に出ると、テキサスが腕を押さえたまま笑顔を見せる。しかしその笑顔は、隣のラップランドを見た瞬間に憎悪の表情に変わる。

 

「貴様…!よくもイラを…!」

「おい、テキサス」

「少し待っていろイラ。今こいつを──」

 

 

「お前、俺と将来を共にするとか有る事無い事言ってるらしいな?」

 

 

しばし少しの沈黙。その目に灯った暗い炎が弱火になった。

 

「…何のことだ」

「ラップランドに聞いたんだ、なあ?」

「そいつはうそついてる、おいらっぷらんど、おまえやめろ」

 

もはや片言になったテキサスを見て、俺はラップランドに悪戯な目を向ける。すると、ラップランドもその口元を緩めた。

 

「うん、そうだよ。テキサスは確かに言い張ってた。…僕、悲しいよ…」

 

そう言って俺に寄り添うラップランド。それを見たテキサスは口を開こうとする。しかしそうはさせない。

 

「ああ、悲しいよな。信じてた奴の言うことが嘘だったなんて」

「んぅ…」

 

そう言って俺はラップランドの頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めたラップランドを見て、テキサスはぽかんと口を開けた。

 

「な、な…」

 

「さて。何か申し開きは?」

 

 

 

 

 

「──くっ、覚えていろ!」

 

 

 

 

 

「逃がすかァァ!!行くぞラップランドォォ!!」

「──うんっ!」

 

 

 

 

一人は冷や汗をかきながら逃げ、一人は鬼の形相で追いかける。そしてもう一人は花の咲いた笑顔を浮かべながら、それに着いていく。

そこにはもう、『孤独』という邪魔者は何処にも居なかった。

 

 

 

 

 

 

今日の勝負──イラの勝ち。




初白星です。やったね、イラ君

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