オペレーターに勝ちたい! 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
「せいれーつ!!」
「うす!」
「……」
その元気な声と共に、俺は気をつけの姿勢をする。隣には目線を逸らしながら気怠げな態度の隊員一名。目の前には活発な笑顔を見せる隊長。
「これより、マゼラン探検隊は未開の地開拓作戦の旅に出ます!点呼!」
「いち!」
「……」
いつまで経っても点呼が続かない。横を見ると、うんざりした表情でこちらを見ている隊員二番が居た。
「おい、次はお前の番だぞ」
「…帰るわ」
ハスキーな声で呻くようにそう呟くアスベストスは、いつも装備しているドアを背負う。それを見た隊長──マゼランは、慌ててアスベストスに駆け寄った。
「わー!待って待って!帰らないで〜!」
事の発端は数日前。マゼランに探検へ誘われた。以前から何度も誘われていたこともあり、俺はすぐに了承。有給を取り、(チェン隊長がものすごい形相で止めて来た)探索グッズをクロージャの購買部で買い、来たるべき日に備えた。
すると当日、同じ探検家であるアスベストスが待ち合わせ場所に居た。
「あ?何でお前が此処に居んだよ」
「いや、俺はマゼランと待ち合わせしてるんだけど…」
「ん…?バカ言え、あいつはアタシと…。──嘘だろ」
何かを悟った様子のアスベストス。それに首を傾げていると、マゼランが走ってこちらに向かって来た。
「おっまたせー!ごめんごめん、ちょっとドローンの調整に手間取っちゃって──」
「おいマゼラン…!どーなってんだよ、何でこいつが居るんだ!?」
「アレ?言ってなかったっけ?ごめんごめん!」
「言ってねえし聞いてねえぞ!お前ふざけんなよ!」
声を荒げるアスベストスの肩に俺は手を置く。
「まあ落ち着けアスベストス。安心しろ、お前は俺が足手纏いになるだろうと心配してるんだろ?」
「イヤ、まあそれもあるけど…!」
「杞憂だそれは。俺は今日のために数々の探索グッズ、知識を頭とバッグに詰め込んできた。俺が足を引っ張る事は無いことも無いだろう!」
「あるじゃねえかよふざけん──(以下略)」
こうしてギャーギャー騒いでいるアスベストスを落ち着かせ、今に至ると言う訳だ。現在は大型車で大陸を横断している途中だ。ロドスから遠く離れた地で、現地の人にお金を払って運転してもらっている。
「此処からちょっと離れたところに地図にまだ載ってない島があるんだ!まずはそこをばーっと捜索しよう!」
「おーう!」
「ハァ…。何でそんな元気なんだよ」
荷台に座りながらこれからの予定を話し合う。アスベストスはドアの配線などを弄っていた。
外を見ると広大な平野が広がっている。知らない所に行くというワクワク感が高まる中、俺は一つの疑問を抱く。
「そういや、マゼランとアスベストスは何処で知り合ったんだ?」
「覚えてねえ」
「ええ!?酷いよアスちゃん!」
「アスちゃんやめろ」
涙目になるマゼラン。それに目を向け、意地悪な笑みを浮かべるアスベストス。
「アタシがキャンプしてたらこいつが近寄って来たんだよ、ありゃ驚いた。猛獣かと思ったらまさかの同業者だったからなあ」
「ち、違うよぉ…。たまたま火を持って来てなくて、つい灯りのある方へ…」
虫か。頭を掻きながら可愛らしく笑うマゼラン。アスベストスはそれを鼻で笑いながらも口元は優しく緩んでいた。
「…んだよ」
それを見ていた俺を睨む。俺は慌ててかぶりを振った。
「いや、何でもない!それにしても楽しみだな、マジで!」
「…生半可な気持ちで来たんなら死ぬぞ、ピクニックじゃねえんだ」
「う…。分かってるよ、だからちゃんとしてきたんだ」
「ふん、どーだか」
「まあまあ!イーちゃんに足りない部分は私達が補えば良いんだから!」
マゼランの笑顔に毒を抜かれたのか、アスベストスはジト目で俺を睨みつけ、窓の外に目を向けた。
「アタシは助けてやんねーぞ、置いてくからな」
「おう、頼りにしてるぜアスベストス」
「助けねえっつってんだろ!!」
「あははは!──うわっ!?」
そんな話をしていると、突如車が急停止する。何事かと思って窓から体を出すと、スカーフを巻いた男たちに車が取り囲まれていた。どうやら金目のものを置いてけと言われているらしい。運転手は怯えて顔を俯かせていた。
「──よっと。これも探検あるあるなのか?」
「『自分に降りかかる火の粉は自分で払え』…!探検家の中で決められてるルールだよ!」
俺たちは車から降り、野盗たちを見据える。
「いち、に、さん…いっぱい居るな」
「23、居るよ!」
「ハァ、めんどくせぇ。さっさと終わらせるぞ」
アスベストスがその言葉を口にした瞬間──野盗たちが動き出した。
一気に九人こちらに向かってくる。一瞬横目で見てみると、アスベストスとマゼラン側に残りの十四人が向かっていた。下卑た笑みを浮かべて行く男たち。…あーあ、一番酷い目に遭う所に行っちまったなぁ。
そんなことを考えていると、一人が剣で切りかかってきた。それを最小限の動作で避け、ガラ空きになった顔面に左のストレートを放つ。男は十メートルほど吹っ飛ばされ、途中にあった岩にぶつかり、ようやく止まった。
「──ッ、身体能力上昇のアーツか!?てめぇら注意し──」
「素だよ」
そう言って、指示を出そうとしたリーダー格であろう男の腹に肘を入れる。じゃぽ、という音が腹の中から聞こえた。これ内臓イったな、すまん。
気を失ったリーダーを見て狼狽する七人。走り回っていた足を止め、仲間とアイコンタクトを取ろうとした。その隙を見逃さず、一人の顔に向けて踏みつけるように飛び蹴りを入れる。さらにその隣の男の頭を持ち地面に叩きつけた。何かが潰れる音と共にあたりに砂埃が舞い散る。
あと五人。砂埃で男達は視界が遮られて、目元を隠していた。すぐさま地を蹴り、両腕で二人同時にラリアット。白目を向き、倒れ込んだ一人を抱えて、そいつをゴーグルを付けた男にぶん投げる。シーのジザイを投げれる程の膂力で飛ばされた弾丸(男)は、ゴーグルと頭をぶつけ合い二人仲良くダウンした。
「ひ──!」
残り二人。怯えた表情の眼鏡をかけた男が杖を握りしめる。すると、五つの、二十センチほどの岩の塊が周囲に浮き上がる。
(──アーツか)
そう判断した瞬間に岩が飛んでくる。俺はステップでそれを避け──ることなく、岩を殴り壊した。
「──え」
自分の攻撃を回避されず、その場で対処された事がショックだったのか、唖然とした表情で眼鏡をずり下ろす。…なんかごめん。
「アーツは無闇矢鱈に使うもんじゃないぜ」
その言葉をかけ、俺は眼鏡の首にハイキックを食らわせる。ものすごい勢いで吹っ飛んでいった。…死んでないよね?
「さて、あと一人は──」
くるりと振り返ると、最後の一人が背中を向けて走る姿が見えた。
「…あ!しまった!」
俺は足に力を入れ、それを放出させようとしたその時──。
「ぎゃ!」
逃げていた男は、何処からか飛来したドローンにレーザーを当てられ、そのまま気を失った。ドローンが飛んできた方を見てみると、マゼランが自信満々の顔で腰に手を当てている。
「油断大敵だよイーちゃん!」
「ああ、ありが、と…」
マゼランの背後には凍えて蹲る男達がいた。所々青紫色になっており、凍傷も多々ある状態だった。うわ…えげつな……。
「お巡りさんがそんな暴行しても良いのかよ?」
アスベストスの方を向くと、今度は逆。全身火だるまになりながら悲鳴をあげている男達の真ん中で、バカにしたような笑いを浮かべていた。
…いやいやいやいや!!
「二人とも!ストップ!死んじゃうそいつら!」
「…え?──うわあ、大丈夫!?」
「あぁ?コイツらがふっかけてきたんだろ?なら良いじゃねえか、自業自得ってやつだ」
「あああ本当に死ぬから早く何とかしろーー!!」
あの後、しっかりと手当てをした俺たちは、男達を拘束してその場に置いてった。まあ、すぐに誰かが見つけてくれるだろう。
そこからは目的地まで何事もなく辿り着いた。ただ運転手が俺たちに向かって必死に「殺さないで下さい…!」って言ってたのが本当に悲しいです。マゼランは困惑していて、アスベストスは大笑いしてた。悪魔どもめ。
そして今、俺たちは──。
「はわわわわわわ……!」
船に乗っています。いや、船って言っても四人用のボートなんだけど。島って事は海路を行かなくてはならないわけで。そうすると私のカナヅチがここぞとばかりに活躍するんですよね。
「お前海苦手なのかよ!?アッハッハッハ腹いてぇ!!」
「ち、違えよ!泳げないだけだ!!」
「一緒じゃんそれ…大丈夫なの?」
「ば、ばばば馬鹿野郎大丈夫に決まってんだ──」
「どーん!」
「ほわあああ!?」
こ、この女…!俺を海に突き落とそうとしやがった…!なんて事しやがるんだトカゲ女が!アスベストスを睨みつけると、彼女は嗜虐的な目をこちらに向けてきた。
「あァ?なんだその顔は?文句でもあんのか?じゃあ言ってみろよ、さあ、早く!」
「──お、お前なあ!」
「ほれ」
「ひ──!」
ぐい、と顔を海の方へと向かせられる。あやばい、足の力なくなる。俺はへなへなとアスベストスの方へ倒れ込んだ。
「おうおう、随分とデッケぇ赤ん坊だなあ?抱っこちてやりまちょーか?よちよち」
「ぐ…クソォ…!」
頭をガシャガシャと撫で回され、羞恥心が急激に高まる。すると、目の前でボートを漕いでいたマゼランが頬を膨らませる。
「んー、ずるいなあアスちゃん。私もやるー!」
「あ、ちょ!」
「ひいいいい!!」
突然マゼランに引っ張られ、バランスを崩してしまう。するとボートは大きく揺れ、アスベストスは戸惑った声を上げ、俺は悲鳴を上げました。
「やめろやめろやめろ動かすなってマジで!!」
「マゼラン…お前そこまでするかぁ?」
「ふふーん!アスちゃんには負けないからね!」
「聞いて!?ねぇ聞いて!?」
さっきからコイツら頭沸いてんのか。何で怖いから辞めてくれって言ってる奴の神経を逆撫ですることしかしねえんだよ優しくしろよ頼むからお願いします!!
海をざぶざぶと渡るボート。というか、本当に大丈夫なの?なんか変なデカい魚とか来たらど、どうすんべ…?
「大丈夫大丈夫!そんな例聞いたことないし、此処の海は至って綺麗で穏やか!海産物もよく取れるんだよ!」
「──ま、たしかにそうだな。面白くねえけど、此処は何も危険はねえ。お前もここでちょっと慣れてみろよ」
そう言ったアスベストスは欠伸をして目を閉じる。それに気づいたマゼランが、「もー!ちょっとは手伝ってよー!」なんて小言を言い始めた。…確かに、ここは静かな海だ。よ、よし。耐性を今のうちにつけておこう。頭を少しだけボートから出す。
そこには、透き通るような海があった。小魚達が群れを成し、ヒトデやソーン…ウニなどが岩に引っ付いている。生命の息吹がそこに溢れていた。
「…綺麗だ……」
…なんだ、よく見たら怖いものなんてないじゃないか。綺麗な海だなあ…。あ、あの魚デカいな、ジェイの所に持ってったらどんな料理にしてくれるんだろうか。アレはイカか?すげえ、俺生のイカ初めて見た!
すごいな、色んなものがある。あ、ほら。赤いドレスだって────。
「は?」
思わず二度見してしまう。赤いドレス?どういう事だ、海の中だぞ?気のせいか。目を凝らしてよく見てみる。…いや、海藻では無い、確かにドレスだ。しかも…アレは、──手、か?
(嘘だろ?)
もしかして、人が溺れてるんじゃないのか。だとしたら早く助けに行かないと──!!そう思い、俺は──。
「──オイ!!」
「………え?」
気づけば、俺はアスベストスにしがみ掴まれていた。はっ、とすると──鼻先に、ちゃぷんと海水が触れた。まるで惜しむかのように。
(お、俺、は──)
「死にてえのかお前!!泳げねえ奴がどうしたら
胸ぐらを掴まれ、絶叫をその身に受ける。俺は知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、ドレスが──。
「いや、見てみろ!人が海にいるんだよ!溺れてて──!」
「……イーちゃん、何言ってるの?こんな海の真ん中で、人が居るわけないよ。それに…赤いドレスなんてない」
「──お前マジでイカれてんじゃねえのか」
マゼランの声にはっとなる。その部分を注視するが、あるのは魚の群れだけであった。途端に、今まで透明だった海が、真っ黒に見えた。何が、何処に居るのかも分からない海に。
「お、ご、ごめん……、俺、俺」
「──大丈夫だよ、もうすぐ着くから。そこで休憩しよう」
その言葉を聞き、船の先頭を見てみると、目的の島が見えた。未開拓の地。しかし今は、そこが安らぎをくれるオアシスのように俺は感じたのだった。
──海の中。この世の生物の物ではない触手がバラバラになり、あたりを浮遊していた。それに群がる小魚達。しかし、ソレを食べた瞬間に体が弾け飛び、また新たに肉塊の浮遊物を作る。
ドス黒い血海の中で、赤いドレスを着たナニカが海面に顔を向けていた。その手には触手の主であろう、『 』の頭が握られていた。
「──♪」
ナニカは口ずさむ。哀しいメロディを。ナニカは嗤う。焦がれた者の来訪を。ナニカは欲す。標的の愛を。
「──♪」
海に、唄が響き渡る────。
イラ 女難の中の女難に取り憑かれた男。でも鈍感だから気づかない。アホの子。
マゼラン ペンギン系女子。イラのことは普通に好き。早くウチにきてください。
アスベストス イラのことは好きって言ったら悔しいので嫌いって言ってる。でも好き。多分この作品の中で一、二を争うほどピュア。
運転手 泣いた。
??? みつけた
イベントストーリー沿いの話とか見たいですか?
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見たい
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このままで良い