『人の感情を大きく分けて四つに分けられます。その四つは何か、漢字で答えなさい』
姫路瑞希の答え
『喜、怒、哀、楽』
教師のコメント
正解です。哀という漢字は間違えやすいのですが、あなたは心配なさそうですね。
土屋康太の答え
『正常、騎乗、手錠、退場』
教師のコメント
情がありません。
吉井明久の答え
『友情、努力、勝利、!』
教師のコメント
先生もジャンプは好きです。
吉井空弥の答え
『喜、怒、愛、楽』
教師のコメント
愛は
嫌いな季節というと何だろうか。それを聞くと大体の人は夏、冬の暑すぎる季節か寒すぎる季節のどちらかから選ぶのではないか。少なくとも僕はそうである。
僕は夏という季節が嫌いだ。女の子が平気で肌の大部分を露出してくれる季節であるが、それでもやはり夏の暑さでの不快感を受け入れてまでそれを見たいとは思えなかった。
では反対に、好きな季節はなんだろうか。そう聞かれると大方の人は秋、春という暑すぎず、寒すぎずの季節のどちらかから選ぶだろう。少なくともそれも僕だ。
「うん、春、僕は君のことが大好きだぜ」
好きすぎて好きすぎてチューしようか迷ってしないぐらいに大好きだ。しかしさすがは春というべきなのだろうか、真の敵は味方にある、とは良く言ったものだ。誰が言ったか忘れたし、微妙に間違っている気もするが、まあ良い。そこまで気にすることではない。
いや、そもそもの話が長すぎた。いい加減始めよう、この物語を。
この――大馬鹿な兄と、その弟の物語を!
「遅刻だああああああああああ!」
僕こと吉井空弥の、一種の物語の始まりとも言える二年生になってからの初めての学校。それは盛大に針が回った朝から始まりを迎えた。
「アキ兄起きて! 遅刻だ遅刻! ち・こ・く!」
吉井家の朝は遅い。今から走っても恐らく正規の時間に間に合わないぐらいに。
「むにゃ……あと……ぐー」
「せめて一ボケしてみろよ!」
そう言いながら有無を言わさず足に力を込めて、僕の兄であり大馬鹿である吉井明久の胴体を隠している掛け布団の上に、僕は相手が受けるダメージなんか無視するつもりに勢いを付けて飛び乗った。
するとまあ、お腹付近を突然に圧迫されたアキ兄の酸素は空気中に吐き出され、見事に目を覚ました。
「ぐぼっ! な、なになになに! 強盗犯!?」
「そうですね、大切な物を盗まれました、それは時間です」
「全部理解した!」
さっすが僕の兄。これが以心伝心ってやつか。
「というわけで来ました学校に」
「セリフだけでそれっぽくするな! まだ家すら出てないぞ!」
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿なのはアキ兄だ!」
そうして。今度こそ本当の本当に家を出て、学校を目指す僕たち吉井家仲良し兄弟だった。
毎朝とはいかないまでも、こういう風に色々あって走ることには慣れているので、持久力を問われる走りは得意だ。自慢にはしないが。
±±±
「と……いう……わけで本当に来ました学校に」
相も変わらずヘビィな朝だった。早朝マラソンなんて健康的なことをする羽目になってしまった僕たち兄弟は、それでもなんとかギリギリで学校を遅刻することはなかったが、周りにはほとんど人がいないため、恐る恐るながら、僕たちがどのクラスに入るかの封筒を所持している先生――鉄人先生(名前は何だっけ?)に近づく。
本当ならここで不意打ちを仕掛けて気絶させ、怒られず封筒を持ちだすというミッションをこなしておきたいところだが、しかし残念なことにこの鉄人、鉄人と呼ばれるだけのことはあり、国際大会でアメリカ人として出れるのではないかと、まことしやかに噂が飛びかかっているため、不意打ちを仕掛けても確実に負けるぐらいの身体能力差があると分かり切っているのでそのミッションはこなさない。
「疲れたー……と、おはようございます、鉄――西村先生」
ふむ、どうやらこの鉄人先生。西村先生が本名らしい。
それにしても危ないなあ、アキ兄、もう少しで鉄人って呼んだからって怒られるところだった。
そして本当のところなら名前を忘れていた僕はただ、何も付けず先生、と呼んで終わろうと思ったが、名前を聞けたので少しでもいらない好感度をあげようと、アキ兄のように名前を付けて呼んであげようと思う。
「おはようございます、鉄村先生」
鉄の鉄槌をくらった。
「ぶたれた!」
「ぶったな」
極めて冷静なことから計画的な犯行ということは明らかだった。
「まったく……本当ならここで俺の名前を間違えてきたことに色々言ってやりたいところだが……ほら」
わざとらしいため息を吐いて、僕らに茶色い封筒を渡してくる。
ラブレターなのか……?
「? 何ですかこれ?」
「この前おこなった試験の結果だ。中にどのクラスか記してある」
ラブレターじゃなかった。良かった。そういえば封筒持ってる先生って始めに考えてたのにもう忘れてた。
「へー」
「ふーむ」
なんか……なあ。
「確かAクラスの教室は綺麗にしてある上に、エアコンとかパソコンとか付いて特別豪華、って話でしたよね」
A、B、C、D、E、F、とそれぞれクラスが分かれているらしい。この封筒の中身を見た瞬間に、僕のこの一年の待遇が決まると思うと、封筒を開ける手も動きにくくなってしまうものだ。
「まあそうだな、正直下手な一人暮らしをするよりあそこに住んでいたほうがずっと良いくらいだ」
その話を聞いたアキ兄は興味深そうに聞いていたが、すぐに苦笑いの表情に変えて、持っている封筒に目を向ける。
「そうなんですか、まあ今回の僕は多分無理だなあ」
「あれ、以外。てっきりもっと自信過剰にAクラスに入れるかも、とか言うと思ったのに」
「うーん、まあ良いとこBクラスかな?」
「へー、でもやっぱりけっこう自信過剰なんだね」
「じゃあ良いとこFクラスかなあ」
「やっぱり自信過剰だね」
「それ以下って何!?」
「留年」
「勘弁してー!」
「さっさと開けろ」
そういえば僕たちは遅刻ギリギリだということを失念していた。うーん、反省。
「せっかくだから予想でもしようか、僕はアキ兄がFクラスだと思う」
「奇遇だね、僕も空弥がFクラスだと思う」
「「………………!(不敵な笑いあい)」」
「さっさと開けろ」
良いだろう、吉井明久、僕の兄であり大馬鹿な兄よ。今こそ見せてやる。僕ら二人一緒の物語はここで終わりを告げるのだと。
とか、思うと、一種のフラグというか、なんというか、この言葉だけ聞くと『あ……』とか結果がお察しできる。
うん。
はい。
そうですね。
「「Fクラス……?」」
僕ら兄弟は二人とも、不可解そうな発言をして、桜舞うこの春に、西村先生のいるこの文月学園前で本当に最低で最悪な学園生活の幕開けをすることとなった。
「――ああ、やはり
チラ裏から引っ越しました。気ままに書いてるだけなので、評価も感想も気楽にどうぞどうぞ。