バカとバカの弟と召喚獣   作:じょーく

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問い 以下の問いに答えなさい。
『なぜ脂肪があるほうが水に浮きやすいのか答えなさい』

 姫路瑞希の答え
『私はカナヅチです!』

 教師のコメント
 問題を見間違えたのでしょうか、珍しいミスですね。

 土屋康太の答え
『おっぱいの力』

 教師のコメント
 あとで職員室に来るように。

 吉井明久の答え
『おっぱいの魔力』

 教師のコメント
 あとで土屋君と一緒に職員室に来るように。

 吉井空也の答え
『あの日のことを思い出そうとすると頭が痛む』

 教師のコメント
 答えを思い出すようにしてください。



第二問

 さて、秀吉成分を吸収した僕はといえば、とりあえず秀吉から離れての席決めだ。Fクラスは確か個人の自由で決めて良いんだよな。それにしても遅刻ギリギリの時間だというのに、さすがはFクラス。周りに人が全然いない。いつだって学校を遅刻するかもしれないスリルをわざわざ味わうFクラス生徒みんなのそこに痺れない憧れない! ジョジョ乙。

 ……自分のボケに自分で突っ込むって、結構、なんか、くるね。

 

「ふむ……」

 

 どうする。はっきり言ってこれがこれからの学校生活を変える分岐点と言い換えても過言ではない。例えば秀吉の隣。一見天国に見えるだろうあのキラキラ輝いている席(座布団とちゃぶ台だけど)。

 だが、良いのかそれで? 果たしてそれでちゃんと僕は授業を受けれるのか? いや、今までそこまでちゃんと受けたということは無いんだけれど、それでも僕は少しでも授業に向けていた脳を、あそこの席に座って秀吉に費やしてしまって良いのか?

 僕はあそこに行ったら絶対に授業より秀吉の顔に夢中――集中(?)する。

 

 授業を取るか秀吉を取るか。

 はあ。

 本当にもう。

 そんなのは決まっているだろう。学生の本分はいったいなんだ? そんなの幼稚園児だって知ってるよ。

 やれやれ、まったく。僕の悪魔が何か囁いてやがるけど気にしない。

 僕はまるで流れるように自然な動きで秀吉の隣の席へと――

 

「ぐへっ」

 

 誰かに襟首を掴まれて喉から酸素が吐き出される。

 せっかく『授業に集中しろ!』とかほざいている悪魔に打ち勝ったというのに。一体誰が邪魔したんだろう。

 振り向くと、金髪美少女で右手にはエクスカリバー、左手にはアルテマウェポン、真っ黒な翼を背中から生やし、燃え盛るような紅い目を――

 

「なに堂々と嘘吐いてんのよ!」

 

「え、今の中二病ど真ん中みたいな説明全部口に出てたの!?」

 

「振り向くと、から全部聞こえたわよ!」

 

 よりによって嘘を吐いたところを……逆に良いのか、これ?

 まあ確かに意味も無い嘘の説明をしたのは悪いので、最初からやり直し。彼女の特徴を上から順にやってみよう。

 赤髪。ポニーテール。気高さまでをも感じさせるキリッとした強気な瞳。チャーミングで美少女のツンデレ女子高生。そして気になる胸は――

 

「巨乳」

 

「僕のモノローグが乗っ取られてる!?」 

 

 どうするんだよこれ!? もう読者が嘘を前提に見かねないぞ!

 

「悪かったわよ。確かにツンデレは違ったわね」

 

「違わないところを否定するな! 一番違うのは――」

 

 ヒュン。と、顔の真横を何かが通った。視線だけをそちらに向けると、真っ白ですべすべそうな綺麗な二の腕があった。

 

「一番違うのは?」

 

 にっこり、微笑んで聞いてきましたので、僕は口元を引くつかせながら答えました。

 

「……ツンデレカナー」

 

 

 ±±±

 

 

「結局、どうして僕の襟首を掴んでまで秀吉との愛の道を阻んだの?」

 

「……一般常識的にどうしても止めなきゃいけないようなことだけど、それは一先ず置いといて、アンタにお願いがあったのよ」

 

 ふむ、こういう時は、『なんでも言うことを聞くからお願い』と言われるのが僕の夢だということを思い出しちゃうな。すごーくちっぽけで情けないけど、お願いだから言ってくれないかな。

 とは考えたものの、彼女を相手にした場合、それはなんでもではなく、彼女が嫌がること以外になるのだが。もしも実力行使にでたら僕が負けます。

 ……うん、(本気を出せば勝てるけど)弱いアピールはこの辺にしておいて、どんなお願いなのかそろそろ聞いておいてあげよう(本当の実力を出せば片手で余裕だけど)。

 全く、さんざん彼女に恐怖していたのが僕の本当の姿だとでも思った人間はいるのだろうか。多分ほとんどの人がいただろう。だがそんな奴らに言ってやる、それは演技だ。僕が真の姿を開放すれば、この地球どころか宇宙の命が危ないね。まあ本当のことを言うのはこれぐらいにしておこうか。

 

「なんだかすっごいアホみたいなことを考えている気がする……」

 

 僕の顔を見てそんな事を言う島田さん。ふぅ、やれやれ、相手が器の大きい僕で命拾いしたな。ただし、もしもここが戦場だったら今頃君は八つ裂きになっていただろうぜ。

 

「で、アホアキ」

 

「何その微妙で絶妙なあだ名。なんか定着しそうになりそうだから止めて、なんでも言うことを聞くからお願い!」

 

「分かったわよ、ああああ」

 

「ドラクエの主人公みたくなっちゃった!」

 

 個人的にはⅤが一番好きだったりする。あれ、DS版だと結構違うところあるんだよね。

 

「まあ良いわ。それで今、なんでもって言ってくれたわよね」

 

「……う、うん」

 

「なんでも」

 

「……僕の指は手と足を合わせても全部で二十本だよ」

 

 それ以上折らせろって言っても無理。

 

「? よく分からないけど知ってるわよ。で、まあアンタにお願いがあるの」

 

「な、なにかなー、金はないぞ! ジャンプしたって良い!」

 

「ウチをどんな目で見てるのよ!」

 

「僕がどんな目に遭わされるかのほうが問題だ!」

 

 グルルルルと、お互い獣のような唸り声を上げて額がくっ付きそうになるぐらいにまで近づいてにらみ合う。

 畜生、どうして僕の身がここまで危険に晒されなければならんのだ。去年もこんな風になんでも言うことを聞くから、って言ったせいでとんでもない目に遭ったよなー。確か家の兄を連れてプールに行って……うん、思い出したくない。

 

「もう、ウチはただ……その……」

 

「ん?」

 

「だから……」

 

「?」

 

「なんでもないわよ!」

 

「突然の逆ギレ!?」

 

「勘違いしないでよね、アンタのなんでも言うことを聞くって言ったのは、絶対にチャラじゃないんだから!」

 

「勘違いしたい! 島田さんがツンデレだって!」

 

 ツンデレ設定は生きていると僕は信じておこう。と、少し会話に白熱しすぎていたようで、いつのまにかFクラスの中にも人がゾロゾロと入っていた。うーん、恐怖の時間が過ぎるのは速いなあ。島田さんはそのまま赤い顔をして、近くの席に……席?

 セキ……?

 ヒ……デヨシ……?

 それなりの人数が居る中、東大に入るより難しい倍率20倍はあろうかという秀吉の席の隣、前、後ろ、斜めは、あたりまえのように取られていた。

 

 

 ±±±

 

 

 席の窓際や端っこ、など、良い場所は大抵取られており、ていうかそれ以外の場所も取られていて、僕が座る席は学校ランキングNO,1の最悪の席、教卓の前となった。ああ、秀吉の隣に座るか迷っていたあのころが懐かしい。島田さんは僕と話す以前にちゃぶ台の上に自分の鞄を置いて、自分の席だというアピールをしていたようだ。策士め。

 あー、でもこれ、別に初日この席だからって、明日もそうだっていうわけじゃないんだっけ? ちゃぶ台だし、荷物を残せないはずだから。うん、なら今日ぐらいは我慢してみるか……。

 

 バキッ(背後で何か音がする)

 ドスッ(背後で何かが何かに刺さった音がする)

 

 試しに座ってみたけどもう我慢の限界を迎えそうだ。

 

「あ……」

 

 キーンコーンカーンコーンと、鐘が鳴ってしまった。え、本当にこの席で僕は一日過ごすの?

 ……ふぅ、落ち着け。まずは落ち着こう。素数を数えようかと思ったけど、そもそも素数って何から始まるのかを忘れたからやめた。となると奇数か偶数でも数えて落ち着くべきなのか、それともそれとも意表を突いて羊の数でも数えてみるか。

 なんて、天才的なことを考えていると、Fクラスの担任である福原先生が鐘が鳴り終わると同時に扉を開いて入ってきた。なんかいかにも気弱そうで、すぐに誰かの意見に体ごと流されそうな、そんな先生だった。

 

「どうもみなさん、社会を担当させてもらっている福原慎と申します。これから一年よろしくお願いします」

 

 こう言ってはなんだけど、Fクラスを担当するために来た気弱でうだつのあがらない先生みたいだ。暗い声、暗いオーラ、やばい、なんか悲しくなってきた。僕本当にこのクラスで一年過ごしちゃうんだ。あーあ、今回は少なくともBクラスに届いたと思ったんだけどな。

 と、駄目だ駄目だ。反対から言っても駄目だ駄目だ。そう、僕よ、今こそ頑張るときだ、ポジティブにいってみよう。よし、やれる、僕ならやれる。

 

「それでは廊下側から、自己紹介とさせていただきましょうか」

 

 逃げたい。

 なぜ自己紹介というものがこの世にあるんだ。二年生だぞ? しかも高校生だぞ? え、なになに、しかもわざわざ教壇のところに行ってよろしくお願いしますなんて言うの? やばい、逃げようかな。

 まあ待とう。さっきも言ったな、落ち着くんだ僕。いくら自己紹介が嫌でも、人にはやらなきゃいけないときがある。それが今なんだよ。僕が生きている今なんだ! さあ、もうバッドエンドはごめんだ、いい加減この長ったらしいプロローグを終わらせよう!

 となるとまずは自己紹介の内容だ、まずは趣味を――

 

「趣味は吉井明久君を殴ることですっ♪」

 

「誰だ! そんな危険な趣味を持つの……あうっ、美波……」

 

 趣味の件は無しの方向で考えよう。

 となると……ふむ、ここは一つ陽気なボケでも言って――

 

「吉井明久ですっ♪ ダーリンって呼んでねっ♪」

 

『『『ダーリーン!!!』』』

 

 ……うん、さすがFクラス。おいおいアキ兄よ、そんな気持ち悪そうな顔するなって、確かに男たちの大合唱はあれだったけども。

 ん、次の人終わったら僕じゃないのかこれ。……絶望的状況だ。作戦一も作戦二も、すでに前二人によって打ち砕かれた。趣味もボケも何もかも、きっと僕はこのFクラスの中では変なものになってしまうに違いない。趣味はゲームです、なんて言ってみろ、なんだこいつ、みたいな目で見られるに決まっている。

 となると何がある、考えろ、脳を揺らせ、考え抜け! この絶望から抜け出すんだ!

 

「――です」

 

 ついに、僕の番か。

 くっくっくっ、あーはっはっはっは! やばいどうしよう。

 

「…………」

 

 僕はできるだけ自然に、あくまでナチュラルに立ち上がり、そしてそれが当たり前かのように、ゆっくりと、あくまでゆっくりと畳の上を歩いてゆく。こうなったらできるだけ時間を稼いで策を考えるしかないな。大丈夫、僕なら――

 

「あ……えと」

 

「…………」

 

 いつのまにかもう自己紹介する場所に到達してしまった、くっ、しまった、僕の第三の策が思い浮かばないまま、せめてもう少し煩かったら……あの時のダーリーンという見事なコンビネーションはどこいったんだ、同じFクラスである僕の気持ちも……。

 同じ?

 僕は本当に。

 彼らと同じなのか?

 

「僕は……」

 

 少なくとも今までここに立ってきた人と僕は違っている。

 彼らはこんな風に、決してビビッてなんかいなかった! 立派に闘っていた!

 趣味が違っても。

 ボケが通じなくとも。

 僕はきっと、胸を張って、前を見るべきなんだ。

 それでやっと、ここに立っていたみんなと――Fクラスのみんなと対等になれるんだ。

 

「…………!」

 

 それにやっと気付けた僕は、自然と微笑むことができた。

 今ではFクラスのみんなが審査員にでも見えるようだ。極度の緊張状態だった僕が急激にリラックスできたことに、彼らも気がつくことができたのだろう、大体の人が目を見開いて驚いている。さあ、これで僕も君らと対等に、なれたのかな?

 そのまま僕は笑みを崩さないように、普通に――言った。

 

「吉井空にゃ――……」

 

 …………。

 

「…………」

 

 …………。

 

「…………!」

 

 僕はあくまで自然に、素早くナチュラルに自分の席へと戻った。ああ、ゆっくり行っても教壇のすぐ前だったんだから、関係なかったんだね。あははっ、おかしいな、ちゃぶ台が滅茶苦茶可愛く見える。あれれ、しょっぱい雨も降ってきたよ。

 おいおい、可愛いとか言わないでよ。あの噛み方は確かになかったよ。だからって今ここで大合唱するほどじゃないでしょ? だからもうこれ以上僕の傷を抉らないで。

 

「……はい、次の人」

 

 やばいなこの先生、イケメンじゃないですか。このFクラスの先生がこの人で良かった……。

 ああ、ああ、ああ、あああああ!

 落ち着けない! これは今日一日落ち着けない!

 なぜだ……なぜだ! なぜ僕は、僕って奴はああああだな本当に!

 

「木下秀吉じゃ」

 

 自己嫌悪から何分、あるいは何十分と経ったのだろう。声が聞こえた。

 僕は自分の頭を押さえていた両手を、軽く離して、視線をそちらに向ける。

 

「これから――」

 

 そう言って、僕のほうをチラッと見てから彼女は両手を丸めて、頭の上に付け、首を少し傾げて――言った。

 

「これからよろしく頼むにゃっ♪」

 

 ……ひでよし。

 君って奴は……全く、本当に、敵わないな。




今気づいた、島田美波さんを作者の書き方次第でオリ主のヒロイン化できる。
……でも明久の相手の一人として外したくないなあ。
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