リンカーウィッチ   作:Pz.III

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※警告
今回、以下の作品のネタバレを含みます。
・ガーリー・エアフォース
・劇場版ガンダム00
・マクロスF


ロータス・ツー

シャーと音を立てながら、お湯が体の輪郭をなぞる。じんわりと体の表面が暖かくなっていくのが心地よい。

 

今日の模擬戦のやり方は……スマートじゃないとは思う。けれど、これが俺の戦い方だ。批判されようが変えるつもりはない。体格は普通だと思いたいが、実際のところロスマン曹長や管野中尉と変わらない。クルピンスキー中尉と真正面からやり合うと、流石に不利だと言わざる負えない。だから、ああいう戦い方を強いられる。

 

いっそロスマン曹長のように一撃離脱戦法を取ればとも思うが、一撃離脱の撃墜率がドッグファイトに比べると数割低く、なかなかやる気になれない。

 

「性に合ってるってことかな、たぶん」

 

自己解決。蛇口をひねりお湯を止める。脱衣所に入って体を拭き、寝間着を着る。時刻はもう10時、502に提出する模擬戦報告書や模擬戦相手の評価書、零戦六四型と震電の運用報告書等々……お昼すぎから書き始めて終わったのは今さっき。なかなか時間がかかったが、これでやっと寝ることができる。

 

ベッドに入り、目をつぶるが……寝れない。

 

「暗いな……飲み込まれて……一体化しそうで……集合的な……嫌だな、全く」

 

ふと、窓の外を見る。昨日の朝みたいに、明るいわけじゃない。降りてゆく雪は太陽の光を反射せず、灰色に色づいている。新月の夜。雲が厚く、星の光さえ届かない。街は灯火管制で光なく、基地の中で光がついているのはまだ仕事中であろう城野の部屋、あとはラル少佐の部屋の灯りは付いてるかも。

 

「灰……雪……嫌だな……本当。夜も含めて、嫌いだ」

 

前世のことを思い出す。雪、無音、窓辺からは光さえ入ってこない。今日と同じような、暗い夜。

 

「戦闘中は忘れられるけど、怖いな、本当。死にたくないはずなんだけどな」

 

幼い頃からそうだった。死ぬのが怖い。死にたくない。死後の世界が天国だろうが、地獄だろうが、怖い。もし、死後の世界が無いのなら、そこにあるのはただの闇。それを認知することどころか、寝ているときのように、夢さえ見ることができない。シナプスからシナプスへの神経伝達は途絶え、心臓は周期を刻むことなく、凍ってゆく。考えることも、夢見ることも。

 

死ねば、夢すら見れない壊れた機械。ハードコアなヴィジョンさえない。

 

集合的無意識が死後の世界だとして、自己が失われることが怖い。押し寄せられる他人の自己を、自分の自己と混ぜることが、怖い。

 

「考えるのも、嫌だな」

 

一度死んで、ここに……前世に好きだった、この世界、「ストライクウィッチーズ」の世界に転生して、敵はネウロイだけ、だと思ったら、俺は政府の犬。他国のウィッチと戦って、他国の戦力を測る。場合によっては他国の基地に潜り込んで、情報を盗む。戦後のイニシアチブを握るための戦略。選ぶすべはなかったとはいえ、解せない。

 

「なんで、俺は、マロニーみたいなことをしようとしてるんだろう」

 

この世界は、前世に比べ平和なのに。人類同士の現代戦もない、核も……今の所ない。

 

唯一、この仕事をしていて良いところは……様々な国のウィッチに出会えること。それと、色々な国を渡れること。

 

それに、前世でできなかったことを楽しんでるフシはある。なにより、この時代は……現代より、空気がいい。海もきれいだ。場所によっては現代より汚い都市もあるにはあるが、世界的な平均を調べれば、この時代のほうがきれいだと思う。

 

「……不毛だな。生死観を考えたって、答えは出ないんだ。一回転生したからって、次があるとも限らない……これだけが事実だな。」

 

とはいえ、すぐに考えを止められれば苦労はしない。一つの議題に一旦の結論が出れば、次が来る。

 

俺たちが戦う相手、ネウロイとは、一体何なのだろうかと。

 

マクロスFのバジュラのような、敵対的に行動されることもあるが、対話もできる存在。

 

ガンダムダブルオーに出てきたELSのように、わかり合おうと人類の行動をオウム返ししてくる、対話を目的にした存在。

 

ガーリー・エアフォースのザイのように、一定数人類を殲滅し、地球環境を維持するために文明を滅ぼし、種の存続のみを目的にした存在。

 

すべてありえるだろう。バジュラがフォールドレセプターの歌を通じて人類とわかりあったように、リトヴャク中尉の歌に興味を示し、その歌を模倣した。ELSが人類の攻撃を対話の手段だと勘違いし、それを真似してモビルスーツの形を模倣し、攻撃したように、俺たち人類の兵器に類似した形状に変化したり、ウィッチと同様の姿を取ったり。ザイのようにガラス質で発光し、コアが人類に利用される。

 

もっと別のアプローチを取ってみよう。

 

炭素生物の巣窟である地球に住む、炭素生物である人類の「生物の定義」は、前提として主な構成物質が「炭素を含む有機物」であることがある。でなければ「自己増殖」「エネルギー変換」「自己と外界の隔壁」などの生物の定義を満たせない。しかし、例えばケイ素生物のような、人類の生物の定義にそぐわない生命体にとって、おそらく、人類は生命体として見られていないだろう。ケイ素生物にとっての生物の定義はきっと、前提として「ケイ素でできている」ことだろうから。

 

互いに生物として相手を見ていないのなら、無生物相手に容赦しないだろう。と思う。まぁ、ネウロイは人類相手に容赦していないように見えないがね。

 

「これも……不毛だな……ネウロイを……殲滅……すれば……わかるか……な…………」

 

体から力が抜け、視界が黒くなる。意識がすぅ……と途切れた。

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