まばゆい光で目が覚める。服で保護されていない露出した肌に感じる冷たさが、俺の意識をさらに鮮明にさせた。
「朝か……」
時計を見ると、午前8時。体の疲れはある程度無くなっちゃいるが、魔法力はどうだろう。
「
そばで眠っていた使い魔を起こし、魔法力を操作し、体外に放出するため、力を込める。すると、頭から鹿の角と耳のような物が生えてきて、尾てい骨のあたりからロバの尻尾のようなものが生えててくる。
「お、思ったより回復してる……これなら飛べそうだな……いいぞ四不象、戻ってくれ」
確認が終わったので、使い魔の四不象を戻す。四不象が使い魔なウィッチなど、おそらく俺ぐらいしかいないだろう。
四不象、一般的に『シフゾウ』と言われるシカ科の動物で、角がシカ、頸部がラクダ、蹄がウシ、尾がロバに似ているが、そのどれでもないと考えられていた動物で、それが名前の由来とされている。スープーシャンというのは中国語読みで、一般的には『封神演義』の主人公『太公望』の霊獣として知られている。ジャンプの漫画版封神演義に出てくるドラゴンをデフォルメしたような動物が有名だろうか。
「まったく……神様はどんな気持ちで俺の使い魔をこんなマイナーな動物にしたんだ……」
有名な話だが、この『ストライクウィッチーズ』の世界には中国と韓国(朝鮮半島)がない。初期設定ではわざわざその部分を削って、土地ごと存在しないことになっていたぐらいだ。そのため、本来中国語はこの世界にないし、四不象がいることがおかしいのだ。
「ま、それは俺も同じなのだけれど」
戦闘服に着替えながらつぶやく。俺はこの世界にいるはずがない存在なわけで、そんな俺の使い魔もこの世界にいるはずがない動物……もしかしたら大モンゴル帝国のあたりや、オラーシャの東部には存在するかもしれないが。まぁ、『スープーシャン』なんて読み方はこの世界にあるべきではない、イレギュラーなものだろうが。
「とりあえず食堂にでも行くか……腹が減っては戦はできぬとよく言うし」
服をすべて着終わると、すぐにドアを開け、廊下に飛び出した。
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「ふぅ……美味しかった」
多少足りないな、なんて思いながら食堂を出ると、今日はやることが全くないことに気づいた。普段なら、戦闘の翌日には部屋で寝ているのだが、思ったよりも疲れがなく、眠気も全くない。暇をつぶすための本も持ってきておらず、だからと言って本を買いに行こうにも、一人で行く気にもなれないし。何より下手に出歩くと仕事に関わるのだが……
「どうしようかな……飛べる程度に魔法力があるし……そうだ、せっかくなら城野少尉と一緒に……」
思い立ったが吉日、早速ラル少佐のところへと向かった。
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「明日の分の仕事まで終わらせたいのですが」
「ま、いいじゃない。仕事ばっかり根を詰めてても、うまくいかなくなるよ」
ラル少佐に「哨戒行きたい」と言ったら、「いいぞ」と一言。すぐに城野中尉を部屋から連れ出し、さっさと格納庫へと向かった。
「さてと……ユニットは震電でいいか……武装はMG42を、ボックスマガジンでいいかな。哨戒だし、それなりの弾数もっていかないとな。あとはMP40も」
装備を装着し、ユニットを履く。四不象のシカのような角とロバのようなしっぽが体から生えてくると同時に、魔法力がストライカーユニットへと向かってゆく。エンジンの回転数が増し、ユニットの固定具が外れる。
「先に飛んでるぞ、城野中尉」
そう言い残し、滑走路を百数メートル滑走後、離陸。やっぱり、空は怖いけど、飛んでる間隔は気持ちいいな。恐怖心より、快感や爽快感の方が高い。上空を数度旋回し、体を空に慣らす。その間に城野中尉が空へと上がってきた。
「お待たせしました、滋中尉」
「お、来た来た。んじゃまぁ、行こうか」
少尉のユニットは紫電改、装備はM1912ショットガン。空中戦で使うウィッチはほとんどいない、戦場で見るのは珍しい装備だ。
「哨戒ルートはそんなに長くないけど、自由に飛び回っていいと、許可はもらってる。たまには気晴らしもいいもんだろ?」
「……わかりました。付き合います。その代わり、明日、あの仕事。お願いします」
あの仕事、ね。ここに来た本来の目的……あの仕事は多分、それを指してるんだと思う。
「……わかった。サポートは頼むよ」
「わかっています」
「話は変わるが、6時から12時方向の警戒を頼む。俺は0時から6時の方向を見ておくから」
「了解しました。ネウロイを発見次第報告します」
それから、数十分たった時だった。
「中尉、10時の方向、下方に小型3です」
少尉が俺の横につき、報告してきた。言われた通り、10時の方に小型ネウロイが3機。
「少尉、一人でやらるか?」
「はい」
待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。
「では頼む。固有魔法の使用も許可する。存分に暴れてくれ」
そう言うと、少尉は少し口の端を上げ、
「了解」
と、短く返した。同時に彼女のストライカーのエンジン音が大きくなり、ネウロイに向かって全速力で降下していった。
「消しとべぇ!!」
普段の少尉からは考えられない言葉使いの後、ショットガンの弾丸が放たれる。その弾丸はまばゆい光を放ちながら散らばらずに3機のうち一機へと向かってゆく。
「早速使ったのか」
弾丸はネウロイに着弾しても砕けず、ネウロイを真っ二つに咲くほどの大穴を開けながら貫通した。
「さすがの破壊力だな……」
少尉の固有魔法、『斥力場生成』の威力を見たのは久しぶりだった。いわゆる力場を生成する魔法で、集中力を必要とするが、自由度は高く、弾丸にその力場を発生させると、着弾と同時に着弾個所を力場で引きちぎっていく。シールドと同じように盾として発動させれば、攻撃を完全に防ぎきることも可能だ。伝わる人に伝わるように言えば、アーバレストやレーバテインのラムダドライバ、と言ったところか。欠点は、この魔法の使用時に体内に高熱が発生することで、その放熱のために、髪をポニーテールにして、放熱網代わりにしているようだ。
ネウロイはコアを今の一撃でえぐられたようで、光のかけらになった。残りの二機のネウロイはその時点で少尉に気が付いたようで、ビームを少尉へ向けて連射しだした。
「遅い!」
少尉はそのビームの間をするすると縫うように避けていくと、ネウロイに肉薄し、通りざまに射撃。瞬間、ネウロイは跡形もなく消滅した。
「さすがだな……あの威力……大型でもひとたまりないのに、小型相手にあの距離で撃つと、破片すら残らないとは……」
残り一機は怖気づいたのか、少尉に目いっぱいビームを吐きながら距離をとっていく。
「逃がすかこの石ころ野郎!」
するするとビームを避け、立て続けに二発射撃する。一発目の光弾はネウロイの左側をもぎ取り、二発目が右側をもぎ取ったと同時に、コアがやられたのか、やや残った部分が光のかけらとなり消えていった。