「どうしよう……」
と、格納庫を出たのはいいものの、そういえばどこに俺の部屋があるかは知らないなと、立ち尽くしてしまった。
「ふむ……とりあえず色々と歩き回ってみるかな」
グンドュラ少佐には「後で隊員達に案内させる」と言って言われたが……もしかしてクルピンスキー中尉が案内役だったのかな。まさかね、流石にないでしょ。
「あの〜滋武美中尉、ですか?」
急な少女の声で、俺の万に一つもない考えが頭から消えた。
「あ、うん、そうだけど。君は……下原定子少尉か」
声の方向にいたのは、扶桑皇国のウィッチ、下原定子少尉だ。
「はい、グンドュラ少佐から……基地の案内を……任されまして、探していたんです」
なにか、彼女の体がウズウズしてるような動きをしている気がする。なんか、嫌な予感が。気のせいか?
「そうか、俺も部屋に行って寝たかったんだが、自分の部屋がわからなかったもんで、困っていたんだ」
「そう…だったんですか」
なんだか体を隅々見られてる気がする。気がするだけなのか、なんだか忘れているような……
「どうしたんだ、さっきからどうも様子がおかしいが」
心配な顔をして彼女に近づく。が、その判断が不味かった。
「ああ!!もう我慢できません!!」
彼女がそういった瞬間、目の前が真っ暗になった。同時に呼吸がしづらくなる。
「アアァァアアア⤴⤴幸せえぇ!!」
そうだった、彼女は「ちいさくてカワイイもの」に目がないんだった。俺の身長は自分では「そこそこ」だとお思っているのだが、どうも彼女には「ちいさくてカワイイもの」と思われているらしい。
「ああもう武美さん!!カワイイです!!小さいです!!」
ほらね。
「ごめんなさい!!本当は話しかける前からずっとこうしたかったんです!!」
締め付けが強くなった。こ、呼吸ができない……
「ちょ、やめ、息……できない……離して……」
「後生です!もう少し、もう少しだけこの可愛さを堪能させてくださーい!!」
「ちょ、マジで……苦しい、やめて、死んじゃう……」
「そんな!!あと5分だけ!!」
(あぁ……もう……ダメ……)
疲れと睡魔、更に呼吸しづらいこの状況で意識を保つ方が辛いというものだ。
目の前が本当に真っ暗になると同時に、彼女の声が遠のいていったーーー
ーーーーー
「もう朝か?」
目に光が飛び込んでくる。体をムクリと起き上がらせ、窓の外を見る。そこには、顔を見せ始めている太陽があった。
「ここは……確か昨日、疲れて寝ようとしたら下原少尉に襲われて……」
特別編でロスマン先生と菅野中尉が言ってたが、かなり「くる」な、あれ。なんだか大切なものを奪われたような……はぁ……
「あの時、気絶した気がするんだけど……誰か運んでくれたのか?」
あたりを見回す。とりあえず、部屋には俺一人。荷物はなにもない。服は着てるな。
「……とりあえず、シャワーでも浴びるかな」
思い立ったが吉日。昨日シャワー浴びてないのは事実だし、魔法力の回復があり出来てないようで、まだまだ体調もすぐれないけれど、この後、また寝て、2日体を洗わないことになるのはいくらなんでも不潔だしな。
「寒いな……オラーシャの大地は……」
ベットから降りた瞬間、寒さが足の裏から脳天まで伝わってくるような気がした。
「……廊下、もっと寒いかな。靴は……あった」
ベットの横に、二足揃えてピッタリ置いてあった。
「この感じだと、俺を連れてきたのは、城野少尉か下原少尉だな。二人共、根は真面目だしな」
靴を履き、寒い寒いと言いながら廊下に出る。結局、昨日は案内を受けられなかったが、まぁ、基地の中を見て回りたいし、丁度いいや。迷いながら、シャワールームを探そう。途中で誰かに合えば、その子に聞けばいい、それだけのことだ。
シャワーを浴びたら、仕事と言って、部屋で休養を取ろう、魔法力を回復しきれないと満足に模擬戦もできないだろうから、なるべく回復させとかないとな。
廊下から、なんとなく外の景色を見る。朝が早いのもあるかもしれない。サンクトペテルブルクは、他の街に比べて、まだ、静かなままだ。
「リトヴャク中尉が言ってたが、寂しい街だな」
ベルリン奪還で、ヨーロッパに入ってくる人の数は増えたが、まだ人類が失った土地をすべて取り返せていないというのが現状だ。
「今が、1946年11月か。前世なら、丁度日本国憲法が公布された時期だな……」
この世界の日本……扶桑皇国は、ある意味ネウロイに助けられたようなものだと思う。少なくとも、敗戦国と言われた国の体制は、前世の第二次世界大戦前に比べても格段に良かったと言える。
「いかん、もの思いにふけりすぎたな……シャワールームを探しに行こう」
窓から目を話し、歩を進める。白い息が、俺の横を通り過ぎていった。
ちょっと自分の考えを詰め込みすぎたかも。反省。