菅野中尉の位置は俺の上、射程もあっちの方が長い。ストライカーの性能もあっちの方が高い。それに中尉はインファイトに強い。こっちの武器、MP40を有効的に使うのであれば、中尉の懐に飛び込まねばならない。かなり不利な状況だ。好きでこの状況を選んだとはいえ、ちょっと舐めてたかも。
「中尉の実力はなんとなくわかったし、見たいものを見るためにも近づくしかないか……」
中尉の射撃精度はさすがエースと言ったところで、避けるので精いっぱいというところ。というか現在進行形でそんな感じ。
「どうしようか……っと、あぶね」
「避けてばっかりでいいのかよ!」
本気出すといった手前、やるしかないか……きっと中尉なら受け止められるはずだし。
「そうだな、避けてっばかりじゃな!」
ストライカーユニットを前方に向け急停止、その勢いのまま頭を軸にその場で体の向きを180度上下に回転させる。予測位置に向けられていた中尉の射撃はすぐには俺の動きについては来れなかった。
「今ぁ!」
その隙を突き、中尉の方に向かって乱射しながら突撃してゆく。
「クソッ!」
最初こそ器用に避けながら射撃をしていたが、近づいていくとたまらず射撃をやめ、シールドを張る。攻撃が止まった今ならインファイトに持ち込めるかもしれない。
「いける!」
相手の反応が追いつかないうちに懐に飛び込む。右手のMPを上空に投げ捨て、魔法力と同時に「固くなる」というイメージを右手のグローブに込める。すると、魔法力がグローブの魔法繊維に流れ込んでいく。
「そこだぁ!」
中尉の真上まで飛び、右手を引く。一瞬、息を吐き、顔に向かって右手を振り下ろす。同時に、右手がタングステンのように固くなるイメージを込める。
「剣一閃、二式!!」
「なに!」
思いっきり振り抜く。が、中尉の顔には当たらずに、右手に止められていた。手は明るく輝いている。ということは、彼女も固有魔法を使ったわけだ。
「あぶねぇだろうが!」
「本気を出すと言った!!」
「だからって!それに、なんだよその名前!俺の真似してんじゃねぇ!」
「真似はしていない!二式と言った!」
「変わんねぇじゃねぇか!」
「仕組みが違う!」
そう、仕組みが違う。彼女の「剣一閃」は「圧縮式超硬度防御魔法陣」を展開させて殴る技。一言でいえば「凄く硬いシールドで殴る」技。一部の人間に分かり易い言い方をするのならば、YF-19とかYF-21の「ピンポイントバリアパンチ」。俺の「剣一閃二式」は俺の固有魔法「性質変化魔法」を使ったパンチ。この魔法は「魔法力が流れ込んでいる物質の性質を変化させる」魔法。この技の場合、魔法繊維が編み込んであるグローブに魔法力を流し込み、固くするイメージを込め、殴る。威力は剣一閃と変わらず、その代わり魔法力の消費が激しく、集中力がいるので隙が大きい、それにシールドとしての効果はあまりない。仕組みが違うので「二式」なわけだ。
「知るか!本物はなぁ、こうやるんだよ!」
そう言うと、中尉の左手が輝き、俺に繰り出される。
「うおぉっ!」
足を前に向け、左手のMPを向けながら後ろに下がる。目の前に、たった数ミリ前に彼女のパンチが繰り出される。
「チッ!避けられたか」
危ないというか、俺も同じことをしたが、あれはまともに喰らえば死ぬな。うん。
「これが本物の剣一閃か!これが見たかったんだ!」
「へ、そうかい!」
本気を出してよかった、という感じだなこれは。見たいものを見ることができてとても満足。
「見たいもの見れたよ、ありがと」
「なぁっ!」
そう一言言って、一歩引いた瞬間に向けていたMPを彼女に放つ。
「熱くなったときに相手のことがよく見えなくなるのが、中尉の悪いところだな」
ピンクのインクが中尉の衣服を染めた。
「ピンクは血の色、てね」
「てめぇ、卑怯じゃねぇか!!」
「卑怯も何も、模擬戦中だし」
「会話中だったじゃねぇか!」
その時ジジと、通信機にノイズが走る。次にボーイッシュな声、クルピンスキー中尉の声が聞こえて来る。
「模擬戦おわり~。二人とも降りてきな」
その言葉を聞き、俺は見たいものを見ることができたとすがすがしい気分で、中尉は不服そうな顔で地上へと降りて行った。
テスト前だったんです……許してください。一年程度忙しくなりますが、週一以上の頻度では投稿します。