天狗んトコからヒノキを伐採して暫く。
俺はマインクラフトで得た技術を元にして編み出した建築技法を駆使してだだっ広い平原のど真ん中に家を建てる。
土台を作り、木のブロックを建てて組み合せれば、あっという間に完成だ。
すると。
「うーん、我ながら劇的ビフォーアフター」
「すごーい!」
なんということでしょう。
匠の技で、何もない平原に、立派な豪邸が出来上がったではありませんか。
まぁこんなのあっちの世界では出来て当たり前だけどね。
家の構造は1階建ての4LDK。耐震性に加えて、俺が建材ひとつひとつに魔力を込めたことで凄まじい弾幕耐性を得た。仮に幻想郷そのものが滅んでも、この家だけは生き残れるだろう。そう太鼓判を押せるくらいには頑丈にしたつもりだ。
ここからなら人間の里も見える。周りに何もないのがちょっとアレだが、その辺は後でどうにでもなる。
「あとで色々買おっと」
「なに買うのー?」
まぁ、でも出来たのは家だけだ。家具とかは……旅先で気に入ったものを持ってきてるから良いとして、小物とか消耗品とかは里に行くついでに見ていくのもアリだな。
「何が買えるかは里の店次第だな」
そう思っていると、空から誰かがやってくる気配がした。
「こんにちわ〜」
俺が声をかけたその子は、一目で見れば『魔法使い』って出立ちだった。金髪にウィッチハットの少女が、箒に乗って降りてくる。まさしく魔女ってやつだな。
「こんなとこに家なんてあったか?」
「あぁ。俺が今建てた」
「お前が?」
「この人すごいんだよ魔理沙ー! イチから家建てちゃったもん!私見たんだから」
魔女は信じられないモンを見たって顔をしているが、別におかしくはないはずだ。家くらい建てられないと、マインクラフトでは生きていけない。
「…っと、名乗るのが遅れたな。
俺は
「私は
「そこはあとで話すよ。どうだ、家ん中でも見てくか?」
「え?そうだな………まぁ、長居しない程度ならいいか!」
「よし、ならば…1分待ってくれ。家具とか全部ブチ込むから」
「いや、いくら何でも―――」
1分は無理だろ、とでも言いたげな魔女っ子…魔理沙ちゃんをスルーして、俺は魔法を起動した。
「“ストレージ”」
その一言で、空中に魔法陣の群れが浮かび上がり、そこから家具の数々が飛びだしていき、ひとりでに開かれた豪邸の玄関やら窓やらから入っていく。勿論、玄関窓枠を傷つけずしっかり入るように、だ。
「おいおい……超高難度の空間魔法じゃねーか!いきなりとんでもねーもん見せつけてくれるな…!!?」
「おぉー! あっという間にお引越しが終わっていく~」
全ての家具が定位置にしまったのを確認して、俺はドアを開けて家に入り…そのまま、ドアを開けっぱにして
「さて、
「いや、ここにいるのは私だけだぞ、龍斗?」
「いやいや、魔理沙ちゃんの隣にもう一人いるっしょ。
魔理沙ちゃんより幼い見た目の、髪は黄緑で、青い目玉がついてる子が。……覚妖怪かな?」
「えっ!? 龍斗くん、私が見えるの?」
「覚……って、この声は………こいし!」
俺が指差した虚空から、新たな女の子が現れた。
何となく感じてた通りの特徴を持っていたその子は、魔理沙ちゃんにも見えるように姿を現す。…今まで気づかれなかった事が多かったからなのか、俺が気づいたのに超ビックリって感じだ。
「いつから見えてたの?」
「え? 最初から」
「!!?」
「君、俺が家建ててたの見てたでしょ?」
「すごーい! どうして私が見えたの!?」
うーん。どうして、ねぇ。
そんなん目を凝らせば余裕なんだけど…魔理沙ちゃんは今の今まで分からんかったようだし………そうだ。
「それは……そう、竜は何でも知っているからさ!」
テキトーにはぐらかそう。そうしよう。
平原しかなかったトコに豪邸が建ってたので、何やら異変かと思ったんだが……どうやら、幻想郷に移り住んだ奴のようだ。ぶっちゃけ、なんでそいつが平原のド真ん中に家建てたんだかわからないけどよ。
そいつ―――
まず、空間魔法の同時発動だろ、家具の同時移動だろ、ソレらを1分で終わらせた上に、私が全く気づかなかった妹の方の覚妖怪の存在を的確に当てた。
自分のことを「ドラゴン」とか「竜」とか言うだけはあるようだ。
「……美味いな。これ何のお茶だ?」
「アムリタ」
「アム…ッ!!? お前、客になんてもん飲ませてんだ!」
「だいじょぶだいじょぶ、不老不死になったりしないよ」
「本当だろうな…?」
「龍斗くーん、ちょっとにがーいこれ」
「角砂糖あるから好きなだけ入れな」
「はーい」
ぶっとんだものをお茶に出しやがる……本物じゃあないよな?これ。こんなしょーもないタイミングで妹紅や輝夜と同類になんの嫌だぞ?
こいしもこいしで、無警戒にカップに角砂糖をこれでもかとブチこんでいる。
なりゆきで邪魔したけどとんでもねー魔窟なんじゃなかろうか。とりあえず、引き出せるだけ情報引き出しておくか。
「龍斗…だったな。見ない顔だが、どこで何してる奴なんだ?」
「あぁ、昨日から幻想郷にやってきたんだ」
「迷い込んだのか…」
「いいや? ここには里帰りだ。今まで色んなトコを旅してたんだよ」
「え? それどういう……」
「旅!? 龍斗くんって、どんなところ旅してたの?」
…なんかこいしに割り込まれた。
「どんな…かぁ。ホントに色んな場所巡ったからなぁ。
呆れるほど平和な星も、死と隣り合わせの場所も大体行ったよ」
「へぇ~!例えば?」
「平和な星はねぇ~、平和すぎて色んな連中に攻め込まれてたな。悪夢とか、鏡の世界とか、絵画とか魔法使いとか虫とか破壊神とかに」
「それ平和じゃねーだろ」
めちゃくちゃ攻め込まれてるじゃねーか。それのどこが平和なんだよ。
「いや、これでも平和な方だよ? ヒドイ場所だと死んでも生き返って獣を狩り続けたり、自分の十数倍以上のサイズのモンスターと戦うのが当たり前だったり、バイオハザードが起きて街中ゾンビになったり、果ては永遠に亡者と戦い続ける、なんてのもあったからね」
「…いや、ちょっと待て。お前一体、どこの話をしているんだ?」
「実際に行ってきた所の話だよ?」
オイオイ、外の世界はどうなっているんだ? 龍斗の話がホントなら、人間の世界もう滅びかけてないか?
こいし、「面白ーい!」じゃないんだよ。目をキラキラさせんな。人間に限った話でもなく、凄まじい旅路の話だろコレ。少なくとも「面白い」だけは絶対にない。
「なぁ、今の外の世界って、そこまで滅びかけてるのか?」
「? ……! あぁ成る程。
魔理沙ちゃん、俺が行ったのはパラレルワールドの話だよ」
「パラレルワールド? なんで今そんな話が…」
龍斗が指パッチンをする。
すると、龍斗の隣にどこからともなく灰色のカーテンが現れた。
「「!!?」」
「覗いてみな?」
言われるがまま覗くと、そこには驚きの光景があった。
高い建物が立ち並び、鉄の箱みたいなのがその間を縫うように走っていく。
そして、夜にも関わらず光り輝く様子。それらが、カーテン越しに見えたのだ。
「お前、一体……!?」
驚きを隠せないまま、カーテンの奥に行こうとするこいしを捕まえて引き止める龍斗にそう聞けば、彼は紫みたいな笑みを浮かべて、こう言った。
「俺は次元竜。ゆかりんやおっきーと一緒に幻想郷を作った男だ」
「ゆかりん…おっきー…」
「
いや、お前……その二人をそんな気の抜けたあだ名で呼ぶとか、どんな関係なんだよ……
情報で殴られる(量と質、ダブルの意味でだ)という経験を久々に受けた私は、こいしより先にお暇することにした。
あのままあそこにいたら、その場のノリで“普通”じゃなくされそうで疲れちまう。魔導書でも借りないとやってられねーぜ。
幸い、あいつの本棚にあった魔導書は、どれもこれもアリスやパチュリーのトコで見たことのないヤツばっかだったから助かったけどな。何冊か借りたぜ。
まぁ、私が死んだら返してやるから勘弁な。次元“竜”っていうんだし、寿命は
「…ん? なんか袋が重くなったな…」
違和感を感じたから、一旦箒から降りて、袋の中を確認した。
すると、確かに入れた筈の魔導書が何故か全部消えていた。
その代わりに一枚の紙と共に大量のスピネルやらエメラルドやらが入っていて……
『人の魔導書を勝手に持ってったらドロボーです。宝石たちでガマンしなさい』
「ちょっとくらいいいじゃんかよ………」
いつ、どうやってすり替えたのかは考えるだけ無駄だろう。
でもヒドイぜ。死ぬまで借りるだけなのにさ……
亜葬祺龍斗
ステルス無効&創作チート。
霧雨魔理沙
貰った宝石群はほぼ全部魔法の実験材料にした
古明地こいし
初見で自分に気付いてもらえてごきげん。
アムリタ
エトリア産やハイ・ラガード産、アーモロード産、タルシス産などがある。龍斗が振る舞ったのはハイ・ラガード産。魔理沙が知るアムリタはインド神話の元ネタのやつ。
呆れるほど平和な星
侵略者たちは全員揃って返り討ちにされている。ピンク色のボールに。