ドラゴンさんの東方見聞録   作:伝説の超三毛猫

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結局コレも見切り発車なので、ネタが唐突に切れることあり。


第五話:一回だけだよ?

「やだやだーっ! 異世界に行きたいーっ!」

「………」

 

 魔理沙ちゃんが帰った後、俺はしばらく、駄々を捏ねるこいしちゃんの相手をしていたが、流石に途方に暮れていた。

 こいしちゃん曰く、「龍斗くんの行く異世界を見てみたい!」とのことであったが、流石の俺も簡単に許可を出すわけにはいかない。

 

 そもそも、なぜ幻想郷が存在するのか……から語らせてもらうが、それは「科学技術の発達で畏れを得られなくなった妖怪が、生き残るため」である。その為に俺とゆかりんとおっきーは超頑張った。

 つまるところ、妖怪は「幻想郷にいるから生き生きできる」のだ。俺はあらゆる世界を旅した例外だからいいとして、幻想郷に生きる妖怪を別の世界に送るとどうなるか。

 答えは「恐ろしく弱体化し、寿命が削れる」だ。特に妖怪の畏れ等とは無縁の世界に送り出そうもんなら、踏み入った瞬間に存在そのものが消滅しかねない。

 

「ねーえー!いいでしょ!一回だけ!一回だけだから!!」

 

 だが、目の前のこいしちゃんは「そんなモン知るか」と言わんばかりに駄々をこねまくっている。

 俺とてどうすればいいか悩みどころだ。保護者に来てもらおうにも、この子がどこに誰と住んでいるかが分からない。仮に望みを叶えても一回で済む気がしないし、最悪彼女の存在そのものが消えかねない。

 しかし、このままだと彼女はずーっとこうして粘りかねない―――

 

「あ」

「?」

 

 そうだ、すっかり忘れてたわ。

 妖怪がいない世界に行くのが危険なら―――妖怪のいる世界に連れて行けばいいんだ!!

 

「…こいしちゃん、一回だけだからね?」

「!!! ほんと!!!?」

 

 灰色のオーロラカーテンを展開し、俺とこいしちゃんはそれをくぐっていく。

 

 

 

 

 

 オーロラを通った先は……東京都千代田区、神田町。

 こいしちゃんの様子は……よし、特に変化ないな。興味深そうに辺りをきょろきょろしながら、瞳を輝かせている。

 放っておいたらどこかふらっと行ってしまいそうな彼女の右手を握って、ある場所へ引っ張った。

 

「どこ行くのー?」

「俺の知り合いがいそうなとこ」

 

 まずは目の前の寿司屋に入ってみる。

 アイツは羽振りがいい時は必ずといっていいほどここにいるからな。

 

「いらっしゃいませ!二名様ご来店です!」

「大将ー、両さん…じゃない、一郎とねずみ男いるかい?」

「一郎は出前だよ。ねずみ男は……ここのところ来てないね」

「そっか……あ、注文はおまかせ二人前で!こいしちゃん、ここ座りなよ」

「はーい」

 

 寿司屋の暖簾をくぐった先は、カウンタータイプのそれだ。

 奥に座敷なんかがあるが、予約はしていないので、一見客として二人分の席を確保する。

 俺の注文に板前が寿司を握り始めると、こいしちゃんは俺に話しかけてきた。

 

「ねずみ男と両さんって誰ー?」

「2人とも俺の知り合いだよ。二人とも金稼ぎが得意でね。俺も入れ知恵なんかしておこぼれに預かったもんさ。ねずみ男は妖怪でね。正確には、半人半妖ってところかな」

「へー! じゃあ両さんはなんの妖怪?」

「人間なんだよ。前は……あぁ、アイツの部長に戦車で追い掛け回されたっきりだな。まぁ生きてんだろ。戦闘機で爆撃されても生きてんだし」

「えー、実は妖怪なんじゃないのー、その人?」

「人間なんだよなぁ……」

 

 ほんとに、あの人ほど妖怪染みた人間は居ない。

 どんな人生過ごしたらああなるんだか、面白くって仕方がない。

 

「へいお待ち! おまかせ、二人前!」

 

 お、最初の寿司が来たな。

 ここの寿司は本当に美味いからな。次元竜ですら唸らせる程だ。基本的に食事のいらない妖怪でも、満足はできんだろ。

 

 

 

 

「いや~! ここのは変わらず超美味いな!」

「おいし~~!!」

 

 うん、流石すぎる。妖怪にもウケるとは、悪魔的なお店だな。願わくば、幻想郷にこの技術を持って帰りたい所だ。それくらいに美味い。

 こいしちゃんも、満面の笑みでそう言って貰えたようで何よりだ。

 

「ありがとうございます! 追加で何か握りましょうか?」

「そうだな……じゃあ、熱燗一本!」

「じゃあ私も!」

「ダメだぜ、お嬢ちゃん。ハタチにもなってねーのにお酒頼んじゃ」

「あぁ、大丈夫だ大将。この子、こう見えてハタチなんだ」

 

 そう言って俺は、こいしちゃんの手荷物を探るフリをして、一瞬で偽造した大学の学生証を見せた。それで驚いたようで大将は「ゴメンなお嬢ちゃん、すっごい若く見えたからおじさん勘違いしちゃったよ」などと言って、徳利を二本取り出して、それを燗しはじめた。

 

「…今のどうやったの?」

「旅先で習ったマジックだ。いいだろう?」

「あーあ、龍斗くんワルなんだー」

 

 こいしちゃんに言われて「見た目未成年なのに熱燗頼む悪い子ほどじゃないぜ」と言おうとした時、玄関から「出前戻りました!」と大声が響く。そこで、俺は声のした方に振り向いた。

 

「あ…ちょうど良いところに。両さん!ねずみ男!」

 

 かたや原始人みたいな顔つきの、がっしりとした体格の男。寿司屋の清潔な服を着ている。

 かたや細長い顔つきとねずみのようなヒゲが特徴的な男。なんだか小綺麗で着慣れないスーツを着ているようだ。

 こいしちゃんも二人を見て、もしかしてって顔をした。そう、コイツらが……

 

「龍っちゃんじゃねえか!久しぶりだな!!」

「おう、寿司屋の格好見んのは初めてだったっけか。で…ねずみ男はなんだその格好!またワルい商売でボロ儲けたのか!?ハッハッハ!」

「へっへっへっ、冗談キツいぜ。

 …で、龍。そこのおじょうちゃんは誰だい?」

「旅先…とゆーか故郷で知り合った妖怪だよ。覚妖怪なんだけどね…」

「古明地こいしでーす!龍斗くんに連れられて来ましたー!」

 

 すぐに両さんとねずみ男に掴まれた。

 

「おいおい龍。ダメだろ流石に、女の子を攫ってくるのは」

「わしだって警察官の端くれだ。攫ってきたってんなら相応の対応すんぞ」

「だいじょーぶだって!あの子の同意は得ているし、何よりあぁ見えてハタチは行ってる!」

「「なら良いか!」」

 

 疑いを一瞬で晴らした所で、ねずみ男を隣に座らせ、両さんを混じえて現状の続きを引き出す。

 

「…で? ねずみ男、お前今度はどんな商売してんだよ?」

「へへ…ちょ〜っとな。女の子に接待させる仕事だ。モチロン、法律は破っちゃいない」

「遊郭のこと?」

「ブッ!!? ……この嬢ちゃん、凄まじい単語ぶっこんでくるな……違ぇーよ。ジュースをついだり話に付き合ったりするだけだ。」

 

 遊郭は下手すると本番イくからな。

 だがねずみ男はそういうのが禁じられた現代日本において、ギリギリ法律範囲内の事をやって、なかなかに儲けているようだ。

 

「こいしちゃん、やってみるか?」

「バカ、ダメだって龍。未成年に接待させたら捕まっちまうっての…」

「だぁーから、彼女は子供じゃあないっての。こいしちゃんからも言ってやれ」

「もっと外の世界を見てみたいです!」

「じゃあ俺の店じゃなくって外連れて歩けよ……あ、それも駄目だな…」

「むー、私はもう大人のレディだもん!」

「ダメだダメだ、例え本当に大人だったとしても周りが“そうは”見てくれん。いくら本人が言っても無駄だよ」

「もー! なんでそんな意地悪言うのおじさん!」

 

 両さんは断としてその手のお店にこいしちゃんと行くことを反対される。

 だが、そんなに怒るなよこいしちゃん。こういう時の両さんはな―――

 

「その代わりと言っては何だが……最近女向けの化粧品店を始めたんだがな…」

「……」

「これがものすごく儲かりそうなんだ…お前ら、ちょっと一枚噛んでみねぇか?」

「はっはっはっ! いいな両さん!久しぶりに一緒にやろうぜ! こいしちゃん、お化粧とか興味あるか?」

「なにそれ? 面白いもの?」

 

 ―――めっちゃくちゃ面白いんだ。

 

 あれから3日間、俺達は化粧品メーカーを立ち上げ、商売を行った。

 こいしちゃんも化粧品の用途を知り、乗り気になってくれたようで何よりだ。

 

 俺達は、商売をある種盛り上げる才能を持っていた。

 

 ねずみ男は、常識の囚われない閃きや行動力があり、人間と妖怪の間で生きてきたことで培われた交渉力もある。

 両さんは、金もうけになると頭がフル回転する上に手先が器用で、職人並みのものを何でも作れる。更にあらゆるコネを持ち、売り込みもバッチリだ。

 俺はあらゆる旅先で色んなヤツに出会ったため、セールス先の人間を安心させる話術を遺憾なく発揮できた。ちょっと観察すれば、その人が何を求めていて、どう攻略すればウチの品を買ってくれるか予測立てるのなんて簡単だ。

 そして……こいしちゃんだが、野郎三人ではどうにもならない「愛嬌」という武器があった。売り込みに可愛い女の子がいるだけで、相手のガードは緩むというもの。しかも、常に笑顔で嫌な顔せずに協力してくれるから素晴らしい。彼女もある意味才能あるかもしれないぞ。

 

 ただ……俺ら…じゃないな。俺以外の3人には致命的な弱点があった。

 飽き性だということだ。儲かればすぐに調子に乗り、大博打を打って大抵負ける。こいしちゃんもそれを止めなかった。

 そんな奴らが成り上るのが早ければ、転落するのも早いわけで。

 

「こいしちゃん、帰るぞ」

「えー、まだ1週間も経ってないよ?」

「ねずみ男と両さんが揃って大損したからな。ここいらが潮時ってことだ」

「う~ん、まあいいか!楽しかったし」

「帰りは、行った時間の1時間後に設定すればいいか………お、噂をしたらだ」

 

「待たんか両津の大バカ者~~~!!!」

「ぎゃああああああ!! 部長!勘弁してください~~!!!」

「ひええええええええええ!! 助けて鬼太郎~!!」

 

「俺らも追っかけられる前に帰るぞ」

「は~~い!!」

 

 大型戦車に追っかけられる両さんとねずみ男の泣き言をスルーし、俺達は灰色のカーテンをくぐって、元いた幻想郷へと帰ってきた。時計の針は、1時間しか進んでいなかった。

 

「あれ、時間が……まぁいいや。今回の龍斗くんとの旅行、お姉ちゃんにお話ししておくね!それじゃ!」

「え、待って、お姉さんに話すのあの事………行っちゃった」

 

 というか、こいしちゃんってお姉さんいたんだ。

 少しマズいことをしちゃったかな……あ、してないや。夜のサムシングは一切してないし、ただ商売してただけだしな。

 あっという間に去ってしまったこいしちゃんが出ていった扉をしばし見つめた後、俺は引っ越した後のアレコレの準備を始めた。

 




亜葬祺龍斗
性倫理が破壊しつくされている。

古明地こいし
ぶっこむのも商売に参加したのも博打を止めなかったのも無意識。ただ、化粧品の使い方はしっかり覚え、帰り際に商品をいくつかパクった。

ねずみ男
金稼ぎの達人であり転落の達人でもある。

両さん
お前本当に警察官かって疑うレベルのスペックを持っている。

両さんの上司
部下がやらかす度に様々な凶悪兵器を持ちだして激怒する。

古明地さとり
妹のお土産話にスペースキャットじみた顔で呆けた後静かにキレまくる。
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