ドラゴンさんの東方見聞録   作:伝説の超三毛猫

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再びネタが浮かんだぞ。
次からは東方紅魔郷に突入するかもだからネタがどんどん浮かぶかもしれませぬ。


第七話:酒でも呑んで忘れちまえ

 人里からやや離れた草原の真ん中に、家が建ったらしい。数日前から、噂になっていた。見ていた者の言うところによると、どうやら一日と経たずにあっという間に出来上がったらしく、皆妖怪の仕業と考えている。

 だからというべきか、誰も確かめに行こうとしない。

 

「こんにちわ小鈴」

「阿求!いらっしゃい。何借りに来たの?」

 

 まぁ、私はいつも通り鈴奈庵の看板娘として働くだけだけどね。

 幻想郷で本をお求めなら、我が『鈴奈庵』にお任せあれ! 赤本*1・黒本*2・滑稽本*3から、外の世界から流れ着いた活版印刷術の新聞や絶版した書物、外の人が無くしたと思しき漫画本、果ては曰く付きの妖魔本までなんでもありますよ!ってところね。

 

「新しい歴史書が入ってるよ。見てく?」

「お願いします、小鈴。ここは品揃えが良いものですから」

 

 そして、今歴史書を手に取っているのが稗田阿求。

 人里の有力者である稗田家の当主だっていうんだけど、私にとっては同年代の友達だよ。趣味も合うし、こうしてお互いの家に遊びに行ったりもするんだ。

 

「阿求って、こういうの好きだよね」

「ええ。転生を繰り返しても、人々の紡ぐ歴史には感動させられるものがありますよ」

「うん、気持ちはわかるよ」

 

 阿求は転生を繰り返しているから、とても物知りだ。それでいて、私にも対等に接してくれる。

 ただ、体が強くないんだよね……調子を崩すこともしばしばあって、転生を繰り返したからそんなに長く生きられないって本人から聞いた。

 それでも、私にとっては……阿求は、稗田家の当主でも、御阿礼の子でもなく、ただ隣で笑いあえる、同い年の子でしかない。たとえ、いつか先立たれる運命にあったとしても、阿求は私の大切な―――

 

「あら? 貴方は…」

「当て身」

「あきゅん」

「……何やってんだ()()、こんな所で…」

 

 うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?!?!?

 あ、阿求が…突然出てきた金髪長身の男の人に、当て身されたーーーーーーーっ!!!!!!?

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 おっきーに後戸の国から叩き出され、ゆかりんにしこたまボコられた日から数日。

 俺は人間の里に超絶イケメンとして潜り込み、ショッピングを楽しむ日々を送っていた。

 金? 初日に質屋に金のオノを売った結果たんまりできたわ。

 そして、その日はいつも通りの買い物を済ませた後のことだった。ふと見かけた古本屋の中へ、超懐かしい知り合いが入っていくのを見たのである。

 

 稗田阿礼。

 共に古事記を書いた仲だ。

 

 見た目とか年齢とかは完全に別人だが、魂を見ればわかる。阿礼だった頃から変わらなかったからだ。

 だが………阿求と呼ばれた阿礼の魂は、俺のよく知る阿礼のそれとは全然違った。

 その魂の状態は、ハッキリ言ってボロボロ。あらゆる部分が欠けまくっていて、ぶっちゃけ何で生きてるんだって思えるくらいには危うかった。

 

「あ、阿求ーーーーー!!!?」

 

 だから、次元竜特製の当て身をかまして意識を奪い、阿求という少女の身体から魂を取り出した。その魂は、触れたら崩れ落ちそうなくらいに脆く劣化していた。

 

「ちょっと貴方!阿求に何してるのよ!!」

「静かにしろ。こいつの魂が壊れるだろ」

 

 消えそうな魂を次元竜の生命力で纏った手で救い上げる。豆腐職人並みに気を配って彼女の魂を手にしたそれを飴細工のように捏ねていく。

 より強く、傷を修繕し、修復するように呪力を込めて、有毒な呪いを反転させて癒やしていく。それでいて尚且つ、阿礼に悪影響が出ないように精神力を割かねばならない。

 でもこれによって……色褪せた魂に彩りが戻り、壊れそうな命の器を補強して、摩耗した生命力が注ぎ込まれて復活する。

 

 ―――反転術式・無為転変。本家には至らないが、本家にはできない、次元竜式の魂操作呪術だぜ。

 

「ふぅ……これで応急処置にはなった。更にこれを―――縫い合わせる!」

 

 最高・最適な形に保てても、このままではすぐに元の脆く危うい形と質に戻ってしまう。だから、それを固定する!

 手全体に染み込ませた生命力を、今度は糸のように極限まで伸ばし、目にも止まらぬスピードと針の穴に糸を通すがごとし精密さで縫い合わせていく。

 

 ―――念糸縫合。俺も、強敵とケンカした後は世話になったものだ。死にはしなかったが、どの身体の部位も、ないならないで困るしな。

 

「……………よし。後はこれを持ち主へ戻せば―――」

「貴様か! 阿求に危害を加えたのは!!」

「!!!?」

 

 最後の最後で怒声を浴びせられ、驚きに振り向く。するとそこには、青い和装の、角が生えた女性がいた。

 こ、コイツ、ハクタクか!?

 

「ま、待て! あとはこの魂を身体に入れるだけ―――」

「問答無用ッ!!!」

「石頭ッッッッ!?!?!?!?」

 

 かろうじて阿礼の魂を阿求とやらの身体に叩き込む寸前に感じ取ったのは、頭に響く激痛だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「済まない!本当に済まない!!」

 

 しばし経って目が覚めたら、さっき頭突きしてきた女性が平謝りをしてきていた。しかも角を引っ込めて。どゆこと?

 

「私の知り合いが治療してくれたと言っておいたんです」

「阿礼」

「今は阿求と名乗っています」

 

 なるほど。どうやら、俺が眠っている間に阿礼―――もとい阿求が誤解を解いてくれていたみたいだ。まったく、阿礼の頃から変わらずお人好しだな。

 しかし、魂の治療をされたとよく気づけたな? 直前の当て身で意識は絶たれてたはずだろ?

 

「小鈴と慧音先生の証言と、今の身体の調子。そして…稗田家かかりつけのお医者様の診断から全てを察しました。

 稗田家は転生を繰り返した事で短命が定めつけられた一族だった……そのはずなのに、今のこの身体は健康体そのもの。一体何をしたのです、次元竜様?」

「今は亜葬祺龍斗と名乗ってるからそっちで呼んでくれ。

 で、何をしたかだが……転生の繰り返しで摩耗した魂を元通りの形に直しただけだ。不足してた生命エネルギーも足しといたから、今回はあと80年は余裕で生きられるだろ」

「そうですか。全く……これまでは延命処置という名の気休めが精一杯だったというのに」

「まぁ、アレは医術じゃなくて呪術の領域だからな。普通の医者じゃ匙を投げても当然だろ」

 

 阿求にさっきやった事を説明したが、納得したような、鳩が豆鉄砲を食らったような、そんな微妙な顔をする。

 

「そもそも、『魂の形を直す』なんてできるものなのですか?」

「難しいけど、俺は習得してるぜ。でなきゃ、旅先のダチとやった『呪いかけっこ』でかかった呪いで死んでるよ」

「我々の短命がお遊び以下ですか…」

 

 そういう意味じゃないからね?

 アイツ等の呪いがエグかっただけだからな。攻撃力パネーわ、魂の形に手出してくるわで。遊びだっつってんのに殺しに来たからなアイツら。

 

「ねぇ、龍斗さん、ですよね」

「ん? そういう君は、確か……小鈴?」

「本居小鈴です。龍斗さん、貴方はどうして、阿求を助けてくれたんですか?」

 

 どうして、ねぇ。

 そんなの、当たり前の感情なんだけれども。

 

「君は……『好きなことをやりたい』って思う事に、理由があると思うか?」

「…えっ?」

「いいから答えてみそ」

「えっと……それは…………ないと思います、けど」

「それとおんなじなんだよ。俺が阿求を助けたのは」

 

 疑問に対して、真面目に答えるのも大人の責務だろう。ならば、答えるのみだ。例えそれが、あまりにおかしな事でもだ。

 

「『俺が助けたいから助ける』。それだけなんだよね」

「どのような意図であれ、私を治療してくださった事自体は感謝しています」

「…ほんとに? 本当に阿求は長生きできるの?」

 

 小鈴ちゃんが、目をうるわせながら聞いてくる。

 ふふ、安心して欲しい。ヤワな治療法はしていないぜ。

 

「大丈夫だ。龍は長寿の象徴なんだぜ。そんな俺が太鼓判を押すんだ…………米寿を迎えても元気に走り回れる体と魂を約束しよう」

「あ、あ、阿求ーーーーーーーーーー!!」

「うわぁっ!? 小鈴!?」

 

 小鈴ちゃんが泣きながら阿求に抱きつく。しばらく時間がかかるであろうと察した俺は、寝かされていた部屋を後にした。

 その直後、俺に続いて部屋を出た女性が、襖を閉じながらこっちを見た。

 

「私も驚いたよ……阿求殿があそこまで元気になったのは見たことがない。ええと…龍斗殿、だったな。感謝する」

「貴方は確か、俺に頭突きした……」

「その件は申し訳ない…………私は上白沢慧音だ。寺子屋で教師をしている」

「亜葬祺龍斗。阿求とは阿礼だった頃に知り合った者だ。

 今回の阿求の延命治療については、礼はいらない、と言いたいところだけど……」

「いいや、阿求殿は人里の有力者の筆頭だ。その寿命と肉体を治しておいて、何も礼を貰わないのでは、稗田家の面子に関わるだろう」

 

 俺としてはやりたいことをやっただけなので、マジにお礼とかいらないのだが、このままではお礼を受け取るか否かで押し問答になりそうだ。なので、俺はとりあえずある提案をすることにした。

 

 

 

 

 

 数日後。

 俺がいつも通りに里に顔を出すと、阿求が真っ赤になりながら俺に突撃してきた。

 

「龍斗さぁぁぁぁぁぁぁぁん!! 何てものを人里に流してくれたんですか!! い、いくら礼をするからって、こ、こ、これはないでしょう!!!!」

「おーおー阿求。黒歴史を暴かれたくらいでムキになるなって」

「だ・れ・の・せいだと思っているんですか!!!」

「あ、阿求どうしたの!? 龍斗さんに何かされたの!?」

「あぁ。小鈴ちゃんは知ってるかい? 最近出版された、万葉集にも載ってない恋歌集を見たかい?」

「はい!女性が恋する殿方に送った歌の数々……ちょっとときめいちゃいました!」

「いやぁぁぁぁぁぁ………小鈴も読んじゃったなんて…」

「え?」

「その恋歌な、稗田阿礼って女が旦那に送ったあっまあまなラブレターなんだよ」

「あ……」

 

 小鈴ちゃんが察した瞬間、阿求が泣きながら俺に腹パンする。

 それは死にかけの病人では絶対に出せないような、力が篭っていた。

 

「どうしてくれるんですかぁぁぁぁ! というか、何故あの歌の数々を貴方が知っているのです!!」

「そんなのどうでもいいだろ。とりあえずこの件は、酒でも呑んで忘れちまえよ」

「私の能力知ってて言ってますよね!? もう最低!!次元竜様なんか知りません!!!!」

「はっはっはっは」

「笑うなぁ!」

 

 別に笑ってるんじゃないからそこまで怒るなって。黒歴史を恥じるのも、生きているからできることだよ。そう思ったけど、この後慧音の頭突きを食らった。

 

*1
桃太郎や一寸法師などの童話

*2
歴史物語、軍記、浄瑠璃などを抄録したもの。

*3
江戸後期の小説。庶民の日常を笑いを交えて記したもの。『東海道中膝栗毛』や『浮世風呂』などがこれにあたる。




亜葬祺龍斗
物理的に魂を触ることができる。また、息をするようにエグイことをすることがある。

稗田阿求
阿礼の頃に龍斗と知り合っていた。今回の件でしばらく屋敷から出なくなった。

本居小鈴
かわいい。

上白沢慧音
龍さえ屠る、私の頭突き…受けてみろ!

稗田阿礼
リアルガチでは性別不詳だが、この小説では女って設定。

龍斗と呪いあった友達
富士山だったりツギハギ人間だったりとマトモな人の形をしてない。
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