私がトレセン学園に入学してから少し経ったある日の事。担当のトレーナーさんも決まりデビューまで順風満帆と思えた矢先、私に衝撃が走った。
「チーム対抗レース『アオハル杯』の開催をここに宣言する!!」
マイルダート・短距離・マイル・中距離・長距離の五種目をチームで走るこの大会。トウィンクル・シリーズと並行して行われる上に、まだデビュー前でも参加資格を与えられる。つまり。
まだ見ぬ芦毛の美少女と並走できる。
あわよくば
並走を超えたその先のステージを・・・!
こうしてはいられません。早速目星を付けている方々にお声掛けをしなければ。全ては私の野望のために。
それではまず、私の親友を誘うこととしましょう。
しかし私には秘密兵器があります。それがこの『芦毛レーダー』!これさえあれば何処に隠れていようとどれだけ離れていようと見つけ出すのは造作もありません。早速レーダーに感あり!方向はグラウンドだね?さあこれから始まる大レースの第一歩♪
「ああ・・・待っててね、ゴルちゃん?」
「!この感覚・・・。間違いねえ。私の第六感が囁いてるぜ。今すぐ此処から逃げるべきだと!」
丁度トレーニングを始めようとしていた長身の芦毛のウマ娘は背筋に感じた悪寒から急遽予定を変更して海にでも行こうと考えていた。今日は天気もいいから沖まで行けばジンベエザメを一本釣りできるだろう。しかしそんな思いを馳せる彼女の肩には悪魔の手が添えられていた。
「ゴ~ルちゃん♪」
「お、おう。ジャスタ。なんかスゲー調子がよさそうだな?」
ゴルちゃんこと芦毛の不沈艦ゴールドシップが振り返った先にいたのは同室の鹿毛色のウマ娘・ジャスタウェイだった。ジャスタウェイはいつも以上にニコニコしていたが、この顔を見たゴルシは冷や汗が止まらなかった。
(あ、これやべぇ奴だ)
直感で理解した。なぜならこの顔には見覚えがある。自分が親友のマックイーンにいたずらを仕掛ける時と同じような顔をしていたのだから。
「実はお願いがあってね?」
「お・・お願い?」
「そう!さっきの全校集会!それで今一緒に走ってくれるメンバーを探しているんだけれど」
「悪いなジャスタ!あたしはこれからカスタネットのお稽古があるからアディオス!!」
食い気味にジャスタウェイの勧誘を断ったゴルシは普段は見せないようなそれはそれは綺麗なスタートダッシュを決めていた。しかし残念かな、ゴルシが逃げようとした相手は爆発的破壊力と喩えられる加速力を持っていた。結果1ハロンもかからずあっという間にゴルシは取っ捕まった。
「ふっふっふ。私から逃げ切るには10年早いよゴルちゃん?」
「放せジャスタ!あたしはもうチーム入ってるの知っているだろ!?」
そう。ゴルシはトレセン学園に入学してから直ぐシリウスに入籍した。当然ゴルシは勝手知ったる仲間達とアオハル杯に挑むつもりでいたのだ。
「でも確かシリウスってゴルちゃんを筆頭にステイヤーだらけでしょ?」
「それは・・・そうだけどよ」
確かにチームリーダーのマックイーンも淀の鬼のライスシャワーも。シリウスに所属しているウマ娘は揃いも揃って得意距離が中長距離だ。スズカがギリギリマイル寄りという点を除けばだがステイヤーだらけと言われても過言ではない。
「ということは――――マイルとかスプリントが弱点になるよね?」
「それはそうだけどよぉ。そこは補強すればいいだけの話じゃん?」
「そう、補強です!私のチームにはステイヤーが不足しているんです!だからまずは貴女に声を掛けたんです!」
「いや、いくらジャスタの頼みでも」
「なるほど。ではトレーナーさんに
「あ!?待、おい!?ゴルちゃん置いてけぼりかよ!?」
最早ブレーキがぶっ壊れた暴走トレーラーと化したジャスタウェイを止めるものはおらず、ゴルシは大変なことに巻き込まれたことを心底後悔していた。
「お願いします!!」
「ええ。いいですわよ」
「「本当ですか!?」」
チームシリウスの部室に突撃したジャスタウェイは偶然部室内で隠れて大福を食っていたリーダーにゴールドシップの引き抜きを嘆願した。それはもう非の打ち所がない程綺麗な土下座を披露し、自分にどれだけ彼女が必要なのかを熱く語った。
対してパクパク御嬢様はというとつまみ食いがバレたことに加え、驚いた拍子に大福をのどに詰まらせかけてそれどころではなかったが。
「はい。トレーナーには私から伝えておきますわ」
「やったあ!ゴルちゃん!これで一緒に走れるね!」
「なあ、マックイーンよ!あたしの意見ぐらい聞いてくれてもいいじゃんかよ!?」
最後の砦としてマックイーンは反対してくれる。ゴールドシップはそう思っていたが現実は大福のようにそう甘くはなかった。
「友達は大切にするものでしてよ。それにこの度のアオハル杯開催でライスさんをはじめ、友達と参加をしたい方がいましたのでそちらを優先するようにとトレーナーとも相談したところです」
「なあ、マックイーンよ。あたしはこいつとはそこまで友達ってわけじゃ」
「ズッ友だよね、ゴルちゃん!」
「いや、違
「ゴルちゃん?」
「ハイ唯一無二ノ親友デス」
「ヤッター!」
(この方、どことなくテイオーに似ていますわね。執着力とか)
「コホン。まあ私達以外と交友関係を深める良い機会かと思われます。貴女はただでさえ周りから問題児扱いされているのですから、これを機に理解してくれる方を増やしてはどうです?」
「うんうん。ゴルちゃんはすっごいイイ子なのに勘違いしている娘が多いんだよね」
仲間想いではある。付き合いもいいしエンターテイナーとしての腕も一流だ。ただ突拍子もないことをし過ぎているのが悪い。どれだけプラスを重ねても特大のマイナス要素がすべてを台無しにしているだけで本当はとても良い子なのだ。本当に。
「まあ私としては余計な荷を下ろせて軽くなりましたが」
「ああん?隠れて大福食っておいて軽くはならねえだろ!」
「この後のトレーニングで消費しますから問題はありません!」
「でもマック様、私が見た感じだとお腹周りが目測2センチは増えて」
「出ていきなさい!!」
それまでの和やかな雰囲気はどっかに行ってしまい、ジャスタウェイに太ったことを指摘されてブチ切れたマックイーンは二人を部室から叩き出した。
「ジャスタ・・・、あそこは黙っておくべきところだぜ」
「そうだね・・・あ」
「どうしたジャスタ?」
何かを思い出したジャスタウェイは立ち上がると砂埃も払わずに再度シリウスの部室に突撃した。
「マック様も私のチームに入りませんか?」
「帰れ!!!」
チーム名:蘆毛千年帝國(仮)
ダート:未定
短距離:未定
マイル:未定
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ