これが私の道   作:corin7121

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所変われば芝変わる。でもやっぱり欧州の芝はクs・・・

長時間のフライトでお疲れ模様のジャスタウェイ御一行。到着した現地時間はすでに夜。学園が予約してくれていたホテルにチェックインして宿泊するお部屋に案内されるも無言でベッドにダイブ。慣れない超長距離移動だったから疲労が溜まっていたみたいだ。

 

そして翌朝。

 

「寝坊したーーー!!」

 

疲れと時差ボケのダブルパンチでものの見事に寝坊をかましていた。

 

「もう姐さん練習始めている時間だよね!?」

「っていうか姉御どこでトレーニングしているんか知らねーんだけど!?」

「それならこの森を抜けた先に・・・」

 

「「でかした!!」」

 

「え!?ちょっと置いていかないでくださいまし!!」

 

何か後方でマックイーンが叫んでいるけど、暴君の練習に遅刻したなんてことになったら後でどれだけひどい目にあわされるか・・・。

 

薄く靄がかかる幻想的な森を抜けた先にはフランス人のトレーナーとミーティングするオルフェーブルの姿があった。まだマスクをしているから表情はよくわからないが、そこまで怒ってはいなさそうだ。

 

「すみません!遅れました!」

「ん?おう。長旅ご苦労さん。これから()()()()ていくけどその前に」

 

息を整えていたジャスタとゴルシにオルフェーブルはトレーナーを紹介した。

 

「こちら、フランスのトレセンでトレーナーやっているスミさん」

「あ、アンシャンテ(はじめまして)。アイムジャスタウェイ」

「あ、スミさん日本通だから普通に日本語通じるよ?」

「ふふ。はじめまして、未来の三冠バさん。スミです」

 

思った以上に日本語ペラペラで度肝を抜かれた二人。なんでも日本のマンガとアニメの沼にどっぷりと漬かった結果らしい。

 

「あ、どうも。来年三冠をいただいちゃうゴルシ様だぜ!」

「本気で走ればゴルシは私以上のポテンシャル持っているからな」

「ほう。それはそれは」

「ふっふっふ。ゴルシちゃんが本気になると火傷しても知らないぜ?」

「私はもう全身大ヤケドですよ」

 

あんた(ジャスタ)の場合は芦毛だったら一瞬でウェルダンまで火が入るだろ。ところで御二方?

 

「話じゃメジロの御嬢様も来ているって話しだったけど、何処行った?」

「え?マック様だったらちゃんと・・・」

 

後ろを振り返るもそこには誰もいない。どうやら森に置き去りにしてきたみたいだ。

 

「やっべー・・・」

「でもここまで一本道だったし迷子にはなっていないはず・・・」

 

迷うような道程じゃないので待っていればその内来るだろう。

 

「そういや合宿の時にクロフネがおススメDVDってことで夜中に映画鑑賞やっていたんだけどさ。霧のかかった森って何か出てきそうな雰囲気があったよ」

 

オバケとか怪物とか出てきそうな感じはあるよね。特に外国の原生林とかだと猶更。

 

「あの、ここの森って心霊スポットだったりしますか?」

「だいじょうぶだよ」

「そいつはよかった」

 

「精々()()()()が出るぐらいさ」

 

「やっぱり出るんじゃん!!」

「みんな丸太は持ったな!!」

 

その後、一人森に置いていかれたショックで泣いていたマックイーンを無事保護した。ただ普段は見せないSSRな泣きマックに暫く三人が異様に興奮したとかしなかったとかアメリカ在住のとある青鹿毛のウマ娘が『私も見たかった!!』と血の涙を流すほど悔しがったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、トラブルもあったけどそろそろ本格的なトレーニングの開始です。

 

「前哨戦のフォワ賞が近いからね。ここの芝にも慣れてもらいたいし、まずは軽く『合わせ』てみようか」

「よろしくお願いします!」

 

一番手はジャスタから。練習コースを軽く一周してもらいましょう。

 

(そういえばこっちの芝って日本の芝とは違うんだよね・・・)

 

走り方にも注意しないとケガをしそうだとジャスタがコースに入ったのだが、

 

 

ぶにぃ

 

 

「ぎゃーーーーーーー!!」

 

思っていた感触と違っていたために思わず変な悲鳴が出てしまった。

 

「どうしたジャス?変なモンでも踏んだか?」

「ち、違うのゴルちゃん!ここの芝!というか地面が!」

 

軟らかい。

 

端的に表現するとそうなる。雨による重バ場とも違う未だかつて味わったことのない地面の感触にジャスタは戸惑いを隠せずにいた。

 

「ああ。まあ知らないとそうなるよね。私も去年そうだったし」

 

ポリポリと頭を掻きながらオルフェーブルがやってきた。さすがにここで何度も練習しているせいか彼女は既にここの芝にしっかりと慣れているみたいだった。

 

日本と欧州の芝の違い。芝の深さと思う人も多いが実はちょっと違っていたりする。芝そのものの長さは日本のものとあまり大差はない。しかし問題は見えている部分よりもその下。日本の芝は地下茎ががっしりとしているのに対しフランスの芝は細く密集して全体を支えている。さらに付け加えると更にその下、土の違いもある。走りやすいように砕石を敷いて人工的に作られた日本の競技場と違い、ヨーロッパのコースは元々が原っぱだったところを競技場にしている。その為日本よりも保水性が高く、少しでも雨が降ると今回の様に足が沈みこんでしまうのだ。

 

「姐さん、こんなコンディションのレースでよく二着に入れましたね・・・」

「前哨戦は余裕で勝ったけどね」

 

凱旋門賞の前哨戦とされるフォワ賞は同じロンシャン競馬場で行われている。距離も同じ2400mなので本番前の腕試しとして最適なレースだ。

 

「ま、あそこには魔物がいるってことだよ」

「?」

「行ってみればわかるさ。さあ座っていないで練習再開だよ!」

 

スミさんに促されてジャスタはオルフェーブルと並んで周回を始めた。

 

(うわっ!?これ思った以上に走りにくい!芝が絡みつくってこういうことだったんだ!)

 

以前にココで走った経験のあるエルコンドルパサーから話は聞いていたが走りにくさは想像以上だった。例えるとすればまるで水を張ったばかりの田んぼで全力疾走しているような感じ。一瞬でも気を抜けば足を取られてスッ転んでしまいそうなほどにバ場が悪く感じていた。

 

「今日のバ場はまずまずだねー」

「これで!?」

 

これ本格的に雨が降って重や不良になったらどれだけヤバくなるのか・・・。

 

「うん。タイムはまずまずといったところだ。この調子ならフォワ賞も問題なさそうだね」

「うっす」

 

軽めの調整ということもあってうっすらと汗をかく程度に収まっているオルフェーブルに比べて彼女と並走をした二人はというと・・・。

 

「ひぃっ・・・ひぃっ・・・」

「ぉ・・・ぉ・・・ぉ・・・」

 

完全に虫の息。ジャスタにいたっては目を回して大の字になってぶっ倒れている。

 

「大丈夫か?二人とも」

「なんとか・・・」

「     」

 

ゴルシは規格外のタフネスもあってかギリギリ返事ができたが、ジャスタはもう声どころか指先すら上がらないほどへたっていた。

 

「少し、休憩をしようか。午後は実際のコースを走ってもらうよ」

「ヴェ!?昼からロンシャン行くのかよ!?」

「ロンシャン競馬場ですか。世界屈指の難関コースと聞いていますが」

「そうだね。日本のコースとは全然違うからいい勉強になると思うよ」

 

()()()()()()()に対して()()()()()というかなり特殊なコースはおそらく世界広しといえど此処ぐらいだろう。

 

「さあジャスタウェイ君もそろそろ起きなさい」

「・・・うっす」

 

こんなメニューがあと一月も続くのかといつもの死んだ目をしたジャスタが呟いた。体力バーでいうところミリ程度の回復でこの後もう一本も走ればケガの恐れもある。が、ジャスタ専用の回復技があるので問題ないでしょう。

 

「そんなもんあるか・・・」

「ほら、貴女の出番ですわよ」

「マックちゃんがやれよ。私は前にやったばっかりだぞ?」

「親友同士ならここは一肌脱ぎなさい」

「しゃーねーか。ジャス。この練習終わったら膝枕」

「言質取ったぞ!!証人もいるからやっぱり無しは無効だからね!」

 

なんか前にもこんなやり取りがあった気がするけど元気を取り戻したのなら練習再開です。

 

「さあ行きますよ!姐さん!」

「お・・おう。相変わらず仲がいいな、お前ら」

 

軽くオルフェが引いているけどジャスタは気にせず、先ほどまでよりも軽い足取りで練習コースを走行していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。軽めの昼食を挿んで決戦の地、ロンシャン競馬場に彼女たちはやってきた。オルフェには一年ぶりのコースを今回は四人で走り問題点を見つけていくようだ。

 

「さて、ここがスタート地点だ。ここから大体グルっと一周ぐらいする」

 

右手に無人のスタンドが見えるここからスタートする。近くには風車も回っていていかにもヨーロッパといった感じがする。のだが。

 

「もうさ。ヤベーのが見えているんだよなー」

 

ゴルシがやる気なさ気に呟く視線の先。日本の競馬場じゃまずお目に掛かれない者が見えていた。

 

「そうですわね。おそらく()()の攻略も一つのカギと言えるでしょう」

 

()()はさておき、スタート地点から解説していきましょう。

 

スタートからおよそ400mは平坦な直線が続いている。この400で誰がハナを主張していくか。最初のポジション争いが予想される。そして400mを過ぎると上り坂になるのだが。

 

「ここは最大斜度が2.4%の上りだからね」

「うへぇ。きっつ・・・」

 

向う正面がほぼこの上り坂だ。それが第三コーナーまでずっと続いているのだからたまったもんではない。

 

「でこの坂を上りきると」

「下りながら右にカーブ!?」

 

この辺りは京都の名物『淀の坂越え』と似ているかもしれない。が、問題は高低差。ロンシャンの高低差は約10M。心臓破りの府中や中山よりもえげつない坂を越えなくてはならない。そしてコーナーを回りきると。

 

「直線だ!?ここでラストスパート!」

「にはまだ早いよ」

「えっ!?」

 

ロンシャン名物フォルスストレート(偽りの直線)の登場である。脚を溜めに溜めたところで最後の直線と勘違いを引き起こすともう完全に手遅れになる。なにせこの直線を抜けた先が本当の最後の直線なのだから。

 

「スパートはこっからだ!」

「!!」

 

そしてフォルスストレートを抜けたラスト500mが最後の勝負。ここにどれだけぶち込める脚が残っているかが決め手になるだろう。

 

「ふう。とまあこんな感じのコースなんだけど、感想は?」

「初見殺し過ぎませんか!!?」

「まあ、うん。だからこそこうして予行練習しているんだけどね」

 

対策も何もせずに挑めば確実に跳ね返される。ロンシャンに潜む魔物は無知には容赦なく牙を剝く。

 

「ですが勝負所はある程度予想が付きましたわね」

 

ポイントとして挙げるとすれば三ヶ所。『スタート直後の位置取り』『第三コーナー~第四コーナー』そして『ラスト500mの最終直線』。

 

「そうだ。特に最後のストレートは見ての通り起伏がない」

「まるでマックイーンみたいだな」

「ゴールドシップさん?貴女、私の()()を見て私みたいだと?」

「ん?ムネ」

「●ス」

「マック様ステイ!ステーイ!」

 

ゴルシの安い挑発に触発されたマックイーンだったがジャスタとオルフェに制止させられた。まあ確かにこの中じゃマックイーンが一番小さいかもしれないが、彼女にも多少の起伏はある。はず。

 

「そういえば今年はジャポーネからは二人エントリーされていると聞いているが」

「ん?そうなのか?姉御」

「そういやギリギリになって参加表明した奴がいたな」

 

ダービーを制した実力があるらしいからそれなりに善戦できるかもしれないけど、コッチに着いてから一度も見ていない。どこか別の場所でトレーニングしているのだろうか。

 

「坂の特訓でアルプスの方に行っているみたいだな」

 

まさか例の迷実況よろしく200mの坂で坂路特訓していたりして。




チーム名:蘆毛千年帝國(仮)

ダート:未定
短距離:スノードラゴン
マイル:クロフネ
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ
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