これが私の道   作:corin7121

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負けイベってテンション下がるよね

10月の第一日曜日。パリは燃えていた。世界各国から集ったウマ娘達による世界最強決定戦がもう間もなく始まるからだ。

 

「緊張してきた・・・!」

「そうですわね。凱旋門賞制覇は日本の悲願といっても過言ではありません。今年は去年二着のオルフェーブルさんにダービーウマ娘のキズナさんも出場されます」

「そうだな・・・」

 

この一月オルフェーブルとこの大会に向けて共に特訓をこなしていたジャスタとマックイーンが興奮しているのに対してゴルシはというと不調気味。

 

「どうしたの、ゴルちゃん。元気ないけど」

「貴女らしくありませんわね」

「誰かさんが提案した特訓に付き合ったせいで背中がヤベー事になっているからかなぁ?」

「「・・・」」

 

遡る事半月前。

 

「やはりこのコースの攻略には強靭な足腰が必須と思われます」

 

対策会議をしていた時の事だった。マックイーンが今後のトレーニングに意見を出した。

 

「そこで私が天皇賞を勝つために行ったトレーニングを推奨したいと思います」

「マック様がやっていたトレーニング?」

「おい。マックイーン、それってまさか・・・」

「この重い蹄鉄を付けてゴールドシップさんを飛び越えて下さい!」

「やっぱりか!!?」

 

マックイーンが取り出した見るからに重そうな蹄鉄を見てゴルシの顔が一瞬にして青ざめた。

 

「ふっざけんなよ、マックちゃんよぉ!!?これで私がどんだけ酷い目に遭わされたか忘れたとは言わせねーぞ!!」

「え?何があったの?」

「この蹄鉄付きのシューズで天丼かってぐらい踏みつけられたんだよ!これクッソ痛いんだからな!!」

 

蹄鉄で踏まれた時点で大ケガしそうなものだが、ゴルシの売りの一つに並外れた体の頑強さがある。

 

「それでしばらくゴルちゃんコルセット巻いていたんだ」

「あんなに踏みにじられるなんてもう私お嫁にいけないわ!」

「大丈夫!仮にそうなったとしてもゴルちゃんは私が娶るから!!」

「ジャス・・・お前ってやつは!」

「今の日本って同性婚はダメだぞ」

「誰が日本で挙式をするって言った!!同性婚が認められている国に行って国籍変えてやるわ!!」

 

何もそこまでしなくてもと思わなくもないが、コイツは芦毛相手だったら本気でやりかねない。最悪日本国憲法改正までやると言ったらやる女だ。

 

「まあゴルシとジャスタの将来はちょっと置いておいて。このトレーニングって効果あるのか?」

「勿論です!この特訓で私は天皇賞を取ることが出来たのですから!」

「でもあの時のテイオー、最後までスタミナ持っていなかったぞ?」

「テイオーさんギリギリ五着だったっけ?」

「で・・・ですがそれなりの効果は期待できると思います!」

「勢いで乗り切りやがった」

「そうだねー」

 

さてそれでは特訓開始といきましょう!

 

「うおっ!結構重いなコレ!!?」

「メジロ家特注の蹄鉄です。パワーアンクルよりも効果はありましてよ?」

「へー」

「お前ら特訓の失敗=私が中破するってことなのわかっているよな?」

「大丈夫!ゴルちゃんが中破したら・・・

 

ちゃんと写真に収めるから!!」

 

どうやらジャスタは〇コレの中破みたいになることを期待しているみたいだ。蹄鉄で踏みつけられてそんなことになるわけないが期待するだけならタダだし。

 

「やっぱ代われジャス!この恐怖お前も味わうべきだ!」

「え!?ヤダ!」

 

まあ普通は拒否するよね。被害の大きさを知っていたら誰だってそうする。

 

「ふっざけんな!だったらマックイーン!お前が言い出したんだから今すぐ代われ!すぐ代われ!」

「うわっ!?ゴル!急に動くと!!」

 

「「「あ」」」

 

グシャ

 

「ぎゃーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な事件でしたね・・・」

「そうですわね・・・」

「一つ言わせてもらうがな、()()私じゃなかったら脊骨にヒビが入っていてもおかしくなかったんだからな?」

 

遠い目をしている二人にゴルシがツッコミを入れていた。実際のところゴルシレベルの体の丈夫さが無かったら大ケガを負っていたかもしれない。

 

「そろそろ入場してくる時間ですわね。オルフェーブルさんは6番でしたから・・・あ!来ましたわね!」

「姐御ー!」

 

ジャスタ達の声援に気づいたのか、オルフェーブルは観客席に向かって腕を上げて応えた。前評判では堂々の一番人気ともあり、観客は俄かに活気づいた。

 

「やっぱりみんなも姐さんが勝つところが見たいようだね」

「ええ。昨年のクビ差二着もこの人気の現れでしょう」

 

そして前回負けた相手である『ソレミア』が今回出場していないのも人気に拍車をかけた。

 

「ですがレースに絶対は存在しない。注意しなければいけない相手は沢山います」

 

マックイーンが危惧するライバル候補。

 

イギリスのGⅠエクリプス賞を含む怒涛の五連勝を上げたイギリス代表『アルカジーム』

地元フランス代表、仏ダービーを制した『アンテロ』

そして、

 

「私が一番注目しているのが、()()()です」

 

最後に登場した鹿毛のウマ娘。たったそれだけで会場全体から割れんばかりの声援が飛び交った。

 

「今年の仏オークスとヴェルメイユ賞の二冠に輝きました『トレヴ』。彼女が今大会最大の敵かもしれません」

 

特にヴェルメイル賞は今回と同じロンシャンの2400。限定戦ではあるものの、凱旋門前哨戦として参戦するウマ娘も多い。そんな中での勝ちウマだ。人気も文句なしの二番人気であるところからも見て取れる。

 

「しっかーし!姉御だって前哨戦のフォワ賞をしっかり獲ってるからな!調子も万全!負ける要素なんてどこにもねーだろ!」

「ゴルちゃんの言う事も尤もだけど、不安が有るか無いかって言われると不安しかないっていうか」

「どうした、ジャス?気になる点でもあったか?」

 

ゲート前に並ぶ各国代表たちを見定めてジャスタは一言残念そうに呟いた。

 

「何度見返しても芦毛がいない」

「本当にブレないなお前!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おーおー。どいつもこいつも睨みつけてきやがって。徹底マーク宣言ってか?冗談じゃねー)

 

前大会のクビ差二着を考慮してかどのウマ娘もオルフェーブルを危険視していた。極東の三冠暴れウマ娘。ムラッ気があるものの楽に走らせては厳しい勝負になるだろう。となれば最初から最後まで徹底的にマークし自由に走らせない。

 

(多少無理してでも外の方を回すか?)

 

前回は最後の直線を大外からブッコ抜く力業で先頭に立ったが最後の最後でソレミアにかわされてしまった。

 

(まあ成るようにやるか)

 

本番前にマックイーンから要注意人物は教えてもらっていたが、その殆どが頭に入っていなかった。最後に抜けば問題ないだろうと。前回負けたソレミアがいれば話は変わってきただろうが彼女は参戦していない。

 

それならば前回と同様、最後の直線で全員ぶち抜いてしまえばそれでいいだろう。そう高を括っていた。

 

entrer par la porte(位置について)

 

ゲートに入るようにアナウンスがされた。一人また一人とゲートに収まっていく。そして最後に大外枠のトレヴがゲートに収まった。もう間もなく世界最強を決めるレースが始まろうとしていた。

 

ガシャン!

 

『凱旋門賞スタートしました!各バ揃ったスタート。オルフェーブルはまずまずのスタートを切っていきました。キズナは後方に抑えています。キズナは後方。オルフェーブルは中団に控えます』

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー!行っけー姉御!!」

「姐さーん!!」

 

あらん限りの声を絞り出して応援をするジャスタとゴルシとは対照的にマックイーンは静かにレースの行方を見守っていた。彼女の実力はよく知っている。しかし、だからこそ。

 

「負けたりなんかしたら・・・承知しませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

『全体的にスローペースとなりました。先頭を行くのはジョシュ。オルフェーブルはバ群の中央にいます。後方二人目にキズナ。その前方に仏オークス・トレヴがいます』

 

(ここまでの展開は予想通りといったところだな・・・)

 

バ場状態からスローになることは予想出来ていた。皆揃って最後の直線勝負を狙っているのか牽制しながらもほぼ一つの集団となってコーナーへと差し掛かっていく。

 

『ジョシュアスリーが引っ張る展開となりました。後ろに仏ダービーウマ娘・アンテロ。その後方にオルフェーブルが付けます。キズナはまだ後ろから2・3番手といったところでしょうか』

 

上りから下り坂へと変わりこの後に控える直線を見据えて位置取り争いも加速していく。

 

『中間地点を超えてペースも上がってきました。ジョシュアスリーが先頭。二番手オコヴァンゴが上がってきました。外からアンテロ。トレヴも位置取りを上げてくる。キズナも続いた』

 

半分を過ぎたところで後方にいたメンバーが徐々に押し上げてきた。前を行くオルフェーブルはまだ静かに気を窺っていた。前回の様にスパートをかけるタイミングを間違えればまたゴール手前で差し切られるかもしれない。が、その慎重さが思わぬ事態を引き起こしてしまう。

 

「しまっ・・・!」

 

『おおっと、オルフェーブルがバ群の中でもがいている。行き脚を失ってしまったか?』

 

気が付けば周囲を完全に囲まれてしまっている。前にも横にも脱出できずズルズルと後方に下がってしまう。それを尻目にトレヴは先頭を目指して加速していき、追走するかたちでキズナも前に行った。

 

(クッソ!前に抜けない!)

 

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい!何やってんだ姉御!?」

「キズナさんがマークしてくれているけど、これ・・・」

「ええ。最後の直線でベストポジションを取れません」

 

 

スパートをかける最後のストレートで後方に残っていると今日のロンシャンのバ場の状態ではいくらオルフェーブルの豪脚をもってしても届かないだろう。それはつまり・・・

 

「ですが、()()です」

 

マックイーンは気づいていた。レースを中継する特大ビジョンに映ったオルフェーブルの目はまだ死んでいない。窮地に立たされようともまだ彼女は諦めてはいない。

それならば。あり得る。

日本最強の三冠ウマ娘の彼女であれば。

 

 

 

 

 

 

『最後の直線、先頭はジョシュ。一番外にキズナ。オルフェーブルはまだ中だ。出口が無い!トレヴが上がってきたトレヴが上がってきた!』

 

泣いても笑っても最後の直線500Ⅿ、トレヴが先頭に打って変るもオルフェーブルはまだ動かない。いや動けなかった。

 

終わった。誰もがそう思った。またしても日本は勝てないのか。誰もがそう思った。その瞬間、

 

「甘いんだよ。私が、『オレ』が!

 

負けるかよ!!

 

『オルフェーブル前が開いた!そしてアンテロだ!ダービーウマ娘のアンテロとオルフェーブル!』

 

後方にいたトレヴが捲くって出来た一瞬のスキ、それを見逃さなかったオルフェーブルが一気にギアを上げて先頭のトレヴに襲い掛かる。しかし、

 

『しかし先頭はトレヴ!リードを広げていく!二番手はオルフェーブルとアンテロ!しかし前が止まらない止まらない!オルフェーブルが二番に上がったが差が開いていく!』

 

(畜生が・・・!)

 

『勝ったのはトレヴ!五戦五勝!無敗の凱旋門賞ウマ娘!今年も届かなかったオルフェーブルは二着!ダービーウマ娘キズナは四着!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな・・・姉御・・・!」

「うっ・・・!」

 

目の前で絶対勝てると信じていたオルフェーブルが敗北したことが受け入れがたい二人は涙を禁じえなかった。

 

「立派・・・でしたわ。二人とも」

 

ただ一人、マックイーンだけはゴールの先で息を整えながらも観客に手を振る世界最強に届かなかった日本からの英雄を見つめていた。

 

「次は・・・あなた達の番ですわよ。ゴールドシップさん」




チーム名:蘆毛千年帝國(仮)

ダート:未定
短距離:スノードラゴン
マイル:クロフネ
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ
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