フランスから無事帰国した二人。世界的なレースを目の前で観戦していたのだから級友たちは挙って話を聞きに二人に群がるものかと思えたが、むしろ二人から距離を取るほどになっていた。その理由はというと。
「・・・・・・・・」
ジャスタがグレた。
どこで買ってきたのかグラサンをかけて髪型はリーゼントに。大きくバッテンが描かれたマスクをして見るからに不機嫌な態度を取っていた。
「あの・・・ゴールドシップさん?ジャスタさん
事情を一番知っていそうなゴルシにスノーが尋ねたが、ゴルシはゴルシで複雑な表情をしていた。
「いやー、フランスじゃ特に何もなかったんよ。姉御が惜しくも二位だったことを除けば」
「それじゃあ何が原因なんですか?」
「・・・・・・・・・・
~早朝~
「カチコミだ、オラーーーー!!
グラサン+リーゼント+金属バット+特攻服を装備した不審なウマ娘が朝も早くから生徒会室に殴り込みを掛けていた。
「な、何者だ貴様!ここがどこだかわかっているのか!」
「わかった上でのカチコミだオラー!お前じゃ話にならんのじゃ!責任者呼んで来い!」
不審者の突撃に面食らったエアグルーヴだったが、そこはやはり副会長。この手のトラブルには慣れているのかあっという間に不審者を組み伏せていた。
「放せー!!」
「まったく・・・。そう気が立っていては話も出来ないぞ?」
「私は!今!ハラワタが!地獄の窯よりも!グッツグツに!煮えたぎって!いるんだよ!!」
この不審者は相当お冠にきているようで、まともな会話が出来そうにありません。
「いいからさっさとここの責任者呼んで来い!!」
「まずは落ち着け!そしてその手に持っている危険物をコチラに寄越すんだ」
「責任者が先だ!会長は何処だ!隠しても無駄だぞ!」
「さっきからずっとそこに座っているがな」
不審者が生徒会室に乱入してからずっとルドルフ会長は微動だにすることなく真正面の椅子に腰かけていた。
「おうおうおう。逃げも隠れもしないってのは中々の肝っ玉じゃねーか」
「・・・・・・」
ズカズカと距離を詰める不審者に対してルドルフは無言でプレッシャーを与え続ける。皇帝からの圧に屈することなく机の前まできた不審者は真正面からメンチを切った。無言の睨み合いが続くこと数分後。
「会長に一言物申す!!」
ウマ娘新聞を手にしたジャスタウェイが生徒会室に飛び込んできた。
「最初の不審者は誰ですか!!?」
ゴルシの説明を聞いていたスノーは思わずツッコんでいた。
「さあ?ジャスが乗り込んだ直後にたづなさんがやって来て笑顔で連れ出されていったが。どうなっちまったんだろうな?」
おそらく理事長室へ連行されたんじゃなかろうか。その後はどういった処分が下されたのかは知る由もないが。
「でもスノーも聞いているだろ?
「ええ。クロフネ先輩から直接・・・」
距離の不安から長距離の菊花賞を回避し、シニア級も参戦する秋の天皇賞へと参戦するはずだったクロフネ。NHKマイルやダービーの結果から見ても十分に通用する。一部のファンからは本命まであったというのに。
『クロフネ、天皇賞秋出走除外。武蔵野Sへ』
新聞の見出しにはそう書かれていた。
「でチームリーダーとして文句を言いに会長の所に行ったわけだが」
「先客がいたと・・・」
「ちゃんと
クロフネが出場できない理由は単純にこれまで獲得した
「というよりも!それじゃあクラシック世代はシニア世代に対して不利過ぎ・・・・・・あ!」
「どうしたジャス?なんか思いついたか?」
「秋天って確かステップレースなかったっけ?それに出場すれば」
確かに毎日王冠がそれに当たるが。
「それもうとっくの前に終わったぞ?」
「ダメかー」
そもそも秋天一週間前にレースなんか出れるわけがない。そんなに毎週出場していては体が壊れるだろう。
「近年じゃ毎週のようにレースに出場させる鬼コーチがいるとかいないとか」
「絶対調子狂うでしょ、それ。勝てるの?」
「噂によれば」
「ウソでしょ・・・」
通算成績30勝が最低ラインとかどんな魔境だろうね。
「話を戻しますけど、クロフネ先輩は同じ週に行われる武蔵野Sに出場するみたいですが」
「武蔵野ってたしかダートでしょ?・・・クロさん走れるの?」
これまでクロフネが走ってきた舞台は芝のコースだ。練習コースでダートを走ることはあるが、どれだけ通用するか未知数である。
「スノーは確かダートも走れるんだったよな?」
「うん」
「クロさんの練習見た感じどうなんだ?」
「その・・・並走を何本かしたんですけど・・・」
「?」
イマイチ歯切れの悪いスノーに首をかしげるゴルシ達だったが、スノーの証言に開いた口が塞がらなくなっていた。
「なんだか
チーム名:蘆毛千年帝國(仮)
ダート:未定
短距離:スノードラゴン
マイル:クロフネ
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ