「あ~~~~~~久しぶりのゴルちゃん膝枕~。癒されるー」
「へーへー、そいつは良かったね」
デビュー戦を見事五バ身の圧勝で飾ったジャスタウェイ。ライブもそこそこにサッと新幹線でトレセンにとんぼ返りすると芦毛レーダーを使用して速攻でゴルシを確保。目を血走らせて有無を言わさずゴルシを拉致る事に成功しそのまま保健室に突入。ご褒美の膝枕を堪能することにした。え?バステが付いていないのに使っていいのかって?芦毛欠乏症の症状が出ているから使っても問題ありません。放っておくとスノーにジャスタの触手が伸びるぞ?
「というよりも、あたしさっきまでトレーニングしていたから汗臭いぞ?」
「何を仰います。
「うわぁ・・・」
友人がドが付くほどの変態だったことに戸惑いを隠せないゴルシ。異常性癖なのは理解できても実際目の当たりにすると引くよね。
「さて、そろそろ時間だ。退いてくれ」
「延長を希望します!」
「ウチはそういうお店じゃないんで」
「えー。でもオプション付けてくれるって話しだったじゃん」
「確かにそうは言ったけどよ」
絶対にコイツは遠慮しない。下手すれば一生太ももに挟まって生活するとか言い出しかねない。性質が悪いのがそれを実行するポテンシャルを持っていること。どないせえというのだろうか。
「何かしてくれないと私はずーーーーーーーーーーーーっと動きません」
「わかったよ。それじゃあ渾身のウィスパーボイスで終わりにしてくれ」
「ゴルちゃんのASMR!?私の脳みそが溶かされる予感しかしない~」
あ~あ~と念入りに喉の調整を終えたゴルシはジャスタの耳元で一言。
「いくぞ?
許せるものか、許せるものか~!」
「それウィスパーボイスじゃない!ウ。スカーボイス!!」
「ん?違ったか?」
「全然違うよ!それ脳みそ啜るクリーチャー造った女科学者じゃん」
「そうか?クゥリィィイイイス!!の方が良かったか?」
「それもウェス○ーボイス!グラサンオールバックで溶岩遊泳した人じゃん」
「でも元気出たろ?」
「おかげ様で」
取り合えず時間一杯になったのとオプションもやってくれたのでジャスタは大人しくゴルシの上から退いた。その時だった。
「誰だ?保健室で騒いでいるのは」
「あ」「あ」「あ」
カーテンの向こうに見知った顔がチラッと見えたが、すぐにゴルシがカーテンを戻した。
「ジャスタ。今、なにも見なかったよな?」
「うん」
あの人、本来だったらまだ合宿で海に行っているはずだからこんな所にいていいわけないのだから。
「じゃあ戻って練習再開だな!」
「そうだね!」
「ちょっと待ちな、二人共」
さっさとグラウンドに戻ろうとした二人の肩を背後からがっしりと掴んで離すまいとする栗毛の少女。
「お前たち、お姉さんに挨拶もせずに立ち去ろうってのか?」
「いえいえいえそんな!滅相もない!な!?」
「そ、そうですよ!姉さんの邪魔しちゃ悪いと思って!」
「そうかいそうかい。私はてっきり
相手をしたくないから逃げようとしたと思ったんだけどねぇ?」
掴まれた二人の肩からミシッと軋む音がした。逃げれない。そして振り返る事すらできない。冷や汗だけが全身から噴き出していく。
「何か言わなきゃいけないことがあるだろ?ん?」
それはわかっている。しかし極度の緊張から肺が機能していない。空気を取り込むことも吐き出すことも放棄していては喋ることなど出来ようはずもない。
「ゴルシさん、ジャスタさん。ここにいますか?」
「「!!」」
一歩も動けなかった空間に聞こえたスノーの声に二人は反応した。
「来るなスノー!こっちに来るんじゃねー!」
「スノーちゃん逃げて!」
「?二人共ここですか?」
必死に呼びかけるも声は届かず、無情にもスノードラゴンは保健室のドアを開けてしまった。そこにいたのは栗毛の少女に絡まれた二人の友人の姿。
「・・・・・・」
スーッと無言でスノーは扉を閉めた。二人を残して。
「待ってスノーちゃん!行かないで!」
「イヤ、来るな!代わりに誰か呼んできてくれ!」
「あんた達にはちょっとお説教が必要そうだね?」
「「すんませんした!!!!」」
それから数分後――――
「ウチの愛バが申し訳ない」
栗毛の少女の担当トレーナー室でトレーナーの池曽根さんから深々と頭を下げられた。彼が担当しているウマ娘が揃って気性難なせいか謝罪が板についてしまった悲しい男だ。
「いえいえ。そんな。姉さんとは古くからの付き合いですから」
「そうそう!そんなに気にしてっと禿げるぞ?」
「もう出来てるんだよ・・・」
「「「あ・・・」」」
心中お察しします。
「あの意外です。二人共お知り合いだったなんて」
「そこまでいい仲じゃないけどね」
「メジロの親戚筋ってだけだからな」
幼い頃から付き合いのあるジャスタとゴルシ。そのゴルシと親戚関係だったので昔はよく遊んでもらっていたのだ。
「懐かしいねぇ。昔はちっこくて体も弱かったから三冠どころか一勝も出来ないって言われたのに」
「今じゃ押しも押されぬ最強三冠馬ですからね・・・
URA史上七人目の三冠バ。その余りの強さから付いた異名が『金色の暴君』。事実レースでも強いがレース外でも恐ろしい人なのだ。ある
「それより、姉さんは合宿いいのかよ?こんなところで油なんか売って」
「それなら別に大丈夫。今日コッチに戻ってきたのは秋の海外遠征の予定の打ち合わせ」
「海外。それってまさか」
「そ。凱旋門」
フランス凱旋門賞。世界中の強豪が集うこの最高峰のレースでは未だ日本出身のウマ娘の優勝者は一人もいない。エルコンドルパサーをはじめとした精鋭を何度も送り込むもその高い壁に何度も跳ね返されてきた。そして去年もオルフェーブルはこの大会に挑み僅かな差で差し切られ二着。
「前哨戦のフォワ賞にも出るつもりだし、次は勝つつもりだよ」
「姉さんの実力だったら間違いなく取れますよ!」
「・・・・・・」
この場にいる全員がオルフェーブルの優勝を信じて疑わない中、当の本人の顔色はあまり優れないでいた。
「でもまあ問題はあってな・・・」
「問題・・・ですか?」
「それが・・・」
「フランスでの練習相手が見つかっていないんです」
言葉を濁すオルフェに変わりトレーナーが代弁した。なんでも去年の荒々しすぎる走りに対戦相手が軒並みビビッてしまい並走トレーニングが難しい状況らしい。
「あの・・・そんなにオルフェーブル先輩は恐れられているんですか?」
「そりゃあ・・・」
「三冠達成直後に健さん投げ飛ばしたヒトだぞ?」
当時の映像も残っているが、菊花賞優勝後感動のあまり抱き着こうとした池曽根トレーナーを見事な背負い投げで撃退している。ちなみにメイクデビューでも同じ光景が広がっていたそうだ。
「誰か一緒にフランスまで来てくれると助かるのですが、なかなか承諾が取れなくて」
「トレーナーの人望じゃない?」
いや、お前だよ!と全員がツッコミを入れたかったがそんなことを口に出せば最期になるだろうと思い全員が口を噤んだ。
「そうだ。お前たち今年デビュー戦あるだろ?」
「ええ。さっき終わらせてきましたが」
「アタシは来週ぐらいだな」
「来い」
「「え?」」
余りにも唐突な提案にジャスタもゴルシも固まってしまった。
「だからお前らフランスで私の練習相手になれ」
「無理ですよ!デビューしたてなのに三冠の姉さんの相手にもなりませんよ!?」
「そうそう!第一アタシらのトレーナーが許可を出すとは限らないだろ!?」
「確認取りますねー」
―――数分後
「はい。はい。それでは」
池曽根トレーナーが通話を終了した。まだデビューしたてで海外遠征なんて許可を出すとも思えないが結果や如何に。
「えー。まずジャスタウェイさんのトレーナーの松尾トレーナーからですが」
「ゴクリ」
「許可取れました」
「ウソでしょ!?」
まさかのゴーサインが出ていた。
「松尾さん曰く『若いうちに海外のトップ選手の走りを見ることは成長につながるだろう。今日の走りを見て将来は海外のレースも見据えたいし良い機会だ』とのことです」
「マジですか・・・」
「後『俺を置いてさっさと帰るんじゃない』とも言っていましたね」
「あ」
ご褒美の事しか頭になかったジャスタはあろうことかトレーナーを新潟に放置したまま帰ってきていたのである。そりゃトレーナー側からしたら怒って当然だろう。
「それとゴールドシップさんのトレーナーさんからはですね」
「ゴクリ」
「デビュー戦次第だけど多分勝つだろうから連れてってとのことです」
「あんにゃろ!だったら次のレース手を抜いて」
「そんなことすれば一発でバレるから止めときな。私もこの前の阪神大賞典でやらかして大目玉食ったから」
色々な所に迷惑をかけるからそれだけは止めておけとオルフェーブルは念を押して言った。下手すると出走どころか登録抹消までされかねないとか。
「わかったよ。ちゃんと走るから。それでいいだろ?」
「それでいいんだけどゴルちゃん、気づかないところで手を抜きそう」
「それはわかる。舌ペロしながら走ったりとかしそうだわ」
「お?やっていいのか?」
「「やるんじゃねー!!」」
しかしこれだけ念を押してもやるのがゴールドシップというウマ娘なんです。最後はもう笑って諦めてください。
「そういや、ジャス。お前今アオハルのチーム集めているんだよな?」
「はい。まだ三人ですけど」
「まさか姉御がメンバー入りするとか・・・」
「それはない。そもそも私は興味ない」
群れるのが嫌いな性分もある。というよりもこんな奴をチームで制御なんかできるわけがない。だからこその『暴君』なのだ。
「一人、面白いのを知ってる。入ってくれるかどうかはわかんないけど、GⅠも獲ってる腕利きさね。そいつを紹介してやるよ」
「その方はどんな人なんですか?」
「確かジャスと同じマイラー寄りで中距離もそこそこ走れたはず」
「そこじゃなくて!」
「?」
「 芦 毛 で す か !? 」
ゴルシもスノーもそこじゃないだろと思ったが、ジャスタだしで片付けた。
「ああ。芦毛だよ。っていうか
「勿論!!」
「まぁ強さは折り紙付きだ。楽しみにしていな」
あのオルフェーブルが太鼓判を押すレベルの選手が加入してくれるかもしれない。デビューしたてで経験値が少ない三人にはとても有難い存在になってくれるだろう。
「ああでもあいつ超が付くシスコンだけど・・・ジャスがいるならどっちもどっちか」
「シスコン?」
「そ」
まあシスターコンプレックスが来ようとこっちには既に
「さて、そろそろ合宿所に帰りましょうか」
「そうだな。先に話は通しておくけど、一緒に練習できるようになるのは凱旋門終わって帰ってきてからになるかもな」
「いえいえ。紹介してもらっただけでも十分ですよ!ありがとうございます!」
「ゴルもそこの娘もデビュー戦頑張りなよ」
「ウっス!」「はい!」
それじゃと池曽根トレーナーとオルフェーブルは合宿所に戻っていった。
「なんというか・・・・・・凄い人でしたね」
「アレでも三冠獲ったからな。スゲー人だよ、姉御は」
「それでこの後どうする?トレーニングの続きする?」
「その前にお説教だ、バカ娘」
「あの・・・・・・・・お帰りなさい」
新潟に置いてけぼりをくらった松尾トレーナーがジャスタの後ろに立っていた。滅多に怒らないことで有名な彼だが今回ばかりは許すことはできそうにない。
「時間も時間だし、アタシらはもう上がるか」
「そうですね・・・」
「ぅえ!?ちょっ待ってよ!?」
「二人ともクールダウンはしっかり行ってくださいね。特にゴールドシップさんはレースが近いですから」
「「はーい」」
「私もクールダウンして帰」
「ジャスタウェイ。貴女は居残りです」
「・・・・・・・・・ぁぃ」
この後寮の門限ギリギリまでジャスタウェイはありがた~いお説教を聞かされ続けた。後にジャスタはこんなに怒ってたトレーナーは初めてだったとゴルシに泣きついたそうな。
チーム名:蘆毛千年帝國(仮)
ダート:未定
短距離:スノードラゴン
マイル:未定?
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ