嵐の中を船がいく。
豪風豪雨もなんのその。
大波掻き分け船はいく。
ガシャーン!と遠くに落雷が見えた。それを見て船長の近くにいた二人の少女は船長に抱き着いた。
「大丈夫だよ二人共。お姉ちゃんがいるから心配ないよ」
妹をなだめるように芦毛の船長は二人の頭を優しくなでた。
気付けば船は嵐を抜けて住宅街を突き進む。
そして慌てて舵を切るも間に合わず船は排水溝に飲み込まれてしまった。
「私の船が!」
いつの間にか脱出していた船長が排水溝を覗きこむも中は真っ暗で何も見えない。
救助を諦めてその場から立ち去ろうとしたその時、
「こんにちは、お嬢さん」
排水溝の中から十字の星がある鹿毛のウマ娘が現れた。
「あれれ?返事はしてくれないの?」
こんな所に住んでいるような奴に返事は無用とばかりに船長は首を横に振る。
「うーん。あ、そうだ。お近づきの印にこのスイカいらない?」
「お前排水溝に落ちたスイカを食べたいと思うか?」
「そうだよね。私も勧められても拒否するよ。自己紹介がまだだったね。私はジャスタウェイ。世界一位のウマ娘さ。そして貴女は芦毛。それ以上でもそれ以下でもない。でしょ?」
何をもってでしょ?と聞いてきたのかは知らないが彼女は大切な使命がある。いなくなった妹たちを探さなくては。
「ああ、そうだね。それじゃ」
「ちょっと待ったぁ!コレ!」
ジャスタウェイが掲げた手の中にはさっき排水溝に落下した船があった。甲板には二人の姿も見える。
「お姉ちゃーん」
「俺の妹たち!」
「その通りぃ!」
二人が無事だったことに胸をなでおろした船長だったがどういうわけかジャスタウェイは船を返してくれなさそうだった。
「ごめん。ちょっと引っかかっててそれ以上近づけないんだ。後これスゴイ重い」
船一隻抱えているんだからそりゃ重いだろう。それよりもまずは二人を救出しないと。
「それにしても君はとても妹想いなウマ娘なんだね。私にも大好きなウマ娘がいるけれど貴女には敵いそうにないよ」
「もうちょっと手を伸ばせる?」
「そういえば話が変わるんだけど、マリーアントワネットって獄中で髪の毛が白くなったんだって」
それがなんだと言おうとした瞬間、船長の腕をジャスタウェイが掴み排水溝に引きずり込んだ。
「つまり彼女は芦毛だったんだよ!!」
「だから何の話だよ!!?」
あまりの超展開に枕を叩きつけて思わずツッコミを入れた芦毛の少女。まだ未明の時間帯ですがおはようございます。
「夢・・・か。だよな。だとしたらなんて悪夢だ」
悪夢になった原因はおそらくホラー好きな妹から勧められた映画の影響だろう。なんか夢とよく似たシーンがあった。そして悪夢になったであろう原因のもう一つが。
「おいポケット。なんでまた俺の布団にいるんだよ」
同室のウマ娘が布団の中に紛れ込んでいた。それもガッツリと胸を鷲掴みしながら。一応これでもダービーを制したウマ娘なのだが、何度もコレをされるのはあまりいい気分ではない。それに今は夏。クーラーはつけているとはいえ暑苦しいったらない。
「ん~?後五分~」
「いいかポケット。十秒以内にその手を離さなけりゃオマワリサンに連絡するぞ?」
「それじゃあ十秒間堪能させてもらいますー」
「もしもし警察ですか?いま痴漢の被害に遭っていまして」
「十秒は!?」
「犯罪者に時間の猶予与えるわけないだろ?」
本国だったら即行ピストルを額に押し付けているところだった。日本が銃社会じゃなくて助かりましたね。
「あんたにしろ、タイキにしろこんな立派なもんぶら下げているのが悪い」
「そのせいで一部の奴らから親の仇のような目で見られることがあるんだよな・・・」
本人からしたら邪魔と思う時もあるのだが、そんなことを公言してしまえば一部のウマ娘が暴徒化しかねない。誰とは言わないが。
「ああ駄目だ。話し込んでいたせいか、眠気完全に吹っ飛んだ」
「添い寝・・・してあげようか?」
「もしもし弁護士事務所ですか?今知り合いからセクハラされていまして」
「ゴメンゴメン!示談で!示談で手を打って!?」
「だったら2億」
「ダービーの恨みココで晴らす!?」
なおダービーの優勝賞金が現在2億円ぐらいらしいです。
「冗談だよ」
「だよね~」
「7億」
「値上がりしてる!?」
「あんたが今までやったセクハラ被害の合計なんだけどね?」
「本当にごめんなさい。マジ寝惚けてて記憶にないんです」
ポケットも悪気があってしているわけではない。ただそこに大きな山が二つもあるのが
「やっぱり弁護士に相談しよう」
「それだけは本当に勘弁してください!」
ポケットが見事なフライング土下座を披露したところでノックも挨拶もせず、一人のウマ娘がやって来た。まだ
「夜分失礼します!匿名の苦情多数本官へ届いております!静粛にお縄についていただくであります!」
「ちょうどよかった。オマワリサン。こいつセクハラの現行犯です」
「なんと!?夜這いとはけしからん行為!神妙にお縄に付くであります!」
「そんな!?ちょっと寝惚けただけなのに!?」
「がっつり他人の胸を揉んどいて何言うか」
「ふむ。ところでジャングル殿。揉み心地は?」
「最高」
「お前ら今から砂浜に埋めてやろうか?」
これ以上揶揄うと本当に埋められかねないと判断した二人は大人しく自分たちの布団に戻った。目は覚めてしまったが、もう一度布団に戻ればその内また眠りにつくだろう。そう思った芦毛の少女だったが、不意にスマホに着信があった。こんな時間に非常識なやつだと思ったが念の為中身を確認するとメールが一通。
『明日話したいことがあるから都合付けて
なんで三冠バから連絡が来るのか訝しんだが、無視すると後々面倒くさいことになりかねない。ちょっとしたことならそれこそトレーニングの合間にでも話すことぐらいはできるだろう。
適当に分かったと返信して少女は眠りについた。
「お、戻ってきてくれたんだね?」
「手前はさっさと俺の夢から出ていけ!!」
またもや排水溝から現れたジャスタウェイに怒りが頂点を超えた芦毛の少女はゴルシも驚く強烈なドロップキックをお見舞いした。
チーム名:蘆毛千年帝國(仮)
ダート:未定
短距離:スノードラゴン
マイル:未定
中距離:ジャスタウェイ
長距離:ゴールドシップ