魔法士ゆかり   作:湯ノ川

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命の価値.2

「呼び出しから随分と到着が遅い。何をしていた?」

 

「さぁね?ずっと座ってるだけだと、時間が経つのが遅く感じるんじゃない?」

 

 久しぶりにホーム(クラン拠点)のある街に足を運んだものの、高圧的な態度で出迎えられた私は不貞腐れた様にそう返した。

 

「いつまであんな場所にいるつもりだ?貴様の本来の役割はここ(ホーム)にあるという事、忘れてはいまいな?」

 

「出来れば忘れたいもんだけどな。それより、今回は何の用だ?転移もタダじゃないんだぜ?」

 

 冒険者としてのランクがⅡになると、クランの設立や、一度訪れた転移門への転移が可能になる。その転移には距離と装備や所持品等の重量によって、必要となる金額が変動するのだ。

 

「……はぁ。すまない。少し二人にしてくれ」

 

 疲れた様に目頭を押さえながら彼がそう言うと、私達のやり取りを見てオロオロしていた事務員達が、ペコリと頭を下げて部屋を出ていった。

 

「……マキ、変わりはないか?」

 

「ん。まぁ特段変化は無いかな」

 

 先程までのピリついた空気は二人になると共に霧散し、そこにはごく普通の親子(・・)の姿があった。部下の手前、トップ(クランマスター)が砕けた様子を見せる訳にも行かず、私も父のそのスタンスは理解しているつもりである為、ホームに戻る時はいつもこんな感じになるのだ。

 

「手紙は読ませてもらったよ。良い友人と出会えたんだってな。……すまない。突然呼び出してしまって」

 

「良いよ別に。自由にさせて貰う分、協力はするって約束だしな。それで?わざわざ私を呼んだって事は、デカい案件って訳?」

 

「あー、いや。今回はギルドからの指名でな。引率の仕事になる」

 

「あー。なるほどね……」

 

 トップクランの若きエース。ギルドの広報によって私に塗られた看板がそれだ。色眼鏡は多少あるにしても、評価される事自体は素直に嬉しいが、他の人間がそれを良く思わないのも事実。それが面倒になったから、私はホームを離れ、母の生まれた地(ノハネ村)での活動を選んだのだ。

 

「マキの担当はアカデミーの学生二人。あと、もう一人クラスⅡ冒険者とその担当の二人。計六人での仕事になるが、そちらの二人には、別に関わらなくて良い」

 

「その言い草……勤勉な学生って感じじゃなくて、もしかして貴族?」

 

 アカデミー。ギルドとは別の教育機関であり、こちらは優秀な魔法使いや研究者を目指す者、伯の欲しい貴族等が多く在籍しており、私の担当が前者。もう一人の担当が後者という事なのだろう。

 

「あぁ。貴族としての伯が欲しいんだとさ。よって担当となる者も貴族に金で雇われた、言わば人形だ。まともに引率が務まるかも分からん」

 

「……もし、そっちの班が危険にさらされたら?」

 

「お前自身と班の安全を優先しろ。とだけ言っておく」

 

「りょーかい。話が早くて助かるよ」

 

 話を終え、踵を返し扉の前まで歩いた私は、そこで一度足を止めた。

 

「……ねぇ、ちょっと老けたんじゃない?」

 

「……言うな。気苦労も少なく無くてな」

 

「ははっ。そりゃ、すまんね」

 

 最後にヒラヒラと手を振り、別れの言葉を告げるでも無く、私は部屋を後にした。

 

 

 

「……全く、君の代わりなんて、僕には出来そうに無いな……」

 

 遠い日々、家族三人で過ごした時間を懐かしむ様に吐き出されたその言葉は、私の耳に届くことは無かった。

 

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