「呼び出しから随分と到着が遅い。何をしていた?」
「さぁね?ずっと座ってるだけだと、時間が経つのが遅く感じるんじゃない?」
久しぶりに
「いつまであんな場所にいるつもりだ?貴様の本来の役割は
「出来れば忘れたいもんだけどな。それより、今回は何の用だ?転移もタダじゃないんだぜ?」
冒険者としてのランクがⅡになると、クランの設立や、一度訪れた転移門への転移が可能になる。その転移には距離と装備や所持品等の重量によって、必要となる金額が変動するのだ。
「……はぁ。すまない。少し二人にしてくれ」
疲れた様に目頭を押さえながら彼がそう言うと、私達のやり取りを見てオロオロしていた事務員達が、ペコリと頭を下げて部屋を出ていった。
「……マキ、変わりはないか?」
「ん。まぁ特段変化は無いかな」
先程までのピリついた空気は二人になると共に霧散し、そこにはごく普通の
「手紙は読ませてもらったよ。良い友人と出会えたんだってな。……すまない。突然呼び出してしまって」
「良いよ別に。自由にさせて貰う分、協力はするって約束だしな。それで?わざわざ私を呼んだって事は、デカい案件って訳?」
「あー、いや。今回はギルドからの指名でな。引率の仕事になる」
「あー。なるほどね……」
トップクランの若きエース。ギルドの広報によって私に塗られた看板がそれだ。色眼鏡は多少あるにしても、評価される事自体は素直に嬉しいが、他の人間がそれを良く思わないのも事実。それが面倒になったから、私はホームを離れ、
「マキの担当はアカデミーの学生二人。あと、もう一人クラスⅡ冒険者とその担当の二人。計六人での仕事になるが、そちらの二人には、別に関わらなくて良い」
「その言い草……勤勉な学生って感じじゃなくて、もしかして貴族?」
アカデミー。ギルドとは別の教育機関であり、こちらは優秀な魔法使いや研究者を目指す者、伯の欲しい貴族等が多く在籍しており、私の担当が前者。もう一人の担当が後者という事なのだろう。
「あぁ。貴族としての伯が欲しいんだとさ。よって担当となる者も貴族に金で雇われた、言わば人形だ。まともに引率が務まるかも分からん」
「……もし、そっちの班が危険にさらされたら?」
「お前自身と班の安全を優先しろ。とだけ言っておく」
「りょーかい。話が早くて助かるよ」
話を終え、踵を返し扉の前まで歩いた私は、そこで一度足を止めた。
「……ねぇ、ちょっと老けたんじゃない?」
「……言うな。気苦労も少なく無くてな」
「ははっ。そりゃ、すまんね」
最後にヒラヒラと手を振り、別れの言葉を告げるでも無く、私は部屋を後にした。
「……全く、君の代わりなんて、僕には出来そうに無いな……」
遠い日々、家族三人で過ごした時間を懐かしむ様に吐き出されたその言葉は、私の耳に届くことは無かった。