魔法士ゆかり   作:湯ノ川

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命の価値.3

 ノハネ村を離れた翌日の早朝。私は待ち合わせの為にギルドを訪れていた。二班合同による現地実習が二泊三日だと知らされた時は少し驚いたが、魔区での野宿など、ノハネの森(ノハネ村周辺区域)でゆかりと散々やってきた私にとっては特段珍しい事でもなかった。

 

「今日は学生さんとの顔合わせと魔区への移動がメイン、か。移動の馬車や野営の準備とかは研修の子が自分等で用意する、と。アンタの方もそんな感じ?」

 

 少し離れた場所に立つ、中肉中背の同業者へと話を振った。話を振られるとは思っていなかったのか、男は少し驚いた素振りを見せたものの、すぐに返事が返ってきた。

 

「いえ。此方は私が事前に用意しておくように、と。如何せん、上流階級のご子息らしく……」

 

「色々苦労してんだねー。アンタ、冒険者歴は長いの?」

 

「それがほぼ全く。ライセンス自体は以前から持ってはいましたが、アカデミー卒業の副産物でしかありませんから」

 

「あー。学卒特典ってやつか」

 

 アカデミーを卒業するには、今回の様な実習を数回こなす必要がある。逆説的に、アカデミーを卒業出来ると言う事は、冒険者としての適性がある。何処の誰が言い出したかは知らないが、アカデミーにおける二大派閥の一方、上流階級の貴族達率いる、言わば過激派はその説を強く提唱しており、卒業と同時に幾つかの資格を自動的に得られるシステムを勝手に構築したのだ。

 

 まぁ、そのおかげでもう一方、マトモな大人達による穏健派側の生徒達も勝手に資格が貰えてるんだから、強く言えないってのも事実なんだろうな。

 

「おっと。そろそろ時間ですかね。私はこれから、お二人の御迎えに参りますので、ここで失礼します」

 

「ん、そっか。じゃあまた後で。そんな関わる事は無いと思うけどな」

 

 私がそう言うと、男は一度深く頭を下げ、馬車に乗ってこの場を去っていった。

 

「ん……ふぅ。うん。今日もいい天気だ」

 

 ホントはもっと早く帰るつもりだったんだけどな。せめてゆかりには二日三日くらい留守にするって言っときゃ良かったな。

 

 そんな事を考えながら、大きく息を吐き、身体を解す様に伸ばしていく。すると一台の馬車が遠くから、少しづつ近付いてくるのが分かった。

 

「す、すみません。お待たせしましたか?」

 

 丁度私の前に止まった馬車の御者席に座る、青い髪の少女が声を掛けてくる。それは私の考えていた通り、それはアカデミーの生徒、つまりは今回私が引率を担当する子達だった。

 

「んにゃ。今来たところだよ。私はマキ。君は?」

 

「あ、私はアオイです。それと……」

 

 青髪の少女、アオイが荷台の方を見る。それに釣られて私も荷台の中を覗き込むと、そこには赤い髪の少女がすやすやと寝息を立てていた。

 

「もう!お姉ちゃん!もうすぐ着くからちゃんと起きてって言ったでしょ?早くおーきーてー!」

 

「お姉ちゃん、って事は姉妹か」

 

「あっ、はい。こっちは双子の姉でアカネっていいます」

 

 ゆさゆさと揺さぶられながら目を擦るアカネと、それを叱りながらも何処か嬉しそうなアオイ。二人には何処か微笑ましいものがあった。

 

「んー。失礼しましたー。どうも、アカネですー」

 

「アカネとアオイね。うん。今回はまぁ、よろしくって事で」

 

「「よろしくお願いします」」

 

 何故二人はアカデミーに入ったのか。逆に何故私は冒険者になったのか。御者の交代も兼ねて、休憩を挟みながらの道すがら、二人とするそんな他愛のない会話は、思いの外悪くない時間であった。

 

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