「はぁ、はぁ、はぁ……?」
私の名前は結月ゆかり。何処にでも居る平凡な十八歳で、職業は美少女プロゲーマー(自称)。この度事故に遭いその天命を全うした為、天国でゆるゆると余生を過ごすハズだった。
「ここ、どこなんですかね」
周りを見ても木、木、木。どうやら私は今森の中に居るようだった。
「……
頬を抓ってみた所、私の身体はきちんと痛みを感じていた事から、どうやら走馬灯や夢の類ではないらしい。
まぁ走馬灯といっても、そもそも森なんて小学校の林間学校でしか来た事ないですし。特に何か思い入れがあった訳でも無いですしね。
改めて自身を確認してみたが、見覚えのある手足、スラッと伸びる腰周り、緩やかなカーブを描く胸元、それぞれの点から私の肉体である、という事だけは間違いなさそうだ。
足元が見やすいって便利ですからね。邪魔になりませんし。うん。機能美ってやつです。……うん。
持ち物は特に持っておらず、唯一持っていたスマートフォンは画面が割れて、黒い画面の沈黙が続いていた。
スマホ……まぁ、しょうがないですかね。電波があるかも分かりませんし。それにしても、これは俗に言う異世界転生ってやつなんでしょうか。あ、この場合は転移になるのかな?あー、でも向こうの世界では死んでるだろうから微妙な所ですかねー。
アニメや漫画。俗に言うオタクコンテンツにはそこそこ理解のある私だ。この程度の事で慌てる様なやわな人間ではない。
「これから、どうするべきなんでしょうか」
私は今後の方針を決める為にも一度やるべき事とやらねばならない事をまとめてみることにした。
「その一、衣食住の確保ですかね。服は……あの時のままですね」
グルっと回って確認してみるが、いつも着ているウサミミの着いたパーカーと適当なTシャツ、膝上までのスカート。私が最後に着ていた服には、見たところ血や汚れ等は付着していなかった。
「うん、服はまぁクリア。食事と住まいですが……、近くの村とか探した方が良さそうですかね」
この森で目覚めてから数分。幸運なのか不幸なのかその間、獣の姿は勿論として鳥のさえずりさえも確認出来ずにいた。勿論狩猟の心得など一狩り行こうぜ!タイプのゲームでしか教わっていない為、食物の確保など出来るはずがない。狩猟も採取も出来ないのだから人里を探すのが一番効率的だろう。
「うーん。目印を付けながら適当に進むとしましょうか。ここに居たって何も始まりませんし」
握り拳の半分程度の大きさの石を見繕い、木々に傷をつけながら歩を進めていく。
「その二、元の世界への帰還、ですかね。向こうの私がどうなっているのかは分かりませんが、今の私がこうして生きているのなら、可能性はゼロじゃありません。例え向こう側に渡り、すぐに消える生命だとしても、あの子にまた会いたいですからね」
紲星あかり。私の従姉妹でいつも私のことを慕ってくれている良い後輩でもある彼女に、せめて最後のお別れくらいはしたいものだ。
「その三、二を達成するまでの間、もしくは二が叶わなかった時にはなりますが、なるべくこの世界を楽しむ、という事にしておきましょうかね」
正直、死んでしまった事自体が夢であって欲しいと心の片隅ではそう思っている。けれどそれは変えられない事実。今こうして立って、考えていられる時間も、後どれくらいもつか分からない。だからこそ、精一杯を生きるのだ。地球で生まれ、地球で死んだ私と同じ様に。
あくまでゆるーく、けれどやるからには目標を。どうせ目指すなら半端じゃなくて天辺を、ってね。
こうして、私の新たな生活が始まろうとしていた。