一人、窓枠に嵌められた硝子越しに外を見る。そこには私が知るよりも大きく輝く月が
とりあえず、一月の期間限定という形ではあるが、私は客人として無事村に迎え入れられた。
これからどうしたものですかね……。
一月の猶予が与えられているとはいえ、何もしないという訳にはいかない。この世界での一月は二十日間。曜日の感覚はあまり無く、五日毎に『関わる者の全てに感謝をする日』として学校や施設だけでなく、それぞれの職人達も身体を休める日が来るそうだ。
あの後、挨拶回りも兼ねて村の案内をして貰い、この村の規模や設備を確認して回ったが、どうやらゲームやアニメで言う所の、"始まりの村"程度の認識で問題なさそうだった。
はぁ⋯⋯。とりあえず今日はもう寝ましょう。
慣れない事の連続だったせいか、私自身が思うより疲弊していた様で、限界を感じた私はそこで思考を落とし、無気力のままベッドに身を投げた。
あぁ、目が覚めて、また傍にあかりちゃんが居てくれたら良いのに……。
そんな事を想いながら目を瞑ると、すぐに私の意識は暗闇へと溶けていった。
その日。私は不思議な夢を見た。
大きな鐘の音が鳴り響く。教会だろうか?大きな白い建物の前、そこに一人の女性の後ろ姿があった。腰まで届く銀色の髪を翻し、コチラを見た彼女は───。
「⋯⋯ん」
見慣れぬ天井。寝ぼけ眼を擦りながら、私は目を覚ました。ベッドから降り、凝った身体をグッと伸ばして解していく。
あの夢、何だか変な夢でした⋯⋯。
もう殆どが朧気になりつつある夢の記憶。
懐かしい様な、悲しい様な⋯⋯。
そんな事を考えていると、コンコンと部屋のドアがノックされたので、返事を返す。
「あ、もう起きてます?早いですねー。まだ六時過ぎですよ?ノックはしてみたものの、まだ寝ててもおかしく無いですもん!あ!おはようございますー!」
「⋯⋯おはようございます。『ササラ』さん」
朝っぱらからハイテンションなこの人はササラさん。
この世界におけるギルドとは、国が正式に発した情報を各地に伝達する為の機関で、各地のギルドに属して依頼を受ける事を生業とする人を冒険者と呼ぶそうだ。
「朝食はどうします?ウチで食べます?それとも向こうで食べますか?」
この宿屋は二階が宿泊施設となっていて、一階には食事が取れる場所と小さいながらもお風呂が備わっていた。ちなみに向こうとはギルドの事で、冒険者は基本的にはギルド内の宿泊施設と酒場を利用するらしい。この宿屋も泊まっているのは今は私だけだそうだ。
「あー、すいません。私、朝は食べないタイプなんです」
「あらま。わっかりましたー!それではそう伝えておきますね!あ、今日はギルドに来られるんですよね?」
「はい。マキさんに呼ばれているので」
「それではまた後ほど!私は少し用があるので、この辺で失礼しますね!」
それだけ言うとササラさんは勢い良く部屋を出ていった。
あの子を見ていると、昔のあかりちゃんを思い出しますね。
天真爛漫。そんな言葉が似合う、いつも元気な女の子。
──はっ!くよくよしてちゃダメですね。ギルドが開くのは八時でしたか。少しゆっくりしてからぼちぼち出ますかね。
一階に降りた私は、女将さんと少しだけ話をして宿屋を後にした。
「ん。おはよ、ゆかり」
「おはようございます、マキさん」
ギルドへと向かうと、建物の前でマキさんが待ってくれていた。
「どう?よく眠れた?」
「はい。女将さんもいい人で助かってます」
「うん。そりゃ良かった」
そう言って笑う所を見るに、この人も良い人なのだろう。
「それじゃあ、行こっか」
「あの、今日は何をするんです?」
「んー。まぁ先に言っとくとだな、ゆかり、冒険者にならない?」
「⋯⋯はい?」
これが、私が歩き始める一歩。
私の、運命を大きく変える。
その分岐点だった。
お久しぶりでございまそす。リアルがバタついたりゲームにハマったりとしていたらあっという間に月日が流れておりました......。それも少しずつ落ち着いて来たので、リハビリも兼ねて更新の方再開していきたいと思います