「準備、ですか」
「はい。冒険者として活動する為には色々と確認しておかなければならない事があるんです。まぁとりあえずは登録からですかね」
何か用事が出来たらしいマキさんは、どこかへ行ってしまったので、一人になった私は早速ササラさんの居るギルド
「それでは、これに手を当ててから、ぐぬぬ〜!って意識してみて下さい!」
「ぐ、ぐぬぬ⋯⋯?」
カウンターに置かれた水晶に手を当て、言われた通りに意識を集中させる。すると透明な水晶が徐々に淡い光を放ち始めた。
「うん。問題なく出来ましたね」
そう言い終わると同時に、水晶から放たれていた光から一枚のカードが現れ、ぽとりと机に落ちると同時に、光は霧散した。
「無事に作成出来ましたね。それがここ『ノハネ村』のギルドに所属する冒険者だという証明、所謂ギルドカードです」
「おぉー」
「そしてこれは、ゆかりさんがこの村の住人だと、ギルドが正式に認めたという証明でもあるんです。改めてようこそ、ゆかりさんっ!」
「えっと、その、ありがとうございます」
考えもしていなかった突然の言葉に、顔が紅潮するのが分かった。
「ゆかりさんって、結構可愛い人なんですね」
ソロリと伏せていた顔を上げると、ニマニマしながら頬杖をつくササラさんと目が合った。
「なんと言うかこう、もっと変な人なんだと思ってました」
「え。そんな風に思われてたんですか」
「えぇ。それはそれは。昨夜の会議では一月と言わず明日にでも放り出してしまえ!なんて言う人も居ましたよ」
もしかして、私が冒険者としての道を選ばなければ明日にでも村の外での生活が始まっていたと言うことなのでは?
「まっ、そんな事にはさせませんでしたけどね?私の管轄で好き勝手はさせませんから!」
「あ、ありがとうございます?」
管轄というのが何の事かは分からないが、とりあえず触れない方向で話を進めることにした。
「まっ、それはさて置き。次はゆかりさんのステータスを確認しましょうか。カード、お借りしますね」
「どうぞ」
ささらさんは私のカードに窓を使い、何かを見ているようだった。
──窓?
今何故そう思ったのか。自分自身が分からなかったが、その意味も使い方も、"まるで最初から知っていたかの様"に自然と理解していた。
「あれ?どうしました?」
「あ、いえ。少し考え事を」
「そうですか?まぁカードを見た所、過去のギルド登録もありませんし、初めての事ですもんね。色々考えますよねー」
「あ、あはは⋯⋯」
「ステータスは、おっ?知力と俊敏性は高め!でも筋力は並以下で──って何ですかコレ!幸運値ほぼ最高値ッ?!」
突然こちらを向いたササラさんに、顔をジッと見つめられ、私は流石にたじろいだ。
「え、えっと⋯?」
「はっ!いえ、すいません──~」
「⋯⋯今小声で、"冒険者より商人の方が向いてる"って言ったの、ちゃんと聞こえてますからね」
「えっ!あ、悪気は無いですよ?!純粋にそう思っただけです!そ、それより!」
誤魔化すように、大きくコホンと咳払いをしたササラさんは話を続けた。
「まず最初に"見習い"ってクラスに就いてもらう事になるんですけど、それを終えると正式な冒険者として扱われます。これらの詳しく説明は後で説明しますね。見習いを卒業して、駆け出し冒険者となった人には三つのクラスから一つを選んでもらうことになります。剣や槍、斧などを扱う『剣士』。ナイフや弓、投擲物等を使う『弓士』。そして最後に魔法を主力武器として扱う『魔法士』です。ゆかりさんのステータスだと、オススメなのは魔法士系統ですかね。魔法士の生命線とも言える知力は十六と悪くない数字ですし、足りない筋力と耐久値を差し引いても魔法士ならお釣りが来ますから」
「えっと、すいません。筋力とか幸運っていうのは分かるんですけど、知力とか耐久とかって関係があるんですか?」
「あー、それはですね」
ササラさんの説明によると、魔法を使う為の魔力の総量というのが知力の値に比例し、更に知力の値が高ければ高い程、消費する魔力が軽減されるそうだ。耐久値というのは攻撃や衝撃への耐性の高さを示しており、ここが低いと攻撃を受けた時のダメージが増え、逆に高いと受けるダメージが減るらしい。
「と、まぁそんな感じで、ゆかりさんのステータスだと前衛よりは後衛向きのクラスの方が良い訳ですよ」
「なるほど」
「後はそうですね、俊敏値も高いので弓士と言うのも無くは無いんですけど、せっかくの知力が勿体ないですし、何より弓士はどちらかと言うと前衛寄りの戦い方が主流になると思うので」
「うむ」
「まぁ別に今すぐ決めずとも良いと思いますよ?どちらにせよ、すぐにどうこうって訳じゃありませんから」
「あぁ。さっきも言ってた見習いってやつですか」
「その通りです」
ササラさんは机の下から一枚の紙を取り出し、こちらに差し出した。
「えっとですね、冒険者見習いの方は、クラス
「この紙を渡せばいいんですね。分かりました」
「と、まぁ簡単な説明は以上となります。何か必要な物があればギルドに申請して頂ければ御用意しますので、お気軽にお越しくださいね!」
「はい。ありがとうございます」
こうして、私は冒険者の見習いとなった。まだ分からない事ばかりだが、今日も元気に生きていくのだ。
そう、心に誓って──。
■
"あの日"から、半年が経った。心にはポッカリ穴が空いたままだった。
「また、会えるんだよね⋯⋯?」
その問いに答えるものはそこには居らず、部屋には静寂だけが続いていた。
少女はベッドへと身を投げ出し、その呟きだけを残し、夢へと意識を堕としていく。
「───お姉ちゃん」