性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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ごんべえコソコソ噂話
実はマギレコ時空の神浜市に行けば独立出来る。


ごんべえ自身は母星の本体の更新時に端末が起こしたバグでしかなく、本来ならキュゥべえ同様本体との通信が不可能になれば活動停止になるが不死の呪いがそれを死と判断して発動。常に呪いが発動するため歯車型の魔法陣を背負い移動している。なんかかっけえ
多分めっちゃ戸惑いながらも小さいキュゥべえの面倒見てる。


魔法少女を名乗るには、無理がある

 あれは、何だろうか?

 猫に似ているし、兎のようにも見える。器用にプルタブを開け、抱えるほどの大きさの缶を傾け酒を飲んでいる。ていうか喋った?

 疲れて幻覚でも見てるのだろうか?

 

『そんなところで見てないでこっちに来いよ。お前の家で、お前の酒。まあ座れよ美国公秀』

 

 相手を家主と認めた上でものすごい上から目線で着席を促された。やっぱり人間の言葉を喋っている。幻覚? 夢?

 

『俺は幻覚じゃねえよ。証拠として、お前も知り得ぬ情報を教えてやる。見滝原中学で火災だ。ニュースもやってんじゃねえ?』

「…………………」

 

 その言葉にテレビを付けると、ニュースが流れる。夜の校舎を照らす、赤い炎が映っていた。

 

〘本日午後7時三十分頃、爆発音が聞こえ学校が燃えているという通報があり、現在消火活動が行われています。警察は事故と事件の両方の線で捜査を──〙

 

 頬を抓る。痛い、出来の良い夢というわけではなさそうだ。

 

「君は、何者かね?」

『ほお、ここまで冷静な対応する男は日本人だと信長以来だな』

 

 ユラユラと尾を揺らし丸い瞳が弧を描く。

 信長と言うのが歴史に名を残しているあの信長ならば、一体どれ程の時を生きているのか。やはり夢か?

 

『夢と思うなら夢でいいさ。どうせ現実になんの影響もありはしねえと、開き直って色々話してくれや』

「…………君は、何者だ」

『宇宙人』

「生憎だが、私はただの議員。地球も日本も渡せはしない」

『そうだろうねぇ』

 

 ククク、と喉を鳴らす自称宇宙人。随分と地球のエンターテイメントにも詳しいようだ。

 まあ、本気で地球を欲しいと思っているのなら、もっと昔からやっているだろう。

 

「では何をしに地球へ? 共存を求めているのなら、もっと昔から出来ていた筈だろう。実はしていたとしても、私にわざわざ会いに来る理由にはならない」

『そうか? お前は中々のやり手だ。地球にこっそり住むなら近づいて損はねえだろ。もっとも、人の目に映らねえ俺達からすりゃ不要な関係だがな。先輩方は時間の無駄を嫌うから、接触はない。てか昔接触しかけて国一つ歴史から消えたし』

 

 自分が知らぬだけで、実は既に国のトップなどと交友があり、しかしそれならたかだか一議員に接触する理由がわからないと観察するがケラケラと交流はないと断言された。

 

『俺達……つーか、考える頭のある奴が住処を離れる理由なんざ2つだろ。新しい住処を探すか、資源を求めるか、だ』

「住処なら、仮に信長というのがあの織田信長ならとっくに奪えていただろう。資源は……君達が求めるほどの物が、この星にあるのか? いや、星間航行も出来ない我々の技術が君達を理解できるとは思えないが」

 

 居住地を探しに来た、訳ではないだろう。かと言って、資源かと問われれば首を傾げる。人類がようやく辿り着けて月が精々。無人機で火星。空を飛べてから百年程で漸くそれだ。何百年も前から星の向こうから渡ってこられる技術力を持つ文明が居座るほどの物があるとは思えない。まあ人類がそれをエネルギー源として見ていないのかもしれないが。

 

『俺達が求めているエネルギーは感情エネルギー。俺の様な例外を除き、俺達の星では失われて久しい精神構造から発せられるエネルギーさ』

「…………感情エネルギーとは、またなんとも夢のある………」

 

 それが本当にエネルギーになるのなら、今のエネルギー資源の問題など直ぐにでも解決出来ることだろう。

 

『因みにエネルギー回収方法は魔法少女だ』

「……………は?」

『願いを叶えられるって時の人の思いは強いエネルギーを生む。それが一つ目の回収方法。願い叶える際のエネルギーとして回収しにくい本人の感情の根幹、魂とかと呼ばれるのに近い部分を切り離して、それが願いに沿った魔法を与える。効率がいいのは多感な第二次性徴期前の女』

 

 ユラユラと尾を揺らしながら部屋を彷徨くと折りたたみ式の将棋盤を見つけ机に置く。

 

「………保護者に許可でも求めてくるのかね、最近の魔法少女の妖精は。生憎私には娘は居ない」

『でも姪がいるだろ』

「………彼女はもうじき高校生だ。魔法少女を名乗るには、無理がある」

『本音は?』

「未だ父を失い悲しんでいる彼女に、願いを叶えるなどと甘言を弄して近寄るな」

 

 パチンパチンと駒が置かれる音が響き、公秀は宇宙人を睨みつける。

 

『でもあんたの姪、もう先輩と契約して魔法少女やってんだよなあ』

「……………何?」

『つまり無理がある事やってんだ。面白えな』

「……………彼女の願いは?」

『そこはほら、個人情報だから。どうせクーリングオフは効かねえし』

 

 ノータイムで駒を動かすごんべえと一手の時間が増えていく公秀。ごんべえの話に動揺しているのは確かだが、単純に強い。

 

「………それで、ならば私になんの用だ? まさか私にも魔法少女の才能があるとでも?」

『ぶっちゃけて言えば俺達は地球人類全てを魔法少女にする事はまあ可能だ。必要なのがエネルギーだから、回収に向いた精神構造をしてる奴にしか姿を見せねえようにはしてるが、今回の場合俺が姿を見せてるだけ。あんたが魔法少女になることはねえよ』

「それは何よりだ」

『俺の用件は新人魔法少女、美国織莉子の調査だ。先輩方、その辺適当だから』

「契約がなされた今、何を調べると言うんだね? …………いや」

 

 魔法、などという力を手にした多感な年頃の子供の存在が公になっていない。隠しているのだろう。ならば発散させる何かがある筈。

 

『ガキに自分の力を隠させる方法なんざ簡単だ。自分は世界を裏から守ってると思わせりゃ良い』

「それだけで隠せるのかね?」

『隠すさ。大多数が隠す事を決め、表に出ようとする奴を抑える。ていうか表に出ようとした結果が過去の魔女狩りだしな。関係ない奴もよく死んだ。人の為に願う奴等も殺された……』

「現代でもそんな野蛮な事が起こると?」

『起きてるだろ。お前の弟とか正に似たようなものだ。悪だから、自分は正義だから何をしても良いってな』

 

 正義を語りながら犯罪行為を犯し、しかも正義を掲げる癖にコソコソ行う者達がいる。人を追い詰め殺しても尚、逃げるななどとふざけた事を塀に刻んだり。

 

『まあ要するに魔法少女にもルールがある。俺達が守ってほしいルールは簡単に死なねえことだ』

「世界を裏から守る、か………一体何を用意した」

『人の負の感情から生まれる怪物。悪感情、主に絶望を核にしてるだけありまあ醜い姿をしてる。それを年端も行かねえガキが倒す快感なんぞ、大人な俺には分かりかねるがまあ楽しいだろ。テレビの登場人物になれた気になるんじゃね………このままだとあと5手で王手だぞ』

 

 ごんべえの発言からして、裏から守るための何かを用意しているのだろうと問えばあっさり肯定される。

 隠す気はない? いや、隠すだろうが問えば答えるのだろうか?

 

『隠す気はあるぞ。お前にゃなかなかきつい事実、魔法少女でもないのに知る必要はねえ』

「その魔法少女は私の姪なのだが」

『ああ、だから尋ねに来た。魔法少女のルールを破ってる可能性があるからな』

「ルール?」

『縄張り争いを超えた魔法少女同士の殺し合い。不必要に魔法少女が死ぬのは俺達も避けたい。つーのはまあ口実で、あんま契約したがらねえ俺が過去最高レベルの契約候補者の側に居るのを避けたいんだろ。とはいえ上からの命令。手早く済ませたいから容疑者の家族に少しでも情報をもらおうと思ってな』

「…………織莉子君が、魔法少女殺しの犯人だと!? そんな事………!」

『ないって言えんのか? お前、そこまであのガキと親しくねえだろ』

「……………ああ。むしろ、嫌われているのだろうな」

 

 掴みかからん勢いで立ち上がるもすぐに落ち着き座り直す公秀。

 

「だから、私は彼女の事をあまり知らない」

『だがその父親については知ってるだろ? 契約時期的に考えて人格形成に大きく影響を与えているはずだ。てか汚職があったとはいえ、取り巻きの掌返し、それを気にした様子のない態度……学校では上辺だけの付き合いしかしてないタイプだしなあれ。家族以外人格に影響与えるほど深く繋がってねえぞあれ』

「……………」

『ほう……その目、誰を思い出した』

「………必要な事かね?」

『疑いを晴らしたいならな』

「………父だ」

『ふ〜ん。あんたの弟が国政に関わってきたのは妻が死んでからだったな。あの性格と、俺達に目をつけられる精神的未熟さからして……あんたの弟、親が嫌いだったんだな』

 

 僅かな情報ですべてを見透かしたかのような視線を向けてくる宇宙人。

 

『逆にあんたの姪は自分の父が好きすぎたらしい。本当の姿を見ることなく理想を押し付ける娘と、本当の思いなど見もせず過去の幻影を恐れる父。お似合いの親子関係じゃあねえか』

 

 ユラユラ尾を揺らす。考え事をしている時の仕草だと思ったが、答えが出て人を嘲笑する時の癖だったのだろうか。

 

「お前に、あの親子の何が解る!」

『解るかよ、俺は当事者じゃねえもん。ただ何万年も見てりゃ推測は出来る………大方、父親は名に縛られたままだった訳だ』

「………下らん。名など、ただの飾りに過ぎなかったろうに、彼奴と来たら」

 

 と、何処か寂しそうに言う公秀。宇宙人はそれに対して目を細め無言で見つめる。

 

「名前の優劣なんぞ「赤と青はどちらが優れた色か」なんて言ってるのと変わらん。祖先の大成での家の歴史なんぞは成したそいつが偉いんだ。名や家が偉いという奴は頭が悪いんだろうよ」

『お前の親と弟は頭がよろしくないようだ。姪もな……』

「………いざ飾られる立場になれば、こんなものに縛られなければならないのかと嫌になる。あいつは、捨てれば良かったんだ。こんな下らぬもの……あの子も、いつか気付くだろう」

『どうかね。かなりのファザコンかつマザコンだ。理想を抱きすぎている。美国を嫌いながら、父親こそ本当の美国に相応しい優しく偉大な人だと思ってる内は、名に縛られたままだろうよ。しかし、なかなか面白い。歴史ある家の連中なんぞ名を大袈裟に語る馬鹿ばかりだと思っていたが………王手』

 

 と、宇宙人が王手をかける。奪えた駒は3つ。残った駒は王将合わせて5つ。圧倒的な敗北だ。

 

『中々有意義な話し相手になれそうだ。次会う時までに、将棋の腕を上げておけ。ああ、それとこれ酒代』

 

 宇宙人の背中が開き、ジャラジャラと小銭が出て来る。

 そのまま窓に駆け上がる。

 

『俺の名はごんべえ。残り40年もあるかないかの人生だろうが、たまに遊びに来てやるよ』

「織莉子くんの事を話す気はないと?」

『知った所で何もできねえなら、知らねえままの方が言い訳の仕様もある』

 

 スルリとガラスをすり抜け姿を消す宇宙人、ごんべえ。

 

 

 

 朝起きると空き缶も将棋盤も小銭もそのまま。やはり夢ではないらしい。因みにニュースによると見滝原の火災はガス爆発などではなく何者かが仕掛けた爆弾の可能性が高いようだ。




信長とごんべえの会話の一例

「おっほぉ〜。見るが良いごんべえ、坊主共が祈っておるわ。酒に、肉に、女に溺れ仏とやらの教えを忘れておいて、死を前に祈っておるわ」
『死を前に本性を晒す、なんざ言うが基本殺される場合だと何かに縋るのは人の性だ。何度も見てきた』
「そうかそうか! 教えを忘れ、布施を好き勝手我欲に使っておきながら、御仏に縋れば救われると思っとるのか! よぉしよしよし! ほらお前ら、殺せ殺せぃ! 奴等に信仰を思い出させてやろうではないか!」
『………お前が仮にも魔法少女に死を願われて置きながら中々死なねえ程因果が桁違いの理由がわかったぜ。歴史に名を残すどころか、大きな影響を与える。そりゃ、あの程度の因果じゃ何年経っても殺せねえわけだ』
「貴様の仕事の話は後にせよ。とと、邪魔だ生臭坊主……しかしおもしれえなあ………儂等を偉そうに神敵だのと糾弾しておきながら、神罰など一向に起こせずついには仏より儂に縋る者まで。ああ、おんもしれえ………やっぱ火責めは良いなあ。おいごんべえ、儂火ぃ使う妖術が欲しい!」
『お前絶対絶望しねえじゃん。子飼いの魔法少女達で我慢しな。妻もそうだろ』
「や、彼奴は少女って歳でもねえだろうよお」

本編後

  • マギレコでも魔法少女を誑かす
  • たるマギで家族3人でフランスを救う
  • たむらの旅につきあわされる

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