〘昨夜、見滝原中学で起きた火災の発火地点と思われる教室から見つかった──〙
朝のニュースを見ると自分の通っている学校が流れていた。
「まどか、暫く学校は休みだって。良かったら、タツヤと遊んでやってくれるかな」
「……あ、うん」
「まろか、ごおべ、やすみ〜?」
「うん。今日はタツヤともたっくさん遊べるよ〜」
「あーい!」
キャッキャと喜ぶ弟を見て笑顔になるまどか。
「ごんべえもタツヤと遊んでくれる?」
『悪いな、ちょっと用事がある』
タツヤが懐いているごんべえも誘うが、ごんべえは断りを入れるとするりと窓を通り抜けて何処かへ行ってしまった。
「うふふ。美味しい、ごんべえ?」
『ああ』
マミの家でマミの手作りケーキを食らうごんべえ。久方ぶりの帰宅にマミはニコニコ笑っている。
「それで? どうして私達の学校を爆破したのかしら?」
『ぷぎゅ!』
ケーキを食い終えたごんべえの頭を笑顔で鷲掴みにするマミ。プラプラと揺られるごんべえを睨むのはマミと……そしてほむら。
「私の部屋から、盗んでいたのね」
『まあな。別に問題ないだろ、どうせお前等学校で会う友達もいねえんだ。魔女探しの時間が増え……むきゅう』
マミは無言でごんべえを踏みつけた。そのままグリグリと足を動かしダメージを与える。ジタバタ暴れるごんべえだったが体格差により完全に押さえつけられていた。
「ごめんなさいね暁美さん。この子が勝手に暁美さんの爆弾を使って」
「……別に構わないわ」
ファサ、と髪をかきあげるほむら。
口ではそう言いつつも明らかに不機嫌だ。ただ、それを悟らせないようにしているのだろうか?
何故こんなにも嫌われているのだろう。マミは首を傾げる。
『マミは結構不安定なところが
「? そうね……ごんべえは初めての魔女退治の後教えてくれたけど、それが無いとたぶん知るのは大分先。寂しくて誰かを魔法少女に誘っちゃうだろうし、その子が魔女になった日には………う〜ん………私も魔女化かしら?」
『そいつは過小評価がすぎる。お前は間違いなく冷静に行動できるぜ』
「なら、魔法少女狩りかしらね? 厄介な固有魔法……弱体化とか他者の強化を持つ子から無効化して、混乱したベテランの前衛から殺すわね」
冷静になれても魔法少女を殺す道を選ぶらしい。ほむらはジッとマミを見つめマミの踵に背中を押されたままのごんべえはだろうな、と笑う。
『此奴はそれが解ってるのさ。だから、何時か自分とまどかを脅かすんじゃないかと警戒してる』
「? 暁美さん、私がまだ成りたてだった頃にあった事があったの?」
記憶を探っているのだろう。ウンウン唸るマミを、ほむらは気まずそうに目を逸らす。ごんべえはマミの足からなんとか這い出ると伸びをする。
『あった事はねえよ。ただ、良く似てる奴にあった事がある。それと重ねてんのさ』
「そうなの?」
『ああ、似てるが俺と出会ってる時点でお前はそうならねえのにな』
「あら、じゃあ私は運が良かったのね」
テーブルの上で後ろ足で頬をかくごんべえを抱えて撫でるマミ。撫で方もなれたもので、ごんべえは気持ちよさそうに目を細める。
「似てるなんてものじゃ……」
『似てるだけさ。だってそこに俺は居ないんだろ?』
「それ、は……」
ごんべえの言葉にほむらは黙る。ごんべえが片目を閉じほむらを見つめながら尾を揺らす。
「………ごんべえ、どうしたの? 貴方が怒ってるのは……暁美さんが私をきちんと見てない事かしら?」
『お前をじゃねえさ、俺達を、だ。ついでにお前だけじゃあない』
「ああ、美樹さんと鹿目さんね?」
「私が、まどかを……?」
マミとごんべえのやり取りに明らかに不機嫌になるほむら。ごんべえは取り合う気がないのかもう片方の目も閉じ、マミの手に体を擦り付ける。
『お前は最悪まどかが死んでもいいと思ってる。どうせ次があるからな』
「何言ってるのごんべえ、鹿目さんは一人だけよ?」
『そうだな。少なくとも…………』
と、不意にごんべえは時計を見る。
『そろそろ時間だ。俺はまどかのところに戻る』
「待ちなさい! 私は!」
マミの腕からするりと抜け出てベランダに移動するごんべえ。ほむらが立ち上がり何か叫ぼうとするが、ごんべえに見据えられ思わず足が止まる。
インキュベーター同様無機質な作り物のような瞳。なのに、侮蔑や憐れみを感じる瞳。
『………いや。そうだな………お前はまだ14のガキだった。どれだけ繰り返そうと……普通はそうなんだろう。だが、それはそれ、これはこれ。お前がどれだけの地獄を見てこようと、俺にはなんの関係もない。何せ俺は性格が悪いもんでね』
「何も……何も知らないくせに。そもそも、貴方の……貴方達のせいで………!」
『ああ、そうだな。俺達のせいでもあるんだろう……だが奇跡を願ったのはお前達。なあほむら……お前の願い、友達を助けられる私になりたいとかなんだろうが』
見透かしたかのように言い当てられて、後ずさるほむら。ごんべえは視線を外に向け直す。
『俺はお前の救おうとした友達にあった事がない。お前は、また会えたのか?』
それだけ言い残すとベランダから飛び降りる。ほむらは黙ってごんべえのいた場所を睨みつける。
「暁美さん、気にしないで? ごんべえが虐めてくるのは、自分で気づいてほしいことがある時か、よっぽど嫌いな相手だった時だけだから。私から見て、暁美さんは少し嫌われてるけど憐憫のほうが大きいわ」
「………何故私が嫌われなきゃならないの。何時だって、酷いことをするのは彼奴等なのに」
「ええ、ごんべえも解ってる。だから、何かされても何もしないの」
「ごおべ、ごおべ! はじまったう!」
『あ〜はいはい』
タツヤは戻ってきたごんべえの耳の毛を引っ張りテレビの前に立つ。子供向け番組「あかあさんはいっしょ?」の体操のお兄さんが真ん中に映り、周りに子供達。
陽気な音楽が流れ始めごんべえはミナミコアリクイの威嚇のポーズを取る。そして、タツヤと一緒に踊りだした。
「やー!」
『……』
踊りきりご満悦なタツヤと少しドヤっているごんべえにパチパチ拍手を送るまどか。タツヤは益々笑いごんべえはソファーの上に飛び乗るとチャンネルを変えた。
「ごんべえ、ありがとねタツヤの面倒見てくれて」
『ガキの扱いにはなれてる。タルトとか、中身ガキのままだったしな。リズも意外と甘やかすし……仮にも世界救わせようとしてるってのに…』
はぁ、とため息を吐くごんべえ。なんか、子育ての方針で意見の合わない親の話を聞いてるみたい。と、その時
『…………は?』
ごんべえが急に立ち上がる。
「ど、どうしたの?」
『………さやかが魔法少女になった』
インク(ごんべえ)とリズとタルトの会話
『だぁから! 何が障害は全て私が排除するだって言ってんだ! 毎度毎度タルトの成長の邪魔しやがって!』
「タルトの魔法は魔力消費が激しい。不用意な戦闘は避けるべきよ」
『それで肝心な時に戦い方がわかりませんってか?
グリーフシードなら知り合いの魔法少女達から渡されてるんだ。魔力消費を気にせず、まずは戦闘経験をだな……』
「戦いが長引く相手だったら、あの子を危険に晒すだけよ」
「あ、あの……リズ、天使様? その、一度落ち着いて」
『お前は黙ってろ! だいたい、リズは甘やかしがすぎる!』
「インクが厳しすぎるんだ。この子はまだ子供なんだぞ!?」
『お前の一つ下だろうが。このご時世、子供だから手加減してくださいなんて通ると思うなよ。第一、選んだのはタルトだ。巻き込んだのは俺達だ』
「それは………」
「あ、あの!」
「『!?』」
『み、耳が……なんだ?』
「皆で寝ましょう!」
「『……は?』」
「難しい話は後にして、一緒に寝ましょう。朝になったらまた続きを話しましょう。もう夜ですもの」
「…………解った」
『………アホらしい』
インク(ごんべえ)とリズの会話
「……寝た?」
『寝たな』
「……ほんと、この子のやる事は読めない」
『願いも訳わからんしな。妹を失って、村が滅ぼされかけて、何で願うのが国の為だ。妹の復活も、村の安全も願わず。そのくせ、世界を知らぬかと思えば行く先々も、その先も見据えてる。気味が悪ぃ』
「…………貴方は、自分の為に祈ってほしいものね」
『…………どちらにしろ破滅に繋がるなら、一時でも己の願望を叶えるべきだ。他人に尽くすのが幸せなんてのは、俺には理解できん』
「それはきっと、人間じゃ無ければ理解できないと思う。同種が嫌いな貴方には……でも、人間相手には貴方もタルトみたいな所があるのよ? この前も、迷子の子に寄り添ってお母さんを探してあげてたじゃない」
『見えるタイプだったんだよ。尻尾掴まれて離さなかったから仕方なくだ』
「フフ、そういう事にしてあげる」
「ムニャムニャ……リズ、天使様。お二人共、仲良くしてください……」
『寝言。夢の中でも喧嘩してるらしいな俺達は…』
「夢の中でも仲良くしてほしいのね、この子は」
『………しかし何度言っても俺を天使天使と』
「その方が都合もいいわ、自称悪魔さん」
『事実俺がやってるのは願いを対価にお前達を魔女を孕む肉に変える事だ』
「そうね、そして私はそれを知りながら貴方に契約者を探させ続けた。きっと私は地獄に落ちるのでしょう」
『お前達に地獄などあるものか』
「そう? 貴方も来てくれると思ったのに」
『俺も厳密には魂はねえ。本体との通信で起こるバグ。昔はそのバグごと移していたが、ここまで人類が発展したいま必要ねえしそもそも死なねえし』
「死んだら地獄よ、あなたも私も。それでいいじゃない」
『…………』
「そこに貴方が来るのなら、私はどんな地獄だって耐えられる」
『そうかい………』
(じ、実は起きてたって言い難い……!)
本編後
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マギレコでも魔法少女を誑かす
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たるマギで家族3人でフランスを救う
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たむらの旅につきあわされる