『この街で満足してりゃ良いものを、星に広げる? バカが。んなことしたら折角の俺の憩いの場が消えるじゃねえか』
『何だその顔? 地球全体包んで、俺達が何もしてこないと思ってんのか? はぁ、ガキだガキだと思っていたがここまでか。この街に調査ばかりで対処されねえのは街規模だからだ。確かにエネルギーを回収する仕組みを作ったのは褒めてやる。頭でも撫でてやろうか? だがな、効率が悪い。あのクソどもがそれを見逃すか』
『ああ? インキュベーターが対処できるわけないって? はぁ、あのよぉ、その力を与えてやったのは何処の誰だと思っていやがる。この世の理に干渉する願いや呪いならともかく、お前等がやってるのは魔法。わかるか? 感情エネルギーを扱うためのシステムを通って顕現した力。つまり俺たちが作ってやったプログラム』
『ましてや寿命が永遠になった程度のガキが、宇宙すべてを知る? 地球を原稿? 宇宙規模のアート? 寝言は寝てから言え。寝て言うにも世間を知らねえ。お前等如き、ちょっと平均スペックを上回った程度の原始生命の魂が百や千ならともかく万年に耐えられるわけねえだろ』
『同様の理由でどの道魔法少女達は魔女にならずとも自殺するか、老衰するか、まぁた魔女とも魔法少女とも言えない何かが生まれて対抗できる魔法少女がいなくて星の文明を滅ぼしてハイ終わり。それが困るから、結局俺達の仕事が増えるんだ』
『宇宙に認められる以前の問題だ。夏休みの自由研究のほうがまぁだ有意義なんだよ、おこちゃま共』
ドッペルは魔女化程のエネルギーがない。自分達を天才と思ってても所詮地球規模。ぶっちゃけインキュベーターがその気になったらあっさり無為になりそう。観測さえできれば宇宙の法則操れると豪語しましたし、星の外からやればいいだけだろうし。一応エネルギーは回収出来てるみたいだしたまに様子見る程度でいっかって。
神の力に干渉できるなら魔法少女の力なんてねえ。
やっぱインキュベーターを出し抜くにはある感情が必要なんですよ。
そう、愛が!
次に貴方は何故そこで愛!?と言う
ケケケ、と嘲笑するように喉を鳴らす。
否、間違いなく嘲笑している。自分の知るキュゥべえとはまるで違う。個体差?
いいや、恐らく違う。
「………貴方が、ごんべえ」
『自己紹介は不要みたいだな。その通り』
親しげな口調のキュゥべえとはまるで違う。見下し嘲笑う者独特の雰囲気。そう、まるで
『誰想像してるか解りやすいが、本当に馬鹿なガキだ。自分の人を見る目が絶対だと思ってやがる』
ケケっと嘲笑うごんべえ。存在を知らなかったのか優木は困惑し、リナ達も動揺していた。しかし彼女達は知っていたのだろう。知り合いが別人のふりをしていた程度の驚きだ。
『それとリナ、取り敢えずジェムの穢れとっとけ……もきゅ、きゅぺ!』
ごんべえは口からグリーフシードを取り出しリナに投げつける。リナが魔力を回復したのを見て優木はますます不利になったと忌々しげな顔をする。
3対3に見えるが京はどこまで信用していいかわからないし、自分は操る魔女がいなければ雑魚。
織莉子は何やら世界を救うとかアタマとち狂ったこと言い出したし。いや、ごんべえとの会話を見る限り実際にこの星を犠牲にしてもいいと思っていて、織莉子は予知でその犠牲になった時を知ったのだろうが。
「………ごんべえ、貴方には色々と聞きたいことがあります」
リナも同様の考えに至ったのかごんべえを睨み、しかし直ぐに織莉子達を見据える。
「ですが今は、目の前の敵に」
『こういう部分だけならいいんだよなあ』
「? どういう意味ですか?」
『こっちの話』
と、ごんべえはリナから視線をそらし自分を睨む織莉子に視線を戻す。
「どういう意味かしら、お父様の愛した世界が、もう無い?」
『俺とお前の認識する世界に相違があるように、お前の親父さんとお前の見ている「世界」は別なのさ。お前の親父さんが死んだ時点で、お前の親父の「世界」は終わった。既にないものをどう救う』
「私とお父様の見ている「世界」が、違う?」
その発言に、織莉子はいっそ憎々しげにごんべえを睨みつけた。視線で人が殺せそうだ。
「私は、誰よりもお父様の側で……!」
『でも汚職したじゃん、お前の親父』
「っ!!」
ごんべえの嘲笑混じりの言葉に思わず固まる。
『誰よりも見てきたんだろ。じゃあなんで汚職したことを知らなかった?』
「そ、れは……」
『ま、仕方ねえさ。お前の親父、汚職してねえもん』
「………え?」
『ハハァ。なんだよ、お前尊敬してる父親のこと信じてなかったのかぁ? なのにお父様の〜って、そっちのガキより道化の才能あるぜ!』
ゲラゲラと笑い声が響く。人を何処までも見下し嘲る、上から目線の上位者の嘲り。織莉子は震える口で、ごんべえに問いかける。
「ど、どういう………事なの………じゃあ何で、お父様は!」
『世間なんざ誰かが悪と言われたのを見りゃ正義の味方になるために騒ぎ立てる。そして、正義の味方に間違いは許されない。大して調べもせず、騒ぎすぎた民衆を裁く次の正義の味方が現れるまでずーっとそいつ等のターン。お前の親父は「世界」に見捨てられたのさ』
「……………それ……でも、お父様は……世界を良く、しようと……」
『なんのために? 世界のために? 違うな。違うとも……そんな才能も気概もない。一体何に急かされ分不相応な地位を求めたのか』
織莉子を見る目。嘲りと憐れみを含んだその赤い瞳に、思わず後ずさる。
『ぎゅむ!』
「……美国………あんた自身、世界を救いたい理由あるの?」
「小巻さん?」
と、不意に小巻がごんべえを踏みつけ黙らせ織莉子を見据える。
「あんたが守りたい「世界」には誰がいんのよ。母親はとっくに死んで、父親も自殺して、手のひら返して死ねばいいだの死にたくならないのとか笑う取り巻き達。「世界」を救ったあと、あんたの周りに何が残るってのよ。「ごめんなさい美国さん、私達が間違ってました」って、あいつ等が言うと思ってんの?」
「私の救世はそんな事の為にするわけじゃない……」
「じゃあ何のためよ? 世界を守って、あんた何がしたいの?」
世界を守るなど手段だろう、とでも言うように、さっさと答えろと言わんばかりに織莉子を睨む小巻。なかなか答えぬ織莉子への苛立ちが足元のごんべえに襲いかかる。
「世界を守る、それこそが私の成すべきことよ。より多くの命を救うために」
「それさっき此奴に否定されてたでしょうが!」
『むぎゅう!』
身を乗り出し踏まれたごんべえが悲鳴を上げる。それを気にせず小巻は織莉子に叫ぶ。
「私達が世界全てなんて認識できるわけ無いでしょうが。出来んなら世界から寿命以外の死がなくなるように願え! 紛争地帯にでも行って戦争止めてこい!」
ごんべえはとうとううめき声すら挙げなくなった。
「身近で起こる命の危機にしか手を出せないくせに偉そうに救世主語んなこのバカ!」
「違う! 私の成すことは、この星の全ての命を救うこと! あの魔女を誕生させないために……!」
「そのために、魔法少女にすらなってないただの女の子を殺すの?」
「………貴方………知って? なら、どうしてそいつ等と!」
小巻の言葉に信じられないと目を見開き小巻の足元でピクピク痙攣しているごんべえを見て叫ぶ織莉子。小巻はごんべえを蹴り飛ばした。
『内臓口から飛びでるかと思った』
「だ、大丈夫か………?」
麻衣も流石に同情した。
「こいつは口は悪いけど………性格も捻くれてるけど、良い奴よ。こいつがこの星の敵だろうが、宇宙の敵じゃないように、私にとって敵じゃない」
『……………』
「そして、あんたが殺そうとしてる子もコイツよりも口も性格もいい子よ。間違ったって殺されていい存在じゃない」
「それで、貴方の両親が……妹が、お友達が殺されたらどうするのかしら?」
「そうなる前に殺すわ」
「なら──!」
「でもそれは、まだ先の話。来るかも解らない未来の話………」
その未来を見たのだ。その未来を変えるために、自分は戦っている。なのに、と苛立った視線を向けるが、小巻が織莉子に向ける目は酷く冷めていた。
「………未来を見る、か。なんとなく想像できたわ。あんたの願い「自分の生まれた意味を知りたい」とか、そんなところでしょ」
「………!」
「よく聞きなさい美国。アンタの生まれた意味………」
「っ……貴方が、答えを出すと言うの?」
「ないわよ、そんなの………」
「…………へ?」
「人間に「生まれた意味」も「生きる価値」も存在しないわよ」
「………………へ?」
『ほお………』
小巻の暴論に誰もが固まり、ごんべえだけが感心したように小巻を見つめる。
「貴方、何を言って……」
「当たり前でしょうが、人間なにかさせるために子供生むの? 私達、お腹の中で何をしようとか決めてから出てくるの? んなわけないじゃない。人間皆、意味なく生まれて無価値に生きて………それを認めるのが嫌だから、何かをするために生きるのよ。あるのは「生きる意味」。その後に「生まれた価値」を決めさせればいい」
そう言って、ポールアックスを構える。
「そしてそれがぶつかり合うから争いが生まれる。あんたが己が悪であると自覚してるってことを言い訳に正義ぶりたいなら、私は世界の危機を自己満足で見逃す悪よ。進みたいなら武器を構えなさい、戦う気がないなら大言を吐くな。今ここに居るのはお互いの悪を正義と偽りぶつかり合う、馬鹿な人間だけよ」
そんな小巻を睨み、織莉子は目を伏せ息を吐くと絞り出すように声を出した。
「……正義を騙る気なんて私にはない……」
「じゃあ世界を救うためじゃなくて、私が平穏に生きるためって言いなさいよ」
「………小巻さん、あなたとは友達になれると思ってたわ。でも、違ったみたい。私、あなたのことがすごく嫌いよ」
「奇遇ね。私も、あんたの自分は特別なんですって目がずっとムカついてたの」
織莉子が水晶から光線を放つと同時に小巻が駆け出す。それが硬直していた戦況の再開の狼煙となった。
『良いなアイツ。この時代にも生まれるもんなんだな、ああいうどっか外れてる奴。時代が時代ならもっと面白い存在になったろうに……』
ごんべえは小巻を見据え、面白そうに笑った。
「うひぃ!」
開戦したは良いが優木は逃げ回るしかできない。結界を維持させている魔女はリナ達相手ではすぐにやられるだろう。
「逃げ足だけは一人前ですね。ゲロ吐かせて殺すのでは?」
「ちい、うざってえんですよ!」
無駄とわかりながらも洗脳魔法を放つ。この距離では、一瞬動きを止めるしか出来ない。ソウルジェムの濁りは、まだ少ない。
織莉子の方を見れば小巻に一進一退の闘いを繰り広げ、京は速攻で麻衣にやられていた。使えねえ。
キリカも死ぬし、どいつもこいつも使えない!
『……………』
と、我関せずと後ろ足で頬をかいているごんべえを見る。方法は不明だが、少女を利用して地球を滅ぼす手段を持っているらしい。京当たりを使えば時間稼ぎぐらいになる何かを生み出せるか?
と、ごんべえに杖を向けようとしたその時だった
「なんだ、予定とは随分違う事になってるね」
とん、と軽やかに降り立つ影。黒い衣装。手が隠れるほど長い袖。顔の半分も隠す眼帯。
「キリカさん!」
「魔法少女殺し!? 何故お前が……!」
麻衣がありえないと驚く中、キリカは周囲を見回す。
「良かった、キリカさん手伝ってください!」
「っ!」
その言葉にリナがキリカに向き直り、その隙にごんべえを操ろうとして……
「何をしてんの、お前」
「へ?」
眼前に迫るキリカ。困惑は衝撃により文字通り吹き飛ばされる。
「げほ! ごほ! ………え、キリカさ………?」
優木を蹴り飛ばしたのはキリカだ。突然何を、と問いかける前にキリカの爪が迫り……
「…………は?」
「あれ……驚いたな。君、そういうことするタイプじゃ無いでしょ?」
織莉子の背中を切り裂く。キリカは意外そうな顔をした。
「大丈夫? 沙々さん……」
「な、なんで………なんで私を………」
優木も困惑する中、キリカは興味なさそうに二人揃って切り裂こうと腕を掲げ、優木は慌てて織莉子のソウルジェムから穢れを吸い取り魔女を孵化させる。
「おっと……!」
「京ぉ! 織莉子助けたいなら時間稼げ!」
「!!」
優木の言葉にハッとした京は複数の人形を魔法で生み出し数体放つ。人が人をかばう光景は、自分達の行いが正義であると思っている者ほど動揺する。リナと麻衣がその隙を突かれ人形と組み合い織莉子を曲がりなりにも知っている小巻は知るからこそ動揺し、固まる。
キリカが魔女を殺している間に、織莉子達の姿は消えていた。
「ありゃりゃ、逃げられちゃった」
それを特に気にした風もなく笑うキリカ。結界が揺らいでいく。魔女が離れたのだろう。
「……お前は………どういうつもりだ」
「………………」
キリカに刀とスタンバトンを向ける麻衣とリナに目をくれず、キリカは走り出し……
「ごんべえ〜! 生きてたんだね! 良かった〜!! 良かったよ〜!!」
ごんべえに抱きついた。
遅れたけどごんべえのバレンタイン
「ごんべえ、貴方に願えば……この店も、もっとお客さんが来てくれるの?」
『……………』
両親が死に、引き取られた祖母の経営する洋菓子店。そこに住んでいたお菓子の妖精(祖母談)であるごんべえに少女はそう尋ねる。
本人(本妖精?)曰く彼はお菓子の妖精ではなくどんな願いでも叶える代わりに少女を宇宙延命の薪にする宇宙人らしい。お願いすれば最後、魔女という存在を命がけで倒し続けなければ己も魔女となる宿命を背負う。代わりに、願いは叶う。
釣り合いは取れてるが、人類主観では割に合わないと嘆くばかりだと彼は言う。それでも………
『その願いはお前の全てを捧げるに足る願いか?』
「う、うん。お祖母ちゃんの店を、私の代で潰させないためなら………」
『そうか……』
と、ごんべえは少女の肩に乗り頬を肉球で叩き、目を閉じるように笑みを浮かべる。
『今直ぐ店を畳め、このゴミクズが』
店の繁盛を願えば、なるほど確かに客は来るだろう。味についても絶賛する。ただし、それはそう願った結果。
たとえ生ゴミを菓子と言って出しても絶賛する。
『誰もお前の菓子の味を見ない。お前はそれでいいのか?』
「そ、そんなのはやだよ。でも、でもこのままじゃお客さん取られちゃうし……お店の経営も」
『幸いあいつの遺産で暫くは持つ。食品衛生責任者、飲食店営業許可申請、菓子製造許可申請を取りゃ経営はできる………』
「じゃ、じゃあ今すぐそれを取れるようにねが……いったい!」
顔を近づけ鼻を引っかかれる少女。涙を流しごんべえを睨む。
『一先ず休業して食品衛生責任者の自力で資格を得ろ。あれこのへんでなら17歳からとれる』
「来年じゃん!」
『大丈夫。あれ結構簡単だから。お前が今必要なのは、料理技術だ』
「じゃ、じゃあごんべえの知ってる宇宙のすごいお菓子作りとか!」
『俺の故郷に菓子類はもちろん飲食物もねえよ』
「…………文明の父なのに?」
以前、そんな事を言っていた。猿から人の成り立て、猿人より少し進化した原人に石器の作り方、食べれる植物、動物、虫などを教え家の作り方も授けたと。
『美食に関しては人間が自分で発展させた文明だ。美味いものを食うために自分で毒の調和、毒の避け方を学んでった』
河豚を食ってる姿を見たときは『こいつらは何をやっているんだ』と思ったらしい。
『だが、俺は様々な菓子職人のもとにいたのは確かだ。お前の祖母もその一人。そのレシピは時に俺も共に考えたもの。一先ずそれを授けてやろう。お前が教わってた続きだが』
「あ、ありが……」
『対価は、俺が満足のいく新たなレシピを作ること』
「…………へ? あの、ごんべえって料理が存在した頃から色々味わってきたんだよね?」
『そうだな。フランス、中華、イタリア、和食、トルコ、既に失われた国の料理、民族料理、色々い味わってきた』
「………そのごんべえ様を、満足させるレシピ?」
出来るわけない。
『出来る出来ないは訊いていない。俺はただやれと言っている。美食はこの星の人間がゼロから生み出したこの星の文化だ。さあ、俺を満足させろ。出来ないなら店を畳め』
無表情のような顔で、その目には明確な意志に満ちている。何が何でもやれと、命じている。
「あ、悪魔………」
『懐かしい呼ばれ方だ。じゃ、授業を始めるぞ』
「ありがとうございました」
「いえいえ」
マミは初老の女性を駅まで案内し、例を言われるが大したことはいていないからと笑う。
「良ければこれ、貰ってくれるかしら」
「え? そんな、悪いですよ!」
「いいのよ。うちの店のだから……本当はこの街にいる昔の知り合いに渡すつもりだったんだけど、会えなくて。ちょっと多いからうちの人と分けてね」
「ですが………」
遠慮しようとしたが、お礼を断るのも失礼と思い結局受け取ることにした。
「ただいまごんべえ、今日は遅くなっちゃったから、今年のケーキは夜ご飯のデザートね」
『そうか………その箱は?』
「貰い物よ。ご飯の前だけど、一つだけなら食べていいわ」
と、箱を開けると一口サイズのチョコが。あの人は、昔の知り合いにバレンタインチョコを渡しに来ていたようだ。会えなくて残念だったろう。
『………………』
「ごんべえ?」
ひとくち食べたごんべえはしばし固まり、2つ目を取ろうとしたので箱を持上げる。
「駄目よごんべえ、残りはご飯の後。もう、そんなに美味しかったの?」
『懐かしい味だったんでな』
「昔、この店のお菓子食べたことあるの? ん、すごく美味しい」
『ああ、あの頃よりもずっとな……』
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