『っ………何だ、今の感覚』
電車の屋根に乗り神浜までやってきた白い生き物。
神浜市の境界線上を通った瞬間一瞬思考にノイズが走ったような気がしたが、直ぐに消えた。自身で検査してみるが異常はない。あるとすれば
『………………普段より小せえ』
背後で廻る2つ歯車ぐらい。本来ごんべえが傷付いた際に回復するため現れるそれが現れたままになっている。普段より大きさは小さく、歯車の凹凸も噛み合っていない。カチカチ小さな音が時折なる。
『常に死に続けてるってことね。この街はインキュベーターを拒絶してるらしい。ま、当たり前か』
問題はこの技術を使用している者。魔女化に比らべるまでもないが、エネルギー回収が行われている。
『
ふと、気付く。何時も何時も感じていた、見られている感覚がない。聞かれている感覚がない。
《………おい先輩》
反応は、ない。こちらからインキュベーターネットに繋ごうとしても、繋がらない。完全に、遮断されている。
『これが調査に送り込んだインキュベーターが機能停止する理由か…………つまり………つまり………』
プルプルと震えるごんべえ、そのまま駆け出した。
『自由だー! イヤッホー!』
それはそれはとても楽しそうに夜の街へと駆け抜ける。
『自由最高自由最高イエイイエイ! お前も自由最高と言え!』
「ふえ、え……えっと、自由……いっちゃった……今の、キュゥべえ…………だったよね?」
『………ふぅ』
一頻りはしゃいで落ち着いたごんべえ。背中が開き
インキュベーターの使う解析機だ。目に見えない現象、物理的に元素を動かすことのない感情エネルギーの変化すら観測可能。
『……ああ、やっぱり魔法か。そりゃこの星で俺達に干渉しうるものなんてそれぐらい。しかし穢の直接仕様とはなあ。猿どもにしちゃ、中々のシステム構築じゃねえか。頑張ったんだろうなあ、工夫したつもりなんだろうなあ、試行錯誤した時間はどれほどか。つっても、所詮は猿真似。記録にゃなかったが、大方願いは俺達の機能を欲しがったってとこか』
ユラリと尾を揺らし、目を細める。
『ま、図に乗らなきゃ俺達の猿真似で俺達を超えるなんて無理って解るか。俺は恩恵に与らせてもらうとするかね』
この街を出たらどうせまた通信が復活する。街一つぐらいなら見逃すだろう。エネルギー回収自体も出来ては居るし。
ただ報告したら件のシステム構築者に興味を持つだろう。対等に話し合える存在が現れたかもしれない、と。
『システム奪う時点で俺達のやり方に反発してるのは明白だってのにその辺の怒りを理解しねえんだよなあのバカ共。もしこのシステム作った奴が図に乗ってたら最終目標は星、最低でもこの国を覆うことだろうな………そうなるとエネルギーをどこから得るか、だが』
仮称疑似魔女システムだけでは、まあ足らないだろう。維持だけには足りるだろうがそのまま広げるとなるとかなりのエネルギー量を必要とする。この星で、このシステムを動かすエネルギーは感情エネルギー。そういえばここ最近魔女が姿を消し魔法少女達の間に神浜にいけば救われるという夢がとか聞いたような。
『なるほど蠱毒が。人間ってのは何時の時代も変わらねえ。やってること、俺等と変わらんだろうにこの犠牲には未来があるからとかほざくんだろうな』
『モキュ!』
『あん?』
不意に聞こえた声に振り返ると、真っ白な毛並みをした猫だが兎だか分からん生き物がいた。ごんべえに良く似てるが、二周りほど小さい。
『……幼体モデルのインキュベーター?』
『キュゥベエシスベシモキュー!』
『…………』
『キャウ!』
襲いかかってきた幼体モデルを前足ではたき落とし背中に爪を立て地面に押さえつける。
『モキュモキュ! キュウ、モキャーウ!』
『何だこいつ………
『モキュウ! モッキュッキュ!』
『黙れ、食っちまうぞ』
『モキュ!?』
ビクッと震えて大人しくなる幼体モデル。プルプル震え涙目になるそれを見て、ごんべえはふむ、と片前足を口元に当てる。
『よし後輩、特別にお前を俺のおも……遊び相手にしてやろう』
『モキュ!?』
『一先ず10年前まで住んでた和菓子屋の菓子を奢ってやろう。店主の坊主爺が変わって無けりゃの話だが』
幼体モデルの首筋をパク、と加え歩き出すごんべえ。先程見た鋭い牙、今暴れたら食い千切れかねないので幼体モデルは大人しく従った。
和菓子が美味しかったので懐いた。
ごんべえがみふゆに言いそうなこと
『俺達があくどいのは認めるが、そう非難するにはお前等も随分染まってるじゃねえか』
『未来? 希望? 私達は騙された被害者ですぅ? 笑わせやがる! 笑わせやがるなあみふゆぅ! 口寄せ神社はなんだ? フクロウの幸運水はぁ? 幸せを求めて、希望を求めて、縋った奴らに! お前等は何をしたよ!』
『他人の不幸はそっちのけ! 己の利益を優先する! 実に! 実に人間らしい。そのくせ他人にやられる被害者になると狡い酷いと喚き散らす。それも、出来もしねえことを出来ると勘違いしたガキに啓蒙してだからたちが悪い!』
『ようこそこちらへ、これでお前も
いろはに言いそうな事
『生憎と俺もお前の願い事、つまり妹に関しての記憶はねえな』
「ごんべえもやっぱり、ういなんて居ないと思う?」
『人の心ってのは、因果すら凌駕する。お前の妹へ想いが強けりゃそんなこともあるだろう』
「ういは、居るのかな……」
『まずはお前が信じてやんな。少なくとも、お前が信じてる限りは俺も信じてやるよ』
「ごんべえ……うん、ありがとう」
『モキュモキャッウ(そういうとこだぞ先輩)』
「あの……」
「スリスリ………」
「おい!」
「スリスリー」
「ちょっと!」
「ス〜リスリ♪」
リナ、麻衣、小巻がキリカに話しかけるもキリカはごんべえに頬ずりしてこれっぽっちも人と話を聞いていない。
『おいキリカ』
「なんだい、ごんべえ?」
痺れを切らしたようにごんべえが話しかけると漸く反応した。反応する相手があからさますぎる。
『こいつ等がお前に用があるとよ』
「…………何?」
ごんべえにはとても嬉しそうな顔をしていたのに用があるのがリナ達と解ると明らかに面倒くさそうな顔をする。
「……確認します。貴方は、魔法少女殺しで間違いありませんか?」
「ん? ああ、そういえば何人か殺したかも。それが?」
と、昨日食べた食事のメニューでも聞かれたかのように軽く返すキリカ。そんなことで私達の邪魔をするな、と目が訴えてきている。
「それが、だと? お前は私達の仲間を殺したんだぞ!」
「へ〜」
麻衣の言葉にどうでも良さそうに返しごんべえに再び頬ずりを始めるキリカ。ごんべえがひっかき硬直した一瞬に抜け出す。
「リナ、こいつは駄目だ。斬ろう」
「あん? やるの、お前。さっきの続きだ、今度は手加減なんてしな……」
『やめろキリカ』
「わかった、やめる」
刀を構える麻衣に爪を出し壁を削りながら腕に力を溜めるキリカ。ごんべえの言葉にあっさり戦闘態勢を解く。
『死人は生き返らねえが、俺が代わりに謝ろう』
「!? ごんべえは謝る必要ないよ! 全部私が悪いんだ、ごめんなさい!」
と、さっきまで微塵も反省していなかったキリカは直ぐに掌を返して謝罪する。自分の信念がない? いいや、自分という人間は徹頭徹尾ごんべえの為に存在する、というのが彼女の信念なのだろう。
「あんたこの子に何したのよ」
『願いに縋る魔法少女なんてなぁ大概心のどこかが弱い。縋るモノを求めて今回たまたま俺だっただけだ』
呆れる小巻にごんべえは慣れたものだ、と嘆息する。
キリカのあまりの掌の返しっぷりに困惑している麻衣達を見て、今なら大丈夫そうだと前に出る。
『一先ず、武器を下ろせ』
「…………麻衣」
「リナ、だが!」
「私達は一度、優木さんにも温情をかけました。それは意味をなしませんでしたが、彼女はこうして頭を下げ、武器を消した」
「……………」
納得が行っていないといった顔だが、麻衣は刀を鞘に収めると変身を解除した。
『場所を変えるぞ。情報を共有しておきたい』
「ええ………」
「…………多いわね」
8人と一匹の病室に、小巻が思わず呟く。確かになんか狭く感じる。
「ごんべえさんごんべえさん、魔法少女がこんなに集まることってあるんすか?」
『稀にある。あすなろだと七人チームがあったしな………チームにこそ所属してなかったがユウリっつー俺の契約相手もいたし…………』
「………なんかごんべえさんが固まりましたよ」
「ごんべえ、ユウリちゃんとは喧嘩別れしちゃったのよ」
マミがぶっ叩くと直ぐに正気に戻った。
『さてそれじゃあ情報交換と、キリカの今後について話そうぜ。つーか何で契約しやがった。いや、するなとは言わねえよ。人間の欲望なんて抑えの利くもんじゃねえ』
キリカはごんべえの言葉に叱られていると思ったのか不安そうにごんべえを見つめる。
「その、ごめんなさい………だって、ごんべえが鹿目まどかって子に付きっ切りなのはその子が凄い魔法少女になるからだって」
「え?」
と、思いがけぬ名指しにまどかが困惑し、ほむらが咄嗟に守るように前に移動する。
「ごんべえはすごい魔法少女を求めてるんでしょ? だから、私が誰よりも強い魔法少女になればって………」
『なるほど。俺の役に立ちたくて魔法少女になったと……誰かのために願うなって言ったろうが』
「ち、違うよ! これは、私のため! 私が凄い魔法少女になれば、巴マミみたいに一緒にいてくれるんじゃないかって………」
その言葉にマミが目を細める。
「そう、そうだ。私のほうがごんべえを愛してる! 無限に尽くせる! お前には負けない、巴マミ!」
『そいつは暁美ほむらだ』
「巴マミは私」
「私のほうがごんべえを愛してる! 無限に尽くせる! お前には負けない、巴マミ!」
『やりなおした』
「ごんべえは私とずっと一緒にいるんだ!」
「ごんべえは、誰とも永遠に一緒にならないわ。どうせ、何時か私のところからも去るもの」
「魔法少女は永遠を生きれる。去るなら追えばいい。その程度の愛なら、最初から私の敵じゃなかったね」
「殺すわ」
「ちょ!? おお、落ち着いてマミさん!」
「えっと、呉先輩も落ち着いてください!」
一瞬で変身しマスケット銃を構えるマミ。即座に爪を構えるキリカ。
さやかとまどかが慌てて抑える。
「愛されてるっすねごんべえさん」
『キリカはともかくマミは状況がな。それで安定するならいいが……菓子も美味いし』
晶の言葉に疲れたように返すごんべえ。
『これでも昔に比べりゃマシだ。とりあえず落ち着け二人共、ここ病院だぞ』
「うんわかった!」
「………はぁ」
キリカは即座に変身を解き、マミも仕方ないといったように変身を解除した。
「それで、キリカさん。貴方は何故魔法少女を襲っていたのですか?」
「さあ? 世界を救うのに必要だからって言われて………理由は、なんだろうね」
『俺達の目の撹乱だろ。千歳ゆまっつー魔法少女候補も見つけてたし』
「でもキュゥべえはあっちこっちに居るわよ?」
『それを知らねえんだろ』
マミの疑問にごんべえは馬鹿にするようにクック、と喉を鳴らした。
「そのことについてなのですが、我々にも教えてもらえますか? 貴方が世界を滅ぼそうとしている………いえ、会話からしてこの星を犠牲にしかねない何かをやっているということですが、何をしているのです?」
『……………きゅぺ!』
と、ごんべえはグリーフシードを出し狐模様を見て間違えた、と飲み込みまた別のグリーフシードを出す。
『それをソウルジェムに当てていろ』
「……?」
リナは首を傾げながらもソウルジェムにグリーフシードを当てた。
『美国織莉子の目的はまどかから俺たちの目を逸らすこと。その間に、まあ殺す気なんだろうな』
「なっ……」
「……え?」
ほむらが目を見開きまどかが身を震わせる。ごんべえは気にせず何故、と瞳で訴えてくるリナに続ける。
『まどかは最強の魔法少女になる。それはつまり、最強の魔女になると同義なんだよ。お前達の魂そのものであるソウルジェムが濁った時、お前等は魔女になるからな』
「………………は?」
「なっ!?」
『以前麻衣には言ったな。地球で魔女を生み出したのはオレたちだと……あれはつまりこういうこと』
「なんの、ために………」
『織莉子にも言ってたろ? 4億87万1208種、個体数にして23
「え、あ…………え?」
『ようするに70億の人類犠牲にしてもお釣りが来る数の命を救うため、だ』
文字通り桁違いの数字に思考が停止するリナに、ごんべえが簡潔に纏めてくれる。
「そのために、私達に犠牲になれと? そう言うのですか!」
『そうなるな』
「この、良くもいけしゃあしゃあと!」
と、麻衣が刀を生み出すがマミの銃口とキリカの爪の先端が眼前に添えられる。
「っ! お前等は、今の話を聞いてなんとも思わないのか!」
「私知ってて契約したし」
「私は初めての魔女退治の後に教えてもらったわ」
「あ〜、あたしは契約前に」
「契約してませんけど、私も……」
『小巻は少ないヒントからほぼ気付いたぞ』
「少なくても質は高いでしょ」
「魔法少女の才能なくて、ごんべえさんに姿見せてもらってるだけだけど知ってます」
邪魔をするマミとキリカに吼える麻衣だったが、この場の全員がごんべえの語る魔法少女の真実を知っていると聞き、動揺する。それを知りながらもごんべえと居ることも、知りながら契約した事実も、理解できなかった。
「そもそもキュゥべえは事前説明しないけどさ、死に方を決められた程度で怒るの私は理解できないよ」
と、キリカが肩をすくめると馬鹿にするように麻衣達を見据える。
「奇跡を願ったんだろう? 叶えられぬ奇跡を。自分で現状を変えられないから、或いは変えた責任を負いたくないから。人の身で得られぬ未来を願っておきながら、未来を奪われるのが理不尽なんて、それこそ理不尽だ。対価なくどんなお願いも聞いてほしいなら奴隷でも作るんだね」
『ま、そこに関しちゃ俺も同意だ。つーか俺が教えたしな、それ。でも、お前等は割に合わないと思うんだろ? 主観だろうと本人には事実だ、そう思ううちは契約なんざするな、が俺の方針だが先輩方は「願いがあるのかい? なら、叶えるべきだ」が方針だからな』
と、キュゥべえの口調を真似、拗ねたように丸くなるとまどかが背中を撫でる。
「それよりそっち、大丈夫?」
「なに……?」
と、キリカの言葉に振り返ればリナが顔を青くして震えていた。
「宇宙を守るため? でも、でもそうすると私、達が………魔女に? じゃあ、今まで殺してきた魔女は………私は、かつての同族を……そんな、そんな………!」
「っ! リナ、ソウルジェムが!」
濁っていくソウルジェムに慌ててグリーフシードを当てさせる。
「落ち着けリナ! ソウルジェムが、なんで!?」
『精神が負の感情に染まっても染まるからなそれ。理屈の上ではその逆も可能だが、まあそういうふうに調整はされてねえ』
と、ごんべえがリナのそばに移動しソウルジェムに触れる。
「か、ぅ……!?」
ビクンッと身を震わせるリナ。己の体を抱きしめるように蹲る。
「? は、あ………?」
焦点の定まらぬ瞳で自分のソウルジェムに触れているごんべえを見る。
『全身を麻痺させて背中と服の隙間に氷柱を入れた時の感覚を再現した。落ち着いたかリナ……』
「は、い………」
ごんべえがソウルジェムから前足を離すとリナがゆっくり起き上がりソウルジェムを受け取る。
「貴方は……貴方達は、途方も無い数の命を背負っているのですね」
『まあそうなるな』
「だとしても……だとしても、私達が魔女になるなんて……それを避けるには、嘗て魔法少女であった魔女を殺し続けなくてはならないのでしょう?」
『あれは言っちまえば燃えカスだ。本人の残滓なんてもんは殆どねえ。あるのも絶望の部分だけ……殺してやるほうが、そいつのためだ。まあ中には自分から魔女になって「全部無茶苦茶にしてやる!」って奴がいるが、それはむしろ殺したほうがいい』
その言葉に、しかし麻衣もリナも何も返さない。
『……ま、魔女になりたくない、さりとて魔女を狩りたくないってんなら自殺でもしな』
「他人事のように言うな」
『事実他人事だ。代わることも、変えることも出来ない、むしろそうした側に親身に寄り添ってほしいのか? 変わってるな』
「……………」
『それにリナ、お前は既に一人殺してるだろ』
「何を……」
『人の記憶から忘れられるってのは、二度目の死だと言う奴がいてな……』
「っ……わた、わたし………は……」
ごんべえの言葉に顔が青くなるリナ。余計なことを言うなとマミがごんべえの尻尾を掴みキリカが取り返そうと引っ張る。
『まああれに関しちゃお前の母親がお前の姉の覚悟を無駄にしてると思うがな。お前が悪いわけじゃない』
その言葉にリナは顔を上げごんべえを見つめる。
「そう、言ってくれるのですか………」
『だからって正しくあることに拘りすぎてるのは滑稽だがな……』
「もうごんべえ、余計なこと言わないの」
「ごんべえを放せよ〜!」
「マ、マミさん! 呉先輩! 伸びちゃう、ごんべえが伸びちゃう!」
「これはあれだね、先に放したほうが本物の愛を持ってるってやつ」
さやかの発言にパッと同時に放すキリカとマミ。まどかが慌てて受け止める。
「それより、織莉子の対処よ。呉キリカ、織莉子は次は何をするつもりなの」
「さあ? 見つかっちゃったしね、作戦を変えるんじゃない? まあ今頃風見野市で優木沙々のグリーフシードでも回収してるんじゃない?」
『だとよ、どうする? 今の精神状態でまともに戦えるとは思えねえけど』
ごんべえの言葉に麻衣もリナも反論できなかった。
「私達は何れ魔女になる。だというのに、同じ魔法少女だった魔女を殺して生き延びて、それが正しいのですか?」
『知るかよ。お前等人類が掲げる正義が過去どんだけすり替わったと思ってやがる。幸福と不幸が釣り合わないと思うのが主観なら、正義も悪も主観でしかない。くだらない正義を信じて翳して、死ぬ時に間違ってたか合ってたか決めりゃいい』
「ですが、それも主観ですよね?」
『お前は誰が何を考えてるのか解るのか? 解らねえだろ? 猿の時代からさして変わらねえ。主観を貫き通せばお前にとって満足はできるだろうよ』
ある意味では自己責任だというその言葉に、リナは微笑みを浮かべる。
「そう、ですね。間違いたくない、責められたくない……それが始まりだとしても、正しい行いを守ることと決めたのは、私の主観です。ありがとうございました………私達は一度風見野に戻ろうと思います」
「私も行くわ、まどかが狙われているのなら放っておけないもの」
「あたしは………行っても足手まといだよね」
「そうね」
ファサ、と髪をかきあげながら言うほむらに、しかし反論出来ず黙り込むさやか。
「一先ず、みんな家に帰りましょう。暁美さん、鹿目さんとごんべえを送ってくれる?」
「待ってよ! なんで鹿目まどかとごんべえがセットの扱いなんだ!」
『キリカ、お前は織莉子が襲撃してきそうな場所を調べてくれ』
「いってきます!」
と、キリカは窓から外に飛び出した。
「………ねえごんべえ」
『ん?』
「なんであのバカ、あの女庇ったの? そりゃ黒カマキリが裏切ったなら戦力は希少だろうけど、多分本当の目的はあの女も人見達も仲良く皆殺しにしてグリーフシードを独占でしょう?」
『優木沙々の願いは『自分より優れたものを従わせる』だからなあ……他者と比べられ、何時しか自分でも自分を下と見て………そんな奴が、一見命がけで助けられた』
優木沙々はもう美国織莉子を疑わない。信じて尽くす。グリーフシードも躊躇いなく渡すだろう。
「………あのバカ。そこまでして、どうせ守りたい人なんていないのに。ああもう! バカバカ! 美国のバーカ!」
『しかしウワサ……ウワサかぁ……なんか前にも見たような』
『モキュ?』
「昔もこんなことを考えてた人が居たの?」
いろはがキュゥべえを撫でながらウワサファイル(ネーミングださ、と言ったごんべえは串刺しになった)を読むごんべえに尋ねる。
『今本体と繋がってねえから検索できねえんだよなあ……確かアレは……あ、思い出した。考えて実行してたの俺だ』
「何やってるのよ貴方………」
ウワサの危険性を知るやちよは過去に似たようなことをしていたというごんべえに呆れたような視線を向けた。
『魔法少女使ってでっけえ塔作ってな。同じように魔法少女たちに協力させてテレパシーの応用で国籍問わず意思疎通可能にして、そいつらに『塔の上には〜』ってウワサを広めた。微量なれど感情エネルギーの集合体。この世の理を書き換えるのに使えねえかと思ったんだが』
その説明にやちよはん? と首を傾げた。何か聞いた覚えのある。ウワサ? いや、それとは別の。
「ごんべえは塔の上に何を作ろうとしたの?」
『モキュゥ?』
『神』
『キュ?』
「………へ?」
「………………はい?」
何でもないことのように言われたそのあまりの単語にその場の全員が目を丸くする。
『まあ言葉を伝え合うことが出来たくせに互いに互いが憎み合い、死ね死ね願って、そのくせ魔法少女が怖くて神に自分の代わりにこいつ等に罰を、と祈って願いが重なり全てを殺す最悪の……今風に言うならウワサが生まれて塔を壊して集めた奴等もチリヂリになったがな。やっぱ人間は愚かだ』
「罰って、その人達は祈った人達になにかしてたの?」
『「自分を理解しない」……』
「そ、それだけで?」
『人が人を殺す理由なんて、上から下まで他人にゃ理解できねえもんさ』
だから愚かなんだよお前等は、とごんべえは人類を嘲笑った。
何となく思いついたドッペル
孤独のドッペル
その姿は、終焉
この感情の持ち主は、幾星霜もの時を大勢でありながら一人で過ごした。繋がりがあるのに解り合えぬ中、肥大化したストレスのエネルギーは恒星規模。
漸く育て上げた繋がらずとも繋がれる生き物すら、何れは飲み込み一つになる。
まあ言わずともわかるごんべえのドッペル。
超巨大な球体、というよりは荒れ果てた星。巨大な真っ黒な瞳が複数存在し、海も陸もある。よくよくみると使い魔のようなものが生態系を築いては星に食われている。
終焉の魔女。その性質は孤独。
魔女化した場合。
感情を持つ生き物を求めて何処までも肥大化していき取り込みしかし理性を失った今、インキュベーターと同じ方法で繋がりを求めようとして精神を繋げ、絶望で犯しきり感情を溶かし一つにしてしまう。それ故にまた求めて、を繰り返し宇宙を飲み込む。
命を取り込み絶望を増やすほどに瞳が増え平行世界すら視認し侵攻する最強最悪の魔女。
本編後
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マギレコでも魔法少女を誑かす
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たるマギで家族3人でフランスを救う
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たむらの旅につきあわされる