性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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ごんべえがマギウスの翼に言いそうなこと

『そこまで言うなら仕方ない。魔女から戻すのは不可能だが魔法少女から戻す方法ならまあ時間をかけりゃ出来なくはない』
『ただし対価は貰うがな』
『まだ奪うのかって? おいおいそれは道理が合わない。お前達の未来が奪われたと感じる状態になったのは、欲しい未来の為に、俺達へ願ったからだろ?』
『なあに簡単だ。恋人を願った奴は二度と恋が叶わない。病気の友人を助けたなら不治の病を友人に。富を願ったら当然没収、使った分は借金だ。家を守るなら家を奪おう。ペットの蘇生なら再び死んでもらうし理解者を求めたなら当然その関係を白紙にする』
『当然だろう。お前達は魔法少女の末路を知ったなら恋人も、病気の誰かも、金も、家も、友も全て手に入れられなくても、失っていても良かったんだろう?』
『良かったな、また喧嘩するかもしれない仲に戻るだけでお前等の大事な姉妹は魔女にならない』
『火祭りが消えるだけで魔女にならないなんてお得だなあ』
『また緊張気味になって人と話せなくなるだけでお前の未来から魔女になる運命が消える』
『妹を守る力を捨てるだけで、魔女になる運命も捨てられる』
『どうしたはぐむ? どうせ魔法少女やってようと感謝されないんだから、いいだろ別に。やめたいんだろう? 魔法少女のままでいたいわけがないよな?』
『なに、母親がなにかに巻き込まれても願いを捨てたお前のせいじゃない』
『お前は……まあスリルは消えて退屈な日常が戻ってるな……てかなんだこの願い』
『バイト先が移転してもまあ働けるし、お前が一番被害少ないかもな』
『どうした? ほら、叶えた願いを捨てると約束するなら、俺はお前達の救済のために尽力してやるよ。ライター持った人間に、火打ち石を得意げに掲げる猿よりずっと現実的なことを言ってるぜ?』
『魔女になりたくないんだろう? 他人を不幸にしてまでそんな未来を避けたいんだろう? 知ってたら願わなかったと、そう言うんだろう? 先輩は隠すからな。後輩の俺が責任持って正してやろう。とは言え願ったのはお前達の意志だから、解約金はもらう。損はするが他人に迷惑かけるのは良くない』
『どうした笑えよ。魔女になる未来から解放されるんだぜ? 笑えよほら』

みふゆへ一言

『皆の夢を守るとか大層なことを言ってるがな、お前達は一度夢を叶えた。その夢の対価を払いたくないと言うのなら、当然夢は捨てるべきだ』

 一周回ってみふゆ好きだろこいつ


約束を破る悪いお姉さんにはならないでしょう

 風見野市。

 チームを組めるだけの魔法少女がおり、それでも問題ないほどの魔女が居る街。その魔法少女が殆ど姿を消し、魔女達が被害を出し始め、しかしそれはすぐに収束した。

 

「たくアイツ等、普段は偉そうに人を守るだ力の責任だを言うくせに何処行ったんだか」

 

 手に入れたグリーフシードを片手で弄びながら嘆息する魔法少女、佐倉杏子。彼女がこれ幸いと風見野市内のテリトリーを無視して狩りを行ったからだ。

 

「その人達ってキョーコのお友達?」

「そんなんじゃねーよ。ガミガミ小言のうるせえ委員長みたいな奴等だ」

 

 そんなところが師を思い出してどうにも苦手な奴等なのだ。使い魔を見逃し人を食わせるのは駄目だなんだと。

 魔法少女がグリーフシードを得られなければどうなるか知らないくせに。

 

「キョーコはその人達嫌いなの?」

 

 と、覗き込んでくる幼い少女。名を千歳ゆま。

 魔女から助けた成り行きで連れている少女だ。

 

「ああ、うるさいったらありゃしねえ」

「でもキョーコ、あんまり嫌そうじゃない」

「あ? んなわけあるかよ………」

 

 と、肩をすくめる杏子。

 

「それよりだ、この前来てたキュゥべえ……あいつの言うこと聞くなよ?」

「………魔法少女になっちゃ駄目なの?」

「そうだ。あんなもんなるべきじゃねえ………」

 

 そんな会話をしたのは昨日の事。なのにゆまは魔法少女になった。なってしまった。しかも、願いが『杏子を助けたい』だ。

 他人のために願うのは馬鹿のすることと言うのが信条の杏子は更に機嫌が悪くなる。口の悪い宇宙人が何時だったか言っていた『人生一度きりの願いなら自分の為に願うべきだ』という愚痴を思い出す。

 契約したのは織莉子という何者かがゆまに杏子が死ぬと伝えたから。いや実際死にかけたけど。

 そもそもキュゥべえがゆまに目をつけたのが織莉子という奴からの情報らしい。

 

「とにかく見滝原に向かうぞ。織莉子ってやろうに落とし前つけさせるんだ」

「織莉子?」

「あ? ………あ」

 

 己の言葉を反芻され振り返ると、見知った顔。キリリと釣り上がった瞳に、金の髪。年齢以上に大人びて見えるのは高身長のみならず纏う雰囲気も関係しているだろう。

 

「人見リナ……」

「佐倉さん………そちらの子は………えっと、娘さんですか?」

「せめて妹だろうが!」

 

 リナの言葉に思わず叫ぶ杏子。何故本来ならまだ中学生の自分に娘がいるなどと言われねばならぬのか。

 

「ああ、すいません。その子がまるで貴方を家族のように慕っているように見受けられましたが、流石に妹と呼ぶのは貴方に失礼かと………」

「っ………あんた、知ってるのか」

「有名でしたので………」

「悪い意味でかい?」

「………失礼しました。不躾でしたね」

 

 と、リナが素直に謝罪すれば調子が狂うと頭をかく杏子。ゆまは杏子の影に隠れながらリナ達を見つめ、視線に気付いたリナがしゃがむ。

 

「こんにちは、お嬢さん。私は人見リナ、貴方のお名前を教えてくれませんか?」

「………ゆま」

「あらためまして、ゆまさん。私は佐倉さんとは仕事仲間……というのも違いますね。商売敵、でしょうか」

「お姉さんも魔法少女なの?」

「……………」

 

 その言葉に目を見開き杏子を見るリナ。その視線に杏子は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「そう、ですか………それは」

「なんだよ、街を守る魔法少女が増えるから喜ぶと思ったぜ」

「こんな幼い子供が魔女と殺し合うのを喜ぶほど、困窮はしていません」

 

 杏子の言葉に今度はリナが顔を歪める。如何にもいい子ちゃんな発言に杏子が更に突っかかろうとすると……

 

「それに、魔法少女の末路を知った今おいそれと誘えるものでもありません。ましてや正常な判断のできない子供では………」

「………お前、知ったのか?」

「…………なるほど、貴方は知っていたのですね」

 

 リナの言葉に杏子がどこか冷たい声で返せばリナは納得したように言う。

 

「あなたが頑なに使い魔狩りをしないのは、グリーフシードの枯渇が意味することが魔力の減少だけではないと知っていたからですか」

「別にそういうわけじゃないんだが………ま、少なくとも今後は仲良くできそうじゃん?」

「それは、私が使い魔を狩らないからですか?」

「そりゃね、あんただってま……ああはなりたくないだろ?」

 

 ゆまを見て言い換える杏子。魔法少女の末路を知ったなら、文字通りの生命線であるグリーフシードを孕む前の使い魔を狩ったりはしないだろう。

 

「いえ、私はこれからも使い魔を見つけ次第狩るつもりです」

「はあ!?」

「っ!?」

 

 杏子の思わずといった叫び声にゆまがビクリと震える。

 

「そんなに驚くことですか? マミさんもやっていることでしょう」

「アイツにはごんべえが居るだろうが!」

「ごんべえさんがいなければ、やらなかったと?」

「それは………っ!」

 

 言葉に詰まる杏子。ごんべえを知っていて、マミの人となりも知っている。昔彼女と親しかったのかもしれない。

 

「はん、正義の味方様は働き者だね」

「………正義の味方、ですか」

「………?」

 

 杏子の皮肉にリナは何やら考え込む。

 

「私は正義の味方なのでしょうか?」

「……は? あ、いや………皮肉だけどよ、そうなんじゃねえの? いっつも人の為に頑張っててよ」

「………ですがそれは、かつて貴方が言ったように………ええ、偽善でした」

 

 何時ものキリッとした態度とは異なるどこか弱さを感じさせるその態度に、ごんべえに何か言われたのだろうと察する杏子。

 

「……私は願いで姉を殺しているんです」

「……………は?」

「私を庇って死んだ姉の死後母に責められ続けた私は、正しくあろうとしました。私自身、母の言葉を否定しきれなくて………だけど、母は何時までも私を責めました。それに耐えられず、母から姉の記憶が消えるように」

「……………」

「願いから生まれた私の本当の魔法は『記憶改竄』……雷は、固有武器の付属機能に過ぎません」

 

 その固有武器付属能力が固有魔法と差し支えのないレベルなのは、彼女の魔法少女としての才能の高さを表しているのだろう。

 

「私の願いで母から姉の記憶が消えても、周りの人からは消えませんでした。その違和感をなくすために、私は知人にこの魔法を使って回りました。そんな私が、正義の味方?」

「………それでもお前は人を助けたろうが、あたしよりよっぽどマシだよ」

「意外ですね。あんなに否定的なのに、それがマシな行為だと思っていたのですか。いえ、前々から思っていましたが佐倉さん、根はいい子ですよね」

 

 と、佐倉に懐いているゆまを見る。

 

「私の正しさは偽物です。罪悪感から目を逸らすための、仮初の正義」

「そう思うなら捨てちまえよ。偽善を掲げたまま、魔法少女の終わりを受け入れんのか!?」

「はい」

「───っ!」

「ごんべえさんは、私に言いました。母が姉の覚悟を無為にしている。私は悪くないのだと」

 

 ごんべえが? それは、なんとも似合わない台詞だ。

 

「しかし改めて彼の普段を思い出せば悪くないのは庇われたことで、その前に言った私が姉を二度殺したことを言及はしてませんでした。というか多分、『お前はその覚悟すら無かったことにしたがな』と言われていたんでしょうね」

 

 今度はしっくり来た。間違いなくごんべえの言葉だ。

 

「アイツ口が悪いからな。あたしの時も、まあ………」

 

 『一番守るべき家族すら己の一部とでも勘違いして目を向けず、偉そうに説教垂れるだけのバカの空っぽな言葉を聞かせたいなら、それこそどんな話でも聞く状態にするしかないだろうよ』と、父が全ての真相を知った後、唐突に現れそう言い残した。

 その後家族が死に、自暴自棄になりごんべえに当たろうとしてマミに殺されかかって見滝原から離れ、なのにごんべえは時折様子を見に来る。

 

「あいつ、あたしのとう……親父の事も偽善者って呼びやがった。あの人は、誰よりも正しくあろうとしただけなのに」

「そのために己も己の周りも省みなかった結果、京は離反しました」

「あの気弱そうなやつだっけ?」

「………ええ、まあ。それでも貴方が父を間違っていなかったと思うように、私もそう思うことにしました」

 

 そう言ってリナは一度目を伏せる。

 

「罪悪感から逃れるために始めたことです。始まりは間違いだったのでしょう……それでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、私は人を守るために己が損することを今でも間違いだと思いません」

「そのために自分がどんだけ傷ついたっていいってか!? どうせ死のうとする奴は勝手に死ぬ!」

「ですが、死にたくない者も死ぬ気にさせる。死にたくない誰かが、殺される。魔女の存在に関係なくありふれているからといって、魔女が原因で、取り除けるのに取り除かない理由にはなりません」

 

 ピリピリと張り詰めた雰囲気にゆまがオロオロ二人を見て、杏子の前に立ち両手を広げる。

 

「きょ、キョーコをいじめないで!」

「………今更ですが、この子はどういう関係なのですか?」

「………魔女結界で拾ったんだよ」

「その後面倒を見る必要などないのでは? 大人に任せるか、どうしてもついてくるというのならそれこそ使い魔にでも食わせれば良かったでしょう」

「てめえ!」

 

 その言葉に激高しリナの胸ぐらをつかむ杏子。リナは慌てず淡々と返す。

 

「貴方が見逃した使い魔が、この歳の子供を襲うこともあるでしょう。この町で起こる行方不明、殺人、変死について、知らずとも関係ないとは言わせません」

「っ! それは………!」

 

 その言葉に固まる杏子。反論できなかった。彼女が使い魔を見逃し、魔女になったら狩りに行く。それは裏を返せば犠牲者は必ず出ているということだ。

 ニュースなど見ないが、その中にはゆまと同世代の子供だっていたかもしれない。

 

「だけど、それは……こんな、子供が………」

「安心しました。貴方は、少なくとも目の前の誰かを見捨てることは出来ないのですね」

「………ああ?」

「前々から思っていましたが、あなたに悪役は似合いませんよ」

 

 クスリ、と微笑むリナにからかわれたと解った杏子は乱暴に手を離し舌打ちした。

 

「………それで? あんたさっき、織莉子の名前に反応してたよな?」

「ああ、それは……」

「リナ! 確認が取れた、やはりグリーフシードは持ち出され……む、佐倉杏子?」

「朱音麻衣か……気弱チビは裏切ったらしいが、残りの連中はどうしたよ」

「…………死にました」

「…………そうかい」

 

 リナの言葉に目を見開き、気まずそうに視線をそらす。

 

「織莉子についてですが、京がついていった相手であり、現状私達の敵です」

「………へえ」

「貴方も彼女に用があるというなら、手を組みませんか?」

「リナ、信用できるのか?」

「ええ、少なくとも約束を破る悪いお姉さんにはならないでしょう」

 

 と、ゆまを見るリナに、杏子はチッと舌打ちして頭をかく。そして、懐から菓子を取り出す。

 

「喰うかい?」

「人から奪ったお金で買ったか、盗んだものを頂くのは……」

「真面目だねえ。安心しろよ、こっちはごんべえがくれた金で買ったやつだ」

「………貴方の保護者ですか、あの人は」




ごんべえの此奴等だけは無理と思った人間の内一人との会話

『何故、あいつ等を魔女と呼んだ』
「あらあら、天使様。なぜそのようなことをお聞きになるの? 彼女達は魔女よ。人を惑わし狂わせ、犯し、殺す、神の敵」
『あいつ等は魔女じゃない。魔法少女ですらねえ』
「そんなことないわ。だって、皆言ってたもの。魔女だって、よくも騙したなって叫んでいたわ。信心深いあの人達が間違いなんておかさないわ。神様がきっと導いてくださるもの」
『神などお前達の都合に合わせた悪魔だろうよ。真に神がいようが、そいつが信じてきた事と別の事を言えば、石を投げて悪魔と叫ぶのがお前達だ』
「天使様ったら、変なことを言うのね? 私達はずっと、神の教えを信じてきたのに。ああ、でもそうね……私はまだまだ子供だもの。信心深い彼等の言葉を信じるしかできないわ」
『…………ティテュバが居ない今、この村にとどまる理由も消えた。じゃあな……』

ごんべえが関わりたくないと思った最年少の少女。
多くの人間を魔女として告発しといて天使だと思いこんでいる相手に「だって村の皆が言ったから」「神を重んじる彼等が間違うはずがないと思っただけ。私は悪くない」と笑顔で返した。嫌いではないが馴れ合うのは無理

ティテュバ
当時のごんべえのお菓子係

因みに一番無理と思ったのは『貴方達の手伝いをしたい』とキュゥべえと契約した後世界規模の戦争を起こして「これで皆、貴方達に願ってくれますね」と願いに興味を持ち会いに行ったごんべえに笑顔を向けてきた名もなき魔法少女。
ごんべえはどす黒いなにかに人の皮を被せたような女、と評価した。ちなみにほんの百年程前の魔法少女。
何が恐ろしいって戦争が起こり精神的不安定な少女が増えればキュゥべえ達が見えるようになって願いを叶えられるよね、って善意のみで思ってるってところ

本編後

  • マギレコでも魔法少女を誑かす
  • たるマギで家族3人でフランスを救う
  • たむらの旅につきあわされる
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