性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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ごんべえの第二部勢力評価 

ネオマギ
考え無しの馬鹿が集めて考えたつもりの馬鹿が操る馬鹿の集まり。魔法少女が上に立ったあとの光景(例、天に届く塔等)を知ってるからどうせ失敗すると思ってる。



プロブラ
亡き友のために復讐したいよなぁ? 殺したのは自分のせいじゃないって思いたいよなあ?
だが、お前等が殺した魔法少女達が誰かを恨むとしたら、そりゃぁお前等だろうな!


時女
久兵衛様と呼ぶんじゃねえ。
国益を願うように育てられた村か。その手の類のつけは、経験則でそろそろ払うんだろうな。
リーダーは人の善性を信じすぎてるし、正しい者が上に立てば下々は正しく生きれるとか面倒くさい勘違いしそうだ


午前フォーク
出来ることと出来ないことの区別はつけような。
魔法少女を隠そうとする世界の流れは、魔法少女の存在を必要としてるからだ。お前程度の因果で消し去れたら苦労しねーよ。
太助とはよく呑みにいく。


ピュエラ
特に無し。思うところがあるとすれば願いが歪んだ結果に心を壊した少女達への憐憫。


こいつ等程度に世界を変えられるはずないけど安息の地(インキュベーター不可侵領域)が崩されるのは困るし身の程知らずが周りを巻き込み奈落に落ちるのは厄介なのでマギユニに手を貸してくれる。


なんかのイベントでごんべえの契約魔法少女達が出てきた場合、邪魔な勢力は軒並み潰される。一つの勢力に一人当たり向かえば十分かな、より過酷な時代の魔法少女達だもん。特に妲己やナイチンゲール。


はんたーさんからファンアートを受け取りました

小巻VS織莉子
血生臭い魔法少女同士の戦い。でもソウルジェムを狙わない、殺し合いではないただの喧嘩


悪い事したら、ごめんなさい……だよ?

 何時からだろう。彼女を羨ましいと思うようになったのは。

 何時だって、誰が相手だって己を偽ることのない彼女。

 「良家組」と「成金組」。歴史があることに優越感を覚える者達と実力で成り上がった、親や祖父を持つことを誇りとする者達で分かれた差別。

 良家組は自分達が上であり、同列であるのは不当であるとし、成金組は良家組が驕慢だらけと嫌う。

 血筋を尊び才が宿ると考える良家組が「美国織莉子」を神輿にするのは時間の問題で、織莉子もその現状を利用した。

 それに対抗するように成金組の神輿に据えられたのが浅古小巻だ。成績は織莉子に継ぐ2位、身体能力も高く、林間学校で起きた火災が発生した際に取り残された者達を全員助けてみせた。

 仮面を被る自分とは違い、本心のままの行動で人を惹きつける。もっとも、本人はそんなものクソ喰らえとでも言わんばかりの態度だったが。

 家柄で見下す良家組に噛みつき、小巻に負けているだろうと良家組を嗤う成金組に噛みつき、己の意志を通す姿は自分にはないもので、我を通す………我侭な姿には嫉妬も覚えたものだ。

 

 

 

「────っ!」

「っ! こんの!」

 

 人の骨を容易く砕き内臓を潰す速度で飛来する水晶を砕き、一気に接近する小巻。

 ポールアックスを振るい、織莉子が回避すれば舗装された地面が砕けその破片を蹴り上げる。先端が織莉子の首の一部を引き千切り、織莉子が手の中に隠していた小型の水晶から光線を放ち小巻の肩を貫く。

 

『血生臭えなあ』

 

 呆れたように言うごんべえだが、魔法少女の魂の在り処を知ってる魔法少女同士で行われるこれは、()()の範疇を出ない。ましてや織莉子はグリーフシードを大量に手にし、喧嘩の後に魔力を回復する手段もある。

 内臓を引き摺り出そうと頭を擦り潰そうと、ソウルジェムに傷つけない限り、これはただの喧嘩なのだ。

 

「あなたは!」

「何よ!?」

「貴方はどうして、そんなに自由に生きられるの!?」

 

 的の大きい水晶では防がれるだけだと判断し、直前で破裂させ礫を飛ばす織莉子。細かい傷をつけられながらも防御魔法を展開するほどではないと突貫する。

 

「私が知るか!」

「っ!!」

 

 振り下ろされたポールアックスの柄に当てるように水晶を浮かせる。ギィン! と甲高い音が響き、水晶に亀裂が走る。

 

「誰に縛られるでもなく、自分で自分を縛るような奴がどんな言葉をかければ満足かなんて、私が知るかぁ!」

「あ………!」

 

 水晶が砕け散り、右肩から胸にかけて肋骨ごと切り裂かれる。呼吸を残していた喉からゴボリと血が溢れ、血液が流れるのを少しでも抑えるために肺と心臓の機能を止める。

 

「じゃあ、なんで……じばられないで………縛られないで生きていけるの」

 

 誇りに思う父を持ちながら、あれだけの人間に期待を寄せられながら、どうして我を貫ける。

 

「他人に自分の在り方を委ねて、近いからって家族の夢に自分のを重ねて……そんな風に自分自身を誰かに作らせてたら、何時か何も解らなくなるからよ、あんたみたいに」

「…………っ!」

 

 図星を指され、歯噛みし水晶を放つ織莉子。また眼前で破裂し礫を飛ばすが気にせず迫る小巻だったが破片の一部が軌道を変え小巻の片目を貫いた。

 

「づぅ………!」

 

 痛覚を完全に切っておらず、視界の半分を失い動きを鈍った小巻の腹に水晶を叩きつける。

 メキ、ブチと嫌な音を立てながら小巻の体を吹き飛ばし、減り込んだまま爆ぜる。破片が体内を引き裂き、衝撃が意識を飛ばしかける。

 

「げほ……やってくれんじゃない………」

 

 ベッと血を吐き捨て口元を拭う小巻。眼球ごと水晶の破片を取り出し片目を修復する。

 

「………解らない」

「………はあ?」

「何をすればいいかなんて、私には解らない!」

 

 無数に放たれる小型の水晶。未来を読んでいるのだろう、回避した瞬間には軌道を変える水晶を防御魔法で防ぎつつ、隙間を縫おうとした瞬間側頭部を光線が貫く。

 

「解らない解らない解らない! だって、何かを考えたことなんてないんだもの!」

 

 父を支えると決めた。

 政界に足を踏み入れた父の恥にならぬようにしようと決めた。決めただけだ。

 迷惑にならないように泣かず、請わず、母の真似事をして、父の自慢になれるよう世間一般の自慢の娘というものを演じただけ。

 深い考えも何もなく、ただそうしてきただけ。

 

「私は………私は誰? 文武両道? お嬢様? 人望厚い生徒会長様? 救世の魔法少女? それともただの愚か者? 全部、自分が決めたんじゃない。世間が望みそうなことを、勝手に想像して演じただけ。自分の作り方なんて、そんなの知らない!」

 

 何も知らぬまま、理想を持たず『理想の少女』に己を型はめた。それが美国織莉子という少女だ。父が汚職の罪を被せられなければ、誰も彼もが褒め称えたまま学院の誇りらしい卒業生の一人にでもなって、父の後を継いで議員にでもなっていたろう。

 

「でもそこに「私」はいない! 皆が思い浮かべるのは、「私」じゃない! 私は美国織莉子をやめたいの!」

「………………」

「っ!!」

 

 予知で攻撃を察知し投げ付けられたポールアックスを回避し、追撃してきた小巻を迎え撃とうとして魔力が足りず水晶が形成出来なかった。

 それでも数秒先の未来なら読める。迫る腕を回避し脚に回された脚を避け僅かにバランスを崩した織莉子の胸ぐらを掴もうとする腕を弾き────

 

「っ!!」

 

 対処した側から次が来る。矢継ぎ早に迫る追撃の予知に体が追いつかない。

 

「んなもん私が知るかぁ!」

 

 小巻の額が織莉子の顔面にぶち当たり鼻と前歯が折れる。血だらけになる口元を抑えた織莉子の腹に膝がめりこんだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ぐだぐだベラベラと、話が長い!」

「っぅ! 迷惑かけていいって言ったじゃない!」

「応えてやるとは言ってない!」

 

 魔力はどちらも尽きかけ。傷も直さず、殴り合い掴み合う。

 

「そういうところ、ほんと嫌い!」

「奇遇ね! 私もそうやってぐちぐちしてるところが大嫌いよ!」

「はっきり言えばいいってものじゃないでしょう!」

「裏でコソコソ言う奴等よりマシでしょうが!」

「そうね! それは同意するわ!」

 

 こんな風に感情をむき出しにするのは何時以来だろう。

 母や父に甘えていた時ぐらいだろうか。その前に、心のまま叫んだことはあったろうか?

 美国本家にいたくないと我侭を言った時ぐらいだ。そもそも誰かと喧嘩するのだって初めてだ。

 

「はっ! あんたもそんな顔で人を殴れんのね………」

「初めてよ、こんな事するの!」

 

 

 

 

 泥や埃や血で体を汚し、顔を腫らして青痣を彼方此方に作り横たわる二人の少女。何か惨憺な出来事でもあったと想像させかねない状態の少女達は、しかしどこかスッキリしたように空を見上げていた。

 

「……織莉子、グリーフシード寄越しなさい」

「……………はい」

 

 小巻は織莉子から受け取ったグリーフシードで魔力を回復し、傷を癒やしていく。織莉子もまた同様。穢をためたグリーフシードを投げるとごんべえが回収した。

 

「………で、どうする? 続ける?」

「…………もう、良いわ。スッキリした」

「……そ」

 

 小巻は変身を解き、立ち上がる。織莉子も小巻の手を借り立つ。

 

「なら、どうするの?」

「…………さあ」

「……………」

「どうすればいいか、考えてくれないかしら」

「嫌よ」

 

 バッサリ切り捨てた小巻に織莉子は困ったように笑い、足元のごんべえを持ち上げる。

 

「………あなたにも、色々助けられたわ」

『何のことだか。お前を助けたところで、面倒くさいことになるだけだろ』

「ふふ、そうね。今まさにそうだったもの…………」

 

 面倒くさそうに言うごんべえに微笑んでから、空を見上げる。すっかり暗くなってしまった。

 

「……子供だったわ、私」

『…………』

「こうだって思ったら、考えも改めずに、勝手に嫌って勝手に決めて……」

 

 公秀の事だろう。

 

「だからといって、いきなり好きになる、なんて無理だけど」

『そりゃそうだ……』

「何の話?」

「ちゃんと知ろうと思うの。好きになるか、今度こそ嫌うか………ちゃんと知ってから、決めるわ。鹿目まどかさんについても」

「………そう」

 

 微笑を浮かべる織莉子に小巻も微笑む。

 

「なら大丈夫でしょ。明日、時間作るよう言っとくわ」

「………良いの?」

「騙してんなら止めるし、そうじゃないならあの子を知って殺そうなんて思わないわよ。いい子だもの、あの子……あ」

 

 と、何かに気付いたように声を漏らす。

 

「私がそう思ってるなら安心だって、そういう前提で見るんじゃないわよ?」

「………私を止めたいんじゃなかったの?」

「押し付けたいわけじゃないのよ」

 

 じゃ、また明日。

 小巻はそう言ってごんべえの尻尾を掴み引っ張ると歩き出す。その背を見送り、織莉子もその場から去った。

 

 

 

 

「はは、はじめまして! 鹿目まどかでしゅ!」

 

 緊張した様子で自己紹介した目の前の少女は、しかし恐怖でというよりも………自惚れで無ければ綺麗な人にあった、そういった緊張だ。

 

「小巻さん、私について話したのよね?」

「ええ……」

「なら、貴方は私が怖くないの?」

 

 仮にも自分を殺そうとしていたらしい相手だ。普通、もっと恐れるべきではないだろうか。

 

「えっと………その、私が凄い魔法少女になるから、凄い魔女になっちゃうのも聞いてます。美国さんにも、家族がいますし………」

「────だから、殺そうとする者が現れても仕方ないっていうの?」

 

 いやおかしい。この少女、おかしい。魔法少女になる才能があるのだから、因果はもとより精神的に魔法少女になれない一般的な大多数の少女とはズレているのだろうが、これは予想外がすぎる。

 

「ち、違いますよ! 殺されたくなんてないです! まだやりたいことだってあるし、両親やたつやに、さやかちゃん達を泣かせちゃいますもん!」

 

 やりたいこと、より家族や友人が悲しむことのほうが嫌らしい。そういう表情や声だ。

 

「でも、だから………美国さんが、私が生きてるのが怖いっていうのも解るんです。えっと………ええと、だから……怒ってないです」

「…………そう」

 

 織莉子はまどかの言葉に目を伏せる。

 

「優しい……というより、いっそ怖いわ。貴方、それこそ世界のためなら神様にだってなってしまいそう」

「あ、えっと………美国さん?」

「織莉子で良いわ………ええ、鹿目まどかさん。もう、貴方の命を狙わないと誓うわ」

 

 そう言って、今度はリナ達に向き直る。

 

「貴方達とのケジメは、また別よね? 貴方達のお仲間を騙して、魔女にまでさせたのだから」

「………貴方につくと決めたのは京の意志です。私自身、貴方と同じく己の理想を押し付けていた。遅かれ早かれ、同じような運命を辿っていたでしょう」

 

 リナは織莉子の話を聞いた時点で、既視感があった。正しくあろうとした………正しくなければと思っていた自分と同じだ。

 

「思うところはあります。ですが、貴方も私も……人を救おうと思った。それを間違いにはしたくない」

「そう………」

「………リナが許すと言うなら、私も許そう。私とて正義の立場に酔い、京が怯えていたのを見ていなかった。責任の一端は私達にもある」

 

 麻衣もそう言って顔を逸らす。織莉子は今度はゆまと杏子に向き直る。

 

「久しぶりね、ゆまさん」

「うん、久し振り織莉子!」

「……………」

 

 ゆまは笑顔を向け、杏子はまだ納得しきれていたいのか睨み付ける。

 

「えっと……えっとね、ゆまは怒ってないよ。キョーコは駄目だって言ってたけど、織莉子のおかげで、ゆまキョーコ助けられた。だから、ありがとう!」

「………ま、こいつがこう言ってるからな…………」

 

 と、杏子はつかれたように肩を落とす。

 

「だから、一発だ………」

「……どうぞ」

「あ、まどか。目閉じて」

 

 さやかが慌ててまどかの耳を抑え、まどかも困惑しながら目を瞑る。

 ゴッ! と鈍い音が響き奥歯が床を転がる。

 

「これであたしはチャラにしてやるよ………」

「織莉子! 大丈夫………?」

 

 杏子はふん、と鼻を鳴らし、回復魔法を得意とするゆまは慌てて駆け寄る。淡い緑の魔力光が頬を包み、腫れが引く。奥歯も新しいのが生えたろう。

 

「あのね、キョーコはやりすぎたと思うよ? でも、織莉子まだやることやってない」

「やること?」

「悪い事したら、ごめんなさい……だよ?」

 

 空気が固まる。予想できていたのかごんべえだけは面白がってる時の尾の揺らし方をする。

 

「ちゃんと皆に言わなきゃ駄目だよ? ゆま、まだ聞いてない……」

 

 確かに、まだ言っていなかった。当たり前だけど、こんな状況だからこそ忘れていた言葉。

 

「ごめんなさい……」

「うん!」

 

 空気が緩む。緊張が消える。誰も彼もが警戒を解く中、カシャンと音が響いた。

 

「…………それでも、貴方が危険であることには変わらない」

 

 白黒の世界で、ほむらは盾から銃を取り出す。

 

「魔女になるかもしれないからまどかを殺そうとしたのなら、私はまどかを殺すかもしれないから、貴方を殺すわ」

 

 まどかが悲しむから、とりあえず死体は盾に収納した後見滝原の何処かにおいて置こう。瓦礫に混じり、その時に死んだと思われるはず。

 引き金を引き、銃声が響いた。




そうだ あれが待ちに望んだ愉悦の光だ

私は諸君らを約束通り連れて帰ったぞ あの懐かしの絶望へ あの懐かしの愉悦へ
そしてほむらは数多のループを渡り真実へ至る
愉悦部員各員に伝達 部長命令である

愉悦(じごく)を作るぞ

本編後

  • マギレコでも魔法少女を誑かす
  • たるマギで家族3人でフランスを救う
  • たむらの旅につきあわされる

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