性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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天爛 大輪愛様からファンアートいただきました。
杏子との会話シーン

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ほむらの下に現れたまどか

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彼奴に生きていてほしいって願う奴が居た。それだけの話だ

「ごめんなさい、ママ……」

 

 深夜、詢子も寝たのを確認するとまどかは家を出る。

 

「こんばんは」

「っ! 織莉子さん………」

「…………あっちよ」

 

 と、ある方向を指差す織莉子。何を、とは聞くまでもないだろう。

 

「ありがとうございます!」

「………ほんと、良い子ね」

 

 仮にも自分を殺そうとした相手。謝罪し、許したとはいえ素直に信じ御礼を言うまどかの背中を見ながら、織莉子は静かに微笑んだ。

 

 

 

「………あ!」

 

 と、暫く走りある建物に人影を見つけた。遠目でよく見えないが、あの槍のシルエットは多分杏子だろう。態々槍をだし、なにかに備えている。魔法少女が備えるもの………魔女だ。

 そして、結界に飛び込まず外にいるのなら………まだ、結界が生まれていないのなら!

 

「ほむらちゃん…………」

 

 正面のビルに入り、階段を駆け上り柱ばかり階層を一つ一つ確かめながら、漸く見つける。ほむらもまどかに気づき、顔をあげる。

 

 

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「…………え」

 

 何故まどかがいるのか解らないと言った顔で固まるほむら。まどかが一歩近づけば、ビクッと怯えるように震える。

 

「何をしに来たの………また、私を否定するの………?」

 

 いいや、怯えているよう、ではない。事実怯えている。これ以上否定されることを、己の行為の意味が失われてしまった事を改めて突きつけられることを。

 

「ほむらちゃん、私は………」

「こないで!!」

「っ!!」

「貴方は違う、貴方じゃない! 私が救いたかったまどかは貴方じゃない!」

 

 ほむらに救いは存在しない。まどかを救うことより、まどかを救える存在になることを願った時点で、自分を救おうとした時点で、彼女に救いは訪れない。

 

「うん。そうだよ………」

 

 まどかもそれを肯定し、ほむらが息を呑む。

 

「私はほむらちゃんが救いたいって思った、ほむらちゃんを守った私じゃない。ほむらちゃんにお願いした私じゃない」

「っ! なら、なら放っておいて! 貴方は関係ない、貴方は──」

「関係なくなんか、ないよ」

 

 そして今度は否定する。向けられた眼差しは優しく、だからこそほむらは余計に恐怖する。

 

「まどかの姿で私の前に現れないで、まどかの声で私に話しかけないで、まどかの目で私を見ないで…………!」

「う〜ん。確かに私はほむらちゃんを助けたまどかでも、ほむらちゃんにお願いしたまどかでもないけど…………それでも、私は、ほむらちゃんと無関係じゃないよ」

 

 泣き叫ぶようなほむらの言葉に罪悪感を覚えながらも、それでも真っすぐ進んでくる。

 

「どうして!?」

「だって、ほむらちゃんが私を助けてくれたから」

「っ! 違う、それは………」

「うん。私じゃない私を想って、だよね………それでも、だよ」

 

 それでもほむらは、別のまどかに重ねながらまどかを守ろうとしてくれた。それだけは事実なのだ。

 

「ごめんね、私はほむらちゃんの救いたかった私じゃないの。そのまどかにだけは、なれないの」

 

 あるいはごんべえかキュゥべえに願えばその平行世界のまどかと融合できるかもしれないが、それは誰のためにもしちゃいけないと、そう思った。

 

「どうして……何時も、どうして何時も貴方は謝るの? どの世界の貴方もそうだった。何時も……何時も何時も何時も何時も何時も! 私の真実を知っても、知らなくても……何時も謝って、私を置いていくくせにどうして!!」

「だって、ほむらちゃんに泣いてほしくないから」

「───っ」

 

 とうとうほむらの目の前にやってきたまどかは何時の間にか流れていた涙をそっと拭う。

 

「きっと、どの世界の私も同じだよ。ほむらちゃん、悲しそうだった……苦しそうだった、辛そうだった。泣いてる、みたいだった」

「ま、どか………?」

 

 何でも出来る凄い人。それが最初の印象で、次の印象は小動物を虐める銃を持った怖い人。でもすぐに、本当は優しい面もあるのが解って、もっと見ると、辛そうに、今にも泣きそうに見えた。

 

「私はほむらちゃんに、泣いてほしくないな」

「なん、で……貴方には、なんの関係も…………」

「あるよ。きっと、ほむらちゃんにとって最初の私もそうだった…………ねえ、ほむらちゃん」

 

 

 

 

「私と、友達になってください」

 

 

 

「………何、を」

 

 差し出された手に理解出来ないと言うような視線を向けるほむら。まどかはそんなほむらに優しい笑みを浮かべていた。

 

「代わりにはなれなくても、ほむらちゃんにとって本物にはなれなくても、友達にはなれると思うから」

「なんで……」

「ママに言われたんだ……ほむらちゃんに何をしてあげたいか、その答えが出てるって…………私は、ほむらちゃんを助けたい。そのためにも、ほむらちゃんを知りたい。だから、友達になろう」

 

 

 

「………………」

 

 この目だ。何時だって彼女の目は真っ直ぐで、彼女の言葉は温かい。あの子じゃないのに、ただ似ているだけのはずなのに。

 

「それ、でも………貴方は………私は、貴方を…………」

「最初の私もさ、こんなこと望んでないよ。だって、ほむらちゃんのせいじゃないんだから………だからほむらちゃんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

──一人だけであんなのに勝てるわけない。鹿目さんだって死んじゃうよ

 

──ねえ、逃げようよ。だ、だって、仕方ないよ。誰も、鹿目さんを恨んだりしないよ

 

 『あの時』の自分は、それしか言わなかった。一緒に戦おうと、言い出さずに、全てが終わってからその現実から目を逸らした。逃げるだけの自分を否定したかった。

 何かが変わったわけじゃない。二人揃って死んでいただけだろう。

 

「あ、わ………私、は………でも………」

「うん」

「たくさん………沢山切り捨ててきた。貴方を、美樹さやかを、巴マミを、佐倉杏子を………救えないから、次があるからって………見捨てて、そんな自分が許せなくて、認められなくて……悪いのは全部彼女達のせいにして!」

「………うん」

「それでも救えなくて…………救うためって言い訳して、何度も皆を、鹿()()()()を切り捨てて来たんだよ………?」

「うん。聞いた………それでもやっぱり、私はほむらちゃんの友達になりたいよ」

「私に全部、諦めろっていうの…………!?」

「…………これ以上自分を傷つけないで、って意味がそうなるなら、そうかも。うん、私も結構勝手だね」

 

 ああ、たしかに勝手だ。でもほむらは文句を言うことができないほど、もっと身勝手だ。

 

「それでも言うよ。この世界で、私達と生きてほしいって」

「私がしてきたことを、許すの?」

「ううん。許さない………違うかな。許せない。だってそれは、私が許していいことじゃないから。でも同時に、私が憎むことでもない」

「………………」

「私に出来るのは、ほむらちゃんにそういう過去があったって知って………どうするか選ぶこと。ううん、もうとっくに選んだ………私は、ほむらちゃんと友達になりたいんだ」

「……………ぁ」

 

 友達。

 何時しか作る意味がないと、枷になるだけだと作ることを諦めた存在。また作ってしまえば、それはきっとほむらの足枷になる。ここで止まるのは、これまでの歩みが無意味だった現実を受け入れること。

 手を取るな。取れば終わる。それがわかっているのに、手を伸ばしてしまう。

 

「私、は…………本当は、切り捨てたくなかった」

「うん」

「巴さんのケーキが食べたかった。美樹さんが連れて行ってくれたカラオケで、また歌いたかった………佐倉さんのおすすめの場所で、皆で一緒に街を見たかった」

「そっか」

「それを、全部切り捨てたのは私………なのに、良いの?」

「私は、ほむらちゃんが頑張ってきたことが何もかも無駄だったなんて思いたくない。こうしてこの私とほむらちゃんが出会えて………そこにもきっと、なにか意味があるって思いたい。二人で、ううん。皆で、その意味を探そう? だから、そのためなら何度だって言うよ………ほむらちゃん」

 

 

 

私と友達になってくれませんか?

 

 

 

 

「…………ゔん」

 

 きっと今の自分は、酷い顔をしていることだろう。

 苦しかった。泣きたかった。それでも、その先に未来があると信じ続けて、それはたどり着けない蜃気楼で、絶望しそうになった時に差し出された手がとても暖かった。

 何も救えなかった自分が、今更手を取っていいのだろうかと思いもする。それでもこの温もりを手放すことは、拒絶することは少女には出来ない。

 

「…………な、さい………」

「…………」

「ごめん、なさい…………ごめんなさい! ごめん、ごめんねえ! 私、何もできなかったのに、沢山の人を不幸にしたのに、それでも、まだ幸せになりたいって思ってる……!」

 

 その懺悔にまどかは応えない。これは、きっとここに居ない大勢の誰かに言われている言葉だから。

 泣き続ける少女を無言で抱きしめる少女。

 窓から除く赤い瞳は、そのまま夜闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

「どうなった?」

『ガキが泣いただけだ。彼奴がもっと早く死んでおけば、って現実は何も変わってねえ』

 

 杏子の言葉にごんべえはそう返す。だけど、と空に浮かぶ月を見る。

 

『その現実を知った上で、彼奴に生きていてほしいって願う奴が居た。それだけの話だ』

「…………アタシもマミも、さやかもゆまも、他の奴等もさ…………アンタがインキュベーターの一匹だと知っても死ねばいいとは思ってないぜ」

『俺は不死だから思われる必要なんてねえよ』

「はは、だな」

本編後

  • マギレコでも魔法少女を誑かす
  • たるマギで家族3人でフランスを救う
  • たむらの旅につきあわされる
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